転生したら聖園ミカだったけど、どう考えてもここはキヴォトスではない。 作:Othuyeg
「はぁっ、はぁっ……クソッ!」
俺はボロボロだった。このエンザイムという
「グハハハハ! どうしたんだねガイバーⅠ! 防戦一方じゃあないか!」
「くっ、だけど地道ながら先には進めてる。俺はお前たちを無理に倒す必要はないんだ!」
そう、無理に倒す必要はない……と言いたいところだけど。そんなのは相手の戦意を削ぐためのハッタリでしかない。
実際、こいつらを倒さずに哲郎さんたちと合流してしまったら、こいつらの攻撃の矛先が2人に向くかもしれない。どう考えたってそれは避けたかった。
「グフフ……ハッタリだなガイバーⅠ。まさか忘れてはいないだろうが、人質の2人は『調整』も受けていない生身の人間だ。我々の攻撃を受ければひとたまりもない。
我々を生かしたまま強引にここを切り抜けて、万が一追いつかれたら、彼らはどうなると思う? つまり君は、ここを突破するには我らを正面から倒して行くしかないということだよ」
「……ッ」
通じない。下手なハッタリは、ヤツには通じないらしい。結局、ここでこいつらを倒すしかないのか……。
「フフ……どうした? 万事休すかね、深町晶君」
プレッシャーカノンやヘッド・ビームの引き撃ちに徹すれば、倒せない相手じゃないだろう。物陰や個室に隠れて、
だけど、どこに哲郎さんたちが捕らえられているかが分からない現状、流れ弾で2人を傷つけるかもしれないような大規模攻撃は避けたい。
どうする……? 思考を巡らせ、状況を打開する一手を探していると。
「どうやら困っているようだな、ガイバーⅠ」
──ドウッ!!
突如として、背後からプレッシャーカノンが飛ぶ。そのプレッシャーカノンはエンザイム1体の胸を撃ち抜き、さらにその後ろのエンザイム──最初に会った男が変身した個体──を吹き飛ばした。
驚いて振り向くと、そこに居たのはガイバーⅢ。昼に会ったのと全く同じ、刺々しい装甲の第3のガイバーが立っていた。
「お前は……」
「昼ぶりというわけだ。個人的にもこいつらを倒す理由があるからね、助け合いの精神でいこうじゃないか」
そう言ってプレッシャーカノンをチャージするガイバーⅢ。まだ出力を上げるつもりなのか。だが……。
「させるかっ!!」
「危ない、ガイバーⅢ!」
エンザイムの右の鉤爪の攻撃を、腕を下から弾いて防ぐ。反撃のパンチを打ち込むと、エンザイムは左の鉤爪で拳を掴んで防御した。
俺が堪らず1歩退くと、その隙を埋めるようにガイバーⅢがより出力の上がったプレッシャーカノンを放つ。
「ガイバーⅢ! この基地のどこかに人質がいるんだ! あまり規模の大きい攻撃は……!」
「それなら問題ない。瀬川哲郎と瀬川瑞紀は救出した。
「えっ……」
瑞紀と哲郎さんはもう救出済み? ならもうこの日本支部に用はないが……。
「さっきも言った通り、私には個人的にこいつらを殺しておきたい理由がある。助け合いの精神さ、君の目的は私が達成間近にしたから、今度は君が私の目的に協力してくれ」
……なるほど、そういう話か。確かにそうだ、ガイバーⅢだって無条件に俺に味方してくれているわけじゃないのだろう。ギブアンドテイクを要求しているということか。
「分かった。こいつらを倒したら、すぐに哲郎さんたちのところに案内してくれ」
「ふふ、そう気を急かなくても彼らは大丈夫さ。さあ、行くぞ!」
「ぐあーっ!?」
「フゥ、ソノ辺ノ
ガイバーたちが屋内でエンザイム相手に大立ち回りを演じている頃、俺は屋上にいた。今は瀬川兄妹を狙って襲いかかってきた有象無象を蹴散らし、獣化兵を始末・捕食し終えて一息ついたところだった。
「ね、ねぇ兄貴。この人……人? 何者なの?」
「いや、俺にもよく分からん。とりあえず分かるのは『パテル』って名乗ってることと、瞬間的な出力はガイバーより上ってことくらいか」
目の前でヒソヒソと交わされる瀬川兄妹の会話に、俺は心の中で苦笑した。無理もない。得体の知れない、姿さえよく見えない謎の女が、化け物どもを文字通り物理的にミンチにしてしまったのだから。
「フフッ、怪シイ者トカジャナイヨー。貴方タチノ味方ダト思ッテモラッテイイカラネ」
