アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

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第七章 湖上の城の白いサーペント

章頭成長報告

 今回の冒険で得た経験点は五千点。

 これまで使わずに残していた分を合わせ、ルクスンの保有経験点は七千点になった。

 さて、何を伸ばすか。

 そう考えた瞬間、脳裏に浮かんでいた数字の上へ、丸々と太った一匹のハムスターが落ちてきた。

 見間違えるはずがない。

 創造神だった。

「混沌の女神の出現は、はるか以前から予言されていた。異なる神々の神聖力が混ざり合い、どの神の眷属でもない新たな神が生まれる。この世界の神々には、あれを倒せない。神は神としての理に縛られ、この世界で生まれ育った人間もまた、神を神として受け入れる常識から逃れられない。だから世界の外から、こちらの理を知りながら、その理に縛られていない魂を呼ぶ必要があった。そこで見つけたのが、フォーセリアとの親和性が異様に高く、ちょうど向こうの世界でうっかり死なせてしまった八坂鷹という魂だったわけだ」

 今、聞き捨てならないことを言わなかったか。

 ルクスン――八坂鷹が問い詰めるより早く、創造神は小さな前脚を掲げた。

 白い光が落ちてくる。

 身体の奥へ、これまで存在しなかった何かが無理やり接続された。

 信仰ではない。

 神へ祈りを捧げた覚えもない。

 それでも、創造神へ直結する神聖語と、その力を引き出す方法が頭の中へ流れ込んでくる。

 同時に、保有経験点を示す数字が七千から六千へ減った。

「おい。今の『死なせた』という話も聞きたいが、その前に俺の経験点を返せ。信仰した覚えのない神のプリースト技能を勝手に押しつけるな」

「必要経費である。混沌の女神を倒すには、この世界の因果へ外側から干渉する力がいる。君が理解しやすい言葉でいうなら、骰子に触れる力だ。なお返品、改宗、経験点の払い戻しは受け付けていない」

「待て。ダンプカーはお前の仕業か? 何が『うっかり』だ! そこを詳しく説明してから消えろ!」

 振り抜いた右拳は、光の粒となった創造神を虚しく通り抜けた。

 あとには、新たな技能と、減らされた経験点だけが残された。

 混沌の女神はアンデッドではない。

 ならば、聖なる右手が通用する保証もなかった。

 何と戦うことになっても、前衛として立ち続けられる地力がいる。

 ルクスンは残された六千点から四千点を使い、戦士としての腕をさらに鍛えることにした。



【ルクスンの成長】

獲得経験点:五千点
成長前保有経験点:七千点

強制取得:

プリースト〈創造神〉 一
消費経験点:千点

通常成長:

ファイター 四→五
消費経験点:四千点

現在技能:

ファイター五/シーフ二/レンジャー二/プリースト〈創造神〉一

残り経験点:二千点

【創造神特殊神聖魔法】

一《リ・ダイス》
一日一回、判定の骰子を振り直せる。

三《コントロール・ダイス》
一日一回、判定の骰子の出目を変えられる。

五《コントロール・リザルト》
六ゾロで成功した判定の結果が、通常よりも良いものになる。

九《ジャスト・コンプリート》
判定に使用する骰子が、すべて六ゾロになる。



【ノクティアの成長】

シーフ 四→五
消費経験点:四千点

現在技能:

シーフ五/シャーマン三/レンジャー一

残り経験点:三千点



【ゼフィーリアの成長】

ダークプリースト〈ファラリス〉 六→七
消費経験点:七千点

現在技能:

ダークプリースト〈ファラリス〉七/シャーマン一

残り経験点:なし



【オトフリートの成長】

セージ 三→四
消費経験点:二千点

ソーサラー 二→三
通常消費経験点:四千点
セージ技能先行による軽減:五百点
実消費経験点:三千五百点

現在技能:

