アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

34 / 65
第六章 ファラリスの聖女

章頭成長報告・改訂版

ルクスン

保有経験点5,000点から3,000点を消費し、ファイター技能が3から4へ成長。

* ファイター4
* シーフ2
* レンジャー2
* 残り経験点:2,000

命中力、回避力、追加ダメージ、生命抵抗力、精神抵抗力が上昇。今後もファイター技能を最優先で成長させる。

ノクティア

保有経験点5,000点から3,000点を消費し、シーフ技能が3から4へ成長。

* シーフ4
* シャーマン3
* レンジャー1
* 残り経験点:2,000

戦闘能力に加え、潜伏、忍び足、尾行、鍵開け、罠発見・解除などの盗賊技能全般が向上した。

ゼフィーリア

保有経験点7,000点から5,000点を消費し、ダークプリースト技能が5から6へ成長。

* ダークプリースト〈ファラリス〉6
* シャーマン1
* 残り経験点:2,000

神聖魔法の魔力と使用可能な奇跡が強化された。ただし、ダークエルフかつファラリス神官であることは引き続き秘匿する。

オトフリート

保有経験点は5,000点。

ソーサラー技能を1から2へ成長させる場合、通常は3,000経験点を必要とする。しかし、すでにセージ技能を2レベル取得しているため、ソーサラーの特殊レベルアップによって500点軽減される。

* ソーサラー1→2:2,500点
* セージ2→3:1,500点
* 合計消費経験点:4,000点

成長後は以下のとおり。

* ソーサラー2
* セージ3
* ファイター1
* 残り経験点:1,000

扱える古代語魔法と魔力が増加。知識、文献調査、魔法品鑑定、怪物知識なども向上した。

妖姫殺し

* ソーディアン2
* 保有経験点:3,500
* 次の成長に必要な経験点:4,000
* あと500経験点

現在の武器データは以下のとおり。

* 形状:ショートソード
* 必要筋力:3
* 打撃力:12
* 品質:最高品質(必要筋力-5)
* 材質:ミスリル銀(打撃力+5)
* 魔法補正:ショートソード+1
* 最大タレントポイント:6点

ソーディアン技能による魔法補正は、成長に伴って以下のように強化される。

* ソーディアン1~4:ソード+1
* ソーディアン5~9:ソード+2
* ソーディアン10:ソード+3

現在使用可能な能力は以下のとおり。

* 《センス・ソード》消費1
周囲に存在する刃物の位置と、おおよその数を感知する。
* 《バディ・ソード》消費1
使用者の手から離れなくなり、落としたり奪われたりすることを防ぐ。
* 《リバティ・ソード》消費2
最大18ラウンド、自立して空中を移動できる。
* 《フェザー・ソード》消費2
最大18ラウンド、必要筋力を1として扱う。打撃力は変化しない。

ソーディアン技能が成長するごとに必要筋力と打撃力が上昇し、刀身も大きくなる。最終的には必要筋力11、打撃力20のバスタードソード+3へ成長する。

「あと五百! あと五百あれば、わらわはさらに大きくなれるのじゃ!」

「宿屋で剣が大きくなるとか叫ぶな。別の意味に聞こえるだろ」


第34話 聖女はいない

 ファンドリア王都から半日ほど離れた荒れ地で、一人の女が笑っていた。

 

 裸足だった。

 

 泥と血で汚れた足を引きずり、枯れた草を踏み分けながら、何もない空へ両手を伸ばしている。

 

 粗末な麻の服。

 

 伸び放題の髪。

 

 痩せこけた頬。

 

 女は今にも倒れそうな姿で、それでも幸福そうに笑い続けていた。

 

「ああ……見える。暗闇の向こうから、聖女様がいらっしゃる」

 

 女の前には誰もいない。

 

 炭を王都へ売りに行く途中だった男が、街道から外れた場所に立つ女を見つけた。

 

「おい、あんた。そんなところで何をしている?」

 

 女が振り返る。

 

 瞳の焦点は合っていなかった。

 

 男を見ているのではない。

 

 その背後に立つ、見えない何かを見上げている。

 

「もう苦しまなくていい。考えなくてもいい。聖女様が、みんなを救ってくださる。死んだ者も、生きている者も、みんな同じところへ連れていってくださる」

 

