戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
二課の基地で激戦が繰り広げられている頃、夕闇の街中では、凄まじい密度のフォニックゲインが渦巻いていた。
「ハァァァァッ!」
響のガングニールの拳が、空間を埋め尽くしていたノイズの群れを次々と粉砕していく。その背後、死角から迫る鋭い爪を、海斗が展開したアロンダイトの巨盾が完璧なタイミングで弾き飛ばした。
「響、そのまま右に突っ込め! 奏さん、上空を!」
「任せろッ!」
上空から降り注ぐ奏の魔槍の雨が、残ったノイズを容赦なく一掃する。
本来の原作であれば、街を襲う圧倒的な物量の前に響たちは疲弊し、甚大な被害を出していたはずだった。
しかし、今の彼らには海斗のアロンダイトがある。
2つのガングニールによる超攻撃型の前進と、全てを受け止める守りの盾。
──この二つの連携は文字通り完璧であり、三人はほぼ無傷のまま、凄まじい勢いでノイズを殲滅させていた。
「よし、これで街のノイズは全滅だ!すぐに本部に引き返すぞ!」
海斗の呼びかけに、響と奏が力強く頷く。
敵の狙いは基地のデュランダル。
海斗は確信していた。
翼とクリスが抑えている間に自分たちが合流すれば、完全にフィーネを詰ませることができる、と。
◇
しかし、特異災害対策機動部二課の最深部では、海斗の『原作知識』を上回るフィーネの執念が牙を剥いていた。
「ハァァァッ!」
翼の天羽々斬が鋭い斬撃を繰り出し、クリスのイチイバルから放たれた無数の弾幕がフィーネを襲う。
二人の息の合った猛攻は、確実にフィーネを壁際へと追い詰めていた。
「くっ……! かつての飼い犬と、不完全な防人が……生意気なッ!」
ソロモンの杖を掲げるフィーネの顔に、明らかな焦りが浮かぶ。勝機は完全に二課側にあった。
あと一撃、確実に捉えられれば、フィーネの野望をここで潰せる──。
だが、フィーネの瞳がギラリと歪に輝いた。
「ならば、これはどうかしら!」
フィーネが杖を振るった瞬間、翼とクリスの背後──負傷しながらも戦況を見守っていた弦十郎と緒川の足元から、数体のノイズが突如として湧き出した。
改修工事の段階で、すでに床下に罠が仕込まれていたのだ。
「しまっ……!!」
クリスが悲鳴のような声を上げる。ノイズの触手が二人に迫る。
翼とクリスは、目の前のフィーネを仕留めることよりも、背後の二人を救うことを選ばざるを得なかった。
翼が反転してノイズを切り裂き、クリスが弾丸で触手を粉砕する。寸前のところで二人の救出には成功したものの、そのわずかな隙を見逃すフィーネではなかった。
「甘いのよ、装者ども!」
爆煙に紛れ、フィーネは保管室の奥へと姿を消してしまう。
「クソッ……! 逃がしたかっ!」
クリスは拳を地面に叩きつけ、悔しさに唇を噛み締めた。海斗が授けてくれた完璧な迎撃作戦。自分を信じて、二課の防衛という大役を任せてくれたのに、あと一歩のところで失敗してしまった。
「あたしが……あたしがもっとちゃんとやってりゃ……! ごめん、海斗……っ」
「悔やむのは後だ、雪音! すぐに追うぞ!」
翼がクリスを鼓舞し、二人はデュランダルが安置されている最深部の格納庫へと駆け込んだ。
しかし、一歩遅かった。
中央の巨大なカプセル──その前に、すでにフィーネが到達していた。カプセルの内部で、絶対たる破壊の聖遺物『デュランダル』が、不気味な白銀の輝きを放ちながら駆動音を上げ始める。
「ついに手に入れたわ……!」
フィーネがデュランダルに手を触れた瞬間、格納庫のコントロールパネルが次々と赤く染まっていく。
『警告、セキュリティ権限が書き換えられました。全システム、櫻井了子博士のIDにより強制掌握されます』
無機質なアナウンスが響き渡り、基地内の防壁が次々と強制鎖錠されていく。本部全域のシステムが、完全にフィーネの手中に落ちた瞬間だった。