超リアルかぐや姫! 作:超作者
という作者の嘆きから生まれた駄文です
誰かこういう作品を書いてください
――今は現代、学び舎の生徒というものありけり。
――同級生に混じりて
――名をば、
……なんてくだらないセルフナレーションを脳内再生してしまうのは、最近鬼リピしまくっているあの映画のせいだろうか。夜空に浮かぶ満月を見上げつつそう考える。
この時代だと、まだあの空の上に
「はいはい、妄想乙っと」
そんな現実逃避気味の妄想を膨らませている自分を馬鹿だなと冷笑しながら、すっかり暗くなってしまった家路を急ぐ。今日はバイトが忙しかったせいで精神的な疲労がエグい。それこそ「超無理限界ギリ」って感じだ。明日からの三連休を休息に当てないと普通に死ぬ。
「ん?あれは……」
ふと上を向くと、光の線が走るのが目に映る。まばらに輝く星々の隙間を駆けるそれは、夜空のレア現象の一つである流れ星だった。
流れ星を見ると、あの作品の冒頭を思い出す。願い事でもしてみるべきだろうか。
「ハッピーエンドを迎えられますように……っと」
わかっている。才能もない、ロクな努力もしない、そんなやつが幸せな未来を掴み取ることなどできないことなんて。俺自身が一番よくわかっている。それでもまあ、天に願うくらいは許されるだろう。
「まあ人生そう上手くいくはずないんだけどな」
まずいな。疲れのせいでネガティブな思考が止まらない。これ以上本格的に自己嫌悪が進む前にとっとと家に帰らねば。
さらに歩き続けること十数分、街灯の明かりすら乏しい道の先に愛しの我が家が見えてきた。まあその実築ウン十年のボロアパートなんだけど。それでも一年以上住んでいれば愛着も湧いてくる。住めば都、とはよく言ったものだ。
さて、そんな見慣れた光景の中に場違い感を存分に発揮している物体があることについてはどう説明をつけようか。
その違和感の正体は電柱であった。しかしそれは電柱と呼ぶにはあまりにも大きすぎた……というわけではない。
じゃあ何が問題なのかというと、それはもうピカッピカに光輝いているのだ。それもカラフルに、正確に表現するならば
「……よし、幻覚だな」
間違いなく幻の類だろう。なんか光り方に見覚えがある気がしないでもないけど、きっと気の所為だろう。うん、そのはずだ。そうであってもらわないと困る。だからさ、
「扉……なんだろう、開いてきてる確実に、着実に、俺の方に」
BGM流しながらじわじわオープンザドアすんのやめてもらってもいいすか?いやマジで。
いつの間にか現れていた竹製の取っ手を咄嗟の判断で押し戻す。これ以上混乱の元を増やしたくないという一心で。
しかし現実は非常である。一般男子高校生の平均よりやや下程度の筋力しか持たない俺の必死の抵抗も虚しく、扉は完全に開ききってしまった。
――そのアパートのそばに、もと七色に光る電柱なむ一筋ありける。
――あやしがりて寄りて見るに、電柱の中光りけり。
――それを見れば……
「……マジ?」
――三寸どころではない赤子、いとうつくしうていたり。
……よし、一旦落ち着こうか。家のそばにゲーミング電柱が立ってた。これはまあいい。電柱にも光りたくなる時くらいあるだろ。
んでもって中から赤ん坊が出てきた。これもよしとしよう。キャベツ畑で生まれる子供がいるんだ。電柱から生まれる赤ちゃんがいても不思議じゃない。
そういやさっき流れ星も見たよな。今思い返せばあれなんかスピード遅かった気もするし、流れた方向でいうと確かこっち方面だったよな。
これでキーワードは揃った。
「ゲーミング電柱」
「赤ちゃん」
「流れ星」
これらから導き出される答えは一つ。
「『超かぐや姫!』でしかねえじゃねえか!」
「超かぐや姫!」とはネトフリ限定配信だったはずが劇場公開にまで規模が拡大したアニメ映画のことだ。
この話は主人公たる酒寄彩葉がある日七色に輝くゲーミング電柱から出てきた謎の赤ん坊を拾うところから始まる。
もう一度言おう、
そして今現在俺の腕の中にはさっきの電柱の中にいた赤ん坊がいる。
おわかりいただけただろうか。
「え!?は!?この子かぐや!?アイエエエ!?かぐや!?かぐやナンデ!?」
それなりの重量といわゆる子供体温的温かさを持つこの子が推しそのものであると気付いてしまった俺はSAN値チェックです。ダイスロール……はい、失敗ですね。では発狂です。
「あぁぅ?」
かぐや(仮)が思考を停止させ呆然と立ち尽くす俺の頬をペチペチと叩く。その刺激とも呼べぬ接触に割れを取り戻した俺は、ガバっと勢いよくかぐや(仮)に視線を合わせた。
「ふぇ!?ふぇぇ……」
するとかぐや(仮)はその表情を崩し目を細め、目尻から水分を発生させる。何が言いたいかって?めっちゃ泣きそうなんだよ!