「聖女? どこの神殿の話だ?」

 

 女は、自分の身体を両腕で抱き締めた。

 

 恍惚とした笑みを浮かべ、全身を震わせる。

 

「ああ、ファラリスの聖女が私を救ってくれる!」

 

 女の身体から力が抜けた。

 

 男が駆け寄るより早く、その場へ崩れ落ちる。

 

 呼吸はない。

 

 脈もない。

 

 笑みだけを顔に貼りつけたまま、女はこと切れていた。

 

          ◇

 

 噂が王都ファンドリアへ届くまで、三日もかからなかった。

 

 最初は、狂女が死ぬ間際に奇妙な言葉を残したというだけの話だった。

 

 それが酒場を二軒通過するころには、黒衣の聖女が女の前へ現れたことになった。

 

 市場へ届いたころには、聖女が女の病を癒やし、苦しみから救ったことになった。

 

 貧民街では、死んだ女が一度蘇り、聖女の到来を告げてから天へ昇ったとまで囁かれていた。

 

「噂って、三日でここまで育つものなの?」

 

 冒険者の店の二階。

 

 借りている部屋の卓上には、オトフリートが集めた噂の記録が並んでいた。

 

「俺が聞いた聖女は銀色の髪をした少女だった」

 

「黒髪の老女だと聞いた」

 

「黒い翼を持つ美女らしい」

 

「顔を見た者は一人もいない」

 

 姿も年齢も証言ごとに異なる。

 

 オトフリートは紙片を分類しながら、眼鏡の位置を直した。

 

「噂の出所を遡ると、郊外で亡くなった女性へ行き着きます。女性が死の直前に『ファラリスの聖女が私を救ってくれる』と口にしたことまでは、発見者が証言しています」

 

「そこから先は、誰かが勝手に付け加えた話か」

 

「少なくとも、聖女を実際に見たという証言は確認できません。全員が、誰かから聞いたと答えています」

 

 ノクティアが紙片の一枚を持ち上げる。

 

「死んだ女の身元は?」

 

「不明です。王都の住人ではなく、名前を示す物も持っていなかったそうです」

 

 ノクティアの膝に座っていた黒猫が、紙片を覗き込んだ。

 

 ルクスンは扉が閉まっていることを確かめてから、声を落とす。

 

「僕が知っているファラリスの教義から考えても、『聖女が救ってくれる』という部分がおかしい。望むままに行動することを肯定する神であって、誰かに救ってもらう教えじゃないよな?」

 

「その認識で間違いありません」

 

 黒猫姿のゼフィーリアが答えた。

 

「ファラリスは救済を約束しません。何を望み、何を行うかは、その者自身が決めることです。誰かが現れて、苦しみも迷いも取り除いてくれるなどという教えではありません」

 

「やっぱり、噂の時点で妙だな」

 

「聖女を名乗ること自体は自由です。他者がそれを信じることも、ファラリスは禁じません。しかし、自ら考えることをやめ、救いを委ねるよう仕向ける者がいるのなら、それは私の知る信仰とは異なります」

 

 鞘に収まった妖姫殺しが、寝台の上から声を上げた。

 

「聖女とは、わらわのように気高く美しい姫君なのか?」

 

「自分の名前も生前の姿も覚えてないだろ」

 

「覚えておらずとも、わらわが絶世の美女であったことは魂が告げておる!」

 

「その自信だけはモンスターレベル十五だな」

 

 扉が叩かれた。

 

 ゼフィーリアが即座に口を閉ざし、ただの黒猫を装う。

 

「ルクスン。客だ」

 

 扉の向こうから、店主の声が聞こえた。

 

「誰です?」

 

「闇司祭ペイル。奥の部屋で待っている」

 

 ルクスンは仲間たちを見回した。

 

「ほら来た。ファンドリアへ来てから、暗黒神関係の知り合いばかり増えていく」

 

 黒猫が無言で前足を上げた。

 

「お前は最初から数えてるよ」

 

          ◇

 

 奥の部屋で待っていたのは、痩せた中年の男だった。

 

 灰色の法衣をまとい、首からファラリスの聖印を提げている。

 

 顔色は悪く、落ち窪んだ目の下には深い隈があった。

 

 闇司祭ペイル。

 

