戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第三十話 交錯する戦火

 

 

 二課基地の緊急設備改修工事が完了した、その翌日。

 

 平和な日常を切り裂くように、街中にけたたましい認定特異災害アラートが鳴り響いた。それは過去のどの襲撃とも比較にならない、文字通り空を埋め尽くさんばかりのおびただしい数のノイズの群れだった。

 

「これ、いくらなんでも多すぎじゃない!?」

 

 響がガングニールの拳を構えながら、絶望的な数に目を見開く。

 

「チッ、あの女、本気で仕掛けてきやがったね!いくよ、響、海斗!」

 

 奏がガングニールの槍を振り回し、ノイズの海へと飛び込んでいく。

 

海斗も純白のアロンダイトを展開し、最前線での防衛に当たっていた。

 

総出で対応しなければ一瞬で街が壊滅するほどの物量──しかし、これこそがフィーネの狙い、装者たちを基地から引き離すための「陽動」だった。

 

 同時刻、防衛の手薄になった特異災害対策機動部二課の地下基地は、予想通りフィーネと彼女が率いるノイズの急襲に遭っていた。

 

 

「ハァァァッ!」

 

 聖剣の一閃で十数体のノイズを消滅させながら、海斗は押し寄せる赤光の群れに冷や汗を流していた。

 

(原作以上の数だ……。俺が奏さんを救い、この世界に介入し続けたせいで、因果が歪んでノイズの規模まで跳ね上がっている。原作知識があるからって、舐めてちゃダメだ。俺が変えてしまった世界なら、俺が責任を持って最後まで守り抜く!)

 

改めて心を引き締め、大盾で響の後方をカバーしたその時、海斗の目に、崩落しかけたビルの陰で小さな子どもを抱きかかえ、逃げ遅れている黒髪の少女の姿が留まった。

 

「未来……!」

 

小日向未来だ。周囲にはノイズが迫っている。海斗は即座に跳躍し、未来たちに襲いかかろうとしていたノイズを両断した。

 

すぐにでも声をかけようとした海斗だったが、自分が今、白銀の装甲を纏った二課の『民間協力者(装者)』であることを思い出す。響のためにも、未来に正体がバレるわけにはいかない。

 

海斗は咄嗟に顔を背け、喉の奥にグッと力を入れて、わざと低く太い「別人のような声」を作って話しかけた。

 

「──お怪我はありませんか。ここは危険です、私に続いて避難を」

 

 完璧な変装(声)のつもりだった。だが、抱きかかえられていた子どもを優しく降ろした未来は、じっと海斗の装甲を見つめ、フッとため息をついた。

 

「……何やってるの、海斗君」

「ぶっ!?」

 

 一発だった。喉を痛めそうなほどの声色も、顔を背けた努力も、小日向未来の鋭い観察力の前には無意味だった。

 

「なんで……一言でバレるんだよ……?」

 

「バレないと思った方がおかしいよ。その話し方、わざとらしくて全然似合ってない。……それに、響ちゃんが何日も帰ってこないの、海斗君のその格好と関係があるんでしょ?」

 

未来の瞳には、冷徹なほどの確信と、親友を案じる深い憂いが宿っていた。

 

「響はどこにいるの?街中を探したのに、どこにも見当たらないの。海斗君、何か隠してるよね」

 

今ここで真実を話す時間はない。海斗はガチガチに固まった喉の力を抜き、いつもの声で未来の目を見据えた。

 

「未来、今は一刻を争う。響のことは俺に任せて、とにかく今はシェルターに避難してくれ!……約束する。全部終わったら、後で詳しく説明するから!」

 

 海斗の必死の眼差しに、未来は一瞬だけ唇を噛み締めたが、やがて小さく頷いた。

 

「……わかった。信じるよ。響を、よろしくね」

 

 未来が子どもを連れて避難経路へと走り出すのを見届け、海斗は無線に意識を向けた。

 

「司令! 街の避難誘導は完了しつつあります! 基地の状況は──」

 

 

 その頃、二課の地下最深部、デュランダル保管室の手前。

 

「ぐっ……、はあッ!」

 

緒川が拳銃を放ち、弦十郎がその超人的な肉体でノイズと対峙していくが、ソロモンの杖を手に次々とノイズを召喚するフィーネの前に、徐々に防戦一方へと追い詰められていた。

 

「無駄な抵抗はやめなさい!防衛システムはすでに私の息がかかった改修班によって掌握されているわ!デュランダルは、この私がいただく!」

 

高笑いするフィーネ。

 

しかし、彼女が保管室の隔壁に手をかけようとしたその瞬間、上空から激しいフォニックゲインの共鳴と共に、二つの影が猛然と舞い降りた。

 

「──私たちの家で、これ以上好き勝手はさせない!」

「あいつの思い通りには……絶対にさせねぇッ!」

 

立ち上る硝煙の向こうから現れたのは、蒼き防人の装甲を纏った風鳴翼。そして──かつての敵対心を捨て、鮮やかな魔弓のギアを身に纏った、雪音クリスだった。

 

「なっ……何故お前たちがここにいるの!? 装者どもは街のノイズに釘付けになっているはず……!」

 

 予想外の伏兵の登場に、フィーネの顔が驚愕に歪む。

 

「お前たちの狙いがデュランダルであることなど、海斗の策によって全てお見通しだ!」

 

翼が天羽々斬を抜き放ち、クリスがイチイバルを構える。

海斗と弦十郎が仕掛けた『大芝居』

 

──それこそが、街のノイズを響、奏、海斗に任せ、最も信頼できる防人とフィーネに借りを返したい装者を基地の防衛に回すという、逆転の配置だった。

 

防人と魔弓の少女。

 

二人の装者が、笑みを浮かべてフィーネと対峙する。

 

 

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