アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

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第15話 初仕事の報酬

 

 

 人狼三兄弟との戦いが終わった翌日、湖畔の村では三つの墓が掘られた。

 

 墓へ納められたのは怪物ではない。

 

 人間の姿へ戻った、三人の狩人だった。

 

 彼らは村を襲おうとした。

 

 少女をさらい、罠を外し、漁船を壊して村人の逃げ道を断とうとしていた。

 

 だが、最初から人狼だったわけではない。

 

 ライカンスロープへ感染するまでは、村を守り、森の恵みで村人の生活を支えていた狩人たちでもあった。

 

 村人たちは、三兄弟を英雄として弔うことも、怪物として遺体を焼き捨てることも選べなかった。

 

 墓は、村の共同墓地から少し離れた森の入口に作られた。

 

 そこなら村からも見える。

 

 森からも見える。

 

 三兄弟にとって、もっとも相応しい場所だった。

 

「助けられなかったんだね」

 

 救出された少女が、三つの墓を見つめている。

 

「僕たちには、治療する手段がなかった」

 

 ルクスンは正直に答えた。

 

「生きたまま捕らえる力もなかった。あのまま戦わなければ、君も村の人たちも殺されていた」

 

「わかってる。でも、少し前までは普通の人だった」

 

「そうだな」

 

 感染したから怪物になったのか。

 

 人間だったころの意識を残したまま、自分たちの意思で村を襲おうとしたのか。

 

 完全版のモンスターデータにも、そこまでは書かれていない。

 

 ルクスンにわかるのは、戦わなければ自分たちが死んでいたということだけだった。

 

「墓を作ってもらえただけ、よかったと思う」

 

 少女は頷いた。

 

 その足元では、狐姿のゼフィーリアが三つの墓を見つめていた。

 

          ◇

 

 少女の家族からは、何度も礼を言われた。

 

「娘を連れ帰ってくれて、本当にありがとうございました」

 

「間に合ってよかったです。ただ、少女を狩猟小屋から連れ出したのは、ほとんどノクティアと……この狐です」

 

「狐?」

 

 少女の母親が狐姿のゼフィーリアを見る。

 

 ゼフィーリアは、普通の狐らしく振る舞うために首を傾げた。

 

 ルクスンには、本人が内心で不満を抱えていることがわかった。

 

「森で保護した、ものすごく賢い狐です」

 

「この狐さん、喋れるよ」

 

 少女が即座に暴露した。

 

「喋りません!」

 

「暗黒神の魔法も使ってた」

 

「恐怖による幻覚です!」

 

「わたしを小屋から逃がすとき、はっきり喋ってたよ?」

 

「賢すぎる狐の鳴き声が、言葉に聞こえたんじゃないかな!」

 

 少女は納得していない。

 

 その場を離れたあと、狐姿のゼフィーリアがルクスンの足を踏んだ。

 

「痛い!」

 

 狐は何も知らない顔で、ノクティアの後ろへ隠れた。

 

「いま絶対、わざと踏んだだろ!」

 

「狐は喋らない」

 

「ノクティアまで狐側につくなよ!」

 

          ◇

 

 出発を前に、ルクスンたちは村長宅へ呼ばれた。

 

 村長は革袋を三つ、卓上へ並べた。

 

「依頼どおり、少女を連れ帰ってもらった。さらに、村を襲おうとしていた人狼を倒してくれた。村を代表して礼を言う」

 

「仕事ですから」

 

「最初に約束した前金が五百ガメル。少女発見の報酬が千五百ガメル。村を救ってもらった追加報酬として、千ガメルを用意した」

 

「合計三千ガメル……」

 

「少ないことは承知している。小さな村で、すぐに用意できる金はこれが限界だ」

 

「充分です」

 

 ルクスンは革袋を受け取った。

 

 前金を除けば、ここで受け取るのは二千五百ガメル。

 

 村の規模を考えれば、むしろ無理をして用意した金額だろう。

 