 ファラリス神殿に属する司祭である。

 

 ゼフィーリアは黒猫の姿でノクティアの膝へ座り、何食わぬ顔で前足を舐めていた。

 

 ペイルは一行を見回し、ルクスンへ視線を止める。

 

「未発見の古代遺跡を踏破し、銀冠を持ち帰った冒険者だな」

 

「もう知られているんですか?」

 

「十万ガメルを超える魔法の品が競売にかけられた。知られないほうがおかしい」

 

「次は何を取りに行けと?」

 

「遺跡の話ではない。街で広がっている噂について調べてもらいたい」

 

 ペイルは一枚の紙を卓へ置いた。

 

 郊外で死んだ女の証言が記されている。

 

「ああ、ファラリスの聖女が私を救ってくれる――か」

 

「すでに調べ始めていたようだな」

 

「冒険者の店でも、その話ばかりです。ファラリス神殿としては、勝手に聖女を名乗られると困るんですか?」

 

「誰が何を名乗り、誰がそれを信じようと、本人たちの自由だ。神殿が許可することではない」

 

「では、放っておけばいいでしょう?」

 

「自然に生まれた噂ならな」

 

 ペイルの指が、女の証言を叩いた。

 

「何者かがファラリスの名を利用して人を集めているのなら、目的を確かめる必要がある」

 

「神殿の人間を動かせば?」

 

「我々が動けば、噂へ真実味を与える。ファラリス神殿が聖女を恐れている、あるいは聖女の存在を隠しているとな。それに、神殿内部にも噂を信じ始めた者がいる。誰が信用できるかわからん」

 

 オトフリートが記録へ目を落とした。

 

「私たちへ求める調査内容は?」

 

「聖女が実在するのか。誰が噂を広めているのか。人を集めているなら、どこで何をしているのか。その三つだ」

 

「本当に聖女がいた場合は?」

 

 ルクスンの問いに、ペイルは表情を変えなかった。

 

「会って本人の望みを聞け。その後にどうするかは、お前たちが決めればいい」

 

「ずいぶん穏当ですね」

 

「ファラリスの名を騙るだけなら好きにすればいい。だが、その名を使って他者の自由を奪う者がいるなら、我々にも無関係ではない」

 

 その言葉に、黒猫姿のゼフィーリアがわずかに顔を上げた。

 

 ペイルは気づかず、話を続ける。

 

「報酬と経費については、調査の規模が判明した段階で改めて決める。最初に必要なのは、噂の真偽だ」

 

「怪しい集会や、新しく人を集め始めた連中がいないか。盗賊ギルドで聞いてみます」

 

「任せる。ただし、急いだほうがいい」

 

 オトフリートが尋ねる。

 

「郊外で亡くなった女性の遺体は、調べられたのですか?」

 

「王都へ運ばれ、身元不明者として死体置き場へ収容された」

 

「された、ということは?」

 

「昨夜、消えた」

 

 部屋の空気が変わった。

 

「何者かに盗まれた?」

 

「見張りは何も見ていない。扉の鍵も壊されていない。だが、女の遺体だけがなくなっている」

 

 ルクスンは、ロマールの闘技場で目覚めたときのことを思い出した。

 

 死体置き場。

 

 消えた死体。

 

 死者すら救うという、正体不明の聖女。

 

「嫌な予感しかしないな」

 

「依頼を受けるか?」

 

 ルクスンは仲間を見た。

 

 ノクティアが頷く。

 

 オトフリートは、すでに調査項目を書き留めている。

 

 黒猫は何も言わなかったが、その尾が不機嫌そうに左右へ動いていた。

 

「受けます。まずは盗賊ギルドから、地下で妙な集会を開いている連中がいないか洗ってみる」

 

「主よ! 聖女を見つけたら、わらわの生前を知っておるか尋ねるのじゃ!」

 

「存在するかどうかもわからない相手に期待するな」

 

 ペイルが静かに告げた。

 

「聖女はいない」

 

 ルクスンは眉を上げる。

 

「断言するんですか?」

 

「少なくとも、昨日まではな」

 

 ファンドリアの夜。

 

 まだ誰も、ファラリスの聖女を見たことはなかった。

 

 それでも、その名を呼ぶ者は増え続けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。