アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
エア湖の岸へ逃げ延びた一行は、朝日が昇るまで葦原の中に身を潜めた。
湖上に見回り船の姿はない。
白いサーペントも、湖底の城も現れなかった。
「追っては来ないようですね。外界で騒ぎを起こせば、自分たちの存在を知られる危険があります。私たちが秘密を守ると信じるしかないのでしょう」
「監禁されたことは忘れないけど、湖底の町を売るつもりもない。あそこには何も知らない子供たちもいたからな」
ルクスンは沈黙したままの妖姫殺しへ目を落とした。
「それより、早く妖姫殺しの封印を解かないと。一言目から罵声が飛んできそうだ」
「一言では終わらないと思う」
ノクティアの予想に、全員が同意した。
◇
湖岸の街道を進み、魔法王国ラムリアースの交易都市へ着いたのは翌日の夕方だった。
三人は生成りの服に革のサンダル。
黒猫となったゼフィーリア。
武器らしいものは、オトフリートのソーサラー・スタッフと、封印された妖姫殺しだけ。
街の衛兵から見れば、遭難者にしか見えなかった。
実際、そのとおりだった。
「身分を示す品は失いましたが、私はラムリアースへ遊学する予定のオトフリートと申します。魔術師ギルドへ送られた紹介状を確認していただければ、身元を証明できます」
オトフリートの申し出によって、一行は魔術師ギルドへ案内された。
紹介状と遊学者名簿が確認される。
身分証明の指輪を失っていても、オトフリートが騎士身分を持つ魔術師であることは証明できた。
問題は、ルクスンたちが持ち込んだ魔法の品だった。
「湖上で事件に遭い、元の装備と財産をすべて失いました。この品々は脱出の過程で入手したものです。入手場所については、その地に暮らす人々の安全に関わるため明かせません。品物の鑑定と一部の買い取り、それから、この短剣へかけられた封印の解除をお願いします」
オトフリートが事情を説明した。
魔術師ギルドは不審を示したが、品物に盗難届や所有者を示す刻印はなかった。
オトフリートが身元と取引の責任を保証することで、鑑定と買い取りが認められた。
◇
最初に封印を解かれたのは、妖姫殺しだった。
魔術師たちがシール・エンチャントの術式を調べ、解除の魔法を重ねる。
銀の刀身から、失われていた魔力が戻ってくる。
センス・マジックにも、ミスリル銀とは異なる強い魔力が映った。
「おっそいのじゃ! 主よ、わらわを暗くて狭い武器庫へ置き去りにしたうえ、知らぬ魔法の品々と一緒に袋へ押し込むとは何事じゃ! しかも、わらわを十一点の戦利品に数えようとした者がおったであろう! 名乗り出るのじゃ!」
「数えてない! お前は仲間だから、戦利品とは別枠にした!」
「それだけは褒めてやる。しかし、迎えが遅い!」
「脱出して翌々日だよ。十分早いだろ!」
魔術師たちが、喋る短剣と口論するルクスンを珍しそうに見ていた。
◇
十一点の戦利品は、ミスリル・チェインを除いて基本取引価格八十二万二千ガメルと鑑定された。
すべて売れば四十一万一千ガメルになる。
しかし、冒険者として再起するには、金だけでなく装備も必要だった。
相談の結果、四点を売却した。
物入れの腕輪。
ルーンの指輪。
ジャンピング・ブーツ。
スケープドール。
売却額は合計十四万七千ガメル。
残りは一行の装備として保有することになった。
ルクスンは必要筋力十相当のミスリル・チェインを着込み、新たに買ったメイスとラウンドシールドを装備した。
鎖帷子でありながら軽く、盗賊として動く際にも支障はない。
オトフリートはソーサラー・スタッフを新たな発動体とした。
ノクティアには、火力を補うパワー・ワンドが渡された。
通話の護符はルクスンとノクティア。
十点の魔晶石は共用品。
内包の袋には、追跡されたくない重要品を収納する。
無限のバッグ①には、旅道具や食料を収めることになった。
ノクティアは短槍、投げナイフ、盗賊の七つ道具を買い直した。
オトフリートも護身用の剣と旅装を揃える。
ゼフィーリアには、人間形態へ戻ったときの服と靴が用意された。
「これで、ようやく猫の姿から戻るたびに毛布を巻かなくて済みます」
「変身したら服はその場に落ちるから、結局誰かが回収しないといけないけどね」
「その役目は主が引き受ければよい。女性の衣服を持ち歩けるとは名誉なことではないか」
「妖姫殺し。封印を解いた直後で悪いけど、もう一度黙ってくれない?」
◇
その夜。
一行はラムリアースの宿で、久しぶりに温かい食事を取った。
湖底の城で失った物は戻らない。
それでも、新しい武器と道具、十二万五千ガメルの共通資金が残った。
何より、全員が生きている。
ルクスンは宿の窓から、魔法の灯火が並ぶラムリアースの街を眺めた。
この国でオトフリートが遊学する間、魔術師ギルドとの繋がりを作る。
遺跡調査の仕事を受け、知識と信用と人材を集める。
やがて魔力の塔を手に入れ、飛空石によって空へ浮かべる。
湖底へ閉じ込められた程度で、諦めるような野望ではなかった。
「待ってろよ、アレクラスト。僕は着の身着のままになったくらいじゃ止まらないからな」
こうして一行はエア湖を越え、魔法王国ラムリアースへ到着した。
白いサーペントに奪われた旅は終わり、新たな土地での冒険が始まろうとしていた。
第七章リザルト
経験点
最大の障害:ドラゴンプリースト相当、モンスターレベル5
獲得経験点:各2,500点
対象:
* ルクスン
* ノクティア
* ゼフィーリア
* オトフリート
* 妖姫殺し
成長処理は次章冒頭に行う。
収入
内容 金額
物入れの腕輪売却 60,000ガメル
ルーンの指輪売却 30,000ガメル
ジャンピング・ブーツ売却 12,000ガメル
スケープドール売却 45,000ガメル
収入合計 147,000ガメル
売値は基本取引価格の半額。
支出
内容 金額
妖姫殺しの封印解除 2,000ガメル
魔法の品の鑑定・取引仲介 1,000ガメル
四人分の食費・宿泊費、五日分 800ガメル
湖岸から都市までの移動費 200ガメル
武器、防具、衣類、盗賊道具、冒険者装備の再建 18,000ガメル
支出合計 22,000ガメル
最終収支
147,000-22,000=125,000ガメル
第七章終了時共通資金:12万5,000ガメル
保有する戦利品
* 必要筋力10のミスリル・チェイン:ルクスン
* ソーサラー・スタッフ:オトフリート
* パワー・ワンド:ノクティア
* 通話の護符一組:ルクスン、ノクティア
* 無限のバッグ①:共用品
* 無限のバック②:共用品
* 十点の魔晶石:共用品
* 妖姫殺し:封印解除済み
損失
* 湖上船へ残した現金、旅装、食料、冒険者道具
* ルクスンの旧武器、防具
* ノクティアの旧武器、盗賊道具
* オトフリートの家紋入りの剣、魔術師の杖、身分証明の指輪
* その他、携行していた旧所持品一式
旧所持品は全損として扱い、資産額には加算しない。