戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
特異災害対策機動部二課の作戦司令室に、緊迫したアラート音が鳴り響いていた。
「司令、米国艦隊より緊急の応援要請です!」
オペレーターの切迫した声が室内に響く。
モニターには、荒れる海原を進む米国艦隊の映像と、その周辺に出現した未確認の影——ノイズ、そしてF.I.S.所属と思われる反応が映し出されていた。
米軍艦隊からの救援要請を受け、二課へ即時出動の命令が下される。
「分かった、直ちに出撃する! みんな、準備はいいわね!」
弦十郎の号令のもと、海斗、そして立花響たちは、それぞれの想いを胸に発進艇へと乗り込んだ。
目指すは、荒れ狂う海上に広がる戦海域。
奪われた大切な日常を取り戻すための戦いが、再び幕を開けようとしていた。
―――
現場に到着した海斗たちの目の前に広がっていたのは、吹き荒れる嵐と、破壊された艦艇の残骸だった。
その海域の中央で、禍々しい鎌の刃と巨大なヨーヨーを操り、圧倒的な暴威を振るう二つの影が立ちはだかる。暁切歌と月読調——F.I.S.の装者たちだった。
「来たデスネ! お兄さん……!」
「私たちの邪魔をするなら、たとえ誰であっても切り刻む…」
切歌の鎌が鋭い軌跡を描いて振り下ろされ、調の放った無数の刃が弾丸のように襲い掛かる。
響がガングニールを纏い、その猛攻を防ぎながら前に出る。
海斗もまたアロンダイトの装甲を輝かせ、二人の間に飛び込んだ。
「待て、切歌! 調! 俺たちは争いたいわけじゃない……!」
「うるさいデス! そんな綺麗事を聞きに来たんじゃないデス!」
ガキィィンッ! と、鎌と装甲が激しくぶつかり合い、火花が散る。
激しい攻防の最中、切歌は攻撃の手を緩めないまま、荒い息を吐きながら叫んだ。
「それより……小日向未来はどこにいるのデス!?」
「え……?」
不意を突かれたような海斗の声に、調もまた冷たい瞳を向けながら追撃の投擲を繰り出す。
「とぼけないでほしい…彼女は私たちの計画の要…。」
「なっ……何を言ってるんだ! 未来はそっちが……!」
海斗は言葉に詰まった。未来は確かにあの日、F.I.S.側に連れ去られたはずだ。
それなのに、なぜ彼女たちがこんな焦った様子で「未来はどこだ」と聞いてくるのか。
状況が噛み合わないまま、切歌たちの怒りに満ちた猛攻を浴びせられ、海斗たちは大きく後退を強いられる。
「小日向未来を返してください―――」
調の叫びが、波音を切り裂いて響く。
装者としての力と、切迫した焦燥感に裏打ちされた彼女たちの攻撃は容赦がなく、海斗たちは防戦一方に追い込まれていった。
なぜ戦わなければならないのか。
未来の行方も分からないまま、冷たい雨と潮風の中で、海斗は歯噛みした。
「くそっ……! 未来は今、一体どこに……!」
困惑と焦燥が入り混じる海斗の呟きが、轟音にかき消されそうになったその時——。
突如として、上空の厚い雲が、禍々しくも神々しい紫色の光によって押し広げられた。
「……ッ!?」
あまりにも強烈なフォニックゲインの奔流に、戦っていた切歌も、調も、そして海斗や響たちも、思わず動きを止めて空を仰いだ。
闇を切り裂くようにして降り注ぐ光のなか、圧倒的な聖遺物の波動を纏った人影が、ふわりと舞い降りてくる。
それは、紫色の精悍な装甲に身を包み、冷徹なまでの美しさを湛えた少女——シェンショウジンを纏った、小日向未来その人だった。
風が止まり、静寂が訪れた世界の中で、未来は冷たい瞳を湛えながら、静かに、そして狂気を孕んだ歌を口ずさみ始める。
——それは、救済か、それとも破滅の始まりか。
聖詠を響かせながら舞い降りた少女の姿に、海斗は息を呑み、その場で動けずに立ち尽くすのであった。