超リアルかぐや姫!   作:超作者

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※この作品にはいろかぐ前提のオリ主×かぐや要素がありますのでご注意ください(今更)


トップライバー「天羽衣(あもうきぬ)

 

 前回までのあらすじ!ゲーミング電柱の中から出てきた赤ん坊を育てたら、その正体はなんと「超かぐや姫!」のかぐやだった!彩葉のことを含め大半の記憶をなくしていた彼女を元の状態に戻すために必要なきっかけとは何なのか、それを探るため俺は深夜の街のコンビニへと向かった……

 

「ほら、地球の飯だぞ」

 

 そしてダッシュして買ってきたのがこれ、コンビニで売ってたオムライスである。割引シールが貼ってあるため、本来594円のところお値段なんと535円である。

 

「なんでご飯?」

「月にないもん食えば何か思い出すかもしれないだろ?」

 

 というのはもちろんただの建前で、これは原作再現の一環である。きっかけってのは十中八九原作関連の行動だろうからな。例えば初めて大切な人と食べた思い出の味とか。

 

「そっかー……私、彩斗に月から来たって言ったっけ?」

「……ああ。言ってたぜ」

「ならいいや。それよりこれ食べていいの?」

「ああ、しっかり食え。おかわりはないけどな」

「いっただっきまーす!」

 

 左手にスプーンを持ちオムライスを食べるかぐや。彼女はもぐもぐと口を動かした後、頭に電流が走ったように何かを思い出した顔をして……そのまま首を傾げた。

 

「おいなんだその顔」

「いやー、なんか思い出せそうだったんだけど駄目だった」

 

 もうちょい刺激がほしいなー、とか言いつつオムライスをバクバクかっ食らうかぐやの健啖っぷりを眺めつつ、俺はこの状況の打開すべく思考を回す。ぶっちゃけこの時点で全てを思い出して元の世界に帰ってくれるのが理想だった。何故ならこれで駄目なら次は彼女を外に連れ出す必要性が発生するからだ。この現実世界に現代のかぐや姫たる「かぐや」が現れる。そんな事象が起こることによる影響は計り知れない。彼女はただでさえ月から来た宇宙人という秘密を抱えているのだ。そこに二次元の世界から飛び出してきた、なんて属性まで加わってしまったら……本当に何が起きるか想像もつかない。いやマジでどうすりゃいいんだよこんなの!

 

「彩斗?だいじょぶそ?なんかすっごい顔してるけど」

「……ああ。大丈夫だ」

 

 ふぅ……落ち着け。ステイクールだ。かぐやもいるこの場で焦りを見せるのは禁物。ここは一度落ち着いて見逃した推しの配信のアーカイブでも見るとしよう。

 

『ろもろも〜!そんじゃ今日も今日とて雑談配信始めるっすよ〜!』

 

 この界隈特有の独特な挨拶から配信を始めたのは、ポニーテールにまとめた光沢感のある綺麗なブロンズヘアーにちらりと覗く八重歯、その背に羽織ったふわりと浮かぶ羽衣がチャームポイントのアバターを繰る少女。

 彼女こそが大手VTuber事務所「アマノイワド」所属のトップライバー、天羽衣(あもうきぬ)。雑食性オタクを自称し数多の作品を堪能してきた俺の最推したる存在である。ちなみに推している理由はキャラ性がどストライクだったからだ。

 

『おっと、外界のみんな!今日も供物(スパチャ)サンキューっす!いやーこれでなんとか今週も食いつなげそうっすね……』

 

 「〜っす」というよくある独特の口調と、定番となった常に金欠であることを仄めかすセリフに、なんとなく浮足立っていた気持ちが少しだけ落ち着いてくる。なんというかいつもの日常に帰ってきた、みたいな?

