戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第五十六話 絆の残滓

 

 

漆黒の精神世界。青白い光を放つアロンダイトの概念体を前に、フィーネは細い顎に手を当て、面白がるように瞳を細めた。

 

『ふむ……なるほどね。私の魂がお前と同化したことで、この聖遺物の深層領域(ブラックボックス)へ直接アクセスできるようになったというわけか』

 

「フィーネ……お前、アロンダイトのことが分かるのか?」

 

海斗の問いかけに、フィーネは不敵な笑みを浮かべながら、アロンダイトが放つ波長にそっと指先を滑らせた。

 

『読み取れるわ。……これは、既存の「バラルの呪い」以前に存在した一般的な神殺しの具現とは、少々毛色が異なる代物ね。……驚いたわ。かつてノイズという破滅の生態兵器を生み出してしまった者たちが、己の犯した罪を深く反省し、贖罪のために聖遺物と生命の理を研究・結集して創り上げた“希望の兵装”——それがこの『アロンダイト』の正体よ』

 

「ノイズを作った者たちの……!?」

 

『ええ。生物の構造や生命力を応用し、災いを討ち払うために創られた生態結晶。……けれど、今のこれは不完全よ。この世界にはまだアロンダイトの『破片(欠片)』が散らばっており、回収しきれていない。今のこの状態での出力は……せいぜい50%程度といったところね』

 

アロンダイトから伸びる青い光の脈動が、静かに海斗の胸へと流れ込んでくる。フィーネは言葉を続けた。

 

『そして、この剣に刻まれた絶対の理(ことわり)は二つ——「守る力」と「治す力」。誰かを命がけで護ろうとする意志、そして傷つき損なわれたものを再生させようとする想いに応じてのみ、その真価は発揮されるわ』

 

「守る力と、治す力……」

 

『ええ。……ちっ、つまらないわね。今のこの剣の状態では、開示できる情報はこれくらいが限界のようだわ。これ以上の核心データはロックされている。……だが少年、お前にはこれで十分なのではないかしら?』

 

フィーネの嘲笑うような、けれどどこか挑発的な言葉に、海斗の脳裏で電撃が走った。

 

(治す力……傷つき損なわれたものを、再生させる力……!?)

 

その瞬間、闇の空間がガラスのように割れ、現実の爆音と熱量が海斗の感覚を一気に引き戻した。

 

——ガキィィィィンッ!!

 

「くっ……海斗! ボサッとするな、来るぞっ!」

 

現実世界では、ネフィリムの禍々しい巨大な爪が海斗に迫っていた。

 

間一髪で奏がガングニールの槍で受け止めるが、激しい衝撃波に二人の足元が大きく削れ散る。

 

「奏さん……! 俺、分かったんだ……!」

「はあ!? こんな時に何が分かったってんだよ!?」

 

ネフィリムが咆哮を上げ、無数の捕食口から黒紫色のエネルギー弾を連射してくる。

 

海斗は即座に右腕のアロンダイトを前に突き出した。

 

「アロンダイトの本当の力……! だぁぁぁぁっ!!」

 

——ズオォォォォンッ!!

 

海斗の叫びに呼応するように、アロンダイトから溢れ出た青白い光の障壁が、今までとは比べものにならないほどの密度で展開された。ネフィリムのエネルギー弾が無数の花火のように弾け飛び、完璧に散らされていく。

 

「なっ……出力が上がった……!?」

 

奏が目を見張る。

 

「響がいなくても……俺にはみんなを護りたい気持ちがある! そして……アロンダイトに『治す力』があるなら……!」

 

海斗は自分の右腕に宿る輝きを見つめ、特務潜水艦にいる仲間たちの姿を強く思い描いた。

 

神獣鏡の光によって壊され、消失してしまった響たちの聖遺物。

 

だが、アロンダイトの力、分解されただけならば——アロンダイトの「治す力(再生の波長)」を共鳴させ、壊れたギアを『治療』するように波長を送り込めば、もう一度聖遺物を復活させられるのではないか!?

 

さらに、響の体内に残るガングニールの融合記憶と、アロンダイトの再生の力を「繋ぎ直す」ことができれば——!

 

「奏さん! 潜水艦の響たちに通信を繋いでくれ! 響たちのシンフォギアを……もう一度復活させる方法がある!」

 

「海斗……お前……!よし、乗った!」

 

海斗の瞳に宿る確信に満ちた光を見て、奏はニッと力強く笑うと、ネフィリムの巨体を牽制しながら通信機を起動した。

 

絶望の海底フロンティアで、反撃の奇跡を起こすための新たな作戦が動き始めようとしていた。

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