シンビオートを纏うのは間違っているだろうか   作:ななば

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マーベルスナップやってたら衝動的に書きたくなってしまいました。




1.シンビオート・ビギンズ

 

迷宮都市オラリオ。

怪物(モンスター)が湧き出る大穴、ダンジョンの上に築かれた巨大都市。そこには、神時代を創り上げた数多の神々と、そんな神々の眷属である冒険者達が跋扈する、危険ながらも夢と冒険に溢れた街である。

 

だが、これは都市の良い所だけを見た意見である。

冒険者は神々の『恩恵』を求め、神々はより優秀な人間(子供達)を求め、ダンジョンを管理するギルドは都市運営の資金を求め、そして民衆は輝かしい英雄譚を求める。

 

皆、上を見過ぎて見えないでいる。

皆、見えない()()をしている。

都市の裏で蠢く歪みを、どうしようもない悲劇を。

 

────────────────────────

 

 

「……う、ゔあ゛、あぁ゛…」

 

カビと埃、それと鼻の奥に残る青臭い匂い。どれをとって不愉快で仕方がない娼館の一室で、一人の女が横たわり呻いていた。

ボロボロの服と手入れされておらず燻んだ長髪、肌の見える部分には夥しいほどの痣がある。その上、顔にはポツポツとした発疹ができていて、元の相貌は伺えない。誰が見ても末期の性病患者だと分かるだろう。

 

「……おかあさん」

 

「……お、ばえ…おばえ…アディ…」

 

そんな女を悲痛そうな顔で見つめる、アディと呼ばれた少女。彼女は女とは対照的に整った顔に中途半端に長いをしており、成長すれば相当な美人になる。

アディの姿を見た女は衰弱した顔を一気に強張らせて────烈火の如く怒った。

 

「おまえ゛!?おばえなんて!!なんで産まれてきたんだ!!お前な゛んで、"産みたくなかった"!!」

 

「───っ…!」

 

「がえせ、かえせ!!私の人生を、がえせ゛────!!」

 

アディの母親である女は狂ったように呪詛を吐き散らす。衰弱して話すだけでも苦痛なのに、はっきりと聞き取れてしまうほど殺意に満ち溢れた物だった。

アディはその言葉を、会う度に聞いていた。

いつか娼館の使用人が笑いながら話していた、母は故郷の森を飛び出し、オラリオに来てすぐ違法娼館を営んでいたファミリアに捕まり、無理やり娼婦にされたのだと。

泣き叫んでも、怒り狂っても何もできず。何度も何度も身体を重ね、好き勝手に獣欲を吐き出された。

 

その結果産まれたのが、アディだった。

エルフである母親と、誰とも知らぬ人間の男、その間に産まれた望まれない子供────それが、アディだった。

母が憎む気持ちも、存在を認めない理由もアディには分かっていた。

分かって、しまっていた。

 

「がえ゛────が!?」

「いい加減うるせぇよ、()()()

 

呪詛を撒き散らすていた母が、いつのまにか背後に居た男にぶん殴られて倒れ伏す。かなりの強さで殴られたのか、ピクピクと痙攣し、白い泡を口からこぼす。

 

「ひぃ…」

 

その光景を見て哀れな子供はただ震えるしかなかった。こうも簡単に人を殴り飛ばせる男に、ただただ恐怖しか湧かなかった。

 

「────と、見ての通り、お前のお母さんは使い物にならなくなっちまった、こんな不細工でもエルフだから稼ぎ頭だったんだぜ?」

 

"そんなこと、聞きたくない"

 

アディは必死に耳を塞ぎ、身体を丸め聞こえないふりをするが、男にそんなことは関係なく矢継ぎ早に話を続ける。

「わかるか?稼ぎ頭がいなくなるとウチの経営が傾いちまう」

やめて欲しい、もう何も聞きたくない。

「だから、俺たちゃ考えた、もっと多くの客層を取ろうってなぁ…だから────お前、仕事引き継げ」

 

 

 

 

「────え」

 

投げかけられた言葉を、少女はすぐには理解できなかった。

この人は今、なんていった?

仕事、娼婦のこと?

お前、私のこと?

引き継げ────?

 

「────あ」

 

 

その意味を理解した瞬間、少女は駆けた。

分かってしまった。私はお母さんと()()だ。

同じように仕事をして、ここで死ぬ。

(いや!!嫌、いやあああぁ!!)

自分の未来がはっきりと想像できてしまった、だから()()()

アディは目の前の男を避けて扉をこじ開け廊下へ、そのまま玄関から逃げようとして────あっさり捕まった。

 

「はいストップー」

「ん゛ん゛んん!!むぐう゛う゛うぅぅー!?」

 

アディの逃亡劇は二秒ともたなかった。

頭から地面に叩きつけられ口を手で塞がれる。今まで感じたことのない痛みの中、それでも必死に叫ぼうと踠くが、現実は変わらない。

「お前らはもう終わりなんだよ、俺たちの為にここで金を稼ぎ続けんの」

じたばたとアディは両手足を動かすが、どれも届かない、仮に届いたとしても

冒険者である男に対しては何の意味もないだろう。

 

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌────!!)

 

諦めきれない。

なんで私が、こいつが憎い。

ありとあらゆる呪詛の中、アディの意識は闇に落ちた。

ドロドロに濁った()を小さな少女の心に宿して。

 

 

 

 

────────────────────────

 

夢を見た。

どうしようもなく非現実的で、あり得なくて、ほんの少しだけ、爽快な夢。

目の前の男は、さっき私を叩きつけた違法娼館の男。

私は()()()()。男は化け物でも見たような顔をして一目散に逃げる。

 

"おかしいの、おかしいの"

 

私に怯えるのが可笑しくて、なんだか笑えて、楽しくなって追いかけた。

男は何やら怒鳴ってるけど、音が遠くて聞こえない。

そうしてるうちに、自分の身体から黒い蜘蛛の足みたいのが出てきた。

気持ち悪かったから、男の方に行ってほしいと願ってみた。

 

ザクッ ブシュ

 

紙に穴を開けるみたいに、あっという間に男の身体を貫いてしまった。

張り上げている絶叫も、何も聞こえなかった。

男の身体から流れる血を見ていたら、なんだかお腹が空いてきたから()を食べた。

美味しかった、また食べたいと思った。

 

私はなにがしたいんだっけ?

 

そう、そうだ!

お母さんに褒めてもらいたいんだ!

男は食べてなくなっちゃったから、もう何も怖くないんだ!私がお母さんを救えるんだ!!

あはは、お母さん褒めてくれるかな?

くれるよね。だってずっと逃げたかったんだから、私のこともちゃんと愛してくれるよね。

 

扉を開けた。

お母さんが居た、もう立ち上がってる。さっき殴られたのは大丈夫だったみたい。ああ、安心した。

 

安心したら、疲れてきちゃった。

追いかけっこ、したもんね…

ああ、疲れちゃった…

 

お腹、空いたな…

ああ、お腹空いたな…

 

 

 

 

おかあさん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がり、あむ、ばり

 

 

 

 

 





◾︎アディ
エルフの母と知らない男との間に産まれたハーフエルフの子。
過激なプレイをしても簡単に死なないよう、母親とアディは男のファミリアの主神から恩恵を受けていた。といっても受けただけでステイタスの更新などは一度もしていない。
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