アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
章頭成長報告・改訂版
ルクスン
保有経験点5,000点から3,000点を消費し、ファイター技能が3から4へ成長。
* ファイター4
* シーフ2
* レンジャー2
* 残り経験点:2,000
命中力、回避力、追加ダメージ、生命抵抗力、精神抵抗力が上昇。今後もファイター技能を最優先で成長させる。
ノクティア
保有経験点5,000点から3,000点を消費し、シーフ技能が3から4へ成長。
* シーフ4
* シャーマン3
* レンジャー1
* 残り経験点:2,000
戦闘能力に加え、潜伏、忍び足、尾行、鍵開け、罠発見・解除などの盗賊技能全般が向上した。
ゼフィーリア
保有経験点7,000点から5,000点を消費し、ダークプリースト技能が5から6へ成長。
* ダークプリースト〈ファラリス〉6
* シャーマン1
* 残り経験点:2,000
神聖魔法の魔力と使用可能な奇跡が強化された。ただし、ダークエルフかつファラリス神官であることは引き続き秘匿する。
オトフリート
保有経験点は5,000点。
ソーサラー技能を1から2へ成長させる場合、通常は3,000経験点を必要とする。しかし、すでにセージ技能を2レベル取得しているため、ソーサラーの特殊レベルアップによって500点軽減される。
* ソーサラー1→2:2,500点
* セージ2→3:1,500点
* 合計消費経験点:4,000点
成長後は以下のとおり。
* ソーサラー2
* セージ3
* ファイター1
* 残り経験点:1,000
扱える古代語魔法と魔力が増加。知識、文献調査、魔法品鑑定、怪物知識なども向上した。
妖姫殺し
* ソーディアン2
* 保有経験点:3,500
* 次の成長に必要な経験点:4,000
* あと500経験点
現在の武器データは以下のとおり。
* 形状:ショートソード
* 必要筋力:3
* 打撃力:12
* 品質:最高品質(必要筋力-5)
* 材質:ミスリル銀(打撃力+5)
* 魔法補正:ショートソード+1
* 最大タレントポイント:6点
ソーディアン技能による魔法補正は、成長に伴って以下のように強化される。
* ソーディアン1~4:ソード+1
* ソーディアン5~9:ソード+2
* ソーディアン10:ソード+3
現在使用可能な能力は以下のとおり。
* 《センス・ソード》消費1
周囲に存在する刃物の位置と、おおよその数を感知する。
* 《バディ・ソード》消費1
使用者の手から離れなくなり、落としたり奪われたりすることを防ぐ。
* 《リバティ・ソード》消費2
最大18ラウンド、自立して空中を移動できる。
* 《フェザー・ソード》消費2
最大18ラウンド、必要筋力を1として扱う。打撃力は変化しない。
ソーディアン技能が成長するごとに必要筋力と打撃力が上昇し、刀身も大きくなる。最終的には必要筋力11、打撃力20のバスタードソード+3へ成長する。
「あと五百! あと五百あれば、わらわはさらに大きくなれるのじゃ!」
「宿屋で剣が大きくなるとか叫ぶな。別の意味に聞こえるだろ」
ファンドリア王都から半日ほど離れた荒れ地で、一人の女が笑っていた。
裸足だった。
泥と血で汚れた足を引きずり、枯れた草を踏み分けながら、何もない空へ両手を伸ばしている。
粗末な麻の服。
伸び放題の髪。
痩せこけた頬。
女は今にも倒れそうな姿で、それでも幸福そうに笑い続けていた。
「ああ……見える。暗闇の向こうから、聖女様がいらっしゃる」
女の前には誰もいない。
炭を王都へ売りに行く途中だった男が、街道から外れた場所に立つ女を見つけた。
「おい、あんた。そんなところで何をしている?」