 

「ねえねえ!何見てんの?」

「ぅおっ!?」

 

 そんな風に配信に夢中になっていた俺の背後から、いつの間に回り込んでいたのかかぐやが顔を覗かせてきた。美少女フェイスがここまで近いと心臓に悪い。

 

「誰これ?」

「天羽衣って名前のVTuberだよ。どんなやつかって言うと……天界から舞い降りた金欠美少女的な?」

「なにそれー。天使みたいな人ってこと?でも金欠なのはオモロ」

 

 まあ正確に言えばもっと設定は細かいし、基本的に彼女はそれを遵守しているタイプのライバーなのだが、それをわざわざ付け加える必要もない。推し語りは適切な距離間と節度を保って行うべきなのである。

 

『あ、そうそう、言い忘れるところだったっす。お上の方から……と言ってもガチの天界からじゃないっすよ?ふつーにウチの会社からの業務連絡っす』

「なんだろうね」

「あー、多分あれだろ」

 

 興味を持ったらしいかぐやと一緒にアーカイブを見ていると、衣がそんなことを言い出した。その言葉にそういえばそろそろそんな時期かと思い出す。彼女がわざわざ告知をするような業務連絡と言えば一つだけだ。

 

『えー、おほん。ウチの事務所……「アマノイワド」がまた私の後輩、つまり新入りのVTuberを募集することになったっす。まあ細かい期間とか募集条件とかの詳細はホームページでも見てもらうとして、新入りが来るってことで()()()()()()を始めるっすよ……!』

 

【あーあれかー】

【また血で血を洗う戦いが見られるのか】

【今回は誰が勝つのかね】

 

「ちょっ、彩斗!?あれってなに!?殺し合いでも始めるの?デスゲーム?」

「そんなんじゃないってこれはただ……」

 

 コメ欄を見て慌てるかぐやに説明をしようとした段階でふと気付く。この(展開)、前にも読んだな……(dnrd並感)具体的には映画のノベライズ本の中で。

 

『そう!業界最高峰のトップライバーたるこの私と一緒にコラボライブができる絶好のチャンスたる「チャンネル登録者チキチキレース」を始めるっすよー!』

 

 そう、これは毎回「アマノイワド」が新しいVTuberを募集する時に行うビッグイベント。一定の期間の中で新人ライバーがどれだけのチャンネル登録者を確保することができるのかの人気取りバトルである。そしてこの戦いのご褒美兼各々の能力を従前に発揮してもらうための餌として、天羽衣とのコラボライブを行う権利が用意されている。つまりこれがどういうことかと言うと、この戦いは()()()()()()()()()()()()()()()の再現なのである。まあこの仕組みが被ったのは偶然だろうが。

 そしてこんな原作に酷似した内容にかぐやが興味を示さないわけがなく……

 

「なにそれおもしろそー!私もこんな感じのぶいちゅーばー?になれるってことでしょ?そんなの絶対楽しいじゃん!」

 

 案の定この反応である。配信者というものは、記憶をなくしてもなお彼女の好奇心をくすぐるものだったらしい。

 

「ねえ彩斗!一緒にこれ応募してみようよ!」

「まあそういう反応になるよな……ん?俺も一緒に?」

 

 なんか聞き捨てならないセリフが聞こえたんだが。

 

「そうそう!二人で一緒にやってみない?彩斗の言う推し?に会えるチャンスだよ!」

「いや俺はやらんぞ。というかお前もできないぞ」

「え?なんで?」

「戸籍とかどうする気だよ、宇宙人」

「……なんとかする!」

 

 本当になんとかできそうなのが恐ろしい。具体的にはハッキングとかの方向性で。

 

「まあ仮にその辺の問題をどうにかできたとしよう。でもそもそもお前目立っていいのか?月から来たってバレたら最悪解剖コースだぞ?」

「むぅー」

 

 頬を膨らませて不満を表現するかぐや。そういう顔も可愛い……じゃなくて。

 

「後記憶喪失の件はどうすんだよ。会いたい大事な人がいるんじゃないのか?」

「それはそうだけどさー……ねえ、ちょっと私のお話してもいい?」

 

 すっとその面持ちを真剣なものへと変え俺に向き直るかぐやの様子に、俺も態度を改める。

 

「いいぞ。なんだ?」

「今の私はよく覚えてないんだけど、誰かと一緒に見たすっごく綺麗な景色があったんだ。みんなが私たちを見てくれて、私()()もその空気感を思いっきり楽しんでさ。その前後のことはよく覚えてないけど、きっとそれが私の思い出したかった大切な記憶なの。だから……もう一回同じ景色を見てみたい」

