戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第三話 守る資格

 

 

あの夜から、海斗の生活は少しだけ変わった。

 

学校へ行く。

 

響と遊ぶ。

 

家へ帰る。

 

表面上は何も変わっていない。

 

しかし、海斗の心の中には一つの存在が増えていた。

 

アロンダイト。

 

守護の聖剣。

 

まだ力を貸してくれるわけではない。

 

まだシンフォギアとして纏うこともできない。

 

それでも。

 

確かに、そこにいる。

 

「……本当にあるんだな。」

 

夜。

 

海斗は机の上に置いたペンダントを見つめていた。

 

銀色の装飾。

 

中央に刻まれた剣の紋章。

 

ただの古びたアクセサリーには見えない。

 

触れれば分かる。

 

この中には、何かが眠っている。

 

「俺に……使えるのか?」

 

答えはない。

 

当然だった。

 

この聖遺物は道具ではない。

 

"選ぶ側"なのだ。

 

◇

 

翌日。

 

海斗はいつものように響と公園へ向かっていた。

 

「かいと!」

 

「ん?」

 

「今日ね、すごいもの見つけた!」

 

響は両手を後ろに隠している。

 

「何?」

 

「じゃーん!」

 

取り出したのは、小さな四つ葉のクローバーだった。

 

「幸運のお守り!」

 

「見つけたんだ。」

 

「うん!」

 

響は嬉しそうに笑う。

 

「かいとにあげる!」

 

「僕に?」

 

「うん!」

 

「なんで?」

 

響は少し考える。

 

そして当たり前のように言った。

 

「だって、かいと最近ちょっと寂しそうだから。」

 

海斗は言葉を失った。

 

まただ。

 

響はいつもそうだ。

 

誰よりも周りを見ている。

 

自分でも気づかない小さな変化に気づく。

 

「……響。」

 

「なに?」

 

「怖くないの?」

 

「え?」

 

「知らないこととか。」

 

「うーん……。」

 

響は空を見る。

 

「怖いことはあるよ。」

 

意外な答えだった。

 

「でもね。」

 

響は笑う。

 

「一人じゃなかったら、頑張れると思う。」

 

その言葉が胸に刺さった。

 

(……敵わないな。)

 

未来でも。

 

今でも。

 

響は変わらない。

 

◇

 

その日の夜。

 

海斗は再びアロンダイトへ触れた。

 

「聞こえるか?」

 

静かな部屋。

 

返事はない。

 

「俺は……本当に、お前を使う資格があるのか?」

 

力が欲しい。

 

そう願った。

 

だが。

 

もし自分が間違えたら?

 

もし力に溺れたら?

 

もし響を守るつもりで、逆に傷つけたら?

 

前世の記憶があるからこそ分かる。

 

力を持つ者には責任がある。

 

ヒーローは、ただ強ければいいわけじゃない。

 

その時。

 

ペンダントが光った。

 

――問い。

 

頭の中へ声が響く。

 

海斗は息を止める。

 

――汝は何故、剣を求める。

 

海斗は目を閉じる。

 

答えは決まっていた。

 

――未来を知っているから。

 

最初はそう思っていた。

 

未来を変えたい。

 

響を救いたい。

 

でも。

 

本当は。

 

「俺は、響が笑っている今が好きなんだ。」

 

「だから……。」

 

「その笑顔を奪わせたくない。」

 

光が強くなる。

 

――汝は、現在を守ろうとしている。

 

海斗の周囲に青白い粒子が舞う。

 

――我が名はアロンダイト。

 

――守護の意思を確認。

 

――適合率上昇。

 

「……!」

 

初めて。

 

聖遺物"アロンダイト"の声に感情を感じた。

 

――汝ならば。

 

――この剣を託せる。

 

光が消える。

 

海斗の手の中には、小さな欠片が残っていた。

 

聖遺物の一部。

 

「これは……。」

 

完全なシンフォギアではない。

 

だが。

 

確かな一歩だった。

 

◇

 

数日後。

 

海斗は黒い服の男達に囲まれ、ある場所へ呼ばれていた。

 

大きな施設。

 

白い壁。

 

見慣れない機械。

 

そして。

 

目の前にいる大人。

 

「初めまして。」

 

鋭い目をした男性が笑う。

 

「風鳴弦十郎だ。」

 

海斗は息を飲む。

 

(風鳴……弦十郎。)

 

原作でも知っている人物。

 

いずれ響たちを支える存在。

 

「君が佐々木海斗くんか。」

 

「……はい。」

 

弦十郎は腕を組む。

 

「すまないが、色々調べさせてもらった。」

 

「面白いことになっている。」

 

「君の持っている聖遺物。」

 

「アロンダイト。」

 

その名前を聞いた瞬間。

 

海斗の心臓が跳ねた。

 

「どうして……。」

 

なぜこの人は僕が聖遺物を持っている事に気づいたんだ?

 

弦十郎は真剣な顔になる。

 

「それはこちらの台詞だ。」

 

「長年眠っていた研究所の聖遺物が反応した。」

 

「アロンダイトは少し特殊な聖遺物でね。波長も特殊なんだ。それですぐに君を特定することが出来たと言うわけだ。」

 

沈黙。

 

「アロンダイトが何故目覚めたかについては、これから研究を行う。君にも協力をして欲しい。」

 

海斗は頷く。

 

「一つ聞きたい…何故君はアロンダイトを持っていたんだ?」

 

「それに聖遺物が恐ろしい物だと思わなかったのか?」

 

この人は疑問を持ちながらも僕を心配してくれている。

 

海斗は迷った。

 

未来のことは言えない。

 

転生者だなんて信じてもらえない。

 

だから。

 

今言える答えだけを口にする。

 

「気付いたら持っていました。持ち続けた理由はこれで守りたい人がいるからです。」

 

弦十郎は目を細める。

 

「……守りたい人?それは誰の事だ?」

 

海斗は迷わず答える。

 

「幼馴染です。」

 

――その答えを、彼は待っていたのかもしれない。

 

聞いた瞬間、弦十郎の厳つい面構えが、見る影もなく優しいものへと様変わりした。

 

「…そうか。」

 

そして静かに言う。

 

「ならば覚えておけ!」

 

「力は、人を救うものにもなる!」

 

「だが同時に、人を壊すものにもなる。」

 

海斗は黙って聞く。

 

「君が本当に守りたいなら。」

 

「まず、自分自身を守れる強さを持て!」

 

◇

 

あの後、いくつか機密保持の書類にサインをさせられた。

 

施設を出た帰り道。

 

海斗は空を見る。

 

まだ何も変わっていない。

 

まだ響は普通の少女だ。

 

まだノイズとの戦いは始まっていない。

 

でも。

 

確実に未来は動いている。

 

ポケットの中のアロンダイトの欠片を握る。

 

「待ってろ。」

 

小さく呟く。

 

「絶対に……変えてみせる。」

 

その時。

 

遠くで。

 

誰にも聞こえないほど小さな歌声が響いた。

 

聖遺物が応える。

 

まだ未完成の力。

 

まだ未完成の覚悟。

 

しかし。

 

守護の剣は、確かに目覚め始めていた。

 

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