戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第四話 幼馴染と親友、そして守護の剣

 

 

海斗と響が出会ってから七年。

 

季節は巡り、二人は中学二年生になっていた。

 

子どもの頃と変わらず仲の良い二人だったが、進学先だけは別々だった。

 

立花響は、私立リディアン音楽院中等科。

 

そして佐々木海斗は、自宅からほど近い共学校――**イオニアン学園中等部**へ進学していた。

 

学校は違っても、二人の日常は何も変わらない。

 

「かいとー!」

 

朝七時半。

 

今日も元気な声が住宅街に響く。

 

玄関を開けると、制服姿の響が満面の笑みで立っていた。

 

「おはよう!」

 

「おはよう、響。」

 

「今日も迎えに来たよ!」

 

「毎日ありがとう。」

 

「えへへ♪」

 

子どもの頃から続く朝の習慣。

 

二人は並んで歩き始める。

 

途中までは同じ道。

 

交差点で進路が分かれる。

 

「じゃあ、また放課後ね!」

 

「ああ。」

 

響はリディアンへ。

 

海斗はイオニアン学園へ。

 

別々の制服が、それぞれの学校へ向かって歩き出した。

 

 

放課後。

 

海斗が駅前へ着くと、響が嬉しそうに手を振っていた。

 

「かいとー!」

 

その隣には、一人の少女が立っている。

 

肩まで伸びた黒髪。

 

落ち着いた雰囲気。

 

どこか優しそうな笑顔。

 

海斗はその姿を見た瞬間、胸が小さく高鳴った。

 

(……小日向未来。)

 

前世で何度も見た顔。

 

響の親友。

 

そして、誰よりも響を大切に想う少女。

 

「紹介するね!」

 

響が嬉しそうに少女の肩へ手を置く。

 

「この子、小日向未来!」

 

「私の親友なの!」

 

未来は少し緊張した様子で頭を下げた。

 

「はじめまして。」

 

「小日向未来です。」

 

「いつも響ちゃんから、お話を聞いています。」

 

海斗も頭を下げる。

 

「佐々木海斗です。」

 

「よろしく。」

 

未来は優しく微笑む。

 

「響ちゃん、本当に毎日のように海斗くんのお話をするんですよ。」

 

「え?」

 

海斗が響を見る。

 

響は顔を真っ赤にして慌て始めた。

 

「ち、違うよ!」

 

「違わないよ?」

 

未来がくすっと笑う。

 

「今日は海斗くんがね。」

 

「昨日は海斗くんがね。」

 

「小さい頃は海斗くんがね。」

 

「って、ずっと話してるもん。」

 

「み、未来ー!」

 

響は恥ずかしそうに未来の肩を揺する。

 

その様子を見て、海斗は思わず笑ってしまった。

 

「そんなに話してたんだ。」

 

「だって幼馴染だもん!」

 

赤面しつつも、響は胸を張る。

 

「海斗は家族みたいな存在だから!」

 

その言葉に、未来の笑顔が一瞬だけ止まる。

 

(……家族。)

 

響ちゃんにとって、一番近い存在。

 

七年間、一緒に過ごしてきた人。

 

私はまだ、出会って一年も経っていない。

 

知らない思い出が、二人にはたくさんある。

 

「未来?」

 

「えっ?」

 

響が心配そうに覗き込む。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん!」

 

未来は慌てて笑顔を作る。

 

「何でもないよ。」

 

その笑顔はいつも通りだった。

 

けれど胸の奥には、小さな痛みが残っていた。

 

(私も……。)

 

(もっと響ちゃんのことを知りたい。)

 

(もっと、一緒にいたい。)

 

その気持ちは、まだ未来自身も名前を付けられなかった。

 

 

三人は駅前の喫茶店へ入る。

 

他愛もない話。

 

学校生活。

 

テスト。

 

好きな食べ物。

 

響が話し、海斗がツッコミを入れ、未来が笑う。

 

初めて会ったとは思えないほど自然な空気が流れていた。

 

別れ際。

 

未来は小さく頭を下げる。

 

「今日はありがとうございました。」

 

「またお話ししてください。」

 

「もちろん。」

 

海斗が笑って答える。

 

響も元気よく手を振った。

 

「また三人で遊ぼうね!」

 

「うん。」

 

未来も笑顔で頷く。

 

その笑顔の裏で、小さな決意が芽生えていた。

 

(私も……。)

 

(もっと響ちゃんの隣にいたい。)

 

 

夜。

 

海斗は自室の机へ向かった。

 

引き出しから、小さなペンダントを取り出す。

 

白銀の欠片。

 

アロンダイト。

 

七年間、誰にも知られることなく共鳴を続けてきた聖遺物。

 

海斗は静かに呼び掛ける。

 

「……アロンダイト。」

 

欠片が淡く輝く。

 

部屋の空気が変わる。

 

そして、低く落ち着いた声が響いた。

 

——契約者よ。

 

海斗は目を見開く。

 

「やっと話せるようになったか。」

 

『フォニックゲインが一定値へ達した。』

 

『よって対話を開始する。』

 

「随分と堅いな。」

 

『我は剣。』

 

『感情に流されることはない。』

 

海斗は苦笑する。

 

「いかにも騎士らしい。」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

やがて海斗は真剣な表情になった。

 

「聞きたいことがある。」

 

『問え。』

 

「俺は、本当に未来を変えられるのか?」

 

光が静かに揺れる。

 

『未来は決定されたものではない。』

 

『選択の積み重ねが運命となる。』

 

「なら。」

 

「天羽奏さんも。」

 

「響も。」

 

「救えるのか。」

 

長い沈黙。

 

そして。

 

『救いたいと願うだけでは足りない。』

 

『守る覚悟。』

 

『失う覚悟。』

 

『そのすべてを受け入れた時、守護の聖剣”アロンダイト”は真の力を解放する。』

 

海斗は拳を握る。

 

「俺は響を守る。」

 

『……。』

 

「絶対に。」

 

『その誓いを忘れるな。』

 

『守護の剣は、守るべき者への想いによって強くなる。』

 

『だが、その想いは時として、契約者自身を蝕む。』

 

海斗は静かに頷いた。

 

「それでもいい。」

 

「俺は後悔したくない。」

 

その答えを聞き、アロンダイトは静かに輝きを増す。

 

『ならば共に歩もう。』

 

『契約者――佐々木海斗よ。』

 

光はゆっくりと消えていった。

 

部屋には再び静寂が戻る。

 

海斗はペンダントを胸元へ握り締め、窓の外に浮かぶ月を見上げた。

 

ライブの日まで、あとわずか。

 

運命の日は、確実に近づいていた。

 

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