戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第二話 守るために、知るべきこと

 

 

佐々木海斗は、未来を知ってしまった。

 

それは、決して幸運なことではなかった。

 

むしろ――呪いに近い。

 

朝起きれば思い出す。

 

テレビをつければ不安になる。

 

街を歩けば、いつノイズが現れるのかと考えてしまう。

 

「……最悪だな。」

 

布団の中で、海斗は小さく呟いた。

 

前世の記憶。

 

『戦姫絶唱シンフォギア』という物語。

 

そこに登場する少女たちの運命。

 

海斗は知っている。

 

この世界が、ただの平和な日常では終わらないことを。

 

やがて現れるノイズ。

 

ツヴァイウィングの悲劇。

 

そして――立花響が背負うことになる過酷な戦い。

 

「……でも。」

 

海斗は拳を握る。

 

「まだ、何も起きていない。」

 

そう。

 

未来はまだ確定していない。

 

響はまだ、普通の女の子だ。

 

毎日笑って。

 

転んで。

 

遊びに誘ってくる。

 

なら。

 

今できることをするしかない。

 

 

「かいとー!」

 

玄関の外から、聞き慣れた声が響く。

 

海斗が扉を開けると、そこにはいつもの笑顔。

 

「おはよう!」

 

「おはよう、響。」

 

「今日は公園行こう!」

 

「昨日も行ったよね?」

 

「楽しいから!」

 

即答だった。

 

海斗は思わず笑ってしまう。

 

本当に変わらない。

 

未来で世界を救う少女も。

 

今はただ、遊びが大好きな五歳の女の子だった。

 

「ほら、早く!」

 

響に手を引かれる。

 

その小さな手を見ながら、海斗は思う。

 

(絶対に、この手を離さない。)

 

 

公園。

 

響はいつものように走り回っていた。

 

「かいと! 見て!」

 

「何?」

 

「大きな葉っぱ!」

 

「……うん。」

 

「すごいでしょ!」

 

「すごいね。」

 

「もっと驚いて!」

 

「えぇ……。」

 

そんな何気ない会話。

 

前世の記憶を取り戻す前なら、ただ楽しいだけだった。

 

しかし今は違う。

 

海斗には、この時間がどれほど貴重なのか分かってしまう。

 

未来では。

 

響は何度も泣く。

 

何度も傷つく。

 

それでも立ち上がる。

 

だから。

 

せめて今だけは。

 

この笑顔を守りたい。

 

「ねえ、かいと。」

 

「ん?」

 

響が不思議そうに顔を覗き込む。

 

「最近、ちょっと変。」

 

海斗の心臓が跳ねる。

 

「変?」

 

「うん。」

 

響は首を傾げる。

 

「前より、遠くを見る顔してる。」

 

五歳児とは思えない言葉だった。

 

海斗は少し驚く。

 

やっぱり。

 

響は昔から、人の心を見るのが上手い。

 

「……ちょっと考え事してただけ。」

 

「悩み?」

 

「まあ、そんな感じ。」

 

すると響は真剣な顔になった。

 

「じゃあ、私にも言って。」

 

「え?」

 

「一人で悩むの、よくないよ。」

 

その言葉に、海斗は何も返せなかった。

 

未来で。

 

響が多くの人を救った理由。

 

それは、きっとこういうところなのだろう。

 

誰かの痛みに気づける。

 

誰かの孤独を放っておけない。

 

そんな優しさ。

 

「ありがとう。」

 

海斗は笑った。

 

「でも、大丈夫。」

 

「ほんと?」

 

「うん。」

 

そして心の中で続ける。

 

(響がいるから、大丈夫なんだ。)

 

 

その夜。

 

海斗は自分の部屋で机に向かっていた。

 

ノートを開く。

 

そこには大量のメモ。

 

ノイズ。

 

聖遺物。

 

シンフォギア。

 

装者。

 

未来の出来事。

 

自分が覚えている限りを書き出している。

 

「情報が足りない。」

 

前世の記憶は完璧ではない。

 

何もかも覚えているわけではない。

 

だからこそ。

 

できることは限られている。

 

「まずは知ることだ。」

 

未来を変えるなら。

 

敵を知る。

 

味方を知る。

 

そして――。

 

自分に何ができるかを知る。

 

その時だった。

 

ピキッ。

 

小さな音。

 

机の引き出し。

 

海斗が開ける。

 

そこには、いつから入っていたのか分からない古びたペンダント。

 

銀色の装飾。

 

中央には、欠けた剣のような紋章。

 

「……これ。」

 

なぜか知っている。

 

いや。

 

知らないはずなのに、理解できる。

 

これは。

 

「聖遺物……?」

 

触れた瞬間。

 

部屋が青白い光に包まれた。

 

聞こえるはずのない声。

 

けれど確かに。

 

頭の奥へ響いた。

 

――我は守護の聖剣"アロンダイト"。

 

――汝。

 

――何を求める。

 

海斗は息を飲む。

 

これは夢じゃない。

 

アロンダイト。

 

守護の聖剣。

 

まだ完全には目覚めていない。

 

だが。

 

確かに自分へ反応している。

 

「……俺は。」

 

声が震える。

 

力が欲しい。

 

そう言えばいいのかもしれない。

 

でも違う。

 

海斗が求めているものは。

 

「守る力が欲しい。」

 

「誰かを傷つけるためじゃない。」

 

「響を……守るための力が欲しい。」

 

沈黙。

 

数秒。

 

そして。

 

かすかな光。

 

――資格を確認。

 

海斗は目を見開く。

 

――契約候補として認識。

 

光は消える。

 

残ったのは、静かな部屋だけだった。

 

「……候補?」

 

まだ選ばれていない。

 

まだ力はない。

 

それでも。

 

一歩進んだ。

 

 

遠く離れた場所。

 

とある研究施設。

 

一つの聖遺物が反応を示していた。

 

研究員が慌てて画面を見る。

 

「っ!司令!アロンダイトが……」

 

「反応しています!」

 

「何!?誰が適合した?」

 

研究員は首を振る。

 

「まだ不明です。」

 

しかし。

 

画面に表示された反応地点。

 

そこには一人の少年の名前があった。

 

佐々木海斗。

 

守護の聖剣は、まだ眠っている。

 

だが。

 

その眠りは、確実に終わりへ向かっていた。

 

――未来を変えようとする少年。

 

――世界を救う少女。

 

二人の運命は、少しずつ重なり始めていた。

 

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