「ふむ…」
ペンで開かれたノートを軽くで叩く。
考えるべき部分を簡単にしないといけないな。
「地平の向こうに隠されている名前が変わった場所…。王を祀る場、王達の子孫達その者らと誰かが手を取り合って、王を祀る場所でもあるそこで余生を穏やかに過ごしていたと」
最初は神になれなかった神への道が分からない怪物達もいたそうだから、その誰かというのは怪物達の事だろうな。
恐らく大人しい怪物もちゃんといたんだろう。
余生を穏やかにというのは墓地だから理解は出来る。
怪物達は全部が神にはなれなかったんだよな。
神の血筋は長く存在を保つ上で大事なものらしいから、最初に神にならないと子孫の誕生でさえ危ういのか。
「星々は原初かつ神秘の力である月から蓄えられた力を放ち、月の神秘の輝きは夜空全体に流れている…」
怪物達がいる神々が生まれる前の狂い、呪われ、糧とされた荒れた時代の話は、知ってる奴が殆どいない。
怪物達は飢えに耐えつつ殺戮の大波が待つ新たな世界へ行き、その全てを捧げ神への道を追い求めたらしいからそりゃそうか。
知ってても話したくない系のやつかな。
だって怪物達は神になれなければ心も体も飢えるという存在だったらしいし、神になった後ならそんな自分の昔話を外に言うかねぇ。
「怪物達は新たな世界で神に近しい信仰とされてきた安息の地の数々をその力によって滅ぼした…。神を目指すくらいなんだからそりゃ強いよな」
怪物達はある時、その個々ではっきりとした自我を持つようになり、その学習能力で転生という言葉とその理解を知ったが、その過程で弱い個体は自我に肉体は持てなかった者や捨て去った者がいた。
神になり得なかったのはこういう個体なのかな?
神にも強さ弱さはあるだろうから言い切れないね。
「そしてそういう怪物達の自我の目覚めの頃に、神々の血を引き継いだ王の子孫は姿を消した。そしてそれを待っていたかのように聖杯に関する話が進む…」
聖杯という神々が勝手に作り出した力の概念は、太陽と月から生まれる原初かつ神秘の力を真似たもう一つの神秘の力。
「そしてその聖杯の誕生を待っていたかのように、その力で手を取り合っていた怪物達へ届く様に聖杯の力を注ぎ、力のありかとして飾る者がいた…」
これは怪物か神になれた怪物がやったんだろう。
仲間への手助けという部分で見るならやっぱり怪物がやったのかな?
「そして聖杯という力だけが神々個々の力の差になる。それは血の世代を幾つも超えた基本的な力の概念。そうして原初かつ神秘の力の始まりである太陽と月の力は神々から忘れ去られていった…」
成る程、分からん。
うーん、時間軸がどうもね。
近くの蛍を指で撫でる。
よーし、よしよしよし。
ふう、スッキリ。
「あー、分かんね」
とりあえず寝るか。
最近提灯アンコウを抱き締めながら寝るのにハマっている。
君は最高の抱き枕だああー。
「元々強い怪物が神になってまでやりたい事って、血筋を繋げる以前に自分のもっとやりたい事をやる為って場合もあるよな…。俺の子孫がー、が人生の全てな訳ない」
自分が死んだらそこで終わりな世界。
いや、そういえば後から自我が芽生えて転生の事を知るんだったな。
転生の地って呼ばれていた場所には既に怪物達はいた。
でも精神性が一つのはっきりとした自我として変容ってあったから、自我がないままその墓地にいたって事か。
なら、だからこそ王達の子孫と手を取り合って王を祀る場所にいたのか。
なんで最初っから自我が無かったんだ?
それに最初の始まりである、何処へって我慢系で聞いているのも気になる。
昔の俺は意味があるからそれを書いている。
でもな…。
「んっ…?」
寝て起きて、何となく雑にノートを広げながら昔の自分が書いた物の考察をしていた。
今回の小説は前のと随分違う様で味が出そうだ。
何か起きた様な気がして疑問に首を傾ける。
すると突然軽く揺れた感じがしたと思えば、地面がそこから揺れまくる巨大な地震が始まってしまった。
どんどんばんばん揺れていく。
「う、うおおおおっ!」
もの凄く大きな揺れだ。
俺は近くのお墓にしがみついて揺れの嵐が過ぎるのを待つ。
近くにいた蛍と提灯アンコウは浮かんでいるので無事な様だ、良かった。
とはいえメタバースに地震が起きるなんて只事じゃない。
原因はなんだろう?
俺なにかやったのかな?
敢えて言えば小説を書き始めたくらいだけども。
ふと遠くを見ていると、何だか段々白い物がこっちの暗い地面に近付いてきていた。
それはとても真っ白で光っているみたいだった。
明るく、そして白い地面がどんどん迫ってくる。
「わ、わぁはあ…」
お墓に掴まっているだけの俺は事の成り行きを見守るだけである。
やがて全体の揺れが収まると、暗い地面と真っ白で明るい地面が半々くらいでこのメタバースの世界に広がっていた。
何とも変な光景であり、あっという間の出来事だった。
まさか真っ白な地面がどんどん生まれ出すなんて想像もつかなかったよ。
「そういえば前にノート1冊で飛行機と真水が出てきたな…」
事が終わり、そうして今になって思い出す。
ガチャ2回がどうこう言ってた気がする。
毎日意識する訳でもないから全く頭になかったわ…。
「今回はこれがそうって事か」
丁度沢山のお墓の中を真っ二つにする感じで地面の黒と白が分かれている。
何だか何かの国境線みたいだな。
側に寄ってきた蛍と提灯アンコウを撫で撫でしつつ白い地面の方へと足を踏み入れた。
一旦白い地面の遠くへと目を通して、とある小さく黒い点っぽいのが奥の地面にある事を発見した。
遠くてまだ見えないけど何かある。
「よしっ、走るぞっ!」
提灯アンコウを両手で捕まえたまま走り出す。
振り向くと張り合っているのか着いてきてくれているのか蛍も俺の後に続いている。
そうして目的の側までやってきた所で、俺は見覚えのある物が白い地面に置かれている事を見える距離まで来て驚いた。
「マジかよ…」
足を止める。
駆けつけた先には見覚えのあるノートが一冊落ちている。
恐る恐る閉じられたそれを開いて中身を見る。
ああこれ…俺のじゃん。
メタバース同士が繋がったんだ。
その日俺は、自分の書いてきた小説のノートが世界を超えて追いついてきたのだと…そう思った。