「うえええええええええ!」
始めて生で聞く赤ん坊の鳴き声からは、様々な感情が伝わってきた。恐怖、怯え、困惑、興奮、訴え、そんな言葉にならない(というか年齢的にできるわけがない)気持ちの渦を浴びた俺の心の内には、これまた始めて母性(父性?)というものが湧いて出てきた。早く泣き止ませてあげたい。一刻も早く安心させてあげたい。しかしどうすべきか。生まれてこの方赤子を相手にした経験などない俺にできることはたった一つしかなかった。
「オラッ!再生!」
即座に片手でスマホを操作、
『大切なメロディは流れてるよ――あなたのハートに――♪』
通常フィクションと現実を同一視することは問題行動とされる。例えば公道をマ○オカート感覚で突っ走るやつがいたらもうそれは迷惑とかの次元じゃない。
だがこの場に限ってはそれが正解だったらしい。この曲「Remember」を聞いたかぐや(仮)は段々と大人しくなっていき、やがてすやすやと眠ってしまった。
お姫様を朝から敷きっぱなしの布団に寝かせ、俺も床に座り込む。今はこの状況を整理しなくてはと理性が訴える一方で、疲労からくる睡魔が人としての本能を襲う。その強大な力に抗うことはできず、俺はゆっくりとまぶたを閉じた。
……痛い。目覚めて最初の感想はそれだった。まあ床の上で毛布も敷かずに寝れば体中バッキバキにもなるだろう。だが今気にするべきはそれじゃない。
「”
よれよれの布団の上には、すやすやと可愛らしく無防備な寝姿を晒す赤子が一人。そうですね、俺が昨日拾ったもといもと光るゲーミング電柱から半ば押し付けられる形で受け取った子ですね。あれ夢じゃなかったんだ。
「……とりあえずベビー用品買いに行くか」
この日俺が学んだことは、思考停止した人間は自分がしていることの意味すらわからず指針となる
「いないいない……ばあ!」
「きゃっきゃっ!」
「ほーらミルクだぞー」
「や!」
「いや今そっちが飲みたいって……まあ嫌ならいいけど」
「あ゛ー……ねむ……」
「ぅええ……」
「あーはいはいほーらどうしたー?たかいたかいがいいのかー?」
「ふひひ!」
この三日間、俺はただ振り回され続ける毎日を送っていた。アニメを見る暇も、ラノベを読む時間の空きも、推しの配信を見る余裕もなく、推定かぐやな赤子の世話に明け暮れる日々。明らかな非日常に戸惑い、あるいは酔いしれ、推定推しを世話できて自己満足していた部分もあったのだろう。そんな俺が我に返ったのは三連休最後の日の夜中、ミルクタイムを終えた赤ん坊が眠ったことを確認した後のことであった。
「……俺、何してんだろ」
謎の赤ん坊を拾ったはいいが、その子をあろうことかフィクションから飛び出てきた少女だと思い込み世話をし休日を溶かし……終いにゃあ勝手に自分だけが満足するために赤子を利用した。実に空虚な人間じゃありゃあせんか?
