ようこそCODEエージェントが住まう実力主義の学校へ 作:不知火新夜
拠点以外のスポット占有を行っていた六助と、その監視を兼ねた無人島探索をしていた32人が拠点へと帰って来て、清隆達に成果を報告していたのだが、島の中心付近にトウモロコシ畑を見つけたとか、点在する小屋に釣り竿等、ポイントを消費して購入出来る物資があったとか、本当にこの無人島でサバイバルな特別試験をやっているのかと良い意味でツッコミたくなる内容ばかりだった。
無人島でのサバイバル試験と銘打ってはいるものの、何の手入れもされていないガチの無人島でやるのは諸々のリスクが高いという事である程度の整備はされていたのだろう、六助もそれを即座に見抜き、比較的通りやすい道を把握したのもあって占有したスポットは実に10ヶ所にも及んだという。
六助をリーダー役に、Cクラスの拠点を川近くの洞窟に設定してから島の全体像の把握を兼ねたにしても2時間ちょいで其処まで占有出来たという事実にクラスメートの大半は驚きを隠せなかった一方で、その学年どころか全校生徒に範囲を広げてもトップと言って良い身体能力を見抜いていた一部は「出来て当然、これからも今ぐらい働け」と平然とした反応を見せ、そしてリーダー役に推挙した清隆は期待通りと言いたげな笑みを浮かべて満足そうに頷いていた。
この10ヶ所ものスポット占有がどの様な意味を持つか、上記の設定を行ったのが初日であるこの日の12時を少し過ぎてから、その効果は8時間で切れるので更新の為に再び占有作業を行わなければならないのだが次に出発するとなると20時の点呼を行った後、その次は翌朝4時過ぎ、その次は12時過ぎ、その次は20時の点呼後…
という流れでスポットの更新作業を計17回、たった今占有した分を含めると清隆が言った通り18回行う事となり、ポイントもその度に加算、最終的には18×10、180ポイントの加算が見込めると言う事。
Dクラスはそもそも翔という大黒柱が求心力を失った挙句停学となった事で空中分解状態なので論外、Aクラスを率いる康平もBクラスを率いる帆波も堅実的な方針を敷くと清隆は分析、リーダー役が他クラスにバレて指名されるリスクを避ける為にも拠点以外のスポット占有は、余程近所にある物でなければ行わないと踏まえると、スポット占有の分だけで162、低く見積もっても144ポイントものリードを生み出せ、他クラスがよっぽど切り詰めた生活をして、そんな無理を課して尚体調不良によるリタイアが出ないという奇跡が起きない限り2学期開始と同時に清隆達のクラスは念願のA昇格を果たせるという事だ。
そんな清隆の結果予測にクラスメートの半数以上が沸き立ち、お祭り騒ぎになる洞窟内だったものの、その予測には少し注意すれば直ぐ見つけられる程分かりやすい穴がある。
まずは10ヶ所という大量のスポット占有を残り17回も更新し続ける事に対して六助の身体が持つのかという問題、初回の更新は島の探索も兼ねていて2時間ちょいだったのだから道順を覚えた2回目以降は短縮出来そうと考えたくなるがだとしても1時間半は優に超えると考えなければならない、それを1日3回、1日合計で5時間以上にも及ぶハードワーク、殊に17回中12回は日の光が一切無い夜中に行わなければならない過酷な労働だ。
尤もこの点は六助の並外れた身体能力を以てすれば乗り切れるという考えからか、或いはより顕著な穴が存在していた為か問題にならなかった。
最大の懸念点は余りにもアグレッシブに動き過ぎて六助がリーダー役だとバレやすくなる事、折角スポット占有で荒稼ぎしても他クラスから指名されてしまっては台無しどころか更にマイナス50されてしまう。
当然ながらお祭り騒ぎに加わらなかった一部のクラスメートが清隆にその点を指摘したが、清隆は「大丈夫だ、その辺りの対策は考えてある。寧ろ、バレてくれた方が好都合だ」と平然とした様子で返していた為、疑問を抱かれつつもそれ以上追及される事は無かった。