ソーサラー三/セージ四/ファイター一

残り経験点:五百点



【妖姫殺しの成長】

第六章終了時保有経験点:四千五百点
獲得経験点:五千点
成長前保有経験点:九千五百点

ソーディアン 三→四
消費経験点:五千点

残り経験点:四千五百点

現在形状:

最高品質ミスリル製ショートソード+一
必要筋力五/打撃力十四
魔法の武器としての修正+一
最大タレントポイント十二

新規取得タレント:

《ソニックブレイド》
消費タレントポイント:四
剣撃を飛ばし、視認できる十メートル以内の対象へ一度だけ通常の武器攻撃を行える。発動後、一回の攻撃で効果は終了する。

《パリィイング》
消費タレントポイント:四
回避に専念している間、回避値へソーディアンレベルと同じ修正を得る。現在の修正は+四。持続時間は一ラウンド。


第43話 創造神の取り立て

 目を開けたルクスンは、冒険者の店の一室で天井を睨んでいた。

 

 机にはアレクラスト大陸の地図が広げられ、その周囲にはオトフリート、ノクティア、そして黒猫姿のゼフィーリアが集まっている。

 

「ダンプカーで死んだの、創造神のうっかりだったらしい」

 

「だんぷかーとは何じゃ?」

 

「お前は黙ってろ。あのハムスター、次に会ったら絶対に殴る。経験点まで勝手に持っていきやがった」

 

 以前よりわずかに長く、重くなった妖姫殺しが、鞘の中で得意げに震えた。

 

「神を殴ると宣言する神官とは珍しいのぉ。それより主よ、わらわもまた大きくなったぞ! 今のわらわなら離れた敵を斬り、守りに徹すれば並の攻撃など華麗に受け流せる!」

 

「僕の経験点が強奪された横で、順当に成長しやがって」

 

 オトフリートが眼鏡の位置を直した。

 

「詳しい事情はわかりませんが、神聖魔法を授けられた以上、その神との間に何らかのつながりが生まれたのではありませんか?」

 

「つながりというか、取り立て業者に勝手に口座を作られた気分だよ」

 

「便利なら使えばいい」

 

 ノクティアの一言が、神学上の問題を切り捨てた。

 

 ルクスンは反論を諦め、机の地図へ目を戻した。

 

「それで、ファンドリアからラムリアースへ向かう道だけど、僕はオーファンを通る経路を推す。主要街道が整備されているし、王都ファンで補給もできる。僕の知識が今も通用するなら、四人で移動するには一番堅実だ」

 

 ルクスンの知識は、ワールドガイドから得たものだ。

 

 実際に現在の街道を歩き、治安や宿場の様子を確かめたわけではない。

 

 それでも、何も知らずに山道へ入るよりはましだった。

 

 何より、オーファン近郊には、ルクスンが最終目標の一つとしている魔力の塔の遺跡がある。

 

 すぐに攻略できなくとも、付近の地形を確認しておく価値は大きい。

 

 ところが、黒猫姿のゼフィーリアが即座に反対した。

 

「オーファンには行かない。山越えでも湖でも構わないわ。ターシャスの近くを通るくらいなら、エア湖を渡る」

 

 普段のゼフィーリアなら、面倒事へ巻き込まれないよう曖昧な態度を取る。

 

 その彼女が、今回は一歩も譲ろうとしなかった。

 

 ターシャスの森。

 

 オーファン南部に広がる、ダークエルフたちの住む森だ。

 

「街道を通るだけでも危険なのか?」

 

「森へ入らなければ安全というものではないわ。十二支族には人間の商人や暗黒神官と取引している者もいる。私を連れ戻せば恩賞を得られると思っている追跡者もいるでしょう。オーファンへ入れば、どこで見つかるかわからない」

 

 単なる好き嫌いではなかった。

 

 ゼフィーリアの正体が知られれば、彼女だけの問題では済まない。

 

 ダークエルフであり、ファラリスの高位神官でもある女を同行させていると公になれば、騎士身分を持つオトフリートまで立場を失いかねなかった。

 

