外装幼女王   作:積み立てヨーグルト

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暫く自分の容姿を手鏡で眺めていたが、色々と気が付いた事がある。

まず、ログアウトが出来ない。

カップラーメン食べようと思ってログアウトの項目をメニューから探したが、それがない。

意味不明である。

それと喉が渇いたり腹が減ったりはないけれど、何故だか眠気は存在しているし、一度寝て起きたら再び同じこの景色が続いたまま。

マジで地面しかない、真っ白だ。

 

現状をどうにかしないと、という気持ち?

あるにはあるがそういう努力を真面目に取り組みたくはない。

一応眠って起きる度にメニューからログアウト項目が増えていないか確認してみようという…という気持ちはある。

ほら、差し迫っている命の危機という訳でも、俺の銀行口座の貯金が無くなったりする訳でもないから、冷静になっていれば焦る気持ちは煮えはしない。

 

あ、手鏡とメニューから検索かけて新たに手に入れた腕時計は寝て起きてもちゃんと残ったままだった。

金額表示がなかった腕時計はもう夜を指している。

取り敢えず6時間くらいは寝たらしい。

なんだか心と体がスッキリした気分だ。

メタバースの中で寝るというのは実は体に良い事なのかもしれない。

な、わけあるか…ログアウトできないのはおかしいだろ。

寝て起きたから実は今から出来たりして。

…やっぱ項目がないわ、オワコンじゃん。

もう5日は経っていると思う。

 

「よし、小説でも書くか」

 

独り言は俺の癖…という訳ではなく、周りに俺しかいないからだ。

ほら、周りに誰もいないなら勝手に1人で喋ってても問題ないだろ?

つまりはそういう事だよ。

 

メニューの検索画面から追加でノートとペンを入手していた俺は、所持アイテムから取り出した。

もうこれ出しっぱなしにしておこう。

やっぱりこれも購入金額の項目がなく、入手ボタンしかなかった。

まあこれも流石に手鏡とか腕時計と同じく無料なのかな?

白い地面にノートを広げて、小さな幼女の手でペンを握った。

 

 

 

「転生というものがこの世の何処かにあると見聞したとはいえ、元々その様な四方山話…些事の範疇と言って良い程の噂など、聞く耳を持つ事自体が特異な人物が何処にいる。いや、諦めるな…俺がいる。俺に任せてください、とでも言っておこうか。この話、決して嘘だとは断言できなかった。何故なら今ここに住んでいる人の多くが転生していない可能性があり、もしそうならば、残りの一部は…。とはいえ嘘だと結論付ける前に、試してみなければならなかった。証拠がなければこの話に裏付けがとれない。記憶の重複という道に産まれることが出来なかった者として、このまま何となく過ごしていいのか?後悔している事はないのか?幸せに…なりたくないのか?愛だ。愛だよ愛と言いたいの?本来は異世界の人達に愛されたいと思うほどその願望が叶うものなのだが、田舎に住む俺にも漸く順番が回ってきたのだ。すまないな、まだTSしてない皆。俺はお先にTSして異世界に住む人達とイチャイチャさせてもらうハーレム生活の為に、仕事を頑張り続けていた。仕事の事に関しては今回は休んでしまったかな?まあ俺は今、世界で一番幸せ者だろう。もうね、異世界を謳歌するしかない楽しみで仕方がないし人生薔薇色間違いなし。もう異世界であれば何処かなら何でもいい早く新しい人に会わせてくれっ!あと5秒くらいで飛行機と衝突か勝ったな。俺の…勝ちだあっ!」

 

ノートに書いた一区切りであろう小説を声を使って口に出す。

 

寝て起きてを繰り返しながらダラダラと書いていたから、全体をほんのり見る。

んー…、んっ…?

ミスってるな、まあいいか。

なんか序盤の入りなんだけど失敗した。

主人公の心情の多さの中にある強めの気持ちは良く出てていいと思うけど…。

ほら、葛藤の部分とか。

イチャイチャの気持ちはまだ弱そうかも?

あと主人公の名前が思いつかない。

幸せ者を自覚しているんだけど、どうかな?

飛行機と衝突部分は俺の勝ちって言ってるし。

待てよ、飛行機よりも主人公がでかい設定で行くか。

いや待て、なら主人公よりも先に飛行機が粉々だし主人公が飛行機の中に乗れないか。

なんかTSとか転生をする為の儀式みたいな導入だが、実は話の始まり方としては中々いい線いってるとか?

へへへ、やっぱりちょっとは凄いのかな俺って。

 

ドズンッッッ!

 

そうしてにやにやしていると、ノートに走らせていたペンの背後から恐ろしく大きな音と化した衝撃音が聞こえてきて死ぬほどびっくりしてしまう。

とんでもない速さで体ごと首を振り向いた俺は、その音のある方へと目を向かわせた。

 

「な、なんだこれ…」

 

白い地面以外何もなかった空間に、巨大な飛行機が鎮座している。

マジもんの飛行機だ、デカすぎる。

空港でよく見る飛行機、それが一機丸ごとだ。

 

「で、でかい…」

 

機体を支えているタイヤを近付いて見に行くと、幼女の俺よりも何倍も大きい。

触ってみると滅茶苦茶硬いタイヤのゴムの感触がした。

あ、これマジもんだ。

 

「本物だ、これ…」

 

見上げる。

入り口は当然閉じており絶対中には入れない。

俺はただこれを見上げる事しか出来ないのだ。

どうにかしてよじ登ろうと頑張ろうが、自分の体重は幼女であろうと重いし、ファンタジーみたいに空を飛べる訳でもない。

そもそもそれらが出来たとして、中から開けるタイプであろう飛行機の入り口をどうして外からどうにかなると思うのか。

外側からボタン1つでパカっと開く機構なんてある訳ないだろうし、これは無理だな。

 

「なんで急に飛行機なんか…」

 

そう言い終えた所で、俺がペンで書いていたノートの…その小説の内容を頭に浮かべた。

確かにそれには飛行機が出てくるが、それこそが関係しているというのだろうか。

理由を無理矢理作ろうとすればそうだろう。

後は、寝ている間に自分の知らない出来事が起きていた…だとか。

もう一度飛行機の周りを見渡してみるが、そこにあるのは白い地面。

後はペンとノートと手鏡。

 

「ノートに書いた小説の一部がこのメタバースに反映される…っていうやつか?」

 

そう予測を立てた。

そんなメタバースはあるのだろうか?

ここはおかしくなっているに違いない。

だってそうだろう、ログアウトさえ出来ないのだから。

それに眠る事は出来るのに喉の渇きも腹の減りも無い。

 

だが、今はそれらの殆どが何なのという話。

飛行機が好きな人なら喜ぶだろう。

俺は自分で小説を書く事が好きだ、飛行機が好きな訳じゃない。

嫌いという訳でもないが、普通という所だろう。

 

向き合う事は小説を書く事、そしてそれをいつかは完成させる事。

人生でまだ一度も小説を完成させた事なんてない。

なら、こういう機会はこっちが利用してやるべきでは?

ノートとペンで小説に向かう事以外に俺に何があるんだよ。

 

「まあいいや…」

 

目の前にある巨大な空を飛ぶ塊。

視界に映って尚、どんどんどうでもよくなっていく気持ちが湧き上がる。

何でこんなの見てんだろう、俺。

飛行機の出現には驚いたけど、書くことに戻ろう。

だって自分の人生で一番欲しいものは、自分で書いた小説を完成させる事なんだから。

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