女が振り返る。
瞳の焦点は合っていなかった。
男を見ているのではない。
その背後に立つ、見えない何かを見上げている。
「もう苦しまなくていい。考えなくてもいい。聖女様が、みんなを救ってくださる。死んだ者も、生きている者も、みんな同じところへ連れていってくださる」
「聖女? どこの神殿の話だ?」
女は、自分の身体を両腕で抱き締めた。
恍惚とした笑みを浮かべ、全身を震わせる。
「ああ、ファラリスの聖女が私を救ってくれる!」
女の身体から力が抜けた。
男が駆け寄るより早く、その場へ崩れ落ちる。
呼吸はない。
脈もない。
笑みだけを顔に貼りつけたまま、女はこと切れていた。
◇
噂が王都ファンドリアへ届くまで、三日もかからなかった。
最初は、狂女が死ぬ間際に奇妙な言葉を残したというだけの話だった。
それが酒場を二軒通過するころには、黒衣の聖女が女の前へ現れたことになった。
市場へ届いたころには、聖女が女の病を癒やし、苦しみから救ったことになった。
貧民街では、死んだ女が一度蘇り、聖女の到来を告げてから天へ昇ったとまで囁かれていた。
「噂って、三日でここまで育つものなの?」
冒険者の店の二階。
借りている部屋の卓上には、オトフリートが集めた噂の記録が並んでいた。
「俺が聞いた聖女は銀色の髪をした少女だった」
「黒髪の老女だと聞いた」
「黒い翼を持つ美女らしい」
「顔を見た者は一人もいない」
姿も年齢も証言ごとに異なる。
オトフリートは紙片を分類しながら、眼鏡の位置を直した。
「噂の出所を遡ると、郊外で亡くなった女性へ行き着きます。女性が死の直前に『ファラリスの聖女が私を救ってくれる』と口にしたことまでは、発見者が証言しています」
「そこから先は、誰かが勝手に付け加えた話か」
「少なくとも、聖女を実際に見たという証言は確認できません。全員が、誰かから聞いたと答えています」
ノクティアが紙片の一枚を持ち上げる。
「死んだ女の身元は?」
「不明です。王都の住人ではなく、名前を示す物も持っていなかったそうです」
ノクティアの膝に座っていた黒猫が、紙片を覗き込んだ。
ルクスンは扉が閉まっていることを確かめてから、声を落とす。
「僕が知っているファラリスの教義から考えても、『聖女が救ってくれる』という部分がおかしい。望むままに行動することを肯定する神であって、誰かに救ってもらう教えじゃないよな?」
「その認識で間違いありません」
黒猫姿のゼフィーリアが答えた。
「ファラリスは救済を約束しません。何を望み、何を行うかは、その者自身が決めることです。誰かが現れて、苦しみも迷いも取り除いてくれるなどという教えではありません」
「やっぱり、噂の時点で妙だな」
「聖女を名乗ること自体は自由です。他者がそれを信じることも、ファラリスは禁じません。しかし、自ら考えることをやめ、救いを委ねるよう仕向ける者がいるのなら、それは私の知る信仰とは異なります」
鞘に収まった妖姫殺しが、寝台の上から声を上げた。
「聖女とは、わらわのように気高く美しい姫君なのか?」
「自分の名前も生前の姿も覚えてないだろ」
「覚えておらずとも、わらわが絶世の美女であったことは魂が告げておる!」
「その自信だけはモンスターレベル十五だな」
扉が叩かれた。
ゼフィーリアが即座に口を閉ざし、ただの黒猫を装う。
「ルクスン。客だ」
扉の向こうから、店主の声が聞こえた。
「誰です?」
「闇司祭ペイル。奥の部屋で待っている」
ルクスンは仲間たちを見回した。
「ほら来た。ファンドリアへ来てから、暗黒神関係の知り合いばかり増えていく」
黒猫が無言で前足を上げた。
「お前は最初から数えてるよ」
◇
奥の部屋で待っていたのは、痩せた中年の男だった。
