戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
翌日。
海斗は弦十郎と共に、特異災害対策機動二課の研究施設へ向かっていた。
外から見れば、ただの研究施設。
しかし。
一歩中へ入った瞬間、空気が変わる。
無数のモニター。
特殊な隔壁。
見たこともない機械。
ここが、ノイズと戦う者たちの拠点なのだと実感する。
「驚いたか?」
隣を歩く弦十郎が尋ねる。
「はい。」
海斗は正直に答える。
「前世……いや。」
言いかけて止める。
危ない。
余計なことを言うところだった。
「今まで普通の生活しかしていなかったので。」
弦十郎は笑う。
「それが普通だ。」
「本来なら、君のような少年が関わる場所ではない。」
その言葉に、海斗は少し黙った。
「でも。」
「俺は関わります。」
「守りたいものがあるから。」
弦十郎は静かに頷いた。
◇
施設内を一通り案内される。
訓練区画。
医療区画。
データ解析室。
そして。
「ここが研究部門だ。」
弦十郎が扉を開ける。
そこには大量の資料と、巨大な分析装置が並んでいた。
「ここで聖遺物やノイズについて解析している。」
「そして。」
弦十郎が声をかける。
「彼女が担当者だ。」
振り返った女性。
白衣。
穏やかな笑顔。
しかし。
その瞳には強い知性が宿っていた。
「初めまして。櫻井了子よ♪」
「佐々木海斗です。」
海斗も頭を下げる。
了子はすぐに海斗の胸元へ視線を向けた。
「それが……アロンダイトの欠片ね。」
「はい。」
「興味深いわ。」
了子は近付く。
「少し検査をさせてもらってもいいかしら?」
「もちろんです。」
◇
検査が始まる。
特殊な機械で欠片を解析する。
しかし。
しばらくして。
了子の表情が変わった。
「……面白い。」
「何か分かりましたか?」
海斗が尋ねる。
了子はデータを確認しながら答える。
「この聖遺物。」
「普通の聖遺物とは少し違うわね。」
「違う?」
「ええ。」
「通常、聖遺物はエネルギー源として存在する。」
「でも、これは……。」
了子は海斗を見る。
「まるで意思を持っているように反応している。」
海斗は少し固まる。
「……分かるんですか?」
「ええ。」
了子は微笑む。
「あなた。」
「アロンダイトと会話しているでしょう?」
海斗の心臓が跳ねる。
「……。」
「驚かないのね。」
「いや……。」
海斗は言葉を選ぶ。
「普通は信じないと思ったので。」
了子は興味深そうに笑う。
「確かに。」
「聖遺物と意思疎通をしているなんて、普通なら考えない。」
「でも。」
了子は欠片を見る。
「この反応なら納得できる。」
「この子は……他の聖遺物とは違う。」
その言葉に、海斗は胸元を見る。
『彼女は鋭いな。』
アロンダイトの声が響く。
「……。」
『警戒する必要はない。』
『ただ、観察されている。』
海斗は小さく頷く。
◇
検査の後。
「実は。」
了子が言った。
「君のアロンダイトには、本体が存在するの。」
海斗は目を見開く。
「本体?」
「ええ。」
「あなたが持っているのは、あくまで一部。」
「本来の形が別に保存されている。」
案内された先。
そこには巨大なガラスケースがあった。
内部。
静かに眠る一本の剣。
いや。
剣だけではない。
盾。
鎧。
それらが一体となった、守護騎士の姿。
「これが……。」
海斗は息を呑む。
「アロンダイト。」
長い年月を越えて眠っていた聖遺物。
その姿を、初めて見る。
その瞬間。
胸元の欠片が強く輝いた。
「……!?」
海斗が手を押さえる。
『……。』
アロンダイトが震える。
「アロンダイト?」
『我が本体。』
『長き時を経て、再び対面するか。』
光が強くなる。
ガラスケースの中。
アロンダイト本体が淡い光に包まれる。
研究員たちが慌てる。
「エネルギー反応上昇!」
「何が起きている!?」
しかし。
止められない。
本体は光の粒子となり。
ゆっくりと。
海斗の持つ欠片へ吸い込まれていく。
「……。」
誰も声を出せない。
そして。
全ての光が消えた。
海斗の手の中に残ったもの。
それは。
縦横わずか3センチほどの、小さな石。
盾の形をした結晶だった。
「……これが?」
了子が呟く。
海斗は手の中の石を見る。
すると。
アロンダイトの声が響いた。
『完全ではない。』
『だが、これで本来の力へ近付いた。』
海斗は静かに握り締める。
「また一緒に戦えるのか。」
『無論。』
『汝が守ることを望む限り。』
白銀の光が、ほんの一瞬だけ輝いた。
了子はその光景を見つめながら、小さく呟く。
「……やっぱり。」
「これは、ただの聖遺物じゃない。」
「意思を持つ聖遺物……ね……。」
研究所に新たな謎が生まれる。
そして。
海斗とアロンダイトの絆は、新たな段階へ進もうとしていた。