 オトフリートが地図上の別経路を指でなぞった。

 

「北西方面の国境宿場を経由しましょう。私の家の馬車は、そこで馬車屋へ預けます。麓までは小型馬車を使えますが、険しい区間から先は荷馬か騾馬へ荷物を積み替えなければなりません。山を越えればエア湖畔の交易港へ出られます。そこからラムリアース行きの船に乗れますが、定期客船ではありません。商人の荷が集まり次第出航する貨客船ですので、港で何日か待たされる可能性があります」

 

「街道より危険で、金もかかって、船がいつ出るかもわからないのか」

 

「冬季や豪雨の時期には通れませんが、今なら越えられるはずです。商人や魔術師、遊学生、書状を運ぶ者が使う道ですから、完全な獣道ではありません。ただし、護衛なしで入ることは勧められません」

 

「その護衛を、僕たち自身でやるわけね」

 

「全員が冒険者なのですから、適任でしょう」

 

 正論だった。

 

 ルクスンは地図を睨んだあと、顔を上げた。

 

「決まらないから多数決にする。エア湖経由に賛成の者」

 

 オトフリートが手を上げた。

 

 黒猫のゼフィーリアも前足を上げる。

 

 さらに、妖姫殺しの柄から白い腕が生え、勢いよく挙手した。

 

「わらわも湖がよいぞ! 船旅というものをしてみたい!」

 

「魔剣の一票は認めない」

 

「なぜじゃ! わらわも立派な仲間であろう!」

 

「なら旅費を自分で払え」

 

「わらわは食事も寝床も必要とせぬ。つまり、一行でもっとも経済的な仲間じゃ!」

 

「それと選挙権は別問題だ。ノクティアは?」

 

「棄権する。どちらでもいい」

 

「僕だけオーファン経由かよ!」

 

 エア湖経由二票。

 

 オーファン経由一票。

 

 棄権一票。

 

 魔剣票は無効。

 

 ルクスンのオーファン案は否決された。

 

          ◇

 

 経路は決まった。

 

 次に問題となるのは、その先だった。

 

 オトフリートの目的は、ラムリアースとオランへの遊学である。

 

 遊学が始まれば、数か月は同じ都市に滞在することになる。

 

 だが、それはルクスンたちにとって無駄な足止めではなかった。

 

「ラムリアース滞在中も皆さんが同行してくださるなら、魔術師ギルドへ紹介できます。遺跡の移籍調査や、古代王国期の資料回収を外部の冒険者へ依頼することもあります。最初から重要な仕事を任されることはないでしょうが、実績を積めばギルドとのつながりを作れるはずです」

 

 魔術師ギルドの信用。

 

 遺跡調査の実績。

 

 魔法装置を扱える人材とのつながり。

 

 いつか空飛ぶ魔力の塔を建造するという、途方もない野望に必要なものばかりだった。

 

「悪くない。いや、かなりいい。どうせ遺跡を漁るなら、魔術師ギルドから金をもらって漁ったほうが得だ。ラムリアースで実績と信用を稼いで、オランでも同じことをする。その間に実力を伸ばして、最後に魔力の塔へ挑む」

 

「最後というわりには、その先にも何か企んでいそうですね」

 

「魔力の塔を空へ飛ばす」

 

「聞かなかったことにしておきます」

 

 オトフリートが静かに地図を畳んだ。

 

 翌日から、山越えに耐えられる装備と保存食、荷駄の手配を始める。

 

 ファンドリアを発ち、北西の国境宿場へ。

 

 そこから脇街道を越え、エア湖畔の交易港を目指す。

 

 ルクスンが本でしか知らなかった湖の底では、白く長い影が静かに身を翻していた。

 

 湖上に残された古い城跡を囲むように。

 

 新たに骰子へ触れる力を得た転生者と、剣撃を飛ばせるようになった喋る魔剣が近づいていることなど、知るはずもなく。

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