戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
遙か彼方、ヨーロッパのキャロルの工房から射出された白銀の光柱は、日本の戦場を覆う絶望を切り裂いた。
光に包まれた天羽奏は、自身の全身の傷が急速に癒えるのを感じ、震える手でガングニールの槍を握り直した。
立花響を苛んでいたイグナイトモジュールの『力の暴走』も、アロンダイトの波長によって中和され、漆黒の炎は暴走を止め、彼女の意志に従う強大なる『力』へと変貌を遂げていた。
「ハァ……ハァ……っ! 海斗のフォニックゲイン……みんなの未来を……守ってみせるッ!」
響の瞳が再び正気を取り戻す。
——キィィィィンッ! バラバラバラッ!
響が一歩踏み出すと、足元のアルカ・ノイズ数体が、その存在自体を否定されたかのように塵となって霧散した。
「なっ……!?……ッ!?」
ファラは目を見開いた。あらゆる聖遺物を塵に変えるはずのアルカ・ノイズの爪が、響を包む白銀の光と黒き炎に弾かれ、逆にノイズ自身が崩壊しているのだ。
「海斗の加護がある今、あたしたちは最強なんだよッ!! 行くぞ、響ッ!!」
奏が叫ぶと同時に、二人のガングニール奏者は弾かれたように跳躍した。
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——ヨーロッパ・キャロルの隠れ家(工房)。
一方その頃、ヨーロッパの工房では——。
「……ほう。既存のフォニックゲインとは質が違う。より純粋で、概念的な『波長』。……素晴らしい、これが賢者の石の力か。」
キャロルは工房の中央で、胸元から出た白銀のテープで口をガッチリ塞がれ、拘束陣に縛られている海斗を見つめていた。
海斗の胸元にある盾形ペンダント『アロンダイト』から、眩い光が絶えず日本へと転送されている。
「んーっ! んんーっ!!(おいアロンダイト! なんで口を塞ぐんだよ! 喋れないだろッ!!)」
海斗は口を塞がれながら、必死に首を振って暴れる。
すると、ペンダントがドヤ顔ならぬ「ドヤ光」を明滅させ、頭の中に自信満々な声が響いた。
『——主よ、静かにしてくれ。無駄な絶叫はエネルギーを著しくロスする。ゆえに我が力で唇を物理的に完全封印した。これで効率的に遠隔転送に集中できる。……フッ、我の完璧すぎるサポートに感謝してくれても―。』
「んーっ! んんんーっ!!(感謝できるかバカ! 拘束を解けって言ってるんだよ!!)」
『なに?「テープを剥がせ」?ご安心ください、これは我が精巧に生成した特製テープだ。マスターが暴れても絶対に剥がれない頑丈仕様となっている!』
「んーっ!!(そうじゃねぇぇぇッ!!)」
大真面目にズレた判断をしてドヤる相棒に、心の中で激しいツッコミを入れまくる海斗。
「ふふ……本当に面白い。言葉を封じられてもなお、そのペンダントと完璧に意思疎通が取れているようだ。」
キャロルは海斗の頬にそっと触れ、不敵に目を細めた。
「ガリィ、ミカ、レイア。……計画を次の段階へ進める。この男の術式を解明し、万象黙示録の完成に利用する。」
「……了解だゾッ!」
「フッ、今度こそあのペンダントのカラクリ、暴いてみせるさ。ワタシに地味な敗北は似合わないからね」
工房の奥から、レイア、ガリィ、ミカが姿を現す。
「……海斗。世界の解体の前に……『賢者の石』の奏者を手に入れるという至高の奇跡、我が錬金術の全てを賭けて、解き明かさせてもらうよ」
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——日本の街中。
アロンダイトの(少々トンチキな)加護と、響の制御されたイグナイトの力により、日本の戦況は完全に逆転していた。
「……何故……! アルカ・ノイズが……悉く塵に……ッ!?」
ファラは混乱していた。
どれだけノイズを投入しても、二人の奏者を塵に変えるどころか、近づくことすらできずに撃破されていく。
「…風の吹くまま、気の向くまま。戦場に優雅さを忘れては、それこそ自動人形の名が泣きます。」
落ち着きを取り戻したファラは大量のアルカ・ノイズを合体させ、巨大な魔獣の形へと変貌させた。
「さあ、美しく砕け散りなさい。」
巨大化したノイズの魔獣が、二人の奏者へ襲いかかる。
「響! 合せるぞッ!」
「はいッ!」
奏が槍を構え、響が拳を固める。
遠く離れた海斗から送られてくる白銀の光が二人のエネルギーを綺麗に調和させ、巨大なフォニックゲインの奔流を生み出していた。
「「これがあたしたちの……シンフォギアだぁぁぁぁぁッ!!」」
奏の槍撃と響の拳が、巨大ノイズの核心へと同時に叩き込まれた。
——ドゴォォォォォォンッ!!
夜空を切り裂く、白銀の光と黒炎の爆発。
巨大ノイズの魔獣は、その莫大なエネルギーによって、塵となることすら許されず存在ごと吹き飛ばされた。
「フフ……今回はこのくらいにしておいてあげます。それでは、ごきげんよう……ッ!」
ファラは残像を残し、撤退していった。
崩れ去る爆煙の中、奏と響は息を整えながら、勝利のハイタッチを交わした。
「勝った……勝ったよ、奏さん!」
「ああ! ……でもよ響、この凄まじい援護……海斗のやつ、向こうで一体どんな格好いい戦い方してやがんだ?まさか、また代償をはらったりしてないよな?」
「ふふ、きっと海斗のことだから、すごく格好よくアロンダイトと戦ってくれてますよ!」
二人がそんな感動的な会話を交わしている頃——。
当の海斗はヨーロッパの工房で、口にガムテープを貼られたまま「んーっ! んーっ!(だから剥がせって言ってるだろアロンダイトォォォッ!)」と、ポンコツな相棒に対して心の中で全力の叫びを上げ続けているのだった。