「余計に怪しい……」
それはそう。こんな見るからに異様なヤツ相手にその感想は確かに正しいぞ、と思いつつ、俺は「シッカリ捕マッテテネ」と警告し2人を両脇に抱える。
「っ、おい、何をする気なんだ?」
「飛ビ降リルヨー」
「はあっ!?」
それだけ言って、俺はビルの入り口側の縁から空に身を躍らせた。
「うぅわぁぁぁぁぁーっっ!?!?」
「いぃやぁぁぁぁぁーっっ!?!?」
空気の轟音が耳を打ち、風が全身を荒々しく撫でていく。重力加速度から生まれる空気の抵抗の中に2人の絶叫がかき消えていく間、俺は「スカイダイビングってこんな感じかなー」などと考えて密かに微笑んだ。
地面が近づくにつれて、俺は重力制御の出力を上げていく。加速度が相殺されていき、着地の瞬間には遂にゼロになる。俺はまるで危なげなく、紐なしバンジーを成功させた。
「死、死……俺、死ぬ、俺たち……」
「はぁーっ、はぁーっ、ひっ……ひっ、はひゅー……っは」
「ア、アハハ……ゴメンゴメン。説明ガ足リナカッタネ」
あまり時間をかけてもいられなかったので最低限の説明だけで飛び降りてしまったのだが、2人は命の危機を感じて過呼吸になってしまったようだ。流石に罪悪感を覚え、謝罪する。
「お、おま、お前……マジでふざけんなよ……死、死んだ、死んだかと……思っ、たんだぞ」
「イヤ本当ゴメンッテ」
俺がそう謝罪すると同時、一台の車が視界に滑り込んできた。RX-7。運転席に乗っているのは、村上さんだ。
「瀬川哲郎君と、瑞紀さんだね。乗ってくれ、ここは危険だ」
村上さんの言葉に、二人は戸惑いながらも頷き、車に乗り込んでいく。俺は村上さんと軽く視線を交わした。そのまま何を言うでもなく、スッと前に向き直った彼は、まだフロントガラス越しにどこか探るような鋭い視線を俺に向けていたが、今は詮索している暇はない。
「ソレジャ、村上サン。二人ノコト、オ願イネ」
「……ああ、任せておけ。パテル、お前はどうするんだ?」
「私ハ――オ友達ノぴんちヲ救イニ行クトコロダヨ!」
俺は重力制御球の出力を上げ、宙へ舞い上がる。ヘイローの探査能力を強力に作動させ、ガイバーの反応の元へと自分を射出する。
「……翼と、ピンク色の、髪?」
最後に聞こえた一言の意味は、あえて考えないことにした。
他方、エンザイムと戦闘を続けているガイバーたち。
「グオォォォォッッ!!」
「ハッ、威勢だけは一丁前だな……!」
「クソッ、全員死に物狂いだ……! やりづらい!」
そう、やりづらいのだ。エンザイムたちは、全員が全員、ガイバーを撃滅するために命を燃やし尽くすつもりでここにいる。その目的の統一が一種の連帯感を生み、そしてその連帯感がまた独特の連携力を生んでいた。
「……どうする? ガイバーⅢ。このままやっていても千日手じゃないか?」
「そうだな……メガスマッシャーを撃つ隙があればいいが、こいつらの連携はなかなかだ。それをさせてくれるとは思えんな……。
プレッシャーカノンも、今から最大出力まで上げるには少し隙ができる。少し難しい局面だな」
ガイバーⅢは考える。エンザイムの数はジリジリと減りつつある。このままやってもこいつらは倒せるだろうが、こちらには日本支部爆破までというタイムリミットがある。
あと一手。それさえ足りればこの局面は容易に打開できるはずなのだ。その一手が足りていない……。
――その時だった。
「エンザイム諸君、退きたまえ」
――ぐりゅんっ。
ガイバーⅠ、ガイバーⅢのヘッド・センサーが強大な熱源を感知する。
「避けろ!!」
「ッッ!!」
――ドギャオォォォォォーッッッ!!
彼らの意識が危機を理解するその直前を狙うように、莫大なエネルギーが日本支部の廊下を襲う。
……だが。それが彼らに届くことはなかった。
――バグォッ!
「サセナい!」
――ヴォンッ! ヷヂヂヂヂ!!
天井をブチ抜いて現れた桃髪が、斥力フィールドを展開して彼らを守ったからだ。
「ほう……やはり現れたか。会いたかったぞ、パテル!」
「私ハソウデモナカッタケドナー、がいばーⅡ」
『パテル』、ガイバーⅡ、共に戦場に現着。
戦局を決定する最後のピースが、ここに揃った。