 

 軽い気持ちで決めたわけではないと宣言するように、彼女は静かに言った。その景色をもう一度見るために、大事な記憶を取り戻すために、その世界に飛び込んでみたいのだと。

 そんな決意の込もった表明を聞いた俺は彼女(「かぐや」)の一ファンとして、また一時的にとはいえ彼女の親代わりのようなことをしていた身として、こう答えるしかなかった。

 

「……わかった。そこまで言うなら止めはしない。まあ諸々の問題だの障害だのはあるだろうが、やるだけやってみるってのも何かしらのきっかけになるだろうしな」

「ほんと!?ありがとー!」

 

 パッと花が咲くような笑顔を浮かべたかぐやが、俺に飛びつくように抱きついてくる。しかしそうなると彼女の柔らかい女体とガッツリ接触してしまうわけで……

 

「っ!?ちょっ、かぐや!?」

「ん?どしたの?」

「ちょぉっと一回男との距離間について話そうか」

 

 この後めちゃくちゃお説教した。

 

 

 

 そして迎えた新しい朝。軽く仮眠を取ったもののまだ眠い頭をスマホのアラームでどうにか叩き起こし、眠気眼を擦って朝の支度をしようとした俺の鼻腔を優しい香りがくすぐった。

 

「ぅん……?」

「あ、おはよ!彩斗!もうそろそろ朝ごはんできるからちょっとまってね」

 

 朝ごはん……?そういえばこの匂いって味噌汁の……

 ぼんやりと思考がまとまらない俺を余所に、かぐやが手早く大して使われることのなかった厨房で慌ただしく動く。

 

「はいっ!かぐや特製朝ごはん完成!食べてみて?」

「い、いただきます」

 

 注がれた味噌汁に皿に並べられた卵焼き、それと茶碗によそわれたご飯を噛みしめるように口にする。これには思わず「旨いじゃないのよ……」が飛び出しそうになる。高級食材なんて使われてない普通の朝ごはんのはずなのに、妙に温かい感じがする。

 

「どうどう〜?」

「……おいしいよ。ありがとな、かぐや」

「まあ彩斗は私の相方ですから!不健康な生活なんてさせないからね!」

「まあ俺が不健康な生活を送ってたことは認めるが……ん?ちょっと待て()()?」

 

 すごーく不穏な単語が聞こえた気がして卵焼きを頬張る手が止まる。

 

「俺は別に一緒に配信をすることまで了承したわけじゃないぞ?」

「ええ!?いーじゃん一緒にやろうよー!絶対楽しいって!」

「無理だって。経験も適性もないしな」

 

 画面越しとはいえ大勢を楽しませるトークとかできる気がしねえ。後かぐやと一緒に配信とか「超かぐや姫!」ガチ勢に刺されそうでなんか嫌だ。そういう二次創作を見るのはともかくリアルで俺自身がやるのは解釈違いです。

 

「じゃあ俺はそろそろ学校行くから。一応言っとくが、大人しくしとけよ?昼は家にあるもん使っていいから」

「ええ!?相方の話はどうなんの!?」

「『俺はやらない』でファイナルアンサーだ。それじゃあ行ってくる」

「ぶー……。あ、そうだ。いってらっしゃい、彩斗」

「……いってきます」

 

 見た目同年代の少女に向かって言うには少し気恥ずかしい挨拶をして、毎日開いているはずのドアに手をかける。その先に広がる光景は、いつものものとは少し変わっている気がした。それはきっとただの錯覚で、それでも俺の気持ちが高揚しているのは事実で、普段は憂鬱なはずの”明日”が少し楽しみになった。

 

 ……まあ、明日と言わずこの後すぐに俺を振り回すトラブルは起きたんだがな。

 

 

 

 

 

 

「んーっと、応募に必要な戸籍は『かぐや』で……あ、そっか。苗字がいるのか。それじゃまあとりあえず『酒巻』にして、そしたら応募書類を私と彩斗の分用意して……いよっし!準備完了!そうしたら次は〜、行っちゃいますか、学校!」

 

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