戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
「ぐっ……! みんな、しっかりして!」
ガングニールの光を辛うじて維持する天羽奏は、ギアを強制解除されて崩れ落ちた響、クリス、翼、そして切歌と調の体を次々と支え起こした。
「奏さん、でも海斗がっ……未来がっ!」
「海斗にはアロンダイトがある! 私たちがここにいたら足手まといになるだけだ、早く下がるぞ!」
奏は響たちを連れ、戦闘の余波が及ばない安全圏へと一目散に後退していく。
ギアを失った彼女たちにとって、今の異様な空間から離れることが最優先だった。
その背後で、海斗は一人、アロンダイトの白銀の光を纏いながら、神鏡を纏った小日向未来と対峙し続けていた。
「どうして……どうして誰もかれも私たちの邪魔をするの……!」
海底から浮上を始めたフロンティアの轟音が響き渡る中、未来は狂気に満ちた瞳を大きく見開き、甲高い声で叫び声を上げる。
「私を見てよ!どうしてあの女の人たちを庇うの!?私だけを見て愛して、私以外の人間なんて全員消えていなくなればいいのに……っ!ねえ、海斗くん、私を拒絶するなら、いっそあなたも、この世界も、全部まとめて壊して二人きりになりましょう……あは、あははははっ!」
愛憎と独占欲が限界まで煮詰まった、底知れぬメンヘラじみた言動の数々。
未来は怒りと狂乱のままに、すべてを焼き尽くすための巨大な紫色の光線を海斗に向けて放った。
「未来……っ!」
海斗の脳裏で、覚醒しかけたフィーネの冷徹な意識と、未来を救いたいという自身の強い意志が激しくせめぎ合う。
だが、圧倒的な「護る意志」が海斗の右腕を突き動かした。
——ズオォォォンッ!!
放たれたアロンダイトの障壁が、未来の狂気の光線を完全に捉える。
そして次の瞬間、アロンダイトの持つ「守護の力」が、受け止めた膨大なエネルギーを、そっくりそのまま未来へと跳ね返した。
「なっ……!?」
自分の放った最強のエネルギーが数倍に膨れ上がって押し寄せてくる光景に、未来は息を呑む。
回避する暇もなく、跳ね返された光線が未来の全身を直撃した。
——パキィィンッ……! バリィィンッ!!
未来を包み込んでいたシェンショウジンの紫色の装甲が、耐えきれずに関節から粉々に砕け散っていく。
圧倒的なフォニックゲインの反動と衝撃に耐えきれず、未来は「きゃああっ!」という悲鳴と共に変身を強制解除され、その場に力なく崩れ落ちた。
「未来……っ!」
海斗が駆け寄り、意識を失いかけた未来の体をしっかりと受け止める。
その頭上では、海底深くから浮上した巨大な聖域——『フロンティア』が、禍々しくも神々しい光を放ちながら、ついに完全にその全貌を現していた。
「——キタァァァァァッ!! これだ! これぞ我が悲願の到達点だぁっ!!」
上空で待機していたエアキャリアのデッキから、ウェル博士が身を乗り出し、狂喜乱舞の声を上げていた。彼は両手を大きく広げ、嬉しさのあまり涙を浮かべながら、全身でその歓喜を爆発させている。
「見たまえ! この完璧なまでの神の御業を! 私の理論が、私の力が、世界を新しく書き換えるのだよハハハハハッ!!」
興奮を抑えきれないウェル博士は、マリアの制止も聞かず、自ら小型艇に飛び乗ると、目覚めたばかりの巨大なフロンティアの中枢へと向けて狂ったように突っ込んでいく。
裏切られた少女が倒れ、古の聖域がその口を開き、運命の歯車が音を立てて加速していく中、海斗は腕の中の未来を強く抱きしめ、歯を食いしばるのだった。