戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第二話 守るために、知るべきこと

 

 

佐々木海斗は、未来を知ってしまった。

 

それは、決して幸運なことではなかった。

 

むしろ――呪いに近い。

 

朝起きれば思い出す。

 

テレビをつければ不安になる。

 

街を歩けば、いつノイズが現れるのかと考えてしまう。

 

「……最悪だな。」

 

布団の中で、海斗は小さく呟いた。

 

前世の記憶。

 

『戦姫絶唱シンフォギア』という物語。

 

そこに登場する少女たちの運命。

 

海斗は知っている。

 

この世界が、ただの平和な日常では終わらないことを。

 

やがて現れるノイズ。

 

ツヴァイウィングの悲劇。

 

そして――立花響が背負うことになる過酷な戦い。

 

「……でも。」

 

海斗は拳を握る。

 

「まだ、何も起きていない。」

 

そう。

 

未来はまだ確定していない。

 

響はまだ、普通の女の子だ。

 

毎日笑って。

 

転んで。

 

遊びに誘ってくる。

 

なら。

 

今できることをするしかない。

 

◇

 

「かいとー!」

 

玄関の外から、聞き慣れた声が響く。

 

海斗が扉を開けると、そこにはいつもの笑顔。

 

「おはよう!」

 

「おはよう、響。」

 

「今日は公園行こう!」

 

「昨日も行ったよね?」

 

「楽しいから!」

 

即答だった。

 

海斗は思わず笑ってしまう。

 

本当に変わらない。

 

未来で世界を救う少女も。

 

今はただ、遊びが大好きな五歳の女の子だった。

 

「ほら、早く!」

 

響に手を引かれる。

 

その小さな手を見ながら、海斗は思う。

 

(絶対に、この手を離さない。)

 

◇

 

公園。

 

響はいつものように走り回っていた。

 

「かいと! 見て!」

 

「何?」

 

「大きな葉っぱ!」

 

「……うん。」

 

「すごいでしょ!」

 

「すごいね。」

 

「もっと驚いて!」

 

「えぇ……。」

 

そんな何気ない会話。

 

前世の記憶を取り戻す前なら、ただ楽しいだけだった。

 

しかし今は違う。

 

海斗には、この時間がどれほど貴重なのか分かってしまう。

 

未来では。

 

響は何度も泣く。

 

何度も傷つく。

 

それでも立ち上がる。

 

だから。

 

せめて今だけは。

 

この笑顔を守りたい。

 

「ねえ、かいと。」

 

「ん?」

 

響が不思議そうに顔を覗き込む。

 

「最近、ちょっと変。」

 

海斗の心臓が跳ねる。

 

「変?」

 

「うん。」

 

響は首を傾げる。

 

「前より、遠くを見る顔してる。」

 

五歳児とは思えない言葉だった。

 

海斗は少し驚く。

 

やっぱり。

 

響は昔から、人の心を見るのが上手い。

 

「……ちょっと考え事してただけ。」

 

「悩み?」

 

「まあ、そんな感じ。」

 

すると響は真剣な顔になった。

 

「じゃあ、私にも言って。」

 

「え?」

 

「一人で悩むの、よくないよ。」

 

その言葉に、海斗は何も返せなかった。

 

未来で。

 

響が多くの人を救った理由。

 

それは、きっとこういうところなのだろう。

 

誰かの痛みに気づける。

 

誰かの孤独を放っておけない。

 

そんな優しさ。

 

「ありがとう。」

 

海斗は笑った。

 

「でも、大丈夫。」

 

「ほんと?」

 

「うん。」

 

そして心の中で続ける。

 

(響がいるから、大丈夫なんだ。)

 

◇

 

その夜。

 

海斗は自分の部屋で机に向かっていた。

 

ノートを開く。

 

そこには大量のメモ。

 

ノイズ。

 

聖遺物。

 

シンフォギア。

 

装者。

 

未来の出来事。

 

自分が覚えている限りを書き出している。

 

「情報が足りない。」

 

前世の記憶は完璧ではない。

 

何もかも覚えているわけではない。

 

だからこそ。

 

できることは限られている。

 

「まずは知ることだ。」

 

未来を変えるなら。

 

敵を知る。

 

味方を知る。

 

そして――。

 

自分に何ができるかを知る。

 

その時だった。

 

ピキッ。

 

小さな音。

 

机の引き出し。

 

海斗が開ける。

 

そこには、いつから入っていたのか分からない古びたペンダント。

 

銀色の装飾。

 

中央には、欠けた剣のような紋章。

 

「……これ。」

 

なぜか知っている。

 

いや。

 

知らないはずなのに、理解できる。

 

これは。

 

「聖遺物……?」

 

触れた瞬間。

 

部屋が青白い光に包まれた。

 

聞こえるはずのない声。

 

けれど確かに。

 

頭の奥へ響いた。

 

――我は守護の聖剣"アロンダイト"。

 

――汝。

 

――何を求める。

 

海斗は息を飲む。

 

これは夢じゃない。

 

アロンダイト。

 

守護の聖剣。

 

まだ完全には目覚めていない。

 

だが。

 

確かに自分へ反応している。

 

「……俺は。」

 

声が震える。

 

力が欲しい。

 

そう言えばいいのかもしれない。

 

でも違う。

 

海斗が求めているものは。

 

「守る力が欲しい。」

 

「誰かを傷つけるためじゃない。」

 

「響を……守るための力が欲しい。」

 

沈黙。

 

数秒。

 

そして。

 

かすかな光。

 

――資格を確認。

 

海斗は目を見開く。

 

――契約候補として認識。

 

光は消える。

 

残ったのは、静かな部屋だけだった。

 

「……候補?」

 

まだ選ばれていない。

 

まだ力はない。

 

それでも。

 

一歩進んだ。

 

◇

 

遠く離れた場所。

 

とある研究施設。

 

一つの聖遺物が反応を示していた。

 

研究員が慌てて画面を見る。

 

「っ!司令!アロンダイトが……」

 

「反応しています!」

 

「何!?誰が適合した?」

 

研究員は首を振る。

 

「まだ不明です。」

 

しかし。

 

画面に表示された反応地点。

 

そこには一人の少年の名前があった。

 

佐々木海斗。

 

守護の聖剣は、まだ眠っている。

 

だが。

 

その眠りは、確実に終わりへ向かっていた。

 

――未来を変えようとする少年。

 

――世界を救う少女。

 

二人の運命は、少しずつ重なり始めていた。

 

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