主人公ガチ恋勢、悪役転生する〜TSしてでも勇者と結婚したいからバグを悪用しよう。メインヒロインなんかに渡すもんか!   作:丸尾裕作

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第28話  闇エルフと魔覚醒

学園のだだっ広い校庭の隅っこに私はいた。

 木々がいっぱいあるから、何となく緑を見ていると落ち着くのだ。

 

 アッシュとボロボドスが近くのベンチの仲良く座っているのを見つけた私は駆け寄った。

 

 私はまずは胸を張って、俺とアッシュをじっと睨みつける。

 威圧するつもりはなかったけど、つい気合が入ってしまった。

 

「私だって魔覚醒ぐらいできるわよ」

 

 思い切った宣言をした。

 

 私の思いが止まらなかった。

 アリシアにもミラにも負けたくない!

 私が1番だ。

 

 私の手汗はびっしょりだ。

 なんか脇から足裏までどこかしこも落ち着かない気がする。

 変なにおいとかしないかしら?

 あーもう、水浴びたい!

 

 焦りが止まらない。

 おんなじ考えで頭がずっとぐるぐるしている。

 心臓の動悸が止まらないことから痛いほどわかる。

 

 ボロボドスは驚いた様子で見上げてきた。

 

「どうした? いきなり」

 

 そんな強がりな私と裏腹の様子に気づかないのか、アッシュが不敵に笑う。

 

「へぇー、やってみろよ」

 

「ふんっ!」

 

 なんかムカつく。

 

「いやっー!」

 

 アッシュの赤いスカートが巻き上げてやった。

 幸いパンツはボロボドスには見えなかったみたい。

 

「い、い、いい心意気じゃないか?」

 

 ボロボドスは狼狽えたえていた。

 アッシュのパンツを見なかったことにホッとしていたみたい。

 

 何よ、私のだったら気にもしないくせに。

 でも、いつか絶対ドキドキさせてやる!

 アッシュが「うぅー」と涙目になっているのを見ているので少し満足だ。

 

「ボロボドス、見てなさい、魔覚醒ぐらいすぐにできるんだから」

 

 私なりに啖呵を切って、その場を立ち去った。

 

 ボロボドスとアッシュのことは気にせず、私は校庭の真ん中に向かった。

 アッシュとボロボドスが追っかけてくるのは何となく肌で感じた。

 

※

 

 校庭の真ん中に来て、魔法陣を発動させようと気合は入れたものの私は焦っていた。

 

 毎日、毎日、魔法の練習はしている。

 練習量だけなら、ミラやアリシアには絶対負けていない。

 

「今日こそ成功させてやるわ、見てなさい、ボロボドス!」

 

 魔法陣が光り、風が流れ出てきた。

 

「風よ、ワープゲートオープン」

 

 ばしゅん。

 

 いつもと違う音がなった。

 

 ひゅーとかなるはずなのに、何かが召喚された音だった。

 

 何かが出てきた。

 

 黒色の右手だった。

 

「は?」

 

 私も見たことがないものだった。

 それはもう巨大な手だった。

 

『わらわを呼んだのは誰じゃ』

 

「失礼ですけど、誰ですか?」

 

 私は幼いけど貫禄のある声に私なりに丁寧に応対した。

 

『魔王だが?』

 

「なんちゅうもん呼んでるんだよ!」

 

 近くに来たボロボドスが冷や汗をかいているのが見える。

 

「そ、そ、空が暗くなった」

 

 アッシュも空を見てそう呟いた。

 

『さぁ、世界を曇らせようか』

 

 校舎内の生徒たちが悲鳴を聞こえた。

 

「不吉だあああああああああああ!」

「終わりだああああああああああああ!」

「王都が滅ぶううううううううううう!」

 

 校舎から生徒たちの阿鼻叫喚が聞こえる。

 

「落ち着いてほしいんだけどなぁ」

 

 アッシュだけがはやたら冷静だった。

 

 魔法陣からはどう見ても右手しか出てない。

 私にとってはそこまで怖いものには思えない。

 

『ふむ』

 

 魔王の手が指を動き、人差し指でアッシュのことを指差す。

 

『あの赤髪の娘は誰だ?』

 

「俺?」

 

 アッシュが自分のことを指差して、冷や汗をかいている。

 

『そう、お主じゃ、勇者の気配がする、かわいいな』

 

「え? 見えてるの?」

 

 魔王の右手の人差し指がわずかに曲がる。

 どうやら頷いているらしい。

 

『曇らせたい』

 

 魔王の声が少しうわずっていて、扇状的に聞こえた。

 

「いやいやいや」

 

『髪が綺麗だ』

 

 やっぱり声がやたらと色っぽい。

 興奮しているみたいだ。

 

「やめて」

 

『顔も整っている』

 

 魔王に口説かれるアッシュ。

 私は何だか面白いものを見てる気がして手出しする気にはなれなかった。

 私ってやっぱり悪い子?

