アイテムリスト
【太陽(完了まで40億年)】
【月(完了まで40億年)】
【ブラックホール(完了まで5億年)】
【ホワイトホール(完了まで5億年)】
あれから暫く時が経った。
やはりここのメタバースはかなり時間の流れが早い事が分かる。
そのお陰でアイテムリストの確認の頻度が多いのは、ちゃんと気になっている証拠だな。
でも宇宙が存在しないのにこういう星とか天体…なのかな、そういうやつを作ってそこら辺に浮かべちゃってもいいのかな。
危なくないといいんだけれど。
メタバースの世界って危ない事あるのかな?
うん、そこも分かんないや。
「お、またここにいたなー?」
最近沢山のお墓の周りに居座るのが蛍以外に増えてくれた。
それはこのメタバースにいるもう1つの生物である提灯アンコウである。
結局2匹共餌が無くても元気なままだった。
俺と同じでお墓が住み心地が良いと判断した結果なのかも。
寿命とかもなさそうだし、時間の流れの早さに影響されてなくてよかったよ。
ペットという訳じゃないけどさ、ほら、久々の生物との触れ合いなんだよ?
そりゃあ愛着的なものを俺が勝手に持ち出しても、それはしょうがない事だと思うんだよね。
今の俺はいつもお墓の所にいる。
光っているから吸い寄せられてる…というより、近くにいたら撫でやすいから自然とねそうなった。
蛍とかもお墓の後ろとかによく隠れている。
光ってるからどちらの子も直ぐ場所分かるんだけど、そういう所がちょっと良いんだよね。
「落ち着くなぁー…」
お墓の後ろに腰を下ろして、お墓に背中を預ける。
正直、前のメタバースにいた頃は勝手に生き急いでいたのかもしれない。
メンタルと小説を書く事がお互いに深く関わっているから、ついつい何となくで書いちゃってたのもある。
俺みたいに感情に頼って小説を書くタイプの人は、皆そうなんだろうけどね。
「時間の流れが早い事が分かったからこそ、本当の意味でゆっくり出来ているのかもね」
時間が迫っているから何かをしないと生きていけない、お金を稼げない、食べられない、嫌われる、置いていかれる。
時間って結構残酷だよね。
俺は今そんな残酷とも比喩できるそれに、結果を待ちながらワクワクしている所だ。
変だよね、でもこれメタバースだから変な事も受け入れられるよ。
ここらで思っていた事がある。
星についての事だ。
「宇宙に浮かぶ星って確か、キラキラ光っているのは昔に爆発した時の光が消えるまで残っているからだっけ…?」
星の爆発だなんて怖いよね、そういうのは求めてないかな。
危ない事はダメだよね、安全に暮らしておくのが人の平和ってものだと思う。
なら俺は一生満点の星空とかは無縁だな。
星空なんてなくても俺は困らないけどね、ははは。
「ん、どうしたどうした?」
のんびりしていると提灯アンコウが何か思う所があるのか、地面を移動しながら俺の周りをくるくるしだした。
何だろう、不思議な事もあるもんだ。
「どうしたどうしたー。君はどうしたい?」
両手で持ち上げて目を合わせてみる。
なんだろう、実はアイテムリストに入ってのんびりしたいとかだったら俺傷つくかも。
言葉は通じないから、話しかけるのはいつも俺。
通じないからといって喋らないという選択肢はないのだよ。
「よし、散歩しよっか」
抱き上げたまま沢山あるお墓の中を歩く事にした。
ふとムクムクとお墓の中に入ってしまった者達の背景を勝手に想像しだした俺だったが、ノートもペンもまだキーワード検索から入手していないのでぐっと堪える。
妄想を我慢する頻度が何だか増えてきたな。
小説を書き出すと、それと同時にサボる事が気持ち良い味を何度も味わい出すのだが、今はそう…もうちょっとゆっくりしてていいかな。
蛍と提灯アンコウになら書いてる小説を見せたり読み聞かせたりしてみても不快感はなさそう。
…やっぱり俺ちょっと性格変わってきてるな。
昔なら絶対思わないよこんな事。
「大人しい子だね、よしよし」
片手で提灯アンコウを持ったまま残りの片手で器用に撫でる。
視界に入ってくる蛍も何だかんだ俺達についてきている。
「暗闇の中にある、ひっそりとした光っていいよなあ…」
そう言い終えた所で、太陽と月がこの世界に登場してしまえば、その力でこの世界全てを公平に照らすだろうなと想像する。
平等という言葉を使わないのは、暗い所が好きな生物もいたりするよなと一瞬思ったから。
平等と公平なんて上手い使い分けなんて全く知らないけどね。
ほら、何となくそうしただけ。
「綺麗なんだろうなー…」
真っ暗な頭上を見上げる。
このままじゃ太陽と月より先にブラックホールとホワイトホールがこの世界に浮かぶ事になる。
宇宙みたいなメタバースの誕生かな?
提灯アンコウを両手で俺の頭より上に持ち上げる。
「ねえ、君はどんな提灯アンコウになりたい?」
勝手に言い出す事、言い出しっぺは俺。
ダラダラと思いついた事を口に出して言ってみよう。
「ブラックホールを泳いで、中心に到着したらホワイトホールにいるんだよ君は。不思議に思うだろ?多分ブラックホールとホワイトホールって見えない所で繋がっているんだぜ?なら最初からホワイトホールの中に入ったら、もしかしたらブラックホールから出てこられるのかも?」
これは全部俺の勝手な妄想だ。
ブラックホールとホワイトホールに関する知識なんてマジで全くない。
そもそもそんな知識がある人は学者とか物好きの人だろう。
「宇宙を泳ぐ提灯アンコウ、かっこいいじゃん。俺が憧れるかもよ?」
太陽と月にだって宇宙を泳いでいけるかもしれない。
可能性はゼロなんかじゃないよね。
だってここメタバースだもん。
「君、メタバースにいるんだよ?自由だよ、好きに生きていいんだよ。誰も君を止めないし、このメタバースを隅から隅まで移動しちゃってもいいさ」
普段地面を動いたり空中にゆったりといるその両手に持っていた提灯アンコウを、空中のままゆっくりと両手を離す。
ふよふよと浮いている。
「どんな奴になりたいかぁ…」
俺ならどう返すだろうね。
昔の俺だったらまず間違いなく小説を書ける空間があったら、後はどうでもいいと言うだろう。
確かにちゃんと夢はあったよ。
現実では出来なかった、でもメタバースでなら小説を1つ完成させる夢が叶うだろうなんてこと。
「そんな気持ちで書く小説自体が、俺に合わなくなってたりして」
性格の変化、これ程厄介な事はあるのだろうか。
更年期障害の怒りっぽさに巻き込まれる接客業自体を思い出す。
もう遠い昔の事になっちゃったねー。
「言葉が通じる相手にこれ言われたらどうしよう…」
どんな人になりたいかだって?
難しいね、難しい。
このメタバースに来てから俺もちゃんと分かった事があるよ。
前のメタバースでも思っていた事が、ここで確信に変わったよ。
「老けないし体の成長もないんだよなあ…」
人によってはメタバースなんだからそれが普通じゃねと思うだろう。
つまり今の俺は蛍や提灯アンコウと似た体の状態になっていると言える。
ちゃんとしたこのメタバースの世界の一員だということだ。
メニューからアイテムリストで完了までの時間を確認する。
どうしよう?
やっぱりちゃんと我慢してから太陽と月を一気に浮かせてみたいかも。
報告連絡相談、全部が全部無縁だぜ。
でもなんだろう。
「こういう時の相手とかは、雑談関係を求めちゃうんだよなぁ」