レベルアップする戦国武将   作:沙耶王

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黒川家の躍進

 

第二十九話 黒川家の躍進

 

 時は、少し遡る。

 

 美濃の情勢が大きく動く裏で、もう一つの変化が起きていた。

 

 永禄七年(一五六四年)

 

 厳しい冬を越えた黒川領では、山々が若葉に包まれ始めていた。

 

 田では春耕が始まり、村人たちは鍬を振るう。

 

 そして裏山では、一年前に新九郎が考案した新たな椎茸栽培が、大きな実りを迎えていた。

 

 ◇

 

 「若様!」

 

 「ぜひこちらをご覧ください!」

 

 庄吉が弾んだ声で駆け寄ってくる。

 

 新九郎と宗久が原木置場へ足を運ぶと、そこには数百本もの原木が整然と並んでいた。

 

 一本一本には、肉厚な椎茸がびっしりと実っている。

 

 昨年の収穫とは比べものにならない光景だった。

 

 新九郎は一本の原木へ静かに手を添えた。

 

 「鑑定」

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 椎茸原木

 

 状態:極良

 

 菌活性:非常に高い

 

 収穫量:大

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 (成功した。)

 

 菌の回った原木から切り出した木片を打ち込む栽培法は、完全に定着していた。

 

 庄吉は満面の笑みを浮かべる。

 

 「若様!」

 

 「去年とは比べものになりませぬ!」

 

 「これなら毎年、もっと増やせます!」

 

 宗久も収穫籠を見渡し、静かに頷いた。

 

 「見事だ。」

 

 「これで黒川領の新たな産業となろう。」

 

 ◇

 

 養蜂場でも嬉しい報せが届いていた。

 

 彦兵衛が巣箱の前で深く頭を下げる。

 

 「宗久様」

 

 「若様」

 

 「今年は蜂蜜も大豊作にございます」

 

 巣箱は昨年よりさらに増え、採れる蜜も大きく増えていた。

 

 新九郎は壺へ手を添える。

 

 「鑑定」

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 蜂蜜

 

 品質:極上

 

 香り:非常に良い

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 宗久は穏やかに笑う。

 

 「椎茸も蜂蜜も、ようやく軌道へ乗ったな」

 

 新九郎は静かに頷いた。

 

 「はい」

 

 「これからは安定して収穫できます」

 

 ◇

 

 数日後。

 

 黒川館へ山田市兵衛が一人の商人を伴って訪れた。

 

 宗久は書院へ二人を迎え入れる。

 

 商人は深々と一礼した。

 

 「堺より参りました」

 

 「明との交易にも携わっております」

 

 宗久も一礼を返す。

 

 「遠路ご苦労」

 

 商人は挨拶を終えると、収穫された干し椎茸、蜂蜜、そして帳面へ静かに目を通していく。

 

 収穫量。

 

 昨年との比較。

 

 来年以降の増産見込み。

 

 一つひとつを確かめ終えると、小さく頷いた。

 

 「……見事にございます」

 

 宗久が尋ねる。

 

 「いかがですかな」

 

 商人は新九郎へ視線を向けた。

 

 「若様がお考えになった栽培法」

 

 「これほど短期間でここまで量を増やせるとは思いませなんだ」

 

 「しかも品質が落ちておりませぬ」

 

 新九郎は静かに答える。

 

 「来年はさらに増えます」

 

 「その先も増やしていくつもりです」

 

 商人は穏やかに笑みを浮かべた。

 

 「そのお言葉を聞けただけでも、本日参った甲斐がございました」

 

 ◇

 

 商人は静かに姿勢を正した。

 

 「宗久様」

 

 「一つ、ご提案がございます」

 

 「申されよ」

 

 「黒川家の干し椎茸と蜂蜜」

 

 「私へ、お任せいただけませぬか」

 

 宗久は少し驚いたように商人を見る。

 

 「任せる、と申されると」

 

 商人は力強く頷いた。

 

 「はい」

 

 「私の船荷へ加えます」

 

 「堺より博多へ」

 

 「そして、その先の交易船へ積み込みとうございます」

 

 書院が静まり返る。

 

 宗久はゆっくりと口を開いた。

 

 「海の向こう……」

 

 商人は静かに頷く。

 

 「黒川家の品は、国内だけで終わらせるには惜しゅうございます」

 

 市兵衛も深く頷いた。

 

 「宗久様」

 

 「この方がお引き受けくださるなら、これ以上心強いことはございませぬ」

 

 宗久は新九郎を見た。

 

 新九郎は静かに頭を下げる。

 

 「お願いいたします」

 

 商人も深く一礼した。

 

 「必ず、ご期待へお応えいたします」

 

 山里で生まれた小さな産物は、いま海の向こうへ続く新たな道を歩み始めようとしていた。

 

 ◇

 

  堺の大商人との話がまとまった数日後。

 

 黒川館の書院では、宗久、新九郎、兵庫、市兵衛が帳面を囲んでいた。

 

 兵庫が最後の帳面を閉じる。

 

 「宗久様」

 

