アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
人狼三兄弟との戦いが終わった翌日、湖畔の村では三つの墓が掘られた。
墓へ納められたのは怪物ではない。
人間の姿へ戻った、三人の狩人だった。
彼らは村を襲おうとした。
少女をさらい、罠を外し、漁船を壊して村人の逃げ道を断とうとしていた。
だが、最初から人狼だったわけではない。
ライカンスロープへ感染するまでは、村を守り、森の恵みで村人の生活を支えていた狩人たちでもあった。
村人たちは、三兄弟を英雄として弔うことも、怪物として遺体を焼き捨てることも選べなかった。
墓は、村の共同墓地から少し離れた森の入口に作られた。
そこなら村からも見える。
森からも見える。
三兄弟にとって、もっとも相応しい場所だった。
「助けられなかったんだね」
救出された少女が、三つの墓を見つめている。
「僕たちには、治療する手段がなかった」
ルクスンは正直に答えた。
「生きたまま捕らえる力もなかった。あのまま戦わなければ、君も村の人たちも殺されていた」
「わかってる。でも、少し前までは普通の人だった」
「そうだな」
感染したから怪物になったのか。
人間だったころの意識を残したまま、自分たちの意思で村を襲おうとしたのか。
完全版のモンスターデータにも、そこまでは書かれていない。
ルクスンにわかるのは、戦わなければ自分たちが死んでいたということだけだった。
「墓を作ってもらえただけ、よかったと思う」
少女は頷いた。
その足元では、狐姿のゼフィーリアが三つの墓を見つめていた。
◇
少女の家族からは、何度も礼を言われた。
「娘を連れ帰ってくれて、本当にありがとうございました」
「間に合ってよかったです。ただ、少女を狩猟小屋から連れ出したのは、ほとんどノクティアと……この狐です」
「狐?」
少女の母親が狐姿のゼフィーリアを見る。
ゼフィーリアは、普通の狐らしく振る舞うために首を傾げた。
ルクスンには、本人が内心で不満を抱えていることがわかった。
「森で保護した、ものすごく賢い狐です」
「この狐さん、喋れるよ」
少女が即座に暴露した。
「喋りません!」
「暗黒神の魔法も使ってた」
「恐怖による幻覚です!」
「わたしを小屋から逃がすとき、はっきり喋ってたよ?」
「賢すぎる狐の鳴き声が、言葉に聞こえたんじゃないかな!」
少女は納得していない。
その場を離れたあと、狐姿のゼフィーリアがルクスンの足を踏んだ。
「痛い!」
狐は何も知らない顔で、ノクティアの後ろへ隠れた。
「いま絶対、わざと踏んだだろ!」
「狐は喋らない」
「ノクティアまで狐側につくなよ!」
◇
出発を前に、ルクスンたちは村長宅へ呼ばれた。
村長は革袋を三つ、卓上へ並べた。
「依頼どおり、少女を連れ帰ってもらった。さらに、村を襲おうとしていた人狼を倒してくれた。村を代表して礼を言う」
「仕事ですから」
「最初に約束した前金が五百ガメル。少女発見の報酬が千五百ガメル。村を救ってもらった追加報酬として、千ガメルを用意した」
「合計三千ガメル……」
「少ないことは承知している。小さな村で、すぐに用意できる金はこれが限界だ」
「充分です」
ルクスンは革袋を受け取った。
前金を除けば、ここで受け取るのは二千五百ガメル。
村の規模を考えれば、むしろ無理をして用意した金額だろう。
「それから、三兄弟が使っていた武器や道具はどうする?」
「村へ返します。もともと村の狩人たちが使っていた物ですから」
「魔法の狐には、何か渡さなくてよいのか?」
「普通の狐です」
「娘から事情を聞いた」
「喋らない普通の狐です」
村長は狐姿のゼフィーリアを見た。
ゼフィーリアも村長を見返す。
しばらく両者の視線がぶつかったあと、村長が小さく息を吐いた。
「正体が何であれ、娘を救ってくれたことに変わりはない。村人には黙っておこう」
「助かります」
「ただし、村の鶏には近づけるな」
ゼフィーリアが不満そうに鼻を鳴らした。
◇
湖畔の村を離れたのは、昼を過ぎてからだった。
ルクスンとノクティア。
妖姫殺し。
そして狐姿のゼフィーリア。
村人の姿が見えなくなるまで街道を歩き、森の中で休憩する。
ゼフィーリアは鷹の羽を思わせる外皮を開き、ダークエルフの姿へ戻った。
ルクスンから借りたマントを身につけ、当然のように一行の先頭へ立つ。
「それで、どちらへ向かうのです?」
「ロマールへ戻る」
「では、私もそこまで同行しましょう」
「そこまで?」
「その先は、そのときに決めます。私は自由ですから」
「十二支族に追われているダークエルフのファラリス神官を、ロマールへ連れて帰る僕の立場も考えてくれない?」
「私の正体を黙っていれば問題ありません」
「バレたときが大問題なんだよ!」
ノクティアがゼフィーリアを見る。
「人のいる場所では、狐の姿?」
「そうなりますね」
「目立つ」
「黒猫にでもなれば?」
「そんなに簡単に変身先を増やせるの?」
ゼフィーリアは答えなかった。
「主よ。諦めるのじゃ。こやつはもう同行する気になっておる」
「本人より先に決めるな!」
「あなたたちだけでは心配です。人狼の調査へ来て、ダークエルフを拾うような冒険者ですから」
「拾われた側が言うな!」
初仕事は成功した。
少女を救出し、村を人狼の襲撃から守り、報酬も得た。
その代わり、仲間には正体を隠さなければならないダークエルフが増えた。
差し引きが合っているのか、ルクスンにはわからなかった。
【章末後書き:第三章リザルト】
依頼結果
* 行方不明の少女を救出
* ライカンスロープへ感染した狩人三兄弟を撃破
* 村への襲撃計画を阻止
* 狩猟小屋から襲撃計画の証拠を回収
* ゼフィーリアが一行へ暫定加入
獲得経験点
キャラクター 章開始時未使用 今章獲得 合計未使用
ルクスン 0点 2,000点 2,000点
ノクティア 0点 2,000点 2,000点
妖姫殺し 1,500点 2,000点 3,500点
ゼフィーリア 未確定 2,000点 成長処理保留
※技能成長は次章冒頭で処理する。
妖姫殺しは累積経験点が2,000点を超えたため、次章冒頭で《ソーディアン0→1》を取得可能。
収支報告
項目 増減
章開始時所持金 6,000ガメル
依頼前金 +500ガメル
少女救出報酬 +1,500ガメル
村防衛追加報酬 +1,000ガメル
現在所持金 9,000ガメル
損耗・回収品
* ルクスンの革鎧:人狼の爪で破損。修繕が必要
* 通常矢:戦闘で消費
* 偽の毒草:村の薬師へ返却
* 狩人三兄弟の武器・狩猟道具:村へ返還
* 金銭化できる戦利品:なし
* 妖姫殺し:損傷なし
* ゼフィーリア:ルクスンのマントを借用中