戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第十一話 扉の向こうにいるのは―

 

 

ライブ会場での事件から数日後。

 

海斗は病院の廊下を歩いていた。

 

手には、小さな紙袋。

 

中身は簡単な見舞いの品。

 

「……。」

 

足を止める。

 

目の前の病室。

 

その扉の向こうにいるのは――。

 

立花響。

 

あの日。

 

胸にガングニールの欠片を受けた少女。

 

本来なら、彼女の人生はここから大きく狂い始める。

 

しかし。

 

今回は違う。

 

海斗は静かに扉を開けた。

 

「響。」

 

「あ!」

 

明るい声が返ってくる。

 

ベッドの上。

 

包帯は残っているものの、そこにはいつもの笑顔を浮かべる少女がいた。

 

「かいと!」

 

響は嬉しそうに手を振る。

 

「来てくれたんだ!」

 

「当たり前だろ。」

 

海斗は苦笑しながら椅子へ座る。

 

「怪我人なんだから、ちゃんと安静にしてろよ。」

 

「えへへ。」

 

響は笑う。

 

「でもさ。」

 

「私、思ったより元気なんだよね。」

 

「先生もびっくりしてた。」

 

海斗は少し安心する。

 

原作では。

 

この後、響は周囲から奇異の目で見られる。

 

ライブ事件の唯一の生存者。

 

その事実が、彼女を苦しめる。

 

だが。

 

今回は違う。

 

奏は生きている。

 

多くの負傷者は出たものの、世間から響を責める声はない。

 

「……よかった。」

 

海斗は小さく呟く。

 

「何が?」

 

響が首を傾げる。

 

「いや。」

 

海斗は笑った。

 

「なんでもない。」

 

 

「響ちゃん。」

 

その時。

 

病室の扉が開く。

 

「あ。」

 

響の表情が明るくなる。

 

「未来!」

 

入ってきた少女。

 

小日向未来。

 

黒髪。優しい笑顔。

 

—そして。

 

海斗を見る。

 

一瞬だけ。

 

ほんの一瞬だけ。

 

表情が変わった。

 

「……海斗君も来てたんだ。」

 

「うん。」

 

海斗は頷く。

 

「響のお見舞い。」

 

未来は笑う。

 

「そっか。」

 

優しい声。

 

しかし。

 

海斗には分かった。

 

(……怒ってる?)

 

いや。

 

怒っているというより。

 

少し寂しそうだった。

 

 

「そういえば。」

 

未来は海斗を見る。

 

「海斗君も怪我してるよね?」

 

「え?」

 

「響とライブに一緒に行ったの?」

 

海斗の動きが止まる。

 

しまった。

 

忘れていた。

 

自分も負傷者として搬送されている。

 

「えっと……。」

 

「どうしたの?」

 

響も心配そうに見る。

 

海斗は必死に考える。

 

まさか。

 

「ノイズと戦ってました。てへぺろ♪」

 

なんて言えるわけがない。

 

アロンダイトの存在も。

 

S.O.N.G.との関係も。

 

まだ秘密だ。

 

「……階段。」

 

「え?」

 

「階段から転んだ。」

 

沈黙。

 

未来が目を細める。

 

「は?階段?」

 

「ああ。」

 

「ちょっと派手に転んで。」

 

「……。」

 

未来は海斗を見る。

 

信じていない顔。

 

しかし。

 

「海斗君らしいね。」

 

そう言って笑った。

 

「でも、無理しちゃ駄目だよ。」

 

「心配する人もいるんだから。」

 

その言葉に。

 

響が反応する。

 

「そうだよ!」

 

「かいとはすぐ無茶するから!」

 

「いや、響に言われたくない。」

 

「えー!」

 

二人が笑い合う。

 

その様子を見て。

 

未来は少しだけ頬を膨らませた。

 

(……。)

 

(また。)

 

(響ちゃんの隣にいる。)

 

幼い頃から。

 

響はいつもそうだった。

 

明るくて。

 

真っ直ぐで。

 

誰とでも仲良くなる。

 

でも。

 

海斗だけは。

 

少し特別に見えた。

 

「……。」

 

未来は小さく息を吐く。

 

「私も……。」

 

小さな声。

 

「もっと響ちゃんと話したいのにな。」

 

 

その日の帰り道。

 

海斗は三人で歩く時間を少しだけ楽しんでいた。

 

響。

 

未来。

 

そして自分。

 

普通の日常。

 

前世の記憶で知っていた未来とは違う。

 

奏は生きている。

 

響は笑っている。

 

少しずつ。

 

確実に。

 

未来は変わっている。

 

しかし。

 

海斗は知らない。

 

二年後。

 

彼の知る物語が。

 

再び動き始めることを。

 

 

――二年後。

 

春。

 

高校1年生になった海斗。

 

そして。

 

高校生になった立花響。

 

世界は一見、平和だった。

 

海斗は以前と変わらない日常を送っていた。

 

だが。

 

その裏側では。

 

再びノイズが現れ始めていた。

 

そして。

 

一人の少女が。

 

歌と共に戦場へ立つ。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

ガングニール。

 

その名を持つ力が。

 

ついに目覚める。

 

立花響の運命が。

 

ここから始まる。

 

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