戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第十二話 再び動き出す運命

 

 

春。

 

ライブ会場襲撃事件から二年。

 

満開の桜が街を彩り、新しい季節の訪れを告げていた。

 

佐々木海斗は、この春からイオニアン学園高等部へ進学した。

 

一方、立花響と小日向未来は、私立リディアン音楽院高等科へ入学した。

 

それぞれ違う学校。

 

それでも、幼馴染としての関係は変わらない。

 

「それじゃあ、また帰りにな!」

 

朝、駅前で海斗は二人に手を振る。

 

「うん!」

 

「海斗も高校生活、頑張ってね!」

 

「お互いにな。」

 

響と未来がリディアンへ向かう姿を見送り、海斗もイオニアン学園へ向かった。

 

平和な朝。

 

どこにでもある高校生活の始まり。

 

海斗は、この日が"運命の日"であることを知っていた。

 

だからこそ、何事もなく終わることを願っていた。

 

 

放課後。

 

教室で帰り支度をしていると、胸元の盾型の石が微かに震えた。

 

『契約者。』

 

アロンダイトの落ち着いた声が響く。

 

「どうした?」

 

『空気が乱れている。』

 

海斗は窓の外を見る。

 

街並みに変化はない。

 

だが、胸騒ぎだけが大きくなっていく。

 

『嫌な予感がする。』

 

その直後。

 

スマートフォンが震えた。

 

画面に表示された名前は――

 

**”風鳴弦十郎”**

 

海斗はすぐに電話へ出る。

 

「司令!」

 

『海斗君、緊急事態だ。』

 

弦十郎の声はいつになく険しかった。

 

『ノイズが出現した。』

 

海斗の表情が変わる。

 

「場所は!」

 

『リディアン音楽院付近だ!』

 

その一言で、全身から血の気が引いた。

 

「すぐ向かいます!」

 

電話を切ると同時に、海斗は教室を飛び出した。

 

『契約者。』

 

「分かってる!」

 

『焦りは判断を鈍らせる。』

 

「無理だろ!響がいるんだぞ!?」

 

階段を駆け下り、校門を飛び出す。

 

胸元のアロンダイトが淡く光る。

 

『聖遺物の波動を感じる。急げ。』

 

『運命は、今まさに動き始めている。』

 

 

その頃。

 

リディアン音楽院では入学式を終えた新入生たちが帰路についていた。

 

「高校生になっちゃったね!」

 

響が笑う。

 

「うん。」

 

未来も優しく微笑む。

 

「これからも一緒だね。」

 

「もちろん!」

 

そんな何気ない会話。

 

その日常は、一瞬で壊された。

 

ズォォォォン……

 

空間が歪む。

 

「え……?」

 

生徒たちが立ち止まる。

 

次の瞬間。

 

異形――ノイズが出現した。

 

「きゃあああっ!」

 

悲鳴が街へ響く。

 

教師たちが必死に避難誘導を始める。

 

「落ち着いて!」

 

「すぐに避難してください!」

 

人々は我先にと逃げ惑う。

 

響は咄嗟に未来の手を握った。

 

「未来!」

 

「こっち!」

 

「う、うん!」

 

二人は走り出す。

 

しかし。

 

逃げ道を塞ぐように、一体のノイズが降り立った。

 

「……!」

 

未来が息を呑む。

 

ノイズはゆっくりと腕を振り上げた。

 

響は迷わず未来の前へ立つ。

 

「未来逃げて!」

 

「でも!」

 

「早く!」

 

ノイズの腕が振り下ろされる。

 

――間に合わない。

 

ガキィィィィン!!

 

金属同士が激突する轟音。

 

白銀の盾がノイズの一撃を受け止めていた。

 

「……え?」

 

響と未来が目を見開く。

 

純白と銀の装甲。

 

右手には長剣。

 

左腕には巨大な盾。

 

その背中は見慣れている。

 

「海斗……?」

 

「悪い。」

 

海斗は振り返らずに言った。

 

「少し遅くなった。」

 

「話は後だ。」

 

白銀の剣を構える。

 

「ここは俺が時間を稼ぐ!」

 

アロンダイトが静かに輝く。

 

白銀の装甲がさらに光を放つ。

 

海斗は未来へ叫んだ。

 

「未来さん!」

 

「響を連れて逃げてください!」

 

未来は混乱したまま首を振る。

 

「で、でも!」

 

その時。

 

新たなノイズが二体、二人の間へ降り立った。

 

「っ!」

 

響は未来の肩を強く押した。

 

「未来!」

 

「お願いだから行って!」

 

「響ちゃん!」

 

「私は大丈夫!」

 

「海斗がいるから!」

 

海斗も叫ぶ。

 

「未来さん!」

 

「響なら俺が守ります!」

 

「だから早く!」

 

未来は涙を浮かべる。

 

「……絶対だから!」

 

「二人とも、絶対無事でいて!」

 

教師に手を引かれ、未来は避難集団の中へ駆け出した。

 

何度も振り返りながら。

 

やがて建物の陰へ姿を消す。

 

海斗は小さく息を吐いた。

 

その瞬間だった。

 

響の胸元が淡く輝き始める。

 

「え……?」

 

黄金色の光。

 

二年前。

 

ライブ会場で胸へ埋め込まれたガングニールの欠片が、静かに共鳴を始めていた。

 

歌が聞こえる。

 

響だけに。

 

そして海斗だけに。

 

海斗は戦いながら、その光景を見つめる。

 

二年前から始まっていた運命。

 

ついに、その歯車が動き出す。

 

黄金の光が響を包み込む。

 

その神々しい輝きを見届けたのは。

 

この場に残った海斗だけだった。

 

そして。

 

立花響は静かに口を開く。

 

「――Balwisyall Nescell Gungnir tron」

 

少女の歌が、戦場へ響き渡る。

 

ガングニール。

 

人類を守るための槍は、今、新たな奏者を迎えようとしていた。

 

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