戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~   作:きりやんやん

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第七十話 黒き炎と白銀の加護

 

 

——ヨーロッパ・キャロルの隠れ家(工房)。

 

「……これ以上は、実験の精度に関わる。俺自らが直接確かめさせてもらおう」

 

「待て! キャロル! お前まで……んむっ!?」

 

冷徹な瞳をしたキャロルが顔を近づけてきたかと思うと、容赦なく海斗の唇を塞いだ。

 

ガリィやミカ以上の凄まじい錬金術の波長が海斗の脳内へ直接流れ込み、記憶の深層を暴こうと渦を巻く。

 

だが、アロンダイトの「不変の理」はそれすらも瞬時に弾き返し、溢れ出る記憶データをキャロル側へ逆流させていた。

 

「んっ……!? なんだ、この圧倒的な情報の奔流は……くっ……!」

 

「……もう勘弁してくれぇぇぇッ!! 俺の純情と唇をこれ以上玩具にするんじゃねぇぇぇ!!」

 

男としてのプライドと羞恥心が限界突破を起こした海斗の叫びに呼応するように、胸元のアロンダイトが白銀の光を全開で爆発させた!

 

——バァァァァンッ!!

 

『——マスターの精神(純情)がこれ以上穢されるのは耐え難い。緊急処置を実行する』

 

「なっ……何事だ!?」

 

キャロルたちが眩しさに目を細めた瞬間、海斗の胸元から白銀の光の帯が伸び

 

——海斗の口元にピタリと貼り付いた。

 

「んぐっ!? んーっ!?(な、なんだこれ!? ガムテープ!?)」

 

海斗の口元には、アロンダイトの聖なるエネルギーで形成された頑丈な『白銀のガムテープ』がガッチリと貼られていた。

 

『ふむ、拘束は解けそうにないが。これで我が主がこれ以上過剰に叫んで混乱することも、不用意に唇を奪われることも防げる。我ながら素晴らしい判断だ。』

 

「んーっ! んーっ!!(喋れないだろ! 拘束を解けよ!!)」

 

口を塞がれて目を丸くする海斗に対し、アロンダイトはどこか満足そうに光を明滅させる。

 

そして、拘束陣に縛られたままの海斗に代わり、アロンダイトは静かにその「真価」を発揮し始めた。

 

『……我が主の体は動かせずとも問題はない。我のフォニックゲインは、距離など容易に越える』

 

「何……? 遠隔でエネルギーを転送しているというのか……!?」

 

キャロルが目を見開く。

 

アロンダイトから放たれた巨額のフォニックゲインと絶大な神聖波長が、次元の歪みを突き抜け、遙か彼方——日本の戦場へと一直線に射出されたのだ!

 

---

 

**——日本の市街地。**

 

「ハァ……ハァ……っ! 舐めるなよ……ノイズどもッ!!」

 

赤髪を振り乱し、血を流しながらガングニールの槍を振るう天羽奏。

 

周囲を取り囲むのは、ファラ・スユーフと無数のアルカ・ノイズの群れだ。

 

「無駄な抗いですわ、シンフォギア奏者。他の者たちのギアは全て砕け散った。お前ひとりで何が守れるというのです?」

 

ファラの斬撃が奏の肩を深々と切り裂く。

 

奏は膝をつきそうになりながらも、牙を剥き出しにして笑った。

 

「守るもの……? 決まってんだろ……! あいつらの……未来と……皆の笑顔だッ!!」

 

「ならば、その愚かさごと消え去りなさい!」

 

ファラの剣が閃き、アルカ・ノイズが一斉に跳びかかる絶体絶命の瞬間——!

 

——ドガァァァァァンッ!!

 

空から落ちてきたのは、漆黒の炎を纏った爆風!

 

迫り来るアルカ・ノイズを一撃で吹き飛ばし、爆煙の中から一人の少女が降り立った。

 

黒き炎の装甲、禍々しくも圧倒的な威容を誇るガングニールを纏った立花響であった!

 

「奏さん……! 遅くなって、ごめんなさいッ!」

 

「響……!? お前、そのギアは……!?」

 

二課の本部で、危険を承知でエルフナインからイグナイトの先行調整を受けた響。

 

だが、イグナイトは魔剣ダインスレイフの「呪い」を宿す諸刃の剣。響の瞳は赤く染まり、黒き炎がその精神を飲み込もうと狂暴に渦巻いていた。

 

「うあ……あぁぁぁッ! 身体が……心が……焼ける……ッ!?」

 

「響ッ! しっかりしろッ!」

 

イグナイトの呪いに押し潰されそうになる響。

 

ファラが冷酷に笑う。

 

「ふん、自滅ですか。愚かな選択を——」

 

その時だった。

 

**——キィィィィンッ……!!**

 

上空の空間が歪み、夜空から『眩い白銀の光の柱』が降り注いだ!

 

光は響と奏を包み込み、響を苛んでいたイグナイトの黒き呪いを強烈に調和していく!

 

「なっ……この温かいエネルギーは……!?」

 

響の瞳に正気が戻り、黒き炎が「制御された絶大な力」へと変貌を遂げる。

 

奏の全身の傷も、光に触れた瞬間に急速に塞がっていった。

 

「……海斗か!?」

 

奏が空を見上げて叫ぶ。

 

間違いなかった。

 

遠く離れた場所から、海斗のアロンダイトが二人に莫大なフォニックゲインと絶対の防護波長を送り届けていたのだ。

 

「あいつ……どこにいるのか分かんねえが、最高のタイミングでアシストしてくれやがる……!」

 

奏はガングニールの槍を力強く構え直し、響の隣へと並び立った。

 

響もまた、胸の前で拳を強く握りしめる。

 

「海斗くんが……守ってくれてる……! 奏さん、行きましょう! 二人のガングニールで……みんなの未来を取り戻すためにッ!」

 

「応ッ! 叩き潰すぞッ!!」

 

黒き炎を身に纏う響と、満身創痍から解き放たれた奏。

 

アロンダイトの奇跡の加護を受けた二人の槍が、今、反撃の狼煙を上げる!

 

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