アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

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第三章 let'sリアル人狼ゲームへ

【章頭前書き:キャラクター成長報告】

ルクスン

前章獲得経験点:1,500点

シーフ1→2:1,500点消費

シーフ技能を1レベル成長。軽装時の命中・回避に加え、忍び足、罠発見、罠解除、鍵開け、登攀などのシーフ技能判定が上昇した。

項目 成長後
冒険者レベル 2
ファイター 2
レンジャー 2
シーフ 2
未使用経験点 0点
特殊能力 《完全版の知識》《聖属性の右手》《センス・オーラ常時》《センス・マジック常時》

ルクスンは、正面戦闘ではファイター、野外ではレンジャー、軽装戦闘や探索ではシーフを使い分ける。

ノクティア

前章獲得経験点:1,500点

シーフ1→2:1,500点消費

暗殺者としての主技能を成長。短剣による命中・回避、忍び足、潜伏、罠、登攀などの技量が上昇した。

項目 成長後
冒険者レベル 3
シーフ 2
シャーマン 3
レンジャー 1
未使用経験点 0点

妖姫殺し

前章獲得経験点:1,500点

取得できる技能は《ソーディアン(魔剣人)》のみ。LV1に必要な経験点は2,000点のため、今回は成長できない。

項目 現在値
ソーディアン 0
未使用経験点 1,500点
次のレベルまで あと500点
武器形状 ミスリル銀製ダガー+1
必要筋力 1
打撃力 10
特殊能力 会話できる

「主よ! わらわだけ成長しておらぬぞ!」

「あと五百点足りないんだよ」

「主の経験点をよこすのじゃ!」

「譲渡できるか!」

章開始時収支

項目 金額
所持金 6,000ガメル
盗賊ギルド年会費 免除
預け品 カイレン・ヴァルネスのロケット


第9話 森は静かに

 ルクスンとノクティアが初めて正式に引き受けた仕事は、少女の捜索だった。

 

 依頼を持ち込んだのは、ロマールから北へ二日ほど進んだ場所にある、湖畔の小村。

 

 森と湖に囲まれた、十二戸四十六人の集落である。

 

 その村から、一人の少女が消えた。

 

「報酬は前金が五百ガメル、少女を発見すれば千五百。事件を解決した場合は、村と相談して追加報酬が出るそうだ」

 

 冒険者の店の主人は、依頼書を机へ置いた。

 

「事件?」

 

「村人は人狼の仕業だと言っている」

 

「人狼……」

 

 ルクスンの頭に、『ソード・ワールドRPG完全版』の記述が浮かぶ。

 

 人間の姿と巨大な狼の姿を使い分ける怪物。

 

 通常の武器が通じにくく、魔法の武器や銀の武器を必要とする厄介な相手。

 

 しかも正体を隠して人里へ紛れ込めば、外見だけで見破ることは難しい。

 

 ルクスンは腰の短剣を見た。

 

 妖姫殺しは、ミスリル銀製の魔法の武器である。

 

「ものすごく都合よく銀の武器があるな」

 

「主よ。ついにわらわの出番じゃな!」

 

「売らなくてよかった」

 

「まだ売るつもりだったのか!?」

 

 ノクティアが依頼書を読む。

 

「少女が消えたのは五日前。森の捜索は?」

 

「村の狩人が行った。獣道には罠も張ったが、何もかからない。足跡も血痕も見つからなかったそうだ」

 

「村へ来た余所者は?」

 

「お前たちが行くまで、一人もいない」

 

 ルクスンは依頼書を裏返した。

 

「村人は全員、顔見知りなんですよね?」

 

「十二戸しかないからな。生まれも育ちも、誰が誰の親戚かまで知っている」

 

「それで、人狼が入り込んだ?」

 

「村人はそう信じている」

 

 余所者はいない。

 

 だが人狼がいる。

 

 その二つが事実なら、答えは限られる。

 

 もともと村にいた誰かが人狼になったか。

 

 村人の誰かが殺され、その姿を人狼に利用されているか。

 

 あるいは、村人たちが何かを隠している。

 

「受けます」

 

 ルクスンは依頼書を取った。

 

「即答?」

 

「銀の武器があるうちに、人狼と戦っておきたい」

 

「普通は反対では?」

 

「専用装備を持ってるのに、対応するモンスターを避けてどうする!」

 

 店主は、理解できないものを見る目をルクスンへ向けた。

 

          ◇

 

 二日後。

 

 二人と一本は、森に囲まれた湖畔の村へ到着した。

 

 静かな村だった。

 

 藁葺きの家々が湖岸に沿って並び、船着き場には小さな漁船が繋がれている。森から流れ出した小川が村を横切り、澄んだ湖へ注いでいた。

 

 本来なら、穏やかな場所なのだろう。

 

 だが、村人の表情は硬い。

 

