メタバース。
それはアニメや漫画、絵本や小説などを含めたあらゆる文化の遊び場だ。
インターネットの中でバーチャルと呼ばれる空間そのものをVR技術で再現してしまい、現実の暮らしから一時離れて仮想世界の住人として生活や冒険できる新しい体験を現実以外で味わえるものだ。
VR機器を使ってログインすると、ログインボーナスを貰える所もある。
なので毎日顔を出すだけで様々なアイテムが貰えてたりもする。
そんな仮想世界で全く新しい現実以外の人生や、知識でしか知らない冒険をどう目指したり、誰とどんなコミュニケーションを楽しむのか?
それらをお試しするならVR機器を買って異世界メタバースに飛び込むしかない。
様々なコンテンツ文化を混ぜたそんな仮想世界では、住民として暮らす為のドールという外装を作ったり、もしくは最初からあるドールを買ったりして見た目が様々な住民達を通じて過ごす暮らしがある。
VR機器によって現実に手が届くものとしてのそれは、楽しさだけではなくゆったりとした牧歌的な暮らしを目指すも良しだ。
そんな仮想世界でありバーチャル、住民一人一人が広大なオープンワールドに何を用意するかの話になる。
バーチャルハウジングによる家を建てたり住民との店舗交流。
カフェやショップを開店して住民達と売買をしたり。
クリエイター活動であれば漫画や絵本や小説を住民と楽しく書いたり出来るかも?
ゲーム体験であれば現実のゲームプレイヤーが関わるイベントを始めてみて、ファンタジーに迷い込んだような物語性のある体験が目指せるかも。
スマホやPCはVR機器ではないので注意しろとの事らしい。
俺は燻っていた。
何に燻ってるだって?
不安や苛々は色々抱えているが、今は最近買って届いた物に向けられている。
VR機器…高いな。
いや、高かった、もう買ったし。
買ったくせに文句たらたらな俺も悪いがほんと高いよこれ…ちゃんと遊び尽くして元取れるのかな。
どうせ売る時は買取価格半分以下だろうな…はぁ、もう知ってるわ知ってる。
ならどうしてこれを買ったのかという話になる。
俺は、下手だけど小説を書く。
小説アカウントを低評価がつく度に50回以上吹っ飛ばして失敗小説を量産して、そうしていつもいつも存在ごと消えるをずっと繰り返し続けている俺。
これは何かの罰ゲームなんじゃないかと思うほどなんだが、小説を書くのは難しいから仕方ねえんだ。
素人だからとか小説の書き方が普通じゃないとか、小説に勝手にメモや追記を混ぜるなだとかそりゃ炙り出せばダメな所なんて腐るほどある。
下手くそな小説をネチネチと一人で書き続ける日々。
まあそうした日々を送ってた訳よ。
んである日偶々ネットにあったメタバースで小説を書いてみたという記事を5回読んだ辺りで、俺のスマホはネットショップのサイトへと移動していたのだ。
メタバースとかさ、そもそもそういうものに興味を持ったのは数日前の事だ。
軽く知識を入れたんだが、個人から始まったものらしいけど、それから一時期流行ると後からきた企業の連中は人手を使って人海戦術でごりごりと金儲けを進めてしまってその後速攻で廃れたらしい。
メタバースって個人は何もない殺風景の空間から始めないといけないらしくて、最初は個人個人で細々とクリエイター活動を楽しんでやっていたらしいが、それ以上の事は詳しくは分からない。
つまりメタバースはオワッタコンテンツ、通称オワコンと言われるものらしいな。
何もない空間から一から遊ぼうねなんて選ばれた奴じゃないとそもそも楽しまないと思うんだが…。
VR機器を起動してメタバースの中に入ってみた。
注意事項の規約同意が大量にあったが同意しますだけをやって進めていく。
少し進んでみたがやはりと言うべきかドールと呼ばれる外装のようなものと、メタバースに作る自分の世界の名前を決めないとここから先へは進めないっぽい。
住民になる為の器と、暮らす為の世界の名前決め。
その世界は恐らく地面しかない世界から始まるだろう。
見た目なんてどうでもいいから取り敢えず置いてあったいかにもデフォルトっぽいドールを決定して、次はそのドールの名前の項目になった。
そっか、たしかにそうなるな。
何時間もかけて外装を頑張る気力はないのでそれはいいが、名前…名前か。
どうせ後から気に入らなくなったら消してまた作り直すだろうから、今回の名前は適当でいいだろう。
「VRゴーグルつけてるし…まぁ、逆から読むやつでいくか」
VRゴーグルを付けて寝っ転がったまま、名前を付けた。
ルグーゴルーアイブ。
なんか逆から読んだだけなのに少しかっこいい名前じゃないか?
ドールの名前を決めた事で、メタバース内部に作る世界の名前の項目に入る。
10分はたたないくらいで決めておきたいが、何かあったかな。
メタバースに世界。
メタバースワールド、いや、ワールドメタバースにしよう。
どっちでもいいか。
そう名前を決定した瞬間、少しずつ自分の意識が薄くなっていき、やがて俺は完全に意識を失ってしまった。
VR機器を使うのも初めてだし、メタバースの利用自体も初めてなので、俺はこういう自分の沈んでいく意識そのものに対して特に何も思う事はなかった。
あー、早くメタバースで小説書いてみてー。
どんな感じなんだろ?
「お、おぉ…」
目を開けると、頭の中にログインボーナスという言葉が浮かぶ。
それとほぼ同時に、目の前に半透明の画面が現れて『ログインボーナスとして【ドール】を入手しました』と書かれた文字が目の前に浮かんだ。
俺はそれを見つつ直ぐに疑問に首を捻る。
ドールとはメタバースで住民として暮らす為の外装なのだが、これは何だろうか?
スペアでも持っておけというやつ?
今のドールを消せば持ってるこのドールごとそれが消えるから意味ないじゃんと思う。
意味わからん…まあ、いいか。
「メニュー」
そう口に出すと再び半透明の画面が出てくるが、これはれっきとした普通のメニュー画面だ。
アイテム一覧を確認したり移動速度を含めた設定項目などなどある。
所持アイテムを確認すると先程のドールが1つ入っていた。
これは取り敢えず放置しておこう。
それより今は欲しいものを検索画面から探していこう。
さっきから体の小ささが気になっている。
それと何だが自分の声が幼女っぽいんだよな。
手鏡を検索して沢山検索ヒットしたので適当に1つを選び目の前にそれを出現させた。
うーん、おかしいな。
メタバース内部でのアイテムって、全部購入金額が用意されているもんだと思っていた。
手鏡はどれも金額の項目が存在しなかった。
入手ボタンしかなかった。
誰にでも必要だから無料とかなのかな?
そうして所持アイテムから手鏡を取り出して手で持ち自分の顔を見てみた。
「黒目黒髪幼女じゃん…」
何故かそこには作った覚えのない外装のドールである俺がいたのである。
なんだこれ、バグか?
初めてのメタバースなのに勘弁してくれよ。