戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
──ゴォォォォン!!!
大気を引き裂く重低音が広場に轟く。
フィーネに猛攻を仕掛ける海斗の右手には、怒りのフォニックゲインによって禍々しく『黒く輝く聖剣アロンダイト』が握られていた。
「ハァァァァッ!!!」
いつもなら守護を最優先するはずの海斗が、今はただ、目の前の外道を叩き潰すためだけに剣を振り回している。
その一撃一撃はあまりにも重く、ネフシュタンの鎧を纏うフィーネですら、防戦一方に追い込まれていた。
◇
「クリスちゃん! 大丈夫!?」
その隙に、立花響と風鳴翼は、私服のまま地面にへたり込んで泣いている雪音クリスの元へと駆け寄り、彼女を庇うように盾となった。
「……放せよ。あたしは、もう居場所なんてどこにも……」
絶望に瞳を曇らせるクリスに、響は優しく、しかし強く語りかける。
「そんなことない! 教えて、何があったの!?」
ぽつり、ぽつりと、拒絶する気力すら失ったクリスの口から、大人のエゴに利用されていたこと、そして今、用済みとして『ゴミ』のように捨てられたことが語られた。その凄惨な事情を聞くうちに、響の胸の奥からも、かつてない激しい怒りが湧き上がってくる。
「……そんなの、絶対に間違ってる!!」
響のガングニールが、彼女の純粋な怒りに呼応して眩しく爆発する。
「クリスちゃんを傷つける奴は、私が絶対に許さないっ!」
響はそのまま大地を蹴り、海斗とフィーネが激突する中心へと猛然と駆け出していった。
残された翼がクリスを連れて退避しようとしたその時、上空から赤い閃光が舞い降りる。
「待たせたね、翼!そのチビすけは、あたしたちで預かるよ!」
現着したのは、ガングニールを纏った天羽奏だった。海斗の聖域治癒によって全盛期以上の力を取り戻した奏は、翼と視線を交わし、二人でしっかりとクリスを保護するのだった。
◇
「海斗──!!」
戦場に飛び込んだ響は、激しい怒気で我を忘れかけている海斗の横に並び、フィーネに向かって強烈な拳を叩き込んだ。
「響……!?」
「海斗、落ち着いて! 怒ったままで戦っちゃダメだよ! いつもの、みんなを守る優しい海斗に戻って!」
響の必死の叫びが、海斗の耳に届く。暴走しかけていた脳裏に、幼馴染の真っ直ぐな瞳が焼き付き、ハッと我に返った。
「……すまない、響。頭が冷えた」
海斗の呼吸が整うと同時に、二人の動きが完璧にシンクロし始める。
「いくよ、海斗!」
「あぁ、合わせる!」
響の突き抜けるような突進と、海斗の大盾による完璧なカバー。そして、息の合ったコンビネーション攻撃がフィーネを容赦なく追い詰めていく。海斗が盾でフィーネの体勢を崩し、そこへ響の拳が炸裂する。二人の想いが、歌声(フォニックゲイン)が重なり合うたびに、その威力は乗算的に跳ね上がっていった。
──ズガァァァァン!!!
二人の放つエネルギーの奔流は、周囲の空間を歪めるほどに膨れ上がり、それはまるで『絶唱』にすら匹敵するほどの神聖な輝きを放ち始めていた。
そのエネルギーの浄化作用に呼応するように、気付けば海斗の手にあるアロンダイトの色も、禍々しい黒から、いつもの気高く美しい『白銀』へと戻っていた。
「チッ……! これ以上の交戦は分が悪いわね……!」
2人の隙のないコンビネーション攻撃を受け、ネフシュタンの鎧にヒビを入れられたフィーネは、これ以上の継続は危険と判断した。
彼女は『ソロモンの杖』を取り出し、地面へと突き立てる。
次元の裂け目から、二人を遮るように大量のノイズが溢れ出した。
「おのれ……! 今回は退いてあげるわ。だが、アロンダイト……お前は必ず、私のものにしてみせる!」
捨て台詞と共に、フィーネはノイズの防壁の向こう側へと姿を消し、気配を完全に断って撤退していった。
残された海斗と響は、立ち上る煙の中で、互いの無事を確認するように深く息を吐き出すのだった。