アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

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第十一章 蛇王の迷宮

 キメラの丘で得た経験点は五千点。

 これまで残していた千点を合わせ、ルクスンが使える経験点は六千点となった。

 どう配分するか考えた瞬間、意識が白い空間へ引きずり込まれる。

 目の前には、丸々と太った一匹のハムスターが浮かんでいた。

「またお前か! 今度は僕の経験点を何点持っていく気だ!」

「今回は新しい技能の説明だよ。名づけて、チュー(ハムスター)トリアル!」

「チュートリアルでいいだろ!」

 創造神が小さな前脚を振った。

 ルクスンの前へ、半透明の文字が浮かび上がる。

⸻

チュー(ハムスター)トリアル

ルーンマスター〈ラーニング〉

⸻

「君は転生したときから、この世界に存在するすべての言語を話し、読むことができる。地方語、古代語、精霊語、神聖語も例外ではない。フォーセリアの魔法は、それらの言語を媒介として世界へ働きかける。実際の術式さえ理解できれば、君は見よう見まねで魔法を習得できるんだ」

「僕は完全版に載っている魔法を全部知っているぞ。それなら、最初から全部使わせろよ」

「君が知っているのは、魔法の名前、効果、距離、消費精神力といった情報だけだよ。正確な発音を知っていても、魔力の流し方や精霊力の結び方までは体験していない。だから知識だけでは習得できない」

 表示されていた文字が切り替わった。

⸻

ルーンマスター〈ラーニング〉

* 成長に必要な経験点はセージ、レンジャー、バードと同じ
* 魔力はルーンマスター技能レベル+知力ボーナス
* 習得可能な魔法はルーンマスター技能レベル以下
* 技能レベルを上げても魔法は自動習得しない
* 魔法一つの習得につき、別途経験点五百点が必要
* 魔法を実際に読解、観察、体験することが習得条件
* 元の魔法が持つ使用条件と消費精神力は変わらない

⸻

ルーンマスター成長表

到達レベル 必要経験点
1 500
2 1,000
3 1,500
4 2,000
5 3,000
6 4,000
7 5,000
8 7,000
9 9,000
10 12,000

⸻

「技能レベルを上げる経験点に加えて、魔法一つにつき五百点?」

「そうだよ。通常のソーサラーやシャーマンは、技能レベルを上げれば、その段階までの魔法をまとめて習得できる。〈ラーニング〉は三系統の魔法から好きなものを選べる代わりに、一つずつ習得する必要があるんだ」

「精霊語、神聖語、古代語を一つの技能で扱えるんだから、安いのか……?」

「覚えたい魔法が少なければね」

 ルクスンは、欲しい魔法を数えた。

「精霊語ならヴァルキリージャベリンとヴァルキリープレッシング。神聖語ならマイリーのディパインアームとディパインアーマー。古代語ならファイヤーボール、フライト、フルポテンシャルかヘイスト。両方覚えても八つしかない」

「七つなら魔法の習得だけで三千五百点。八つなら四千点だね」

「十個もないじゃん。やっぱり安い!」

「その前に、各魔法を習得できるところまでルーンマスター技能を成長させる必要があるよ」

「技能の成長費と、魔法の習得費を両方取るのか!」

「当然だよ。ルーンマスター技能レベルは、君がどれほど複雑な術式を再現できるかを表している。第一段階の者が、いきなり高位古代語魔法を使えるわけがないでしょう」

「当たり前の話なのに、ハムスターから言われると腹が立つ!」

「さらに、ヴァルキリーの二術を覚えるには上位精霊の術式へ接する必要がある。マイリーの二術は高位の戦神司祭が使う特殊神聖魔法。古代語魔法も、相応の魔導書を読ませてもらうか、実際に魔法を受けなければならないよ」

「最大の障害は、技能の成長、魔法一つごとの経験点、習得イベントの三重取りか……」

「そういうこと。それでは、楽しい魔法収集生活を!」

「待て! 技能そのものは、お前がくれるんじゃないのか!?」

「適性はあげたよ。成長は自分の経験点でどうぞ」

「プリースト技能のときより、商売が細かくなってないか!?」

 創造神は、光の粒となって消えた。

 あとにはルーンマスターとしての適性と、手つかずの六千点が残された。

          ◇

章頭成長報告

キメラの丘で獲得した経験点:各五千点

ルクスン

成長前保有経験点:千点
今回獲得経験点:五千点
合計:六千点

成長:

* シーフ三→四:三千点
* レンジャー二→三:千五百点
* ルーンマスター〇→一:五百点
* ルーンマスター一→二:千点

残り経験点:〇点

新規習得魔法:なし

現在技能:

* ファイター五
* シーフ四
* レンジャー三
* プリースト〈創造神〉二
* ルーンマスター〈ラーニング〉二

ルーンマスター魔力:四
知力ボーナス:二

第二段階までの古代語魔法、精霊語魔法、神聖語魔法を習得候補にできる。ただし、実際の術式へ接したうえで、魔法一つにつき五百点を支払わなければ使用できない。

ノクティア

成長前保有経験点:五百点
今回獲得経験点:五千点
合計:五千五百点

* シャーマン四→五:五千点

残り経験点:五百点

現在技能:

* シーフ五
* シャーマン五
* レンジャー二

新たに《レストア・ヘルス》を習得。

生命の精霊へ働きかけ、毒、病気、麻痺などによって崩された身体を、本来の状態へ戻せる。

ゼフィーリア

成長前保有経験点:〇点
今回獲得経験点:五千点

* シャーマン二→三:三千点
* レンジャー一→二:千点
* シーフ〇→一:千点

残り経験点:〇点

現在技能:

