アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
【章頭前書き:キャラクター成長報告】
ルクスン
前章獲得経験点:1,500点
シーフ1→2:1,500点消費
シーフ技能を1レベル成長。軽装時の命中・回避に加え、忍び足、罠発見、罠解除、鍵開け、登攀などのシーフ技能判定が上昇した。
項目 成長後
冒険者レベル 2
ファイター 2
レンジャー 2
シーフ 2
未使用経験点 0点
特殊能力 《完全版の知識》《聖属性の右手》《センス・オーラ常時》《センス・マジック常時》
ルクスンは、正面戦闘ではファイター、野外ではレンジャー、軽装戦闘や探索ではシーフを使い分ける。
ノクティア
前章獲得経験点:1,500点
シーフ1→2:1,500点消費
暗殺者としての主技能を成長。短剣による命中・回避、忍び足、潜伏、罠、登攀などの技量が上昇した。
項目 成長後
冒険者レベル 3
シーフ 2
シャーマン 3
レンジャー 1
未使用経験点 0点
妖姫殺し
前章獲得経験点:1,500点
取得できる技能は《ソーディアン(魔剣人)》のみ。LV1に必要な経験点は2,000点のため、今回は成長できない。
項目 現在値
ソーディアン 0
未使用経験点 1,500点
次のレベルまで あと500点
武器形状 ミスリル銀製ダガー+1
必要筋力 1
打撃力 10
特殊能力 会話できる
「主よ! わらわだけ成長しておらぬぞ!」
「あと五百点足りないんだよ」
「主の経験点をよこすのじゃ!」
「譲渡できるか!」
章開始時収支
項目 金額
所持金 6,000ガメル
盗賊ギルド年会費 免除
預け品 カイレン・ヴァルネスのロケット
ルクスンとノクティアが初めて正式に引き受けた仕事は、少女の捜索だった。
依頼を持ち込んだのは、ロマールから北へ二日ほど進んだ場所にある、湖畔の小村。
森と湖に囲まれた、十二戸四十六人の集落である。
その村から、一人の少女が消えた。
「報酬は前金が五百ガメル、少女を発見すれば千五百。事件を解決した場合は、村と相談して追加報酬が出るそうだ」
冒険者の店の主人は、依頼書を机へ置いた。
「事件?」
「村人は人狼の仕業だと言っている」
「人狼……」
ルクスンの頭に、『ソード・ワールドRPG完全版』の記述が浮かぶ。
人間の姿と巨大な狼の姿を使い分ける怪物。
通常の武器が通じにくく、魔法の武器や銀の武器を必要とする厄介な相手。
しかも正体を隠して人里へ紛れ込めば、外見だけで見破ることは難しい。
ルクスンは腰の短剣を見た。
妖姫殺しは、ミスリル銀製の魔法の武器である。
「ものすごく都合よく銀の武器があるな」
「主よ。ついにわらわの出番じゃな!」
「売らなくてよかった」
「まだ売るつもりだったのか!?」
ノクティアが依頼書を読む。
「少女が消えたのは五日前。森の捜索は?」
「村の狩人が行った。獣道には罠も張ったが、何もかからない。足跡も血痕も見つからなかったそうだ」
「村へ来た余所者は?」
「お前たちが行くまで、一人もいない」
ルクスンは依頼書を裏返した。
「村人は全員、顔見知りなんですよね?」
「十二戸しかないからな。生まれも育ちも、誰が誰の親戚かまで知っている」
「それで、人狼が入り込んだ?」
「村人はそう信じている」
余所者はいない。
だが人狼がいる。
その二つが事実なら、答えは限られる。
もともと村にいた誰かが人狼になったか。
村人の誰かが殺され、その姿を人狼に利用されているか。
あるいは、村人たちが何かを隠している。
「受けます」
ルクスンは依頼書を取った。
「即答?」
「銀の武器があるうちに、人狼と戦っておきたい」
「普通は反対では?」
「専用装備を持ってるのに、対応するモンスターを避けてどうする!」
店主は、理解できないものを見る目をルクスンへ向けた。
◇
二日後。
二人と一本は、森に囲まれた湖畔の村へ到着した。
静かな村だった。
藁葺きの家々が湖岸に沿って並び、船着き場には小さな漁船が繋がれている。森から流れ出した小川が村を横切り、澄んだ湖へ注いでいた。
本来なら、穏やかな場所なのだろう。
