戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
「消えたギアを……再生させるだって!?」
特務潜水艦のブリッジで、通信越しに響く海斗の声に、弦十郎司令が目を見開いた。
神獣鏡の光によって、響たちの聖遺物は「壊された」のではない。完全に粒子化し、この世界から「消滅」してしまっていたのだ。
存在しないものを直すことなど、本来であれば不可能なはずだった。
「……ああ! 確かに響たちのギアは消えてしまった! だけど、アロンダイトには『記憶』が残っているみたいなんだ!」
激しくネフィリムと交戦しながら、海斗が叫ぶ。
「アロンダイトは、これまで響たちのフォニックゲインを、その温かい光を、すぐ隣でずっと覚えていた……! 生態兵器として作られたアロンダイトの『治す力』と、その『記憶』を重ね合わせれば、ゼロからでもみんなのギアを再構築できると思う!」
「アロンダイトの記憶と……再生の力……っ!?」
響が自身の胸元を強く抱きしめる。ガングニールが消え去った胸の奥で、かすかに海斗の想いが、アロンダイトの温かな波動が伝わってくるのを感じた。
「響、翼、クリス、切歌、調……! 今からアロンダイトに眠るお前たちの聖遺物の『記憶』を、俺のフォニックゲインに乗せて送る!受け取ってくれ……みんなの帰る場所を、もう一度ここで創るんだ!!」
**――ズオォォォォンッ!!**
海斗の右腕に装着されたアロンダイトが、これまでにない神聖で眩い青白き光を放ち始めた。
それは破壊の力でも、拒絶の盾でもない。
失われた生命を、傷ついた絆を元通りに紡ぎ直す、純粋なる「再生の光」だった。
『受け取りなさい、少女たち……! アロンダイトに刻まれた、あなたたちの魂の形を!』
―――聖域治癒。
海斗の深層意識からフィーネの声が重なり、アロンダイトの出力が極限まで跳ね上がる。
アロンダイトから解き放たれた光の粒子は、通信波線を通り抜け、さらには空間の隔たりすら超えて、特務潜水艦のブリッジへと怒涛のように流れ込んだ。
「うそだろ……光が……っ!?」
クリスが息を呑む。
溢れ出た光は、響たちの体を優しく包み込み、失われたはずの聖遺物の「波形」と「記憶」を肉体に直接描き出していく。
——ガングニール。
——天羽々斬。
——イチイバル。
そして、絆を取り戻した少女たちの双輪
——シュルシャガナとイガリマ。
だが、変化はそれだけに留まらなかった。
再結晶化していく光粒子の中へ、海斗のアロンダイトが持つ「絶大なる守護と再生の波長」が深く染み込んでいく。
――キィィィン……ッ!
響たちの胸元で形作られていく聖遺物のペンダント。
本来であれば赤色を宿すはずの結晶体は、アロンダイトの絶大な力と干渉し合い、美しくも神々しい『白銀(はくぎん)』の輝きへと変容を遂げていった。
「ペンダントが……白銀色に……!?」
翼が驚愕の声を上げる。
響の胸元に揺れるガングニールの欠片も、翼の天羽々斬も、クリスのイチイバルも、そして切歌と調のペンダントまでもが、アロンダイトの祝福を受けたかのように、透き通るような白銀の光を解き放っていたのだ。
「感じる……! ガングニールの温かい歌が……私の中に戻ってくる……!」
響の瞳に、絶望を打ち破る強い光が蘇る。
胸の奥から湧き上がるフォニックゲインが、アロンダイトから与えられた再生の光と完全に共鳴した。
響、翼、クリス、調、切歌の5人が、自然と声を合わせて歌を紡ぎ出す。
光の粒子が収束し、不活性化し消去されたはずの聖遺物結晶が、彼女たちの胸元で再び鮮やかに再結晶化した。
**——バリィィィンッ!!**
眩い光の爆発とともに、5人は完全なるシンフォギアを身に纏い、その地に力強く立ち上がっていた。
「みんな……! ギアが……戻ったデス!!」
「お兄さんが……繋ぎ止めてくれたんだ……!」
切歌と調が歓喜の声を上げ、翼とクリスもまた、自分の拳に宿る懐かしくも力強い感触に頼もしく口元を緩めた。
「海斗……! 感謝するぞ、この恩はあの巨体を一刀両断にして返させてもらう!」
「見くびるなよウェル博士……! あたしたちの絆は、そんな鏡の一撃くらいじゃ断ち切れないんだよっ!」
響が空に向かって拳を突き出し、フロンティアの中枢へと通信を繋ぐ。
「海斗、奏さん! 今すぐ助けに行くよ! 私たちの歌で……月も、ウェル博士の暴走も、全部止めて見せる!!」
アロンダイトの奇跡によって復活を遂げた装者たちが、月落としの迫る絶望のフロンティアへ向け、一斉に飛び立った。