「それから、三兄弟が使っていた武器や道具はどうする?」

 

「村へ返します。もともと村の狩人たちが使っていた物ですから」

 

「魔法の狐には、何か渡さなくてよいのか?」

 

「普通の狐です」

 

「娘から事情を聞いた」

 

「喋らない普通の狐です」

 

 村長は狐姿のゼフィーリアを見た。

 

 ゼフィーリアも村長を見返す。

 

 しばらく両者の視線がぶつかったあと、村長が小さく息を吐いた。

 

「正体が何であれ、娘を救ってくれたことに変わりはない。村人には黙っておこう」

 

「助かります」

 

「ただし、村の鶏には近づけるな」

 

 ゼフィーリアが不満そうに鼻を鳴らした。

 

          ◇

 

 湖畔の村を離れたのは、昼を過ぎてからだった。

 

 ルクスンとノクティア。

 

 妖姫殺し。

 

 そして狐姿のゼフィーリア。

 

 村人の姿が見えなくなるまで街道を歩き、森の中で休憩する。

 

 ゼフィーリアは鷹の羽を思わせる外皮を開き、ダークエルフの姿へ戻った。

 

 ルクスンから借りたマントを身につけ、当然のように一行の先頭へ立つ。

 

「それで、どちらへ向かうのです?」

 

「ロマールへ戻る」

 

「では、私もそこまで同行しましょう」

 

「そこまで?」

 

「その先は、そのときに決めます。私は自由ですから」

 

「十二支族に追われているダークエルフのファラリス神官を、ロマールへ連れて帰る僕の立場も考えてくれない?」

 

「私の正体を黙っていれば問題ありません」

 

「バレたときが大問題なんだよ!」

 

 ノクティアがゼフィーリアを見る。

 

「人のいる場所では、狐の姿?」

 

「そうなりますね」

 

「目立つ」

 

「黒猫にでもなれば?」

 

「そんなに簡単に変身先を増やせるの?」

 

 ゼフィーリアは答えなかった。

 

「主よ。諦めるのじゃ。こやつはもう同行する気になっておる」

 

「本人より先に決めるな!」

 

「あなたたちだけでは心配です。人狼の調査へ来て、ダークエルフを拾うような冒険者ですから」

 

「拾われた側が言うな!」

 

 初仕事は成功した。

 

 少女を救出し、村を人狼の襲撃から守り、報酬も得た。

 

 その代わり、仲間には正体を隠さなければならないダークエルフが増えた。

 

 差し引きが合っているのか、ルクスンにはわからなかった。




【章末後書き:第三章リザルト】

依頼結果

* 行方不明の少女を救出
* ライカンスロープへ感染した狩人三兄弟を撃破
* 村への襲撃計画を阻止
* 狩猟小屋から襲撃計画の証拠を回収
* ゼフィーリアが一行へ暫定加入

獲得経験点

キャラクター 章開始時未使用 今章獲得 合計未使用
ルクスン 0点 2,000点 2,000点
ノクティア 0点 2,000点 2,000点
妖姫殺し 1,500点 2,000点 3,500点
ゼフィーリア 未確定 2,000点 成長処理保留

※技能成長は次章冒頭で処理する。

妖姫殺しは累積経験点が2,000点を超えたため、次章冒頭で《ソーディアン0→1》を取得可能。

収支報告

項目 増減
章開始時所持金 6,000ガメル
依頼前金 +500ガメル
少女救出報酬 +1,500ガメル
村防衛追加報酬 +1,000ガメル
現在所持金 9,000ガメル

損耗・回収品

* ルクスンの革鎧:人狼の爪で破損。修繕が必要
* 通常矢:戦闘で消費
* 偽の毒草:村の薬師へ返却
* 狩人三兄弟の武器・狩猟道具:村へ返還
* 金銭化できる戦利品:なし
* 妖姫殺し:損傷なし
* ゼフィーリア:ルクスンのマントを借用中
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