アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
【章頭前書き:キャラクター成長報告】
※以下は読者向けのゲームデータであり、作中人物が技能レベルや経験点を口にすることはありません。
ルクスン
前章獲得経験点:2,000点
ファイター2→3:2,000点消費
項目 成長後
冒険者レベル 3
ファイター 3
レンジャー 2
シーフ 2
未使用経験点 0点
ノクティア
前章獲得経験点:2,000点
シーフ2→3:2,000点消費
項目 成長後
冒険者レベル 3
シーフ 3
シャーマン 3
レンジャー 1
未使用経験点 0点
ゼフィーリア
前章獲得経験点:2,000点
今回は経験点を使用せず保留。
項目 現在値
冒険者レベル 5
ダークプリースト〈ファラリス〉 5
シャーマン 1
未使用経験点 2,000点
特殊装備 《鷹の羽のマント》
妖姫殺し
前章までの未使用経験点1,500点に、獲得経験点2,000点を加算。
ソーディアン0→1:2,000点消費
残り経験点:1,500点
項目 成長前 成長後
ソーディアン 0 1
必要筋力 1 2
打撃力 10 11
最大タレントポイント 0点 3点
タレントポイントは、
ソーディアンLV×3
で算出する。
タレントの消費ポイントは、そのタレントの取得LVと同値。タレントポイントは妖姫殺し自身が持ち、使用者の精神点は消費しない。
《センス・ソード》
* 取得LV:1
* 消費タレントポイント:1点
* 効果時間:18ラウンド
* 感知範囲:半径10メートル
* 周囲にある刃物の方向、距離、おおよその本数を感知する
* 種類、所有者、魔力、敵意までは判別できない
《バディ・ソード》
* 取得LV:1
* 消費タレントポイント:1点
* 効果時間:18ラウンド
* 武器落としや転倒による取り落としを防ぐ
* 使用者が自分の意思で手放すことは可能
* 使用者の腕そのものが拘束された場合までは防げない
章開始時所持金
項目 金額
所持金 9,000ガメル
盗賊ギルド年会費 免除
革鎧修繕費 未精算
ロマールへ戻る直前、ルクスンたちは街道から外れ、林の中へ入った。
狐を連れて街へ入れないわけではない。
しかし、狩人や毛皮商人の目を引く可能性がある。
「街では黒猫になります」
狐姿のゼフィーリアが告げた。
「狐から直接、黒猫にはなれないんだよな?」
「一度、人の姿へ戻る必要があります。周囲を見張っていてください」
ルクスンとノクティアは、別々の方向へ背を向けた。
狐の外皮が開き、鷹の羽を思わせるマントへ戻る。
人間形態となったゼフィーリアは、ルクスンから借りたマントで身体を隠した。
再び羽根が全身を包む。
次に姿を現したのは、一匹の黒猫だった。
ルクスンのマントだけが地面へ落ちる。
「変身するたび、僕がマントを貸して回収するの?」
黒猫は前足で顔を洗い始めた。
「答えろよ!」
「猫は喋らない」
「ノクティア。こいつ、都合が悪くなるたびに猫のふりをする気じゃないよね?」
「たぶん」
黒猫となったゼフィーリアは、当然のようにノクティアの肩へ飛び乗った。
こうして一行は、人間二人、魔法の短剣一本、正体を隠した黒猫一匹という姿でロマールへ戻った。
◇
ロマール盗賊ギルドからの呼び出しは、その日のうちに届いた。
案内されたのは、片目を閉じた黒猫の看板を掲げる酒場。
店の看板猫と、ノクティアの肩にいるゼフィーリアが睨み合う。
「同じ姿」
「縄張り争いが始まるか?」
ノクティアがゼフィーリアを抱き上げた。
「喧嘩しない」
黒猫は不満そうに尾を振った。
地下室では、カイレン・ヴァルネスのロケットを預けたときと同じ白髪の男が待っていた。
「無事に戻ったか。湖畔の村で人狼を倒し、行方不明だった娘も救い出したそうだな」
「耳が早いですね」
「情報を扱うのが仕事だからな。それより、悪い知らせがある」
男は机へ数枚の紙を並べた。
ロマール周辺で目撃された、私兵や暗殺者らしき者たちの記録だった。
「ヴァルネス家は、まだロケットを諦めていない?」
「ロケットはギルドの金庫にある。正面から奪いに来るほど馬鹿ではない」
「では、何を狙っているんです?」
「お前だ」
ルクスンは自分を指差した。
「僕?」
「ロケットを持ち込み、侍従を倒し、命令書を奪った証人だ。お前が生きているかぎり、ヴァルネス家にとって醜聞が表へ出る危険は消えない」
「僕はロケットの中身も見ていなかったんですけど?」
「向こうが信じるとは限らん。ギルドの施設内で手を出させるつもりはないが、ロマールの街路すべてを守ることはできない」
男はノクティアへ目を向けた。
「お前を雇った仲介人につながる暗殺者も、街へ入り込んでいる。任務に失敗し、標的と行動していることも知られた可能性が高い」
