第二十八話 黒川家の躍進
時は、少し遡る。
美濃の情勢が大きく動く裏で、もう一つの変化が起きていた。
永禄七年(一五六四年)
厳しい冬を越えた黒川領では、山々が若葉に包まれ始めていた。
田では春耕が始まり、村人たちは鍬を振るう。
そして裏山では、一年前に新九郎が考案した新たな椎茸栽培が、大きな実りを迎えていた。
◇
「若様!」
「ぜひこちらをご覧ください!」
庄吉が弾んだ声で駆け寄ってくる。
新九郎と宗久が原木置場へ足を運ぶと、そこには数百本もの原木が整然と並んでいた。
一本一本には、肉厚な椎茸がびっしりと実っている。
昨年の収穫とは比べものにならない光景だった。
新九郎は一本の原木へ静かに手を添えた。
「鑑定」
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椎茸原木
状態:極良
菌活性:非常に高い
収穫量:大
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(成功した。)
菌の回った原木から切り出した木片を打ち込む栽培法は、完全に定着していた。
庄吉は満面の笑みを浮かべる。
「若様!」
「去年とは比べものになりませぬ!」
「これなら毎年、もっと増やせます!」
宗久も収穫籠を見渡し、静かに頷いた。
「見事だ。」
「これで黒川領の新たな産業となろう。」
◇
養蜂場でも嬉しい報せが届いていた。
彦兵衛が巣箱の前で深く頭を下げる。
「宗久様」
「若様」
「今年は蜂蜜も大豊作にございます」
巣箱は昨年よりさらに増え、採れる蜜も大きく増えていた。
新九郎は壺へ手を添える。
「鑑定」
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蜂蜜
品質:極上
香り:非常に良い
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宗久は穏やかに笑う。
「椎茸も蜂蜜も、ようやく軌道へ乗ったな」
新九郎は静かに頷いた。
「はい」
「これからは安定して収穫できます」
◇
数日後。
黒川館へ山田市兵衛が一人の商人を伴って訪れた。
宗久は書院へ二人を迎え入れる。
商人は深々と一礼した。
「堺より参りました」
「明との交易にも携わっております」
宗久も一礼を返す。
「遠路ご苦労」
商人は挨拶を終えると、収穫された干し椎茸、蜂蜜、そして帳面へ静かに目を通していく。
収穫量。
昨年との比較。
来年以降の増産見込み。
一つひとつを確かめ終えると、小さく頷いた。
「……見事にございます」
宗久が尋ねる。
「いかがですかな」
商人は新九郎へ視線を向けた。
「若様がお考えになった栽培法」
「これほど短期間でここまで量を増やせるとは思いませなんだ」
「しかも品質が落ちておりませぬ」
新九郎は静かに答える。
「来年はさらに増えます」
「その先も増やしていくつもりです」
商人は穏やかに笑みを浮かべた。
「そのお言葉を聞けただけでも、本日参った甲斐がございました」
◇
商人は静かに姿勢を正した。
「宗久様」
「一つ、ご提案がございます」
「申されよ」
「黒川家の干し椎茸と蜂蜜」
「私へ、お任せいただけませぬか」
宗久は少し驚いたように商人を見る。
「任せる、と申されると」
商人は力強く頷いた。
「はい」
「私の船荷へ加えます」
「堺より博多へ」
「そして、その先の交易船へ積み込みとうございます」
書院が静まり返る。
宗久はゆっくりと口を開いた。
「海の向こう……」
商人は静かに頷く。
「黒川家の品は、国内だけで終わらせるには惜しゅうございます」
市兵衛も深く頷いた。
「宗久様」
「この方がお引き受けくださるなら、これ以上心強いことはございませぬ」
宗久は新九郎を見た。
新九郎は静かに頭を下げる。
「お願いいたします」
商人も深く一礼した。
「必ず、ご期待へお応えいたします」
山里で生まれた小さな産物は、いま海の向こうへ続く新たな道を歩み始めようとしていた。
◇
堺の大商人との話がまとまった数日後。
黒川館の書院では、宗久、新九郎、兵庫、市兵衛が帳面を囲んでいた。
兵庫が最後の帳面を閉じる。
「宗久様」
「今年の椎茸、蜂蜜ともに、すべて売り先が決まりました」
宗久は静かに頷く。
「思っていたより早かったな」
市兵衛が笑みを浮かべる。
「堺の旦那衆も、黒川の品が毎年安定して手に入ると分かった途端、競うように買い付けを始めました」
「今年の分は、すでに行き先が決まっております」
宗久は少し驚いたように市兵衛を見る。
「そこまで評判になっておるのか」
「はい」
「それほどにございます」
