アレクラスト転生記〜TRPGフリーク、フォーセリアに転生す   作:駄文亭

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第十二章 混沌の花嫁

章頭 成長報告

 蛇王の迷宮で獲得した経験点は、一人につき四千点。

 現在の成長上限は五のまま変わらない。

 すでに五へ達している技能を六へ上昇させることはできず、経験点は五未満の技能の成長、新技能の取得、または保留へ回される。

 ゼフィーリアが以前から持つ暗黒神官技能七は既得技能として維持されるが、これ以上の成長は行わない。

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ルクスン

成長前:

* ファイター五
* シーフ四
* レンジャー三
* プリースト〈創造神〉二
* ルーンマスター〈ラーニング〉二
* 保有経験点〇

今回獲得:

* 四千点

成長:

* レンジャー三から四:二千点
* プリースト〈創造神〉二から三:二千点

成長後:

* ファイター五
* シーフ四
* レンジャー四
* プリースト〈創造神〉三
* ルーンマスター〈ラーニング〉二
* 残り経験点〇

 野外での追跡、危険感知、薬草の扱い、野営、弓術が強化された。

 また、創造神の特殊神聖魔法「コントロール・ダイス」を修得する。

特殊神聖魔法「コントロール・ダイス」

* 使用回数:一日一回
* 効果:一回の判定で振られた骰子の出目を変更できる
* 変更後の出目はルクスンが指定する

 修得した瞬間、ルクスンの脳裏へ丸々と太ったハムスターが現れた。

「第三段階到達おめでとう。これで振り直すだけでなく、骰子の出目へ直接干渉できるようになった。ただし一日一回なので、壁の染みを調べるような判定に使って後悔しないように」

「お前、僕が出口のない遺跡で壁を一ビットずつ調べたことを馬鹿にしてるだろ。それより、僕をうっかり死なせた話の続きをしろ!」

「チュートリアルを終了します」

「逃げるな!」

 創造神は一方的に消えた。

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ノクティア

成長前:

* シーフ五
* シャーマン五
* レンジャー二
* 保有経験点五百

今回獲得:

* 四千点

使用可能経験点:

* 四千五百点

成長:

* レンジャー二から三:千五百点
* レンジャー三から四:二千点

成長後:

* シーフ五
* シャーマン五
* レンジャー四
* 残り経験点千点

 都市での潜入、精霊魔法、森林での追跡と生存能力が高い水準で揃った。

 単独で先行し、敵の位置と地形を確認して帰還できる、本格的な野外斥候となる。

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ゼフィーリア

成長前:

* ダークプリースト〈ファラリス〉七
* シャーマン三
* レンジャー二
* シーフ一
* 保有経験点〇

今回獲得:

* 四千点

成長:

* シャーマン三から四:四千点

成長後:

* ダークプリースト〈ファラリス〉七
* シャーマン四
* レンジャー二
* シーフ一
* 残り経験点〇

 第四段階までの精霊魔法を使用可能となる。

 精霊の存在や精霊力の偏りを読み取る力も増し、ターシャスの森で起きている異変を探るうえで重要な成長となった。

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オトフリート

成長前:

* ソーサラー三
* セージ五
* ファイター二
* レンジャー一
* 保有経験点五百

今回獲得:

* 四千点

使用可能経験点:

* 四千五百点

成長:

* ソーサラー三から四
* 本来の必要経験点:五千点
* 成長前のセージ五がソーサラー三より二段階先行しているため、五百点軽減
* 実消費経験点:四千五百点

成長後:

* ソーサラー四
* セージ五
* ファイター二
* レンジャー一
* 残り経験点〇

 第四段階までの古代語魔法を修得。

 魔法の強度も上昇し、使い魔による偵察と古代語魔法による後方支援を、より高い水準で行えるようになった。

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ベラトリクス

成長前保有経験点:

* 五千点

今回獲得:

* 四千点

成長後保有経験点:

* 九千点

 ソーディアン五から六へ必要な経験点は九千点。

 必要量には到達したが、現在の成長上限は五であるため、成長は保留される。

 ソーディアン六の能力「アンブレイカブル」は未修得。

 九千点は成長上限が解放されるまで保持される。

「妾はもう次へ進めるのじゃろう? 早う成長させるのじゃ!」

「駄目。上限五だから」

「経験は足りておるのにか?」

「僕だって戦士としては止められているんだ。我慢しろ」

「世の中は理不尽じゃ!」

「物語の寿命を守っているんだよ!」


第64話 森の深奥で蠢くもの

 蛇王の迷宮から帰還して三日後。

 

 オトフリートは、魔術師ギルドから持ち帰った報告書を冒険者の店の個室へ広げた。

 

