戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
特異災害対策機動部二課の地下ブリーフィング室。
プロジェクターが映し出す青白い光の中に、完全聖遺物『ネフシュタンの鎧』を装備する白髪の少女、雪音クリスの姿が浮かび上がっていた。
「──以上が、一昨日出現した少女の戦闘データよ」
櫻井了子は艶然とした笑みを浮かべて指示棒を収める。
その微笑の裏で、了子──フィーネの視線は、立花響、そして何より佐々木海斗の纏う『アロンダイト』の戦闘データへと向けられていた。
ミーティングが終わり、部屋に残された響は、モニターに映し出された先日の戦闘データを一人で見つめ、唇を強く噛み締めていた。
(私は……何もできなかった。クリスちゃんを止めたいのに、話を聞きたいのに、圧倒されて、ただ守られるだけで……)
画面に表示される自分の低いフォニックゲインと荒削りな軌道。響は自分の圧倒的な戦力不足を、痛いほどに痛感していた。
「強くなりたい、です……。誰かを守れるくらい、ちゃんと手を繋げるくらい、強くなりたい!」
その悲痛な決意を受け止めたのは、司令の風鳴弦十郎だった。
「いい覚悟だ、立花。ならば俺が、そのガングニールの力を引き出すための基礎を叩き込んでやる!」
こうして、地下トレーニングルームでの弦十郎による猛特訓が始まった。しかし、装者ではないとはいえ、武芸極まる弦十郎の指導は苛烈を極める。迫り来る鉄拳を前に、響は何度も床に転がった。
「響!」
そんな彼女を心配して、トレーニングルームに駆け込んできたのは海斗だった。ボロボロになりながらも立ち上がる響の姿を見て、海斗は静かに歩み出る。
「司令、俺も一緒にやらせてください。響が前線で迷わず戦うためには、俺が盾としてどう動くべきか、互いの呼吸を合わせる必要があります」
「ふむ、海斗か。いいだろう、二人まとめて相手をしてやる!」
海斗の参戦により、特訓は『対人戦闘』から『コンビネーション特訓』へとシフトしていく。海斗は白銀の聖遺物『アロンダイト』の盾を部分展開し、弦十郎の放つ衝撃波を受け止めながら、響の死角を完璧にカバーする。
「響、俺の盾を足場にしろ! 高く跳べ!」
「うん! いっけえええ!」
海斗が掲げた大盾を蹴り、響が上空から鋭い踏み込みを放つ。最初はバラバラだった二人の動きだったが、幾度も拳を交わし、汗を流すうちに、徐々に噛み合い始めていく。海斗が敵の攻撃を完全にいなし、その隙を響のガングニールがぶち抜く──。
数日間の猛特訓の末、二人の連携の成果は、弦十郎のガードを僅かに崩すほどにまで跳ね上がっていた。
「ふぅ……。素晴らしい連携だ、二人とも。これなら前線でも──」
弦十郎が満足げに汗を拭ったその時、彼の懐の通信端末が、尋常ではない緊迫したアラート音を鳴り響かせた。画面を見た弦十郎の顔が、一瞬で険しく引き締まる。
「……司令?」
響が首を傾げた。弦十郎は重い口を開き、海斗と響を見つめた。
「二人とも、すぐに着替えてブリーフィング室へ来い。……先ほど、広木防衛大臣が、何者かの手によって殺害された」
その言葉に、室内の空気が一瞬で凍りつく。政府内部に潜む影、そして激動の運命が、特訓を終えたばかりの二人を容赦なく呼び出そうとしていた。