戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
**——ヨーロッパ上空、S.O.N.G.大型輸送機。**
雲海を突き抜け、突風が激しく吹き荒れるハッチの最前線。
ガングニールを纏う天羽奏と、拳を固める立花響が並んで立っていた。
「いいか響!作戦は単純明快な『陽動』だ!あたしたちが表からド派手に暴れて結界を破壊し、敵の注意を全部引きつける!」
「はいッ!その隙に海斗を助け出すんですね!」
「そういうことだ!海斗は……このあたしたちが絶対に連れ戻すッ!!」
——ドガァァァァンッ!!
ガングニールの出力を全開にした二人は、ヨーロッパの深い森に隠された古城の結界へ目掛けて急降下を開始した!
◇
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——隠れ家・拠点前広場。
「敵襲だゾッ!奏者どもがおでましだゾッ!!」
降下の衝撃とともに結界が砕け散り、舞い上がる煙の中から現れた二人を迎撃したのは、黄色い瞳をギラつかせたミカ・ジャヴカン、そして大量のアルカ・ノイズ群だった!
「海斗は渡さないゾ! あいつとはキャロルとの戦いが終わったら『ハンバーグ』を食べに行く約束があるんだゾッ!!」
ミカは爪を鋭く研ぎ澄まし、野性的な叫びとともに弾丸のような速度で突撃してくる。
「は、ハンバーグ……!? 海斗、また新しい女の子ナンパしたのーッ!?」
響の嫉妬混じりの叫びが夜空に響く。
「浮気(?)してる暇があったらあたしらのところに戻ってこいってんだバカ野郎ォォォッ!!」
奏が激怒のフォニックゲインを爆発させ、ガングニールの槍でミカの爪を受け止めた!
——ズガガガガガッ!!
強烈な火花が散り散りに弾け飛ぶ。
「へっ! いい顔するようになったじゃねぇかゾ! だが海斗の思い出も命も、アタシたちがいただくんだゾッ!」
「させるかぁぁぁッ!!」
響のイグナイトの黒炎を纏った拳と、奏の鋭い槍撃が縦横無尽にノイズの群れを薙ぎ払う。
ブリーフィング室での修羅場の熱量をそのまま叩きつけるような怒涛の攻撃だ。
しかし——相手は干渉破砕能力を持つアルカ・ノイズと、圧倒的な戦闘能力を誇るオートスコアラー。
さらに奥からはガリィやファラまでもが姿を現し、遠距離からの高圧水流と圧倒的な数の暴力で二人を攻め立てる。
「くっ……数の押しが凄まじい……ッ!」
「奏さん、後ろからもノイズが……きゃあっ!?」
次第に防戦一方となり、傷を重ねていく奏と響。二人は背中合わせになり、刻一刻と体力を削られていく劣勢の渦中に立たされていた。
◇
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——一方、ヨーロッパの隠れ家・内部(工房)。
表での激しい戦闘の爆音と振動が、重々しい壁を伝って響いていた。
「まったく……外が騒がしい。ガリィたちも手こずっているのか。」
キャロルが不快そうに眉をひそめ、拘束陣の中央で白銀のテープを口に貼られた海斗へ視線を戻した。
「さて、海斗。邪魔が入る前に『解剖』の続きを——」
——サッ……!
「……なにッ!?」
キャロルが目を見開いた瞬間、海斗の背後の影から**一筋の黒い影**が滑り出した。
「——忍法・影潜」
低い静かな声とともに現れたのは、S.O.N.G.の要人エージェント・緒川慎次
「……佐々木さんを頂戴いたしますッ!」
緒川は瞬く間に特殊素材のクナイを振り下ろし、キャロルの拘束術式の核心部を正確無比に切断!
さらに煙幕弾を床へ叩きつけ、一瞬で広がる濃霧の中で海斗を小脇に抱え上げた。
「なっ……忍び……だと……ッ!?」
「んーッ!?(緒川さん!? 助けてくれたのかッ!?)」
「お静かに、佐々木さん。このまま撤退いたします!」
緒川は壁の影を縫うように跳躍し、驚愕するキャロルを置き去りにして見事な手際で工房を脱出していった。
◇
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——S.O.N.G.大型輸送機・指令モニター前
「風鳴司令! 緒川エージェントより連絡! 海斗さんの救出に成功、無事に機内へ収容しましたッ!」
「よしッ! 奏、響! 海斗の救出は完了した! 直ちに離脱せよッ!」
通信を受けた奏と響は、満身創痍ながらもノイズの群れを大きく薙ぎ払い、上空から降下してきた回収用ワイヤーへ飛びついた。
「くっそー! 逃げられたゾッ!!」
悔しそうに地詰まりを踏むミカの叫びを背に、輸送機は急上昇して戦場を脱出する。
……そして、輸送機内のメインモニターには、救護ベッドに腰掛け、安堵の息をつく海斗の姿が大きく映し出されていた。
『ふぅ……助かったよ。奏も響も、みんなありがとう!』
画面越しの海斗の笑顔に、無事に帰還した奏と響は胸を撫でおろし、通信越しに声を弾ませた。
「無事でよかったよ、海斗……!」
「まったく、心配させやがってバカ野郎が……!」
だが……。
海斗は自分自身では『まったく気づいていなかった』。
キャロルたちの隠れ家で、ガリィやミカたちから『アロンダイトと記憶の解明実験』と称して、強引に代わる代わる唇や肌を奪われまくっていたということを。
そして、その過酷(?)な実験の痕跡——。
首元を緩めた海斗の真っ白な首筋から胸元にかけて、ミカやガリィによって付けられた大量の鮮烈なキスマーク(愛の痕跡)が、くっきりとカメラに映し出されているということに……!
『ん? なんだ? みんな急に黙っちゃって……首筋がなんかちょっと痒いんだよな……?』
能天気に首をポリポリと掻く海斗。
その瞬間——。
輸送機のブリッジの温度が、一瞬で氷点下まで叩き落とされた。
「………………」
モニターを最前列で見つめていた『小日向未来』。
その瞳から、すーっと全ての輝き(ハイライト)が消え去っていく。
顔に落ちる濃い影。
ゆらゆらと立ち昇る、怨念のような漆黒のオーラ。
「……ねぇ……海斗くん……?」
未来の口元から漏れ出たのは、この世の終わりを告げるような、低く静かな絶望の声だった。
「その首の痕……なぁに……?」
救出の歓喜は一瞬にして霧散し、輸送機内に、どんなアルカ・ノイズよりも恐ろしい「本当の絶望」が満ちていくのだった——。