 報告されている異変の中心は、ターシャスの森北部ではない。

 

 人間の街道から遠く離れた森の深奥部だった。

 

「北側では、目立った異変は確認されていません。獣の移動や精霊力の乱れも、すべて森の奥へ向かうほど強くなっています」

 

「それなら話が変わるな」

 

 ルクスンは地図を覗き込んだ。

 

 ターシャスの森は、オーファンの南に広がっている。

 

 北部で大規模な異変や戦闘が起これば、オーファンが動く。森から溢れ出した妖魔が街道や村を襲う可能性もあるため、王国として放置できない。

 

 騎士団か、少なくとも国境を守る兵士と冒険者が派遣されるはずだ。

 

「異変が森の北なら、オーファンの案件になる。ラムリアースが勝手に調査隊を送り込めば、余計な疑いを招く」

 

「その通りです。しかし、異変の中心はどの国の街道や集落からも離れた森の深奥です。精霊力の異常を調べる学術調査であれば、ラムリアースの魔術師ギルドも関与できます」

 

「兵士ではなく、魔術師と冒険者を送る?」

 

「表向きの目的は、広域的な精霊力の観測です。領土を占領するわけでも、ダークエルフを討伐するわけでもありません。現地のエルフと接触できれば、共同調査という形にもできます」

 

「つまり、森の奥で起きた魔法的異変に、調査名目でラムリアースも一口噛みたいと」

 

「身も蓋もない言い方をすれば、そうなります」

 

 ラムリアースにとっても、異常な精霊力は無視できない。

 

 混沌の精霊力が拡大すれば、森の外まで影響する可能性がある。未知の魔法現象ならば、魔術師ギルドは原因と対処法を知りたがる。

 

 さらに、ルクスンたちはフェニックスを召喚できる高齢のエルフを捜していた。

 

 ギルドには、それを現地のエルフと接触する理由として利用する思惑もある。

 

「調査を引き受ければ、ターシャスへ入るための紹介状と、必要な資料を出してもらえます。正式な条件と報酬は、改めて提示される予定です」

 

「受けるかどうかを決める前に、森で何が起きているのか知りたい」

 

 ノクティアが地図へ目を落とす。

 

 記された異常地点は、森の中央から南寄りの深部へ集中していた。

 

 ゼフィーリアは、その範囲を見るなり表情を曇らせた。

 

「十二支族の祭祀場がある地域よ」

 

「ダークエルフの本拠地?」

 

「本拠地は支族ごとに異なるわ。祭祀場は、十二支族が共通して使う場所。普段は祭祀長の一族と、限られた巫女だけが管理している」

 

 オトフリートは、報告書の続きへ目を通した。

 

「複数のダークエルフ集団が森の奥へ移動しています。北へ進軍しているのではなく、祭祀場の周囲へ集まっているようです」

 

「十二支族が結集し始めているのか」

 

「正確には、二つに割れ始めているのだと思うわ」

 

 ゼフィーリアは地図の祭祀場を指差した。

 

「ターシャスでは、以前からエルフとゴブリンが争っていたわけではない。互いの狩場と集落へ深く踏み込まず、森を焼かず、必要以上に相手を追わない。不文律によって、辛うじて共存していたの」

 

「それを破ったのが、妖魔の森から来たゴブリンの部族?」

 

「ええ。ターシャスで暮らしてきたゴブリンとは、掟も考え方も違った。彼らはエルフの狩場を奪い、泉を汚し、境界を越えて集落を襲った。それで戦いが始まった」

 

「ダークエルフは、どちらについた?」

 

「最初はエルフ側として戦った。けれど途中でエルフを裏切り、自分たちの領域を広げようとした。今ではエルフ、ゴブリン、ダークエルフの三つ巴よ」

 

「見事な泥沼だな」

 

「だから十二支族をまとめる必要があったのよ」

 

 ゼフィーリアの声が低くなる。

 

「十二支族には、祭祀と信仰を取り仕切る祭祀長と、戦士を束ねる族長がいる。祭祀長の娘である私と、族長の息子ゼクノワが結婚することで、二つの権威を結びつけるはずだった」

 

「それが、ゼフィーリアの嫌がっていた結婚か」

 

「ファラリスを信じる者が、自分の結婚相手すら選べないなんて笑い話でしょう? だから逃げたの」

 

 ノクティアが尋ねる。

 

「ゼフィーリアがいなくなって、結束は失敗した?」

 

「しばらくはね。私と同じ立場の娘を、簡単に用意することはできなかったから」

 

 オトフリートが、別の報告書を机へ置いた。

 