「そうか」
「反応が薄いな」
「帰る場所は、もうない」
男は、ノクティアの腕に抱かれた黒猫を見る。
「その猫は?」
「拾った」
「お前たちは仕事へ出るたび、何か拾って帰ってくるのか?」
「今回は猫だけです」
黒猫がノクティアの腕へ爪を立てた。
「痛い」
「猫ではないと言いたいんだろうな」
「何か言ったか?」
「何も」
ルクスンは机の地図へ目を落とした。
「ギルドとしては、どうしろと?」
「しばらくロマールを離れろ。ヴァルネス家の影響が弱い土地へ行け。こちらも、その間に連中が雇った仲介人を調べる」
「影響が弱い場所……」
ロマールに留まれば、いつ暗殺者に襲われるかわからない。
ルクスンの目に留まったのは、湖の王国ファンドリアだった。
「ファンドリアへ行きます」
「また厄介な国を選んだな」
「暗黒神の神殿や盗賊ギルドが力を持つ国なら、ロマールの貴族が勝手に暗殺者を動かすのは難しい。少なくとも、ヴァルネス家の縄張りからは離れられます」
「正義と秩序を掲げる国へ逃げる発想はないのか?」
「逃亡奴隷と元暗殺者と、勝手に喋る魔剣ですよ。正義の国へ行ったら、敵より先に僕たちが捕まりかねません」
ノクティアの腕の中で、黒猫が前足を上げた。
「正体を隠したファラリス神官もいたな」
「その猫に何かあるのか?」
「何もありません!」
◇
盗賊ギルドを出たルクスンたちは、冒険者の店へ向かった。
自分たちだけで街を出れば、暗殺者に待ち伏せされる可能性がある。
隊商へ加わるか、護衛の仕事を受けて大人数で出発したほうが安全だった。
掲示板には、ファンドリア方面へ向かう旅人の護衛依頼が出ている。
ルクスンが依頼書へ手を伸ばすと、背後から声をかけられた。
「その依頼に興味がおありですか?」
振り返る。
立っていたのは、二十代半ばほどの青年だった。
旅装は上等だが華美ではない。
整えられた髪と眼鏡。
腰には家紋の刻まれた剣を帯び、背には魔術師の杖を負っている。
「依頼人のオトフリートと申します。魔術研究のため、ラムリアースとオランへ遊学する予定です」
「ラムリアースとオラン?」
「まずファンドリアへ向かいます。その後、街道と水路を使って北上するつもりです。旅の護衛を探しているのですが、なかなか条件に合う方が見つかりません」
「僕たちは、ちょうどファンドリアへ行こうとしていた」
「それは好都合です。皆さんは、どのような仕事を得意としているのでしょう?」
ルクスンは少し考えた。
技能の程度を数字で説明しても、相手に通じるはずがない。
ここはセッション卓ではなく、フォーセリアの現実なのだ。
「僕は剣と弓を使います。森や街道での野営、足跡の追跡、罠の扱いも多少はできます。ノクティアは身軽で、斥候や潜入向き。精霊魔法も使えます」
「なるほど。前衛と野外活動、斥候、精霊魔法が揃っているのですね」
「この短剣も、ミスリル銀製の魔法の武器です。最近、近くにある刃物の気配までわかるようになりました」
「珍しい魔剣ですね」
「わらわの価値がわかるとは、見どころのある男じゃ!」
オトフリートが目を見開いた。
「いま、剣が喋りましたか?」
「気のせいです」
「主よ! 先ほど自分で魔法の武器だと紹介したではないか!」
「魔法の武器が全部喋るわけじゃないだろ!」
「やはり喋っている……」
ノクティアの腕の中で、黒猫が呆れたように目を閉じた。
オトフリートは戸惑いながらも話を続ける。
「少人数ですが、旅の護衛に必要な役割は揃っているようです。私も古代語魔法を修めていますので、戦闘では後方から援護できます」
言葉遣い。
上等な旅装。
剣に刻まれた家紋。
どう見ても、ただの魔術師ではない。
「もしかして、貴族ですか?」
「一応、家名と騎士身分を持っています。家督を継ぐ立場ではないため、自由に遊学を許されていますが」
ルクスンの顔が引きつった。
「騎士で、貴族で、魔術師。ラムリアースとオランへ遊学する?」
「はい」
「僕の狙っていた騎士/貴族かよ! 羨ましいな。おい!」
店内が静まり返った。
オトフリートが眼鏡の位置を直す。
「なぜ叱られたのでしょう?」
「気にしないで。いつものこと」
ノクティアが答えた。
妖姫殺しも鞘の中から口を挟む。
「主は転生するとき、騎士か貴族にしてくれと頼んだのじゃ!」
「妖姫殺し! 余計なことを言うな!」
「転生?」
「腹話術です!」
「先ほどから剣が喋っていますが」
「腹話術ということにしてください!」
こうしてルクスンたちは、ロマールを脱出するため、インテリ魔術師オトフリートの遊学旅行を護衛することになった。
目的地はファンドリア。
その先には魔法王国ラムリアースと、賢者と冒険者の国オラン。
ルクスンが転生時に望んだものを、最初からすべて持っている男との旅が始まろうとしていた。