アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す 作:駄文亭
第9章 魔法学園入学?
章頭キャラクター成長報告
前章獲得経験点:各二千五百点
ルクスン
成長前保有経験点:二千点
合計経験点:四千五百点
* プリースト〈創造神〉一→二:千五百点
* シーフ二→三:二千点
* 残り経験点:千点
現在技能:ファイター五/シーフ三/レンジャー二/プリースト〈創造神〉二
戦闘力を直接伸ばすのではなく、神聖魔法と探索能力を補強。レンジャー三への成長には、あと五百点必要となる。
ノクティア
成長前保有経験点:三千点
合計経験点:五千五百点
* シャーマン三→四:四千点
* レンジャー一→二:千点
* 残り経験点:五百点
現在技能:シーフ五/シャーマン四/レンジャー二
精霊魔法を主軸としつつ、追跡、野営、応急手当など野外活動の裾野を広げた。
ゼフィーリア
合計経験点:二千五百点
* シャーマン一→二:二千点
* レンジャー〇→一:五百点
* 残り経験点:〇点
現在技能:ダークプリースト〈ファラリス〉七/シャーマン二/レンジャー一
今回は突出している暗黒神官としての力を伸ばさず、精霊魔法と野外活動を習得。
動物形態の身体能力や知覚は利用できるが、動物特有の「野生の勘」は得られない。レンジャー技能による感知は、本人が身につけた知識と経験によるものとなる。
オトフリート
成長前保有経験点:五百点
合計経験点:三千点
今回は経験点を消費せず、ソーサラー四への成長を目指して保留。必要経験点五千点まで、あと二千点。
現在技能:ソーサラー三/セージ四/ファイター一
三階梯の古代語魔法へ到達したことで《ファミリア》を行使できる。
《ファミリア》は戦闘中に使えるような即時魔法ではない。専用の魔法陣、触媒、安定した儀式場を用意し、三日間にわたって召喚と契約の儀式を続ける必要がある。
召喚対象には、夜間飛行と上空偵察に優れた梟を選択する。
妖姫殺し
成長前保有経験点:四千五百点
合計経験点:七千点
* ソーディアン四→五:七千点
* 残り経験点:〇点
現在技能:ソーディアン五
* 形状:ブロードソード+2
* 必要筋力:六
* 打撃力:十五
* タレントポイント:十五
新規タレント《ヒューマノイド》
タレントポイントを五点消費し、制限時間のあいだ完全な人型となる。
人型時はファイター五相当の戦闘能力を持つ。各能力値は十四にソーディアン技能レベルを加えた値となり、現在は十九。
朝。
ルクスンは、腕に何かが触れる奇妙な感触で目を覚ました。
エア湖から命からがら脱出し、ようやく辿り着いたラムリアース。その冒険者の店で借りた個室に、昨夜まで他人はいなかったはずである。
それなのに、すぐ隣から誰かの寝息が聞こえる。
薄く目を開けると、朝日に照らされた銀色の髪が見えた。
「誰だ?」
「うーん……妾はもう食べられないのじゃ〜」
「その声は!?」
銀髪の女が目を開く。
人間にはあり得ない銀一色の瞳が、間近からルクスンを見つめていた。
「ん? どうした、主よ?」
「剣が人化した!」
ルクスンの絶叫が、冒険者の店の二階へ響き渡った。
◇
部屋の扉が勢いよく開いた。
短槍を構えたノクティア、杖を持ったオトフリート、そして黒猫姿のゼフィーリアが飛び込んでくる。
寝台の上には、毛布で身体を隠した銀髪銀眼の女。
床には、妖姫殺しを収めていた空の鞘が転がっている。
ノクティアが女と鞘を交互に見た。
「妖姫殺し?」
「うむ。妾じゃ!」
黒猫が寝台へ飛び乗り、銀髪の女の匂いを嗅ぐ。
「まとっている魔力は間違いなく妖姫殺しね。本当に人の姿を得たようだけれど、どうしてルクスンの寝台にいるの?」
「僕が聞きたい! 起きたら勝手に隣に生えてたんだよ!」