とはいえ出来る事なら他クラスのリーダー情報を得て指名し、より大きな差を付けたい所、という事で他クラスの拠点について報告を聞いた所、Aクラスは海の近くにある洞窟、Bクラスは森の中に設けられた井戸の近くを拠点としていたのだが、
「Dクラスだけど、拠点どころか連中の姿すら見かけなかったぜ。他のグループも姿を見ていないってさ」
「成程、シンプルに割に合わないとして諦めたと考えて良いだろう。唯でさえ最低限の必要物資を買うだけで底をつく程度のポイントしか貰えなかったんだ。龍園がこの試験に参加していて同じ様な事をやり出したらワンチャンリーダー当てを狙う為の罠と疑う所だったが、奴もその取り巻きも殆ど停学中で、その原因となったこの前の事件でDクラスはクラス間競争における致命的なダメージを負った所だ。そうなるのも当然だろう」
Dクラスについては拠点の構築はおろかスポットを占有した形跡も、属する生徒すら見かけなかったそうだ。
その報告を聞いた清隆の言う様に、Dクラスの初期支給ポイントは120、人数分の追加テントやら仮設トイレやらを買ったらあっという間に無くなってしまうレベルで少ないし、その購入に使わず尚且つ体調不良者が出ないとしても得られるcptは120程度、スポットの占有によるボーナスもリーダー役がバレては台無しどころかマイナス50されてしまうと、リスクに対してリターンが余りにも少な過ぎる事、先日の事件によってCクラスからも650余りというデカすぎる差が付いてしまって逆転など望めない為にAクラスでの卒業を諦めた者が続出している事から、この特別試験も早々に放棄する選択をした、否、諦めた者達が勝手に船へ戻って行った為に選択せざるを得なくなったと誰もが判断したのか、それ以後Dクラスの動向など誰も気に留めなくなった。
「さて、残るはAクラスとBクラスの動向だが…閃いた」
「お、何かこの試験で勝利する策でも浮かんだのか?」
「ああ。上手く嵌れば、Aクラスも戦線離脱に追い込める強力な策だ。早速仕掛けたいんだが…」
そうなれば注意すべきはクラス間競争において自分達の上位に位置するAとB、2クラスの動向なのだが、此処で清隆は何か策を思いついたのか不敵な笑みを浮かべてそう呟き、一体どんな策なんだと注目するクラスメート達に、それを説明し始めた。
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翌日のお昼過ぎ、Cクラスの面々はまとめ役である清隆の指示を受けて、其々行動していた。
といっても大半が行っていたのは、前日に発見したというトウモロコシ畑での収穫や、同じく前日に確保した釣竿を用いての魚釣りといった食料の確保、後は焚火に必要な枝集めと、リーダー役としてスポット確保に東奔西走している六助と比べれば其処までキツい物ではない、魚釣りに至っては寧ろ遊び扱いですらあった。
そんな中で、桔梗と輝彦ら4名は大半のクラスメートが作業をしている傍らで、何処かへと一直線に向かっていた。
一行が拠点を出発してから十分程経った辺りで、目的地に到着したのか足を止める、その視線の先には入り口が目隠し代わりの色付きビニール袋で覆われた洞窟と、その入り口前に設置された仮設トイレ2つとシャワー室、そう、桔梗達が拠点を離れていたのは、Aクラスが拠点に設定したとされているスポットの偵察の為である。
このまま拠点の中を確認せんと近づく一行だったものの、其処に勝手な真似はさせんと言わんばかりにAクラスの生徒が立ちはだかり、中を見るぐらいは違反にはならないと輝彦が反論したのを切っ掛けに押し問答に発展していた中、
「頭隠して尻隠さず、だな。後は任せておけ」
その背後にある洞窟の最深部、その水が溜まっている場所から海パン姿の清隆が姿を現した。