* ダークプリースト〈ファラリス〉七
* シャーマン三
* レンジャー二
* シーフ一

オトフリート

成長前保有経験点:五百点
今回獲得経験点:五千点
合計:五千五百点

* セージ四→五:三千点
* ファイター一→二:千五百点
* レンジャー〇→一:五百点

残り経験点:五百点

現在技能:

* ソーサラー三
* セージ五
* ファイター二
* レンジャー一

使い魔:梟

セージ技能が先行しているため、次にソーサラー三から四へ成長する際、必要経験点は通常の五千点から五百点軽減され、四千五百点となる。

ベアトリクス

今回獲得経験点:五千点
保有経験点:五千点

ソーディアン五→六に必要な経験点:九千点
不足経験点:四千点

現在状態:

* 形状:ブロードソード+二
* 必要筋力:六
* 打撃力:十五
* タレントポイント:十五
* 人間形態使用可能

次に取得するタレントは《アンブレイカブル》


第57話 銀冠を売った男

 ラムリアースの冒険者の店。

 

 借りた個室の机には、キメラの丘から持ち帰った七つの精霊晶石と、一枚の地図が並べられていた。

 

 地図には、王都から一角獣の森へ延びる道と、森の奥に残された古代遺跡の位置が記されている。

 

 オトフリートは、使い魔の梟を杖の先へ止まらせた。

 

「魔術師ギルドから、蛇王の迷宮へ入る許可が出ました。現在はバジリスクを頂点とする爬虫類型モンスターの巣窟になっています。石化だけでなく、毒、麻痺、病気への対策も必要です」

 

 ルクスンは地図を覗き込んだ。

 

 蛇王の迷宮。

 

 蛇、毒蜥蜴、巨大爬虫類。

 

 奥へ進むほど危険な怪物が増え、最深部には石化能力を持つバジリスクがいる。

 

 オトフリートが地図から顔を上げた。

 

「銀冠、売らない方がよかったですね?」

 

「結果論で話すなよ!」

 

 銀冠。

 

 かつてメデューサが被っていた、石化を無効化する魔法の冠。

 

 ルクスンたちは盗賊ギルドと魔術師ギルドの幹部を集め、あれをオークションへかけた。

 

 実際のプレイでも、入手した直後に売却した。

 

 十万ガメル相当の魔法の品を持ち続けるより、金へ換えた方が得だと判断したからだ。

 

「僕は悪くない。シナリオの順番が悪い!」

 

「誰に弁明しているのです?」

 

「僕の心の中にいるゲームマスターだよ!」

 

 ベアトリクスは人間形態となり、机の端へ座っていた。

 

 銀眼を隠すバイザーと、旅装を身につけている。

 

「その銀冠とやらを買い戻せばよいではないか」

 

「十万ガメル相当だぞ。買い戻す金があるなら、石化予防の薬草を買うよ」

 

「ヘンルーダですね。一服二千五百ガメルですから、四人分で一万ガメルになります」

 

「妾の分は?」

 

「お前、石になるの?」

 

「すでに金属じゃった」

 

 ベラは一人で納得した。

 

 ノクティアは地図上に記された迷宮の入口を見ている。

 

「毒、病気、麻痺なら治せる。生命の精霊へ働きかけて、身体を正常な状態へ戻す方法を覚えた」

 

「《レストア・ヘルス》か。それが使えるなら、蛇王の迷宮はかなり楽になる。ただし、石化は別だ。ノクティア一人へ負担を集中させるわけにもいかない。ヘンルーダは全員分買う」

 

 ゼフィーリアが、七つの晶石を眺める。

 

「毒や病気なら私も治療できるわ。問題は、治療する暇もなく石像にされる可能性ね」

 

「オトフリートの《カウンター・マジック》で抵抗を上げる。ヘンルーダも使う。それでも駄目なら、石化させられる前にバジリスクを殴り倒す」

 

「最後だけ急に雑になりましたね」

 

「完全版で最終的に信頼できるのは、物理攻撃なんだよ!」

 

 ルクスンは、準備する品を書き並べた。

 

 ヘンルーダ。

 

 解毒用の薬草。

 

 治療用の薬草。

 

 松明。

 

 水。

 

 長いロープ。

 

 曲がり角の先を確認するための鏡。

 

 毒蛇や蜥蜴への対策として、厚手の長靴と手袋も必要になる。

 

 オトフリートの梟が首を回し、ルクスンの手元を覗き込む。

 

「使い魔には、迷宮の奥まで行かせない方がよいでしょう。毒や石化を受ければ失う危険があります」

 

「入口付近の偵察だけで十分だ。狭い場所ならノクティアが先行する。僕がその後ろ。オトフリートとゼフィーリアは後衛。ベラは僕が使う」

 

「妾は自分でも動けるぞ」

 

「タレントポイントは無限じゃない。バジリスクへ辿り着く前に使い切るなよ」

 

「主は妾を便利な剣として扱うのか、人として扱うのか、そろそろ決めるべきじゃな」

 

「都合に合わせて変える!」

 

「正直者め!」

 

          ◇

 

 翌朝。

 

 一行はヘンルーダをはじめとする薬草と探索道具を買い揃え、ラムリアースの王都を出発した。

 

 目指すのは、一角獣の森。

 

 その奥に口を開ける、蛇王の迷宮。

 

 毒。

 

 麻痺。

 

 病気。

 

 そして石化。

 

 かつて十万ガメル相当の石化無効の冠を手に入れながら、迷わず売り払った男が、今度は一服二千五百ガメルの薬草を握りしめて挑むことになった。

 

「やっぱり、銀冠を売らない方がよかったのでは?」

 

「オトフリート! 道中ずっと言い続けるつもりか!?」

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