だが、村人の表情は硬い。
子供の姿はなく、家々の扉は昼間から閉ざされている。男たちは斧や弓を手放さず、女たちも井戸へ行くときは必ず二人以上で行動していた。
ルクスンたちを迎えた村長は、五十歳ほどの大柄な男だった。
「よく来てくださった。村長のバルガスだ」
村長は二人を家へ招き、木製の卓上へ粗末な地図を広げた。
湖、村、森。
少女が最後に目撃された場所には、炭で黒い印がつけられている。
「少女が消えたのは、五日前の夕方だ。家へ戻らないので、その日のうちに村総出で捜した。翌朝からは森にも入ったが、何も見つからなかった」
「最後に見たのは?」
「湖から家へ戻る姿を、漁師が見ている。それよりあとのことを知る者はいない」
「争った音や悲鳴は?」
「誰も聞いていない」
「少女の持ち物は?」
「何も見つかっていない。履物も外套も、すべて一緒に消えた」
ノクティアが地図へ指を置く。
「家へ戻るなら、ここを通る?」
「ああ。湖岸から村へ入る道だ」
「森とは逆方向」
「そのはずだ」
少女は湖から村へ戻った。
それなのに、村人は森を捜索している。
「どうして人狼だと思ったんです?」
村長は窓の外へ目を向けた。
「森が静かになった」
ルクスンも耳を澄ませた。
風が木々を揺らす音は聞こえる。
だが、鳥の声がない。
虫の羽音も、獣が藪を歩く音も聞こえない。
「少女が消えた夜からだ。狩人たちは、森に獣がいなくなったと言っている。正確には、何かを恐れて巣穴から出てこないのだと」
「それだけで人狼と?」
「三日前、巨大な狼の遠吠えを聞いた者がいる」
「姿を見た人は?」
「いない」
証拠はない。
だが恐怖だけは、すでに村全体へ広がっている。
「村人同士で疑い始めてますね?」
村長は答えなかった。
その沈黙が答えだった。
余所者がいないなら、犯人は村人の中にいる。
誰かがそう言い出せば、十二戸しかない村は簡単に壊れる。
「村人を集めてください。一人ずつ、少女が消えた夜の行動を聞きます。ただし、僕たちが調べ終わるまで、誰かを人狼だと決めつけないでください」
「もし、正体を現したら?」
「そのときは僕たちが相手をします」
妖姫殺しが腰元で笑った。
「任せるがよい。人狼など、わらわが斬り捨ててくれる!」
村長の顔が固まった。
「いま、剣が喋らなかったか?」
「気のせいです」
「喋ったぞ」
「腹話術です」
「主よ。わらわを腹話術扱いするでない!」
◇
聞き取りを始める前に、ルクスンとノクティアは森を確認することにした。
狩人が仕掛けた罠と、捜索範囲を自分たちの目で見るためだ。
村長の話では、罠は森へ続く三本の獣道へ集中している。
最初の罠には何もない。
二つ目も、餌すら荒らされていない。
三つ目の罠は作動していたが、枯れ枝を巻き込んだだけだった。
森は異様なほど静かだった。
ルクスンの《センス・オーラ》には、木々や水、土を満たす精霊の気配が感じられる。
だが、獣たちの生命の気配が極端に少ない。
「何かいる」
ノクティアも精霊の動きを探っていた。
「どこに?」
「わからない。精霊が怯えているのではなく、獣が逃げている」
「人狼は?」
「まだ感じない」
人狼がアンデッドなら、黄色い負の精霊力で見分けられた。
だが、人狼は生きた怪物だ。
人間の姿で村人に混ざっていれば、《センス・オーラ》だけで正体を判別できるとは限らない。《センス・マジック》も、魔法そのものを感知する能力であって、怪物を自動的に見つける能力ではなかった。
「便利能力を二つも持ってるのに、肝心なところで役に立たない!」
「主よ。世の中には都合というものがあるのじゃ」
「お前が言うな!」
森の奥へ進むと、張られた縄が見えた。
狩人が仕掛けた、後ろ足を取って吊り上げる罠だ。
その縄が、ゆっくりと揺れている。
何かがかかっていた。
ルクスンは妖姫殺しへ手をかけ、慎重に木々の間へ進んだ。
赤褐色の毛。
細い四肢。
尖った耳と、ふさふさした尾。
罠から逆さに吊られていたのは、人狼ではなかった。
一匹の狐だった。
しかも、その身体には――鷹の羽を思わせる奇妙なマントが巻きついていた。