俺という男は所詮、この時代の敗北者じゃけぇ……!
……とまあ自分で自分を(ネタ混じりに)罵倒してみたわけだが、客観的に見た俺ってそうとうやばいやつじゃね?
ゲーミング電柱の件は無視するとして、拾った赤ちゃんを誰にも届け出ずフィクションのキャラと同一視してお世話し、そうすることで一人で勝手に
明日起きたら警察にこの子について相談しに行こう。そう心に決めて、ひとまず今日のところは眠ることにした。
「ねーねー、彩斗ー。おーきーてー」
「んん……わかったからちょっと待て……」
深夜に起きたが故のぼんやりとした頭に、聞き慣れたアニメ声がよく響く。目は開いていれど夢現の最中にある俺の前に立っている女の子は、俺が寝ぼけていることを悟ったのか耳元でより大きな声を上げた。
「あーやーとー!おーきーろー!」
「起きてるって……ん?」
鼓膜を揺らす声。古いアパート特有の匂い。肩上を揺さぶられる感覚。そして、密着していると言ってもいいレベルの至近距離にいる金髪の少女。頭はすっきりしていて、五感に霧がかかったような感覚もない。つまり、これは夢じゃない……?
「……お前、誰だ?」
「誰ってかぐやだけど。彩斗がお世話してくれてたあの赤ちゃんだよ?」
「そうか」
一瞬の沈黙。その直後、俺は確実に近所迷惑な声量で叫んだ。
「はぁっ!?」
「うおっ!?ビビったぁ……急におっきな声出さないでよ」
「いやおま、お前……!今俺がどれだけの衝撃を受けたかわかってないのか!?どのくらいかって言うとなぁ……!」
ドンッ!(ワンピ並感)
「……今人生初の壁ドンをされたくらいの衝撃だよ」
「ほえー。それで何にそんなに驚いたの?」
「何ってそりゃ……」
いや待て。「そりゃ『超かぐや姫』のメインキャラの一人であるかぐやが何故か現実に現れて俺の目の前にいることについてだよ」とか本人に言っていいのか?駄目だろ絶対。ここは適当に濁すべきだろう。
「……拾った赤ん坊が突然同年代レベルに急成長したからだよ」
「まあ、今時は何もかものスピードが早いんですわ」
そのセリフもすっげえ聞き覚えあるな。てかこいつほんとに俺が知ってる「かぐや」か?だとしたら時系列はいつだ?原作開始前か後か。はたまた原作と全く関係のない野生の月人か。どちらにしろ人外確定演出ではあるな。
「まあいい。それで?明らかにただの人間じゃないお前は何ものなんだよ」
「んー……宇宙人?」
「
「違う違う!もっとなんかこう……大切な人に会いに来た、的な?」
大切な人、ねえ。俺の限りそれに該当する人物は一人だけなんだが。
「その人の情報はなんかないのか?」
「それがなーんか思い出せないんだよねー。おっきなきっかけさえあればズバババーンって思い出せそうなんだけど」
記憶喪失かぐやと同棲する男子高校生概念?NTR程じゃないけど地雷だろそんなもん。
「大体わかった。じゃあちょっと待ってろ」
「どっか行くの?」
「きっかけとやらを買いに行ってくる」
そうと決まれば話は早い。とっととこいつを元の「かぐや」に戻さないといけないし、俺もできる限りのことはするとしよう。
そんな安直な考えで深夜の街にくり出した俺はまだ知らなかった。この先の俺たちに待ち受ける苦難を、試練を、逆境を、何一つ理解していなかったのだ。そう、まさか俺が……
『かぐやっほ〜!かぐやだよ!そして〜……!』
『あ、あやあや……!アーヤです……』
『今日も二人で配信始めるよ〜!』
……いやマジでどういうこと?
プロットは脳内にしかないし書き溜めもあんまりない作品ですが、面白い・続きが見たいと思ってもらえたらお気に入り・高評価・感想をよろしくお願いします
作者のモチベになりますのでどうか頼みます