戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第十三話 守る者と、守られる者

 

 

「――Balwisyall Nescell Gungnir tron」

 

少女の歌声が戦場に響き渡る。

 

響の胸元から溢れ出した眩い光が、その身体を優しく包み込んだ。

 

「きゃあっ……!」

 

思わず目を閉じる。

 

身体の奥が熱い。

 

胸に埋め込まれた何かが鼓動と共鳴し、全身へ力が駆け巡っていく。

 

「な、なに……これ……?」

 

制服が光の粒子となってほどけていく。

 

眩い閃光が収まると、そこに立っていたのは、見たこともない姿の自分だった。

 

**鮮やかなオレンジを基調とした装甲。**

 

**白と黒(ダークグレー)のインナー。**

 

両腕には拳を覆うようなガントレットが装着されている。

 

脚部にもオレンジの装甲が展開され、その姿はまさに戦うための鎧だった。

 

「え……?」

 

響は震える両手を見つめる。

 

「私……どうなっちゃったの?」

 

身体の奥から、知らない知識が流れ込んでくる。

 

歌。

 

戦い方。

 

身体の動かし方。

 

何も教わっていないはずなのに、すべてを知っているような感覚。

 

けれど、心は追いつかない。

 

「響!」

 

海斗の声が響いた。

 

響が顔を上げる。

 

白銀の装甲を纏った海斗が、アロンダイトを構えながらノイズと対峙していた。

 

「海斗……!」

 

「落ち着け!」

 

海斗は盾でノイズの一撃を受け止めながら叫ぶ。

 

「俺がいる!」

 

その一言だけで、不思議と胸の震えが少しだけ収まる。

 

幼い頃からそうだった。

 

転んだ時。

 

泣いた時。

 

怖い思いをした時。

 

海斗はいつも自分の前に立ってくれた。

 

「でも……!」

 

響の瞳には涙が浮かぶ。

 

「私……何が起きてるの?」

 

「こんなの……知らない!」

 

海斗はノイズを斬り払いながら叫ぶ。

 

「今は考えるな!」

 

「まずは生き残ることだけ考えろ!」

 

その瞬間。

 

四方からノイズが襲い掛かる。

 

「来る!」

 

ガギィィィン!!

 

白銀の盾が衝撃を受け止める。

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

次々と攻撃が降り注ぐ。

 

「くっ……!」

 

『契約者。』

 

アロンダイトが冷静に告げる。

 

『敵影、十二。』

 

『防御を優先せよ。』

 

「分かってる!」

 

海斗は盾を巧みに操りながら響の前へ立ち続ける。

 

剣は最小限。

 

徹底して守る戦い。

 

それが守護の剣、アロンダイトの戦い方だった。

 

「響!」

 

「俺の後ろから離れるな!」

 

「う、うん……!」

 

響は動けない。

 

身体は力に満ちている。

 

それなのに、心が拒絶していた。

 

(怖い……。)

 

(この力……怖い。)

 

その時。

 

一体のノイズが海斗の死角から飛び掛かった。

 

「海斗!」

 

響が叫ぶ。

 

海斗も気付く。

 

だが、正面のノイズを防いでいるため盾が間に合わない。

 

「しまっ――」

 

次の瞬間。

 

響の身体が勝手に動いた。

 

「え……?」

 

考えるより先に地面を蹴る。

 

拳が自然と振り抜かれる。

 

ドォォォォォン!!

 

オレンジ色の装甲に包まれた拳が、ノイズを一撃で吹き飛ばした。

 

「……え?」

 

響自身が一番驚いていた。

 

「私が……?」

 

ノイズを倒した。

 

何も分からないまま。

 

海斗は安堵したように笑う。

 

「ナイスだ、響。」

 

「違う!」

 

響は慌てて首を振る。

 

「私じゃない!」

 

「身体が勝手に動いたの!」

 

「それでもいい!」

 

海斗は再び迫るノイズを迎え撃ちながら叫ぶ。

 

「怖いなら怖いままでいい!」

 

「分からないなら分からないままでいい!」

 

「でも!」

 

「その力は、お前を傷つけるためのものじゃない!」

 

「誰かを守るための力だ!」

 

その言葉に。

 

響は自分の拳を見る。

 

オレンジ色のガントレット。

 

不思議と。

 

その拳は温かかった。

 

(守るため……。)

 

その時だった。

 

再びノイズが海斗へ襲い掛かる。

 

「海斗!」

 

響は迷わず駆け出した。

 

「やあぁぁぁぁっ!!」

 

拳が閃く。

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

次々とノイズが吹き飛んでいく。

 

響自身も驚いていた。

 

怖い。

 

それでも。

 

海斗を守りたい。

 

その気持ちだけで身体が動いていた。

 

「はぁ……。」

 

「はぁ……。」

 

戦いが一瞬だけ途切れる。

 

響は息を切らしながら海斗を見る。

 

「私……。」

 

「戦ってる……。」

 

海斗は静かに頷いた。

 

「ああ。」

 

「でも無理はするな。」

 

「俺がお前を守る。」

 

その言葉に。

 

響は少しだけ笑った。

 

「……うん。」

 

幼い頃から変わらない。

 

海斗は、また自分を守ってくれた。

 

しかし今は違う。

 

自分にも、誰かを守れる力がある。

 

その時。

 

鋭い斬撃が空を切り裂いた。

 

キィィィン――!!

 

迫っていたノイズが一刀のもとに両断される。

 

「そこまでだ。」

 

凛とした女性の声。

 

青いシンフォギアを纏った一人の少女が、高台から静かに降り立った。

 

「翼さん……。」

 

海斗が小さく呟く。

 

ライブ事件以来、二年ぶりの再会だった。

 

翼は周囲のノイズを見渡し、そしてオレンジのシンフォギアを纏う響へ視線を向ける。

 

「……ガングニール。」

 

続いて、その隣に立つ白銀の騎士を見る。

 

「海斗君も来ていたのか。」

 

「司令から要請を受けました。」

 

海斗は短く答える。

 

翼は静かに頷いた。

 

「話は後だ。」

 

剣を構える。

 

「まずはこの場のノイズを殲滅する。」

 

白銀の守護騎士。

 

天を翔ける剣姫。

 

そして、目覚めたばかりのガングニール。

 

三人が並び立った時、新たな戦いの幕が静かに上がろうとしていた。

 

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