「生えたとは失礼な。妾は主の傍らで眠っておっただけじゃ。昨夜までは剣であったゆえ、どこへ寝かされても問題なかったのじゃがな」
「人になってから言え!」
オトフリートは眼鏡を直しながら、銀髪の女を観察していた。
「以前から自律して動き、身体の一部を人に近い形へ変化させていました。それがさらに成長し、完全な人型を取れるようになったのでしょう。ただし、衣服までは作れないようですね」
「だから裸なのじゃ。主よ、人となった妾に相応しい、可憐で豪華なドレスを所望する!」
「前線へ出たら一発で破れるからやめてー!」
「ならば、破れても困らぬように十着ほど用意するのじゃ!」
「もっとやめてー!」
ノクティアが無言で部屋を出た。
しばらくして、旅装にも使える簡素なドレスと、銀眼を隠すためのバイザーを抱えて戻ってくる。
「豪華ではないけど丈夫。まずはこれを着て」
「ううむ。可憐さが足りぬが、裸で歩くよりはよいか」
「十分かわいい」
「そうか? おぬし、見どころがあるのじゃ!」
妖姫殺しは、あっさり機嫌を直した。
◇
衣服の次に必要となったのは、人としての名前だった。
いつまでも人型の女を妖姫殺しと呼ぶわけにはいかない。
本人もまた、剣の銘とは異なる真名を求めていた。
「レギンレイヴ。ブリュンヒルデ」
「人の女の名前は嫌じゃ」
「ヴァンパイア・スレイヤー。ノスフェラトゥ・マローダー」
「物騒なのじゃ〜!」
「お前、自分を殺した短剣に取り憑いた吸血姫の執念だろ。今さら物騒も何もないだろ!」
「それはそれ、これはこれじゃ。妾は可憐で強く、気品に満ちた名がよい!」
女の名前は嫌。
物騒な名前も嫌。
剣らしく、強く、可憐で、気品まで必要らしい。
ルクスンは前世の記憶を漁り、ようやく一つの名前へ行き着いた。
「ベラトリクス。古い言葉で『女戦士』を意味する。個人の女の名前じゃない。星の名前でもあって、アマゾンの星とも呼ばれていたはずだ」
「星にして女戦士……うむ。可憐で強く、妾に相応しいのじゃ!」
「なら、真名はベラトリクス。普段はベラでいいか?」
「よかろう。剣としての銘は妖姫殺し。人となった妾はベラじゃ!」
名が定まった瞬間、ベラの身体から銀色の魔力が立ち昇った。
ルクスンの視界に常時働いている魔力感知が、その変化を捉える。
姿は変わっても、魔力の性質は妖姫殺しと同じだった。
しかし、それまで不安定だった人型の輪郭が、真名を得たことで一つの存在として定着していく。
吸血姫の執念だけだったものが、魔剣となり、人となり、ベラトリクスという名を得たのだ。
「これで妾も正式に主の仲間じゃな!」
「今まで違ったの?」
「今までは拾得物じゃ」
「自分で言うなよ!」
◇
その日の午後。
一行は、オトフリートの遊学手続きに付き添い、ラムリアースの魔術師ギルドを訪れた。
ゼフィーリアは黒猫姿のまま、ノクティアの肩に乗っている。
ダークエルフであるだけでも大騒ぎになるというのに、ファラリスの高位神官であると発覚すれば、遊学どころではなくなる。
オトフリートも正体を知っているが、口に出すつもりはなかった。
石造りの建物の奥には、講義室、書庫、実験棟、研究室が並んでいる。
ローブ姿の若者たちが書物を抱えて行き交い、あちこちから呪文の詠唱や何かが爆発する音が聞こえてきた。
ルクスンの心に、前世から持ち越した何かが猛烈に突き刺さる。
「魔法学園だ! 転生して五十一話目で、ついに学園編が始まるのか!」
「正確には魔術師ギルドの研究院です。遊学生として籍を置くのは私だけで、皆さんが入学するわけではありません」
「タイトル詐欺じゃねえか!」
「ただし、皆さんにも無関係ではありません。私の現地協力者として登録すれば、ギルドが抱えている遺跡調査や魔法生物関連の依頼を受けられます。成果を上げれば、書庫の一部を閲覧する許可も得られるでしょう」
ルクスンの表情が変わった。