 

「やめろ」

 

『実にかわいい』

 

 まるでアッシュを褒めるボロボドスだなぁと呑気に考えていた。

 

「やめろぉ!」

 

 アッシュが顔を真っ赤にした。

 

「魔王が何やってんだよ」

 

『ほめて曇らせているつもりじゃ』

 

「俺のアッシュに何をしている!」

 

 ボロボドスが声を荒げた。

 

 え?いつからボロボドスのアッシュだったの?

 そう思って、少し私は置いてけぼりだった。

 

 すると、闇が揺れた。

 

 魔法陣から黒い手が複数現れて、伸びてきた。

 

「増えた!」

 

『我も触りたい』

 

『我もだ』

『実にかわいい』

『尊い』

 

 魔王の手がそれぞれアッシュを褒めちぎっていた。

 それを見たアッシュが目を丸くしている。

 驚いたのか、時間が止まったかのように体が固まっている。

 

「魔王の手がいっぱいだ!」

 

 黒い手がアッシュへ向かう。

 

 がしっ、両手両足が魔王の手に掴まれる。

 

「助けてぇ!」

 

 足を掴む。

 肩をつつく。

 髪をなでる。

 

 まるでスライムに捕まったエルフみたいに蹂躙されている。

 

「いやああああ!」

 

 アッシュがなんかエロかった。

 女として少し負けた気がする。

 

 それはそれとして。

 

「あ、これ売れるわね」

 

 私はカメラを構えた。

 

「助けろよ!」

 

「私は闇エルフよ?」

 

「その返し便利だな!」

 

 アッシュが悲鳴を上げた。

 

「あーもう、たまらないわぁ、私はなんか目覚めそう」

 

 曇らせたいって何が分からないけど、今のアッシュを見てると魔王の欲望に同調はしちゃいそう。

 

「お前は敵なのか?」

 

「私は闇エルフよ」

 

 私はアッシュに敵対しているつもりはない。

 面白がっているけど。

 

「もうそれいいから!」

 

 アッシュは叫んだ。

 

「世界が終わる!」

「魔王復活だ!」

「逃げろ!」

 

 生徒たちは校内から一目散に逃げるほどパニックな状況が続いてる。

  それでも、私は動くつもりはなかった。

 

 今はシャッターチャンスだ。

 あと、魔王が今、別に悪いことをしそうにない感じもするし。

 

「アッシュの曇り顔、大ヒット間違いないわね」

 

「お前が敵にしか本当に見えないよ!」

 

 のちに、これらの写真が「アッシュを曇らせ隊」という一部な変な趣味を生み出すことになるのはこの時の私はまだ知らない。

 

「スカートめくりを恥ずかしがるアッシュの写真も撮れたし、ボロ儲けできそうだわ」

 

「おいっ!」

 

「あーあ、全くこうなるのか」

 

 ボロボドスが大きなため息をついた。

 それから右手を振りかざした。

 

「魔覚醒 幻覚空間 処理落ち」

 

 すると、魔王の右手がすっと消えて、空の暗さも一瞬で明るくなった。

 

「え? どういうこと?」

 

「なかったということでどうだ?」

 

 ボロボドスが両手を皿のように上に向けて、肩をすくめている。

 

「魔法をこんなことにしか使えないのよね、ボロボドスみたいに魔覚醒もできないし」

 

 私はボロボドスを見たら、弱音が心から湧き上がってしまった。

 

「結構すごいことできてるから肩の力を抜けばいいだけだ、まぁ内容が内容だけど」

 

 ボロボドスが苦笑いをしてくれた。

 

「いいじゃねぇのか? エリーナの魔覚醒の可能性を信じられる根拠が増えてさ」

 

「そうなのかしたら?」

 

「エリーナならできる」

 

「それ、ボロボドスにも言われたわねぇ」

 

 アッシュがよろけながらも私を見てニコッと笑いかけてきた。

 

「やると決めたらあとは全力でやればいいだけだろ?」

 

「来たぁ! アッシュの名言! かっこいい!」

 

 もうアッシュのことになるとまた。

 私のことを相手にしないんだから。

 

「このアッシュの雑念の少なさには憧れるよなぁ。今に集中する。それはアッシュは学んだことだ」

 

 私は不安げにボロボドスに聞く。

 

「その先は?」

 

「神様にお任せだよ、ベストを尽くせば後悔はしないしな」

 

「あーあ、もう追い込みすぎちゃったわ、私もここまでやるつもりじゃ、少し楽しんじゃだけど」

 

 魔法で魔王を呼べるってハプニングを少し楽しんじゃった悪い自分もいる。

 ボロボドスがいるから大丈夫だろうと甘えちゃったのもあるけど。

 

「迷ったら自分の基準に戻ればいいと思うぜ?」

 

「自分が喜ぶかどうか、シンプルだろ?」

 

「わかったわ、行けるわ」

 

「任せて」

 

「さすがエリーナだな」

 

「見てなさい、私のすごさを見せてあげるわ」

 

 ボロボドスを私の魅力でメロメロにする。

 

 これだけ考えてればほかのことを考えなくてもいいというのだけ分かった。

 

 魔覚醒に向けて、自分のできることを一つ一つ丁寧にやろうと改めて決意する私だった。

 

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