戦姫絶唱シンフォギア ~守護の剣は幼馴染を救いたい~ 作:きりやんやん
——S.O.N.G.本部・地下
「行くぞ響! あたしたちの歌で、みんなのギアを叩き起こすッ!」
「はいッ! 奏さんッ!!」
特設ステージの中央、ガングニールの装甲を纏った天羽奏と立花響が並び立ち、その中央でアロンダイトを纏った海斗が静かに集中を高めていた。
二人のガングニール奏者が息を合わせ、全力全開のフォニックゲインを歌声へと乗せて解き放つ。空間が目に見えるほどのエネルギーの波で揺らぎ始めた。
海斗は胸元のアロンダイトへと問いかける。
「アロンダイト、確認だ。聖域治癒で行うギアの再構成に……リスクや反動はあるか?」
アロンダイトのセンサーが淡い白銀の光を明滅させ、無機質で機械的な声が響く。
『——主よ。リスク演算を実行。……自壊の危険性はありません。ただし、全ギアの同時全回復は不可。エネルギーの局所集束により、一機ずつの段階的な『順次再構成』であれば安全率は99.8%と判断』
「リスクがないなら十分だ。……司令、許可をください!」
司令室のモニター越しに、風鳴弦十郎が力強く頷いた。
「よし! 奏者へのリスクがないのなら問題ない! アロンダイトの聖域治癒、実行を許可するッ!」
「了解! アロンダイト、翼さんのギアから行くぞッ!」
『——聖域治癒』
奏と響の歌声(フォニックゲイン)を吸い上げたアロンダイトが、眩いばかりの純白の光を放った。
——キィィィィンッ!
翼が白銀の光に包まれると、まるで巻き戻しのように結晶が空間から現れ、一瞬にして元の美しいペンダントの形を取り戻した!
「翼さんのギアが……戻った……!」
「よし、この調子でどんどんいくぞッ!」
白銀の光は留まることを知らず、順々に台座を照らしていく。
消失していたクリスの『イチイバル』、切歌の『イガリマ』、調の『シュルシャガナ』、そしてマリアの『アガートラーム』。
順番に、無から生み出されるかのように結晶が再構成され、本来の威容を取り戻していく!
「すごいです……! 全ギアの修復、完了しました!」
エルフナインが歓声をあげ、即座に作業台へと駆け寄る。
「休む間も無く、全ギアへの『イグナイトモジュール』最終組み込み作業に入ります! これで……これでみんな、キャロルたちと対等以上に戦えますッ!」
復活したギアを手に取り、翼やクリスたちが感無量の表情で見つめ合う。
反撃の準備は、着々と整いつつあった。
◇
---
——翌日、湾岸エリア・巨大電力施設。
——ドドォォォォンッ!!
爆風とともに電力施設の巨大な外壁が吹き飛んだ。
煙の中から現れたのは、キャロル、そしてオートスコアラーのミカとガリィだった。
「…万象黙示録の完成まであとわずか。」
「へへッ! 誰も邪魔しに来ないなら、全部アタシがぶち壊してやるゾッ!」
ミカが笑い、爪を鳴らした——その瞬間!
「「だぁぁぁぁぁッ!!」」
上空から凄まじい衝撃波とともに、響と奏が急降下!
ガングニールの槍と重厚な拳が、ミカとガリィの眼前を激しく穿った!
——ズガァァァァンッ!!
「ちッ……! またお前たちかッ!」
ガリィが水を纏って退避し、ミカも跳躍して着地する。
煙の奥から、ガングニールを構える響と奏、そしてアロンダイトを纏った海斗が堂々と姿を現した。
「ここから先へは一歩も通さない……ッ!」
海斗が鋭い眼光でキャロルを見据える。
だが、キャロルはどこか楽しそうに目を細めた。
「フハハッ、見つけたぞ海斗。昨日はよくもオレから逃げてくれたものだ。せっかくお前と……『濃厚な吻(くちづけ)』の続きをしてやろうと思っていたのだ。大人しくオレに全てを差し出せ!」
——ピキッ。
響と奏の眉間が引きつる。
「な、なに言ってるのキャロルちゃん……!? キスなんて不意打ちだったって海斗くん言ってたのに……!」
「不意打ちだろうが何だろうが、事実だゾ? それに、アタシだって負けてないゾッ!」
ミカが海斗を指さし、大声で胸を張った。
「海斗! アタシとの『ハンバーグの約束』を破ったら許さないゾ! 次は思い出だけじゃなくて、命ごとぜーんぶ吸い尽くしてアタシのモノにしてやるんだからなッ!!」
「クハッ、いいじゃん! ついでにアタシもさ、あいつの体温と記憶、ゴミ箱に捨てるみたいに全部絞り尽くして、ただの人形にしてやるよ!」
ガリィまでが不敵に口元を歪める。
……その瞬間、電力施設一帯の温度が氷点下まで急降下した。
通信機越しに、SONG本部で待機している翼、クリス、切歌、調、マリア、そして小日向未来の殺気立った息遣いがビンビンに伝わってくる。
「……海斗」
奏が、見たこともない恐ろしい笑顔で海斗を振り返った。
「吸い尽くす……? へぇ……向こうでもかなり『モテモテ』だったみたいだなぁ……?」
「海斗……私、信じてたのに……『ハンバーグ』なんて……私とだってまだ行ったことないのにぃぃぃッ!!」
嫉妬で全身から黒炎(イグナイト並みの殺気)を噴き出させる響と奏。
(……あ、ダメだ。これ、仮にこの戦闘を無傷で生き残れたとしても……帰ったら未来たちに絶対殺される……)
海斗は勝利の先に待つさらなる絶望を確信し、冷や汗をダラダラと流しながら白目を剥きかけた。
「……ふん、下らないお喋りは終わりだ」
キャロルが錬金術の光を掌に宿し、冷酷に言い放つ。
「身の程を知れ。オレがここで、すべてを塵にしてやろう!」
「海斗はアタシがいただくゾッ!」
「叩き潰す!」
キャロルたちの襲撃に対し、奏者たちの怒りと嫉妬が限界突破のフォニックゲインとなって爆発する!
「響! 全部叩くぞ! あたしはあの水女を倒すッ!」
「はいッ! キャロルちゃん……海斗に変なこと言わないでッ!!」
「おいおい……俺の相手はミカなのかよッ!?」
それぞれの思いと殺気が交錯し、激突の火花が散る!
キャロルの巨大な魔力に向かって、怒りの拳を握りしめ跳躍する響 VS キャロル!
水流を操るガリィに対し、光の旋風を纏って槍を突き出す奏 VS ガリィ!
そして、「ハンバーグ!!」と叫びながら爪を立てて襲いかかるミカに対し、絶望的な表情で剣を構える海斗 VS ミカ!
三つの激闘が、今同時に火蓋を切った——!