 「今年の椎茸、蜂蜜ともに、すべて売り先が決まりました」

 

 宗久は静かに頷く。

 

 「思っていたより早かったな」

 

 市兵衛が笑みを浮かべる。

 

 「堺の旦那衆も、黒川の品が毎年安定して手に入ると分かった途端、競うように買い付けを始めました」

 

 「今年の分は、すでに行き先が決まっております」

 

 宗久は少し驚いたように市兵衛を見る。

 

 「そこまで評判になっておるのか」

 

 「はい」

 

 「それほどにございます」

 

 ◇

 

 市兵衛は静かに続けた。

 

 「しかも今回、堺の大商人殿が動いてくださったことで、黒川家の名も堺では広く知られることとなりました」

 

 「これからは、品だけではございませぬ」

 

 「黒川家そのものが信用されるようになります」

 

 宗久は腕を組み、小さく頷く。

 

 「信用か」

 

 「一朝一夕では得られぬものだな」

 

 「はい」

 

 「だからこそ価値がございます」

 

 ◇

 

 新九郎は静かに帳面を眺めていた。

 

 椎茸。

 

 蜂蜜。

 

 どちらも山の恵みではある。

 

 だが今では、それは黒川家を支える立派な産業となっていた。

 

 宗久は息子へ視線を向ける。

 

 「新九郎」

 

 「はい」

 

 「これから利益はさらに増えるだろう」

 

 「だが、銭は貯めるだけでは意味がない」

 

 「使ってこそ生きる」

 

 新九郎は静かに頷いた。

 

 ◇

 

 市兵衛は立ち上がると深く一礼した。

 

 「宗久様」

 

 「若様」

 

 「私はこれより堺へ戻ります」

 

 「来年は、今年以上の注文を持って参りましょう」

 

 「頼んだぞ」

 

 「お任せください」

 

 市兵衛は力強く答え、館を後にした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【長期イベント達成】

 

『椎茸栽培の量産化』

 

菌木片による接種法を確立し、

 

黒川領における椎茸の量産体制を完成させました。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

報酬

 

EXP +500

 

知恵 +3

 

政治 +5

 

統率 +3

 

魅力 +2

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 ◇

 

 その数日後。

 

 尾張・小牧山城。

 

 評定を終えた信長のもとへ、一人の目付が静かに現れた。

 

 「殿」

 

 「美濃より報せにございます」

 

 信長は視線だけを向ける。

 

 「申せ」

 

 目付は一礼した。

 

 「黒川家の干し椎茸と蜂蜜にございます」

 

 「堺の大商人が扱うこととなり、博多を経て明との交易へも乗せる話が進んでおります」

 

 信長は小さく笑った。

 

 「そうか」

 

 「とうとう、そこまで行ったか」

 

 長秀が静かに尋ねる。

 

 「殿」

 

 「黒川家をご存じで」

 

 「知ってる」

 

 「美濃の小せぇ国人だ」

 

 「椎茸や蜂蜜で銭を稼ぎ始めたって話も、前から耳に入ってる」

 

 信長は書状を閉じた。

 

 「だがな」

 

 「堺の商人が動き、海外交易へ繋げようってぇなら話は別だ」

 

 勝家が腕を組む。

 

 「商いだけで、そこまで気にされますか」

 

 信長は不敵に笑う。

 

 「商いだから気にするんだ」

 

 「銭は兵を集める」

 

 「兵は国を強くする」

 

 「その銭が海の向こうから入ってくるようになりゃ、小せぇ国人でも侮れねぇ」

 

 信長はゆっくりと立ち上がり、美濃の地図を広げた。

 

 指先は黒川領で止まる。

 

 「黒川宗久……」

 

 「いや」

 

 「新九郎か」

 

 「神童なんてもんは大抵、大人が勝手に騒いでるだけだ」

 

 「だが、こいつは違ぇ気がする」

 

 「半兵衛も面白ぇ男だったが、こっちも面白ぇ」

 

 「乱世ってぇのは、次から次へと退屈させねぇな」

 

 信長は静かに笑みを浮かべた。

 

 美濃の山里で始まった小さな商いは、ついに尾張の覇者・織田信長の興味を引くまでになっていた。

 

 




━━━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:黒川 新九郎

年齢:10

レベル:29

EXP:1140/4200

HP:149/149

MP:595/595

筋力:79

耐久:77

敏捷:82

知恵:119

統率:80

政治:76

魅力:61

器用:86

運:59

SP:0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【固有スキル】

・鑑定 Lv5(MP消費なし)

・言語理解 LvMAX

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【スキル】

・観察 Lv7

・学問 Lv8

・兵法 Lv8

・礼法 Lv7

・剣術 Lv8

・弓術 Lv7

・槍術 Lv5

・馬術 Lv5

・将器 Lv3

・号令 Lv3

・統制 Lv3

・普請 Lv2

・商才 Lv2

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【アクティブスキル】

・知識庫

・思考支援

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【称号】

・転生者

・唯一の成長者

・黒川の神童

・野盗討伐者

・黒川の開拓者

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