戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

6 / 19
第六話 守護の剣、戦場へ

 

 

ライブ会場へ向かって走る海斗のポケットで、携帯電話が激しく震えた。

 

「……!」

 

画面に表示された名前を見て、海斗は目を見開く。

 

**風鳴弦十郎。**

 

「もしもし!」

 

『佐々木海斗君だな。』

 

低く力強い声。

 

特異災害対策機動部二課 司令――風鳴弦十郎だった。

 

「はい!」

 

『説明は後だ。今すぐ救援に来てほしい。』

 

『ノイズがライブ会場を襲撃した。』

 

『こちらは装者二名で対応中だが、観客の避難が追いついていない!』

 

「……っ!」

 

海斗は強く頷く。

 

「分かりました!」

 

だが、通話を切ろうとした瞬間。

 

海斗の足が止まった。

 

(……待て。)

 

(弦十郎さんは、もう俺を知っていた。)

 

(だったら……。)

 

胸の奥が締め付けられる。

 

(最初から相談していればよかった。)

 

(未来のことを全部話して。)

 

(俺も最初からライブ会場に配置してもらっていれば……。)

 

(もっと多くの人を助けられたんじゃないのか?)

 

拳が震える。

 

「くそっ……!」

 

「少し考えれば、もっと良い方法があったんじゃないのか……!」

 

「俺は何をやってたんだ……!」

 

未来を知っていた。

 

弦十郎とも繋がっていた。

 

それなのに、自分は結局、事件が起きるのを待ってしまった。

 

「俺のせいで……。」

 

その時だった。

 

胸元のアロンダイトが静かに輝く。

 

『契約者よ。』

 

「……アロンダイト。」

 

『過去を悔やむことは容易い。』

 

『だが、過去は剣では斬れぬ。』

 

静かな声だった。

 

『剣が斬れるのは、常に"今"だけだ。』

 

『「あの時こうしていれば」。』

 

『その思考は、目の前で救える命すら見失わせる。』

 

海斗は目を閉じる。

 

深く息を吸い、ゆっくり吐いた。

 

「……そうだ。」

 

後悔なら、戦いが終わってからいくらでもできる。

 

今は違う。

 

「響を助ける。」

 

『それでいい。』

 

『守護の剣とは、過去を悔やむためではない。』

 

『今この瞬間、守るために存在する。』

 

海斗は力強く頷いた。

 

「頼むぞ、アロンダイト。」

 

『応。』

 

海斗は再びライブ会場へ向かって駆け出した。

 

 

避難する観客をかき分け、会場へ続く長い階段を一段飛ばしで駆け上がる。

 

携帯から再び弦十郎の声が響く。

 

『海斗君、聞こえるか。』

 

「はい!」

 

『現状を伝える。』

 

『ノイズは会場全域へ拡散。』

 

『翼と奏が交戦中。』

 

『避難誘導が追いついていない。』

 

『君は現場到着後、ノイズの殲滅と観客の救助を最優先で頼む。』

 

「了解です!」

 

海斗は走りながら、小さく聖詠を紡ぐ。

 

「Vox mea fit scutum, cor meum fit gladius──」

 

白銀の光が身体を包み込む。

 

「――Arondight!!」

 

光が弾ける。

 

白銀の装甲。

 

蒼いマント。

 

左腕には巨大な守護盾。

 

右手には白銀の聖剣。

 

守護騎士アロンダイトが、戦場へ降り立った。

 

 

ライブ会場。

 

そこは、すでに地獄だった。

 

悲鳴。

 

炎。

 

灰となって消えていく人々。

 

海斗は歯を食いしばる。

 

「逃げてください!」

 

盾でノイズの攻撃を受け止め、そのまま剣で一刀両断にする。

 

泣き叫ぶ子どもを抱き上げ、安全な通路へ運ぶ。

 

倒れた観客を助け起こし、避難路を切り開く。

 

守る。

 

そのためだけに剣を振るう。

 

 

「そこか!」

 

鋭い声とともに、蒼い斬撃がノイズを切り裂いた。

 

風鳴翼。

 

そして、その隣では赤い閃光が敵を吹き飛ばす。

 

天羽奏。

 

海斗は二人の前へ降り立つ。

 

奏が目を丸くした。

 

「あなたが司令の言ってた子?」

 

「佐々木海斗です!」

 

「援護に来ました!」

 

翼は海斗のギアを見つめる。

 

「そのギア……。」

 

「アロンダイトです。」

 

「……守護の聖遺物。」

 

短く呟く翼。

 

奏は力強く笑った。

 

「自己紹介は後!」

 

「まずはみんなを助けるよ!」

 

「はい!」

 

三人は散開する。

 

翼と奏が前線を押し返し、海斗は避難誘導と救助を担当する。

 

少しずつ、出口へ向かう人の流れができ始めていた。

 

 

その時だった。

 

海斗の視界に、見覚えのある女の子が映る。

 

「……響!」

 

人混みの中。

 

響が、小さな女の子を支えていた。

 

「もう大丈夫だから!」

 

「一緒に逃げよう!」

 

女の子は足を痛め、歩けなくなっている。

 

響は迷わず背負い、出口へ向かって走り出した。

 

(響……。)

 

こんな状況でも。

 

自分より、誰かを優先する。

 

それが立花響という少女だった。

 

海斗は思わず笑みを浮かべる。

 

「……やっぱり、お前はそういう奴だ。」

 

だが次の瞬間。

 

響たちの前へ、新たな大型ノイズが出現した。

 

「しまっ!」

 

海斗は全力で駆け出す。

 

しかし。

 

海斗よりも速く飛び込んだ影があった。

 

「させるかッ!」

 

天羽奏だった。

 

ノイズの一撃を真正面から受け止める。

 

轟音。

 

激しい衝撃がガングニールを襲う。

 

「ぐっ……!」

 

装甲に亀裂が走る。

 

次の瞬間――。

 

ガキィンッ!!

 

砕けたガングニールの破片が、無数に宙へ舞った。

 

その一片が。

 

運命に導かれるように。

 

響の胸へと吸い込まれていく。

 

「え……?」

 

鈍い音。

 

ガングニールの欠片が、響の胸へ深く突き刺さった。

 

「ぁ……。」

 

響の身体が揺れる。

 

背負っていた少女を庇うように抱きしめながら、その場へ崩れ落ちた。

 

「響ッ!!」

 

海斗の叫びが響く。

 

その光景を見た奏の表情が変わる。

 

胸に刺さったガングニールの欠片。

 

苦しそうに倒れる少女。

 

「……このままじゃ間に合わない。」

 

奏は静かに目を閉じた。

 

そして、決意する。

 

「翼。」

 

「後は、お願い。」

 

「奏……まさか!」

 

翼の叫びにも、奏は振り返らない。

 

海斗はその背中を見て悟った。

 

(やめてくれ……。)

 

(その先だけは……!)

 

だが、奏は静かに歌い始める。

 

黄金の光が、夜空を照らした。

 

――絶唱。

 

原作と同じ悲劇が、今まさに幕を開けようとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。