戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
カ・ディンギルの炉心から溢れ出るデュランダルの破壊の光は、限界を超えてなお加速していく。
月へと向けられたその巨大な砲身は、先ほどのクリスの命懸けの絶唱をあざ笑うかのように、次なる必滅の一撃、すなわち『第二射』へ向けて凄まじい密度のエネルギーを再チャージ中だった。
世界の終わりを告げるカウントダウンの光が夜空を白く染める中、並び立つ装者たちのフォニックゲインが一つに重なり、巨塔の最上階を目指して突撃を開始した。
「ウフフ、アハハハハッ! 見なさい、このチャージが完了した時こそが、神の光が世界を照らす時よ!」
塔の頂から見下ろすフィーネの絶叫と共に、おびただしい数のノイズの群れと、歪んだ重力波の防壁が海斗たちの行く手を阻む。
その時、海斗の胸の内で、アロンダイトのコアが不気味なほどの高熱を帯び始めた。
先ほど響の体内から吸い上げた、ガングニールの暴走エネルギー。
本来なら肉体を蝕むはずのその禍々しい力を、アロンダイトの内部システムが完全に咀嚼し、独自のフォニックゲインへと変換・結合していく。
『──概念固定:拒絶から協和へ。第二段階(セカンド・フェイズ)へ移行します──』
海斗の脳内に、今まで聞いたこともない無機質なシステム音声が直接響いた。
「これは……アロンダイトの声なのか……!?」
海斗の意思に応じるように、純白の聖剣と大盾が眩い光の粒子となって四散する。
直後、海斗を包むギアの形状が劇的な変貌を遂げた。
従来の装甲から、まるでな未来のロボットを彷彿とさせる、直線的でスマートな白銀の外装へとされていく。
両手から武器は消え、代わりに両前腕のガントレットから、物理的な限界を超えた高密度の光エネルギーが、強固な『ビームシールド』として展開された。
「海斗、その姿……!」
海斗の進化に呼応するように、隣を走る奏のガングニールもまた、爆発的なフォニックゲインによってその姿を変えていく。
奏を包むギアが、有機的なラインから、赤と金を主体にした重厚かつ攻撃的なロボットのような外装へと変形。
短槍から、神聖な輝きを放つ、まるで希望を紡ぐ『カシウスの槍』のような二振りの巨槍へとその姿を変えた。
「こりゃいいや!いくよ海斗!道を切り拓くッ!」
「あぁ、任せろッ!」
フィーネが放つ光線が、突撃する二人へと牙を剥く。
海斗は白銀の外装を軋ませながら最前線へと躍り出ると、両手のビームシールドを前面で交差させ、その超重力の一撃を正面から完璧に受け止めた。
空間を歪ませるほどの衝撃が海斗を襲うが、第二形態のシールドは一片の傷すら負うことなく、その破壊のエネルギーを完全に相殺・霧散させていく。
「おおおおおッ! 貫け、奏さんッ!!」
「ハァァァァァッ!!」
海斗が完璧に作り出した無風の空間から、赤と金の重装甲を纏った奏が飛び出す。
両手に掲げた巨槍が、螺旋の炎を撒き散らしながらノイズの防壁を、そしてカ・ディンギルの外壁を一網打尽に穿ち、粉砕していった。
「響!翼さん!そのまま上へ行けッ!!」
「うん!ありがとう、海斗、奏さん!」
「二人の作った道、無駄にはせん!」
第二形態となった海斗と奏が圧倒的な火力と防壁で地上の敵を引き受け、道を切り拓いたおかげで、響と翼の二人は全くの無傷のまま、カ・ディンギルの最上階へと到達した。
◇
「な、何なのよ、あの二人の姿は……! 聖遺物の系譜にない、あんな未知のエネルギーの輝きなど、私は知らないわ!」
予想外のパワーアップを遂げた海斗たちに、フィーネが初めて明確な焦燥を浮かべる。
だが、目前に迫る響と翼を睨みつけ、再びデュランダルを掲げた。
カ・ディンギルの中心部では、第二射のための莫大なエネルギーが、今まさに臨界点を突破しようと不気味な咆哮を上げている。
「だが、カ・ディンギルの充填はもう止まらない! お前たち二人がここで足掻いたところで、間もなく月は砕け散るわ!」
「──誰が二人だって?」
その時、爆煙を切り裂いて、格納庫の天井から一筋の光弾がフィーネの足元へと撃ち込まれた。
「なっ……!?」
「待たせたな、バカども。……あたしも、やっと自分の歌を見つけたんだ。ここであんたの好きにはさせねぇよ、フィーネッ!」
硝煙の向こうから現れたのは、装甲のあちこちが割れ、血を流しながらも、その目に不屈の意志を宿した雪音クリスだった。
「クリスちゃん……! やっぱり、生きててくれたんだね!」
響の顔に、この日一番の歓喜の笑顔が咲く。海斗の言葉を信じ、諦めずに繋いだバトンが、今ここに最高の一枚として揃った。
「おのれ……おのれ、裏切り者の小娘がぁぁぁッ!!」
クリスの生存、そして完全な離反に、フィーネの怒号が響き渡る。
だが、並び立つ響、翼、クリスの三人、そして階下で支える海斗と奏のフォニックゲインは、今やチャージを続けるカ・ディンギルの威容すら圧倒するほどの奇跡的な共鳴を始めていた。三人の胸の聖遺物の破片が、これまでにない極彩色の輝きを放ち、シンフォギアの最終形態を構築し始める。
「いくぞ、立花、雪音!私たちの、防人の歌をッ!」
「応よッ!」
「みんなの想いを乗せて……響き渡れええええッ!!シンフォギアァァァァァ!!!」
三人の放つ聖歌が交じり合い、臨界点を超えたフォニックゲインの光がカ・ディンギルの最上階を包み込む。
その瞬間、響、翼、クリスのギアが、眩いばかりの純白、そしてそれぞれのパーソナルカラーをベースにした虹色の輝きを放つ絶対形態──
『エクスドライブ』へと完全覚醒を遂げた。
背中から広がった光の翼が、夜の闇を消し飛ばしていく。
「な、何ですって……!? シンフォギアが……神の力を超えるというの……っ!?」
エクスドライブ状態となった三人の圧倒的な輝きを前に、フィーネが驚愕に目を見開く。
世界を救う奇跡の歌がいま、絶望の塔の頂で、高らかに鳴り響いた。