「ところが最近、一人のダークエルフの巫女が神託を受けたと宣言しました。十二支族を結束させる新たな花嫁として、ゼクノワと婚姻することになったそうです」

 

「神託を受ける前後で、その巫女に変化は?」

 

「人格と口調が変わった。複数の神々の言葉を同時に語るようになった。巫女の周囲では、精霊力が互いに衝突し始めたとも書かれています」

 

 ルクスンは、ファンドリアで逃した存在を思い出した。

 

 ファラリス。

 

 カーディス。

 

 名もなき狂気の神。

 

 三つの神聖力が混ざり合い、どの神にも属さない存在となった混沌の女神。

 

 一度は肉体を破壊した。

 

 だが、霊体となった女神は、より強い神の器を探して逃げた。

 

「混沌の女神だ」

 

「まさか、あの巫女が?」

 

「巫女が神託を受けたんじゃない。身体を奪われたんだ。ダークエルフなら人間より強靱で、精霊力にも神聖力にも親和性がある。仮初の器として選ばれたんだろう」

 

 ゼフィーリアは、精霊力の異常が記録された場所を指で結んだ。

 

 すべての線が、森の深奥にある祭祀場へ集まる。

 

「混沌の女神から漏れ出した破壊的な力が、森全体の精霊力を歪め始めている」

 

「ダークエルフたちも、女神の正体に気づいている?」

 

「新しい神託を歓迎する者は、巫女を十二支族の救世主だと考えているでしょうね。でも、古い祭祀を守る旧守派は違う。巫女が現れてから森が歪み始めたことには気づいているはずよ」

 

「それでゼフィーリアを捜しているのか」

 

「正統な祭祀長の娘を戻し、巫女を退け、改めて私とゼクノワを結婚させる。それが旧守派の考える解決策でしょうね」

 

「混沌の女神を倒したあと、そのまま結婚式へ連行される可能性があるな」

 

「だから行きたくないのよ」

 

「でも放置もできない?」

 

「森の精霊力が完全に崩れれば、エルフもゴブリンもダークエルフも関係なくなる。森そのものが死ぬわ」

 

 ルクスンは地図を見つめた。

 

 ラムリアースの魔術師ギルドは、森の精霊力を調査したい。

 

 ルクスンたちは混沌の女神を追わなければならない。

 

 フェニックスを召喚できるエルフも、ターシャスの森にいる。

 

 そしてゼフィーリアには、森へ戻りたくない理由と、戻らなければならない理由がある。

 

「調査依頼を受けよう。ラムリアースの紹介状と資金を使ってターシャスへ入る。目的は精霊力の異常調査、混沌の女神の発見と排除、フェニックスの尾羽の入手だ」

 

「私の結婚は?」

 

「断る」

 

「旧守派が納得しなければ?」

 

「実力で排除する」

 

「主よ。話が早くてよいのぉ」

 

「最初から殴るとは言ってない!」

 

          ◇

 

 ターシャスの森の深奥。

 

 十二支族の祭祀場で、一人のダークエルフの巫女が目を開いた。

 

 若く、強く、神聖力と精霊力を受け入れる素質を持つ肉体。

 

 だが、その身体を動かしているものは、もう巫女本人ではない。

 

 暗黒。

 

 死。

 

 狂気。

 

 三つの神聖力から生まれた混沌の女神が、仮初の肉体を奪っていた。

 

 巫女の周囲では、風と炎の精霊が互いを喰らい、大地の精霊が水を拒んでいる。

 

 本来なら共存できる精霊力まで歪み、森の奥から少しずつ異変が広がっていた。

 

「この身体なら、まだ壊れない。十二支族も、エルフも、ゴブリンも、すべて一つに混ぜ合わせましょう。争いも、信仰も、命も、区別がなくなるまで」

 

 祭祀場の周囲では、巫女を新たな花嫁として支持する者たちが武器を集めている。

 

 その一方で、旧守派のダークエルフたちは森の外へ密使を放ち始めていた。

 

 彼らは混沌の女神の存在を知らない。

 

 ただ、新しい巫女が現れてから森が歪み始めたことだけは理解している。

 

 異変を止めるために必要なのは、正統な祭祀長の娘。

 

 失踪したゼフィーリアを連れ戻すこと。

 

 そして、族長の息子ゼクノワとの婚姻を成立させること。

 

 新たな花嫁を守る者。

 

 古い花嫁を連れ戻そうとする者。

 

 エルフ。

 

 ゴブリン。

 

 ダークエルフ。

 

 森の深奥で生まれた歪みは、オーファンにもラムリアースにも気づかれないまま、静かに広がり始めていた。

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