 子供の姿はなく、家々の扉は昼間から閉ざされている。男たちは斧や弓を手放さず、女たちも井戸へ行くときは必ず二人以上で行動していた。

 

 ルクスンたちを迎えた村長は、五十歳ほどの大柄な男だった。

 

「よく来てくださった。村長のバルガスだ」

 

 村長は二人を家へ招き、木製の卓上へ粗末な地図を広げた。

 

 湖、村、森。

 

 少女が最後に目撃された場所には、炭で黒い印がつけられている。

 

「少女が消えたのは、五日前の夕方だ。家へ戻らないので、その日のうちに村総出で捜した。翌朝からは森にも入ったが、何も見つからなかった」

 

「最後に見たのは?」

 

「湖から家へ戻る姿を、漁師が見ている。それよりあとのことを知る者はいない」

 

「争った音や悲鳴は?」

 

「誰も聞いていない」

 

「少女の持ち物は?」

 

「何も見つかっていない。履物も外套も、すべて一緒に消えた」

 

 ノクティアが地図へ指を置く。

 

「家へ戻るなら、ここを通る?」

 

「ああ。湖岸から村へ入る道だ」

 

「森とは逆方向」

 

「そのはずだ」

 

 少女は湖から村へ戻った。

 

 それなのに、村人は森を捜索している。

 

「どうして人狼だと思ったんです?」

 

 村長は窓の外へ目を向けた。

 

「森が静かになった」

 

 ルクスンも耳を澄ませた。

 

 風が木々を揺らす音は聞こえる。

 

 だが、鳥の声がない。

 

 虫の羽音も、獣が藪を歩く音も聞こえない。

 

「少女が消えた夜からだ。狩人たちは、森に獣がいなくなったと言っている。正確には、何かを恐れて巣穴から出てこないのだと」

 

「それだけで人狼と?」

 

「三日前、巨大な狼の遠吠えを聞いた者がいる」

 

「姿を見た人は?」

 

「いない」

 

 証拠はない。

 

 だが恐怖だけは、すでに村全体へ広がっている。

 

「村人同士で疑い始めてますね?」

 

 村長は答えなかった。

 

 その沈黙が答えだった。

 

 余所者がいないなら、犯人は村人の中にいる。

 

 誰かがそう言い出せば、十二戸しかない村は簡単に壊れる。

 

「村人を集めてください。一人ずつ、少女が消えた夜の行動を聞きます。ただし、僕たちが調べ終わるまで、誰かを人狼だと決めつけないでください」

 

「もし、正体を現したら?」

 

「そのときは僕たちが相手をします」

 

 妖姫殺しが腰元で笑った。

 

「任せるがよい。人狼など、わらわが斬り捨ててくれる!」

 

 村長の顔が固まった。

 

「いま、剣が喋らなかったか?」

 

「気のせいです」

 

「喋ったぞ」

 

「腹話術です」

 

「主よ。わらわを腹話術扱いするでない!」

 

          ◇

 

 聞き取りを始める前に、ルクスンとノクティアは森を確認することにした。

 

 狩人が仕掛けた罠と、捜索範囲を自分たちの目で見るためだ。

 

 村長の話では、罠は森へ続く三本の獣道へ集中している。

 

 最初の罠には何もない。

 

 二つ目も、餌すら荒らされていない。

 

 三つ目の罠は作動していたが、枯れ枝を巻き込んだだけだった。

 

 森は異様なほど静かだった。

 

 ルクスンの《センス・オーラ》には、木々や水、土を満たす精霊の気配が感じられる。

 

 だが、獣たちの生命の気配が極端に少ない。

 

「何かいる」

 

 ノクティアも精霊の動きを探っていた。

 

「どこに?」

 

「わからない。精霊が怯えているのではなく、獣が逃げている」

 

「人狼は?」

 

「まだ感じない」

 

 人狼がアンデッドなら、黄色い負の精霊力で見分けられた。

 

 だが、人狼は生きた怪物だ。

 

 人間の姿で村人に混ざっていれば、《センス・オーラ》だけで正体を判別できるとは限らない。《センス・マジック》も、魔法そのものを感知する能力であって、怪物を自動的に見つける能力ではなかった。

 

「便利能力を二つも持ってるのに、肝心なところで役に立たない!」

 

「主よ。世の中には都合というものがあるのじゃ」

 

「お前が言うな!」

 

 森の奥へ進むと、張られた縄が見えた。

 

 狩人が仕掛けた、後ろ足を取って吊り上げる罠だ。

 

 その縄が、ゆっくりと揺れている。

 

 何かがかかっていた。

 

 ルクスンは妖姫殺しへ手をかけ、慎重に木々の間へ進んだ。

 

 赤褐色の毛。

 

 細い四肢。

 

 尖った耳と、ふさふさした尾。

 

 罠から逆さに吊られていたのは、人狼ではなかった。

 

 一匹の狐だった。

 

 しかも、その身体には――鷹の羽を思わせる奇妙なマントが巻きついていた。

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