◇
市兵衛は静かに続けた。
「しかも今回、堺の大商人殿が動いてくださったことで、黒川家の名も堺では広く知られることとなりました」
「これからは、品だけではございませぬ」
「黒川家そのものが信用されるようになります」
宗久は腕を組み、小さく頷く。
「信用か」
「一朝一夕では得られぬものだな」
「はい」
「だからこそ価値がございます」
◇
新九郎は静かに帳面を眺めていた。
椎茸。
蜂蜜。
どちらも山の恵みではある。
だが今では、それは黒川家を支える立派な産業となっていた。
宗久は息子へ視線を向ける。
「新九郎」
「はい」
「これから利益はさらに増えるだろう」
「だが、銭は貯めるだけでは意味がない」
「使ってこそ生きる」
新九郎は静かに頷いた。
◇
市兵衛は立ち上がると深く一礼した。
「宗久様」
「若様」
「私はこれより堺へ戻ります」
「来年は、今年以上の注文を持って参りましょう」
「頼んだぞ」
「お任せください」
市兵衛は力強く答え、館を後にした。
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【長期イベント達成】
『椎茸栽培の量産化』
菌木片による接種法を確立し、
黒川領における椎茸の量産体制を完成させました。
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報酬
EXP +500
知恵 +3
政治 +5
統率 +3
魅力 +2
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◇
その数日後。
尾張・小牧山城。
評定を終えた信長のもとへ、一人の目付が静かに現れた。
「殿」
「美濃より報せにございます」
信長は視線だけを向ける。
「申せ」
目付は一礼した。
「黒川家の干し椎茸と蜂蜜にございます」
「堺の大商人が扱うこととなり、博多を経て明との交易へも乗せる話が進んでおります」
信長は小さく笑った。
「そうか」
「とうとう、そこまで行ったか」
長秀が静かに尋ねる。
「殿」
「黒川家をご存じで」
「知ってる」
「美濃の小せぇ国人だ」
「椎茸や蜂蜜で銭を稼ぎ始めたって話も、前から耳に入ってる」
信長は書状を閉じた。
「だがな」
「堺の商人が動き、海外交易へ繋げようってぇなら話は別だ」
勝家が腕を組む。
「商いだけで、そこまで気にされますか」
信長は不敵に笑う。
「商いだから気にするんだ」
「銭は兵を集める」
「兵は国を強くする」
「その銭が海の向こうから入ってくるようになりゃ、小せぇ国人でも侮れねぇ」
信長はゆっくりと立ち上がり、美濃の地図を広げた。
指先は黒川領で止まる。
「黒川宗久……」
「いや」
「新九郎か」
「神童なんてもんは大抵、大人が勝手に騒いでるだけだ」
「だが、こいつは違ぇ気がする」
「半兵衛も面白ぇ男だったが、こっちも面白ぇ」
「乱世ってぇのは、次から次へと退屈させねぇな」
信長は静かに笑みを浮かべた。
美濃の山里で始まった小さな商いは、ついに尾張の覇者・織田信長の興味を引くまでになっていた。
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名前:黒川 新九郎
年齢:10
レベル:29
EXP:1140/4200
HP:149/149
MP:595/595
筋力:79
耐久:77
敏捷:82
知恵:119
統率:80
政治:76
魅力:61
器用:86
運:59
SP:0
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【固有スキル】
・鑑定 Lv5(MP消費なし)
・言語理解 LvMAX
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【スキル】
・観察 Lv7
・学問 Lv8
・兵法 Lv8
・礼法 Lv7
・剣術 Lv8
・弓術 Lv7
・槍術 Lv5
・馬術 Lv5
・将器 Lv3
・号令 Lv3
・統制 Lv3
・普請 Lv2
・商才 Lv2
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【アクティブスキル】
・知識庫
・思考支援
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【称号】
・転生者
・唯一の成長者
・黒川の神童
・野盗討伐者
・黒川の開拓者
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