戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
——日本のS.O.N.G.指令室。
エルフナインの手によって、天羽奏の身に纏う『ガングニール』へ精密走査(スキャン)の光線が照射されていた。
「……ありました! 奏さんのガングニールから、微弱ですが海斗さんのアロンダイトと同じ固有波長が検出されました!」
モニターに表示された2つの波長データが、まるで呼吸を合わせるかのようにピタリと重なり合い、美しい干渉パターンを描き出す。
「これは……『量子の対(つい)』のような共鳴反応です! ヨーロッパにいる海斗さんの本尊(アロンダイト)と、奏さんのギアに残された波長が、空間を超えて互いを呼び合っています!」
「なぜ……奏のギアにだけ、そんな波長が残っているんだ?」
風鳴弦十郎が問うと、エルフナインは画面の解析データを指さしながら、自身の仮説を語り始めた。
「以前、奏さんが絶唱による負荷で絶命しかけた際……海斗さんは自らの寿命と引き換えに『聖域治癒(アロンダイトの力)』を発動させて彼女を救いました。その時、奏さんの身体だけでなく、ガングニールのギア構造の深層にまで、海斗さんの『不変・再生』の聖域波長が深く刻み込まれたのです」
「……あいつの寿命を使った、命がけの……その副産物ってことか」
奏は己の胸元にそっと手を当て、感慨深そうにガングニールを見つめた。
「ええ。アルカ・ノイズの干渉破砕を受けても、奏さんのギア自身が常時ミクロ単位で自己修復と分解の無効化を繰り返し続けていた……だからこそ、奏さんのガングニールだけは一度も破壊されることがなかったのです!」
エルフナインは鍵盤を叩き、解析プログラムを加速させる。
「この奏さんのギアに残る共鳴波長を解析し、出力を極限まで増幅させれば……キャロルが隠れ家に張り巡らせている錬金術の結界を突き破り、海斗さんの正確な位置をピンポイントで逆探知できます!」
——ピコンッ!!
モニターに映し出されたヨーロッパの地図上、ある廃城の一角に鮮やかな赤色のマーカーが点灯した。
「捕捉完了しました! キャロル・マルス・ディーンハイムの隠れ家……その座標を完璧に割り出しましたッ!」
「よくやった、エルフナイン!」
弦十郎は力強く腕を組み、指令室の全員を見渡して力強く宣言した。
「居場所は判明した! これより突入作戦の最終準備に入る。**出撃は明朝ッ!** 各員、ブリーフィング室にて待機せよ!」
「「「了解ッ!!」」」
◇
---
——明朝出撃前、ブリーフィング室。
出撃の刻を控え、装備の最終チェックを行う奏者たち。
重苦しい緊張感が漂う……はずの部屋で、天羽奏は自分のガングニールを愛おしそうになでながら、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。
「へぇ〜……そっかぁ。つまりこのガングニールは、海斗と私の『愛の結晶』ってことだな♪」
「「「……っ!?」」」
奏の唐突な発言に、室内にいた全員の手がピタリと止まった。
奏は腕を組み、いかにも勝ち誇ったようにみんなへ向かってマウントを取り始める。
「だってそうだろ? あいつが命(寿命)を削ってまで俺に残してくれた特別な波長のおかげで、俺だけがこうして無傷でいられたんだからな。普段の訓練でも息がぴったり合うし……ふふん、やっぱり私と海斗は『運命』で結ばれてるのかなぁ?」
「な、なに言ってるんですか奏さんッ!?」
一番に噛みついたのは立花響だった。顔を真っ赤にして立ち上がる。
「海斗は私のご飯を『おいしい』っていつも笑顔で全部食べてくれるし、この前だって手をつないで歩いたんだから! 絆なら私だって負けてません!」
「ふっ……甘いな、立花」
風鳴翼が静かに、しかし絶対の自信を込めた眼光を向けた。
「私と海斗は、幾度となく戦場を通じて魂の語らいを重ねてきた間柄だ。言葉がなくとも互いの呼吸で分かり合える……これこそ至高の絆と言えよう」
「ちょっと待てよッ!」
クリスが身を乗り出し、バンッと机を叩いた。
「アタシなんてこの前、買い出しの帰りに二人でジュース半分こしたんだぞッ! 海斗が『一口ちょうだい』って言うから……あ、同じストローで……(顔面大噴火)」
「デスッ! 私たちだって負けてないデス!一緒にデートもしたデース!」
「お兄さん、私の頭を撫でながら『本当に可愛いね』って抱きしめそうになってくれたんだから……!」
切歌と調も負けじと親密エピソードを投下する。さらにマリアまでが腕を組んで前に出た。
「ふふ、甘いわねみんな。私が夜遅くまで作戦書を書いていた時、海斗は優しく『無理するな』って自分の上着を肩に掛けてくれたのよ? あの温もりは本物だったわ」
「……みなさん、静かにしてください」
ズンッ……!!
ひときわ低い、絶対零度の声が部屋に響き渡った。
小日向未来が、静かな、しかし眼光に黒いオーラを宿らせて歩み出てくる。
「海斗くんが本当に心を開いて、一番ピンチの時に素の自分を見せるのは……誰だか分かってますよね……? 写真の件は事故だったって信じてあげてますけど……海斗くんの『一番』は、譲りません。」ゴゴゴ
「「「……っぐ!!」」」
部屋の空気は一瞬にしてバチバチとした火花が散る【殺気満載の修羅場】へと変貌を遂げた。
「へえ、みんな言うねぇ? でも現実に海斗の波長をその身に宿してるのは、この私なんだよなぁ〜♪」
奏が追い打ちをかけるようにニシシと笑うと、全員の目が血走り、まさに開戦前夜の暴動が起きようとした——その時!
——バァァァンッ!!
「コラァァァァァッッ!!」
ブリーフィング室の扉が爆音とともに叩き開けられ、鬼の形相となった風鳴弦十郎が怒号を轟かせた!
「何を壁一枚隔てた部屋でキャッキャとくだらんマウント合戦をやっとるかッ! 司令室までお前たちのバチバチした殺気が筒抜けだぞッ!!」
「「「「「「「ヒ、ヒエッ……!!」」」」」」」
一瞬で背筋をピシッと伸ばし、直立不動になる少女たち。
「キャロルのアジトへ向けて大型輸送機が出撃準備を完了した! 無駄口を叩いている暇があるなら、一刻も早く海斗を救い出しに行くぞッ!!」
「「「は、はいッッ!!!!」」」
弦十郎の一喝により、修羅場は一瞬で吹き飛んだ。
少女たちはそれぞれの想いと、海斗への強い愛(と奪還の決意)を胸に秘め、決戦の地・ヨーロッパへと飛び立つのだった——!