戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第三話 守る資格

 

 

あの夜から、海斗の生活は少しだけ変わった。

 

学校へ行く。

 

響と遊ぶ。

 

家へ帰る。

 

表面上は何も変わっていない。

 

しかし、海斗の心の中には一つの存在が増えていた。

 

アロンダイト。

 

守護の聖剣。

 

まだ力を貸してくれるわけではない。

 

まだシンフォギアとして纏うこともできない。

 

それでも。

 

確かに、そこにいる。

 

「……本当にあるんだな。」

 

夜。

 

海斗は机の上に置いたペンダントを見つめていた。

 

銀色の装飾。

 

中央に刻まれた剣の紋章。

 

ただの古びたアクセサリーには見えない。

 

触れれば分かる。

 

この中には、何かが眠っている。

 

「俺に……使えるのか?」

 

答えはない。

 

当然だった。

 

この聖遺物は道具ではない。

 

"選ぶ側"なのだ。

 

 

翌日。

 

海斗はいつものように響と公園へ向かっていた。

 

「かいと!」

 

「ん?」

 

「今日ね、すごいもの見つけた!」

 

響は両手を後ろに隠している。

 

「何?」

 

「じゃーん!」

 

取り出したのは、小さな四つ葉のクローバーだった。

 

「幸運のお守り!」

 

「見つけたんだ。」

 

「うん!」

 

響は嬉しそうに笑う。

 

「かいとにあげる!」

 

「僕に?」

 

「うん!」

 

「なんで?」

 

響は少し考える。

 

そして当たり前のように言った。

 

「だって、かいと最近ちょっと寂しそうだから。」

 

海斗は言葉を失った。

 

まただ。

 

響はいつもそうだ。

 

誰よりも周りを見ている。

 

自分でも気づかない小さな変化に気づく。

 

「……響。」

 

「なに?」

 

「怖くないの?」

 

「え?」

 

「知らないこととか。」

 

「うーん……。」

 

響は空を見る。

 

「怖いことはあるよ。」

 

意外な答えだった。

 

「でもね。」

 

響は笑う。

 

「一人じゃなかったら、頑張れると思う。」

 

その言葉が胸に刺さった。

 

(……敵わないな。)

 

未来でも。

 

今でも。

 

響は変わらない。

 

 

その日の夜。

 

海斗は再びアロンダイトへ触れた。

 

「聞こえるか?」

 

静かな部屋。

 

返事はない。

 

「俺は……本当に、お前を使う資格があるのか?」

 

力が欲しい。

 

そう願った。

 

だが。

 

もし自分が間違えたら?

 

もし力に溺れたら?

 

もし響を守るつもりで、逆に傷つけたら?

 

前世の記憶があるからこそ分かる。

 

力を持つ者には責任がある。

 

ヒーローは、ただ強ければいいわけじゃない。

 

その時。

 

ペンダントが光った。

 

――問い。

 

頭の中へ声が響く。

 

海斗は息を止める。

 

――汝は何故、剣を求める。

 

海斗は目を閉じる。

 

答えは決まっていた。

 

――未来を知っているから。

 

最初はそう思っていた。

 

未来を変えたい。

 

響を救いたい。

 

でも。

 

本当は。

 

「俺は、響が笑っている今が好きなんだ。」

 

「だから……。」

 

「その笑顔を奪わせたくない。」

 

光が強くなる。

 

――汝は、現在を守ろうとしている。

 

海斗の周囲に青白い粒子が舞う。

 

――我が名はアロンダイト。

 

――守護の意思を確認。

 

――適合率上昇。

 

「……!」

 

初めて。

 

聖遺物"アロンダイト"の声に感情を感じた。

 

――汝ならば。

 

――この剣を託せる。

 

光が消える。

 

海斗の手の中には、小さな欠片が残っていた。

 

聖遺物の一部。

 

「これは……。」

 

完全なシンフォギアではない。

 

だが。

 

確かな一歩だった。

 

 

数日後。

 

海斗は黒い服の男達に囲まれ、ある場所へ呼ばれていた。

 

大きな施設。

 

白い壁。

 

見慣れない機械。

 

そして。

 

目の前にいる大人。

 

「初めまして。」

 

鋭い目をした男性が笑う。

 

「風鳴弦十郎だ。」

 

海斗は息を飲む。

 

(風鳴……弦十郎。)

 

原作でも知っている人物。

 

いずれ響たちを支える存在。

 

「君が佐々木海斗くんか。」

 

「……はい。」

 

弦十郎は腕を組む。

 

「すまないが、色々調べさせてもらった。」

 

「面白いことになっている。」

 

「君の持っている聖遺物。」

 

「アロンダイト。」

 

その名前を聞いた瞬間。

 

海斗の心臓が跳ねた。

 

「どうして……。」

 

なぜこの人は僕が聖遺物を持っている事に気づいたんだ?

 

弦十郎は真剣な顔になる。

 

「それはこちらの台詞だ。」

 

「長年眠っていた研究所の聖遺物が反応した。」

 

「アロンダイトは少し特殊な聖遺物でね。波長も特殊なんだ。それですぐに君を特定することが出来たと言うわけだ。」

 

沈黙。

 

「アロンダイトが何故目覚めたかについては、これから研究を行う。君にも協力をして欲しい。」

 

海斗は頷く。

 

「一つ聞きたい…何故君はアロンダイトを持っていたんだ?」

 

「それに聖遺物が恐ろしい物だと思わなかったのか?」

 

この人は疑問を持ちながらも僕を心配してくれている。

 

海斗は迷った。

 

未来のことは言えない。

 

転生者だなんて信じてもらえない。

 

だから。

 

今言える答えだけを口にする。

 

「気付いたら持っていました。持ち続けた理由はこれで守りたい人がいるからです。」

 

弦十郎は目を細める。

 

「……守りたい人?それは誰の事だ?」

 

海斗は迷わず答える。

 

「幼馴染です。」

 

――その答えを、彼は待っていたのかもしれない。

 

聞いた瞬間、弦十郎の厳つい面構えが、見る影もなく優しいものへと様変わりした。

 

「…そうか。」

 

そして静かに言う。

 

「ならば覚えておけ!」

 

「力は、人を救うものにもなる!」

 

「だが同時に、人を壊すものにもなる。」

 

海斗は黙って聞く。

 

「君が本当に守りたいなら。」

 

「まず、自分自身を守れる強さを持て!」

 

 

あの後、いくつか機密保持の書類にサインをさせられた。

 

施設を出た帰り道。

 

海斗は空を見る。

 

まだ何も変わっていない。

 

まだ響は普通の少女だ。

 

まだノイズとの戦いは始まっていない。

 

でも。

 

確実に未来は動いている。

 

ポケットの中のアロンダイトの欠片を握る。

 

「待ってろ。」

 

小さく呟く。

 

「絶対に……変えてみせる。」

 

その時。

 

遠くで。

 

誰にも聞こえないほど小さな歌声が響いた。

 

聖遺物が応える。

 

まだ未完成の力。

 

まだ未完成の覚悟。

 

しかし。

 

守護の剣は、確かに目覚め始めていた。

 

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