灰色の法衣をまとい、首からファラリスの聖印を提げている。
顔色は悪く、落ち窪んだ目の下には深い隈があった。
闇司祭ペイル。
ファラリス神殿に属する司祭である。
ゼフィーリアは黒猫の姿でノクティアの膝へ座り、何食わぬ顔で前足を舐めていた。
ペイルは一行を見回し、ルクスンへ視線を止める。
「未発見の古代遺跡を踏破し、銀冠を持ち帰った冒険者だな」
「もう知られているんですか?」
「十万ガメルを超える魔法の品が競売にかけられた。知られないほうがおかしい」
「次は何を取りに行けと?」
「遺跡の話ではない。街で広がっている噂について調べてもらいたい」
ペイルは一枚の紙を卓へ置いた。
郊外で死んだ女の証言が記されている。
「ああ、ファラリスの聖女が私を救ってくれる――か」
「すでに調べ始めていたようだな」
「冒険者の店でも、その話ばかりです。ファラリス神殿としては、勝手に聖女を名乗られると困るんですか?」
「誰が何を名乗り、誰がそれを信じようと、本人たちの自由だ。神殿が許可することではない」
「では、放っておけばいいでしょう?」
「自然に生まれた噂ならな」
ペイルの指が、女の証言を叩いた。
「何者かがファラリスの名を利用して人を集めているのなら、目的を確かめる必要がある」
「神殿の人間を動かせば?」
「我々が動けば、噂へ真実味を与える。ファラリス神殿が聖女を恐れている、あるいは聖女の存在を隠しているとな。それに、神殿内部にも噂を信じ始めた者がいる。誰が信用できるかわからん」
オトフリートが記録へ目を落とした。
「私たちへ求める調査内容は?」
「聖女が実在するのか。誰が噂を広めているのか。人を集めているなら、どこで何をしているのか。その三つだ」
「本当に聖女がいた場合は?」
ルクスンの問いに、ペイルは表情を変えなかった。
「会って本人の望みを聞け。その後にどうするかは、お前たちが決めればいい」
「ずいぶん穏当ですね」
「ファラリスの名を騙るだけなら好きにすればいい。だが、その名を使って他者の自由を奪う者がいるなら、我々にも無関係ではない」
その言葉に、黒猫姿のゼフィーリアがわずかに顔を上げた。
ペイルは気づかず、話を続ける。
「報酬と経費については、調査の規模が判明した段階で改めて決める。最初に必要なのは、噂の真偽だ」
「怪しい集会や、新しく人を集め始めた連中がいないか。盗賊ギルドで聞いてみます」
「任せる。ただし、急いだほうがいい」
オトフリートが尋ねる。
「郊外で亡くなった女性の遺体は、調べられたのですか?」
「王都へ運ばれ、身元不明者として死体置き場へ収容された」
「された、ということは?」
「昨夜、消えた」
部屋の空気が変わった。
「何者かに盗まれた?」
「見張りは何も見ていない。扉の鍵も壊されていない。だが、女の遺体だけがなくなっている」
ルクスンは、ロマールの闘技場で目覚めたときのことを思い出した。
死体置き場。
消えた死体。
死者すら救うという、正体不明の聖女。
「嫌な予感しかしないな」
「依頼を受けるか?」
ルクスンは仲間を見た。
ノクティアが頷く。
オトフリートは、すでに調査項目を書き留めている。
黒猫は何も言わなかったが、その尾が不機嫌そうに左右へ動いていた。
「受けます。まずは盗賊ギルドから、地下で妙な集会を開いている連中がいないか洗ってみる」
「主よ! 聖女を見つけたら、わらわの生前を知っておるか尋ねるのじゃ!」
「存在するかどうかもわからない相手に期待するな」
ペイルが静かに告げた。
「聖女はいない」
ルクスンは眉を上げる。
「断言するんですか?」
「少なくとも、昨日まではな」
ファンドリアの夜。
まだ誰も、ファラリスの聖女を見たことはなかった。
それでも、その名を呼ぶ者は増え続けていた。