ラムリアース魔術師ギルドの信用。
未調査の遺跡に関する情報。
魔力の塔を建造するという野望に必要な知識と人脈。
学生になれなくとも、ここで得られるものは大きい。
◇
オトフリートの遊学手続きが済むと、続いて《ファミリア》召喚の申請が行われた。
使い魔の召喚は、宿の一室で済ませられるような魔法ではない。
三日間にわたって魔力を注ぎ続ける大規模な儀式である。
魔術師ギルドの地下にある召喚室が一つ貸し出された。
厚い石壁に囲まれた部屋の中央へ、オトフリートは三重の魔法円を描いた。周囲には触媒と魔力を安定させる器具が並べられ、中央にはエア湖から持ち帰った十点分の魔晶石が置かれる。
「使い魔一匹を呼ぶのに三日もかかるのか?」
「私と生涯にわたって魔力で結ばれる存在です。簡単な儀式で済むはずがありません。途中で魔法円を乱されれば、最初からやり直しになります」
「つまり、三日間ここを守れと?」
「お願いします」
第一日。
オトフリートは召喚円の構築と触媒の調整に費やした。
ルクスンたちは交代で扉を守り、ベラは人型になって儀式場を見物していた。
「これだけ手間をかけて呼び出すなら、巨大な鷲や怪鳥にすればよいではないか」
「使い魔は大きければよいというものではありません。街中へ連れて入れず、餌代もかかり、何より目立ちます」
「夢がないのじゃ」
「実用性があると言ってください」
第二日。
オトフリートはソーサラー・スタッフを発動体として、召喚円へ繰り返し魔力を注いだ。
魔法円の上へ翼を思わせる淡い影が現れては消える。
黒猫姿のゼフィーリアは、召喚円の外側へ座って影を目で追っていた。
「ゼフィーリア。まだ召喚も終わっていない使い魔を、獲物として見るのはやめてください」
「私を何だと思っているの?」
「黒猫の身体で鳥の影を追っている、高位のファラリス神官です」
「失礼ね。食べるなら、もっと肉の多い鳥を選ぶわ」
「やっぱり食べる気あるじゃないか!」
第三日。
召喚円を満たす魔力が、ようやく一つの形へ収束した。
オトフリートは三日間の儀式を締めくくるため、ソーサラー・スタッフを掲げる。
「全知全能、万能なるマナよ。三日にわたり編み上げし契約の環をここに結ぶ。我が呼び声を翼ある影へ届け、その目と耳、その命を我が傍らへ繋げ——ファミリア」
召喚円から光が立ち昇った。
地下室に風が巻き起こり、閉ざされていたはずの天井に夜空の幻が広がる。
光の向こうから、一羽の梟が音もなく舞い降りた。
梟は召喚円の上を一度旋回し、オトフリートが差し出した腕へ止まる。
三日間を費やした召喚契約が、ようやく完成した。
「名前は決めているの?」
「いいえ。三日間、儀式を失敗させないことだけを考えていました。名前はこれから考えます」
梟が首を巡らせ、黒猫姿のゼフィーリアを見る。
ゼフィーリアも梟を見る。
「食うなよ?」
「食べないわよ」
返事が早すぎて、誰も信用できなかった。
◇
使い魔召喚を終えた翌日。
一行は現地協力者向けの依頼が張り出された掲示板へ向かった。
そこには、ルクスンがワールドガイドやシナリオ集で見覚えのある地名が並んでいた。
一角獣の森。
蛇王の迷宮。
キメラの丘。
そして、フェニックスの羽の採取。
「この世界のフェニックスは普通の怪物じゃねえ! 上位精霊だぞ! 羽を取ってこいって、どうやって捕まえるんだよ!」
「まずは、こちらがよいのではありませんか?」
オトフリートが指したのは、蛇王の迷宮に関する調査依頼だった。
依頼書には、石化能力を持つ魔物が存在する可能性ありと記されている。
「石化ですか。銀冠を売らないほうがよかったですね?」
「結果論で話すなよ!」
魔法王国ラムリアース。
遊学へ来た一行を待っていたのは、平穏な学園生活ではなかった。
もっとも、ルクスンたちに平穏を期待する者など、最初から誰もいなかった。