ドールには過去にクリエイター活動で行った内容を把握されていた。
太陽に月、地球にブラックホールにホワイトホール。
その内容は特に驚かれる事はなかったようで、淡々としていたと思う。
もしかして俺よりそっち系の知識が無かったりするのかな?
ドールに色々と質問をしたが、このワールドメタバース以外の事は殆ど分からないのだそうだ。
そうして分からないから質問をし返されて俺が永遠に思えるくらい何とか上手く答え続けるという時間が過ぎていった。
残念だなあ、地球の事色々と知っていたら話し相手として面白かったのに。
おっと、相手に面白さを求めるなんてちょっとダメなんじゃないか?
ちゃんと性格良くしておかないと誰かに嫌われちまうぜ。
そういえばドールは俺が昔に書いてたノートの事も知ってたし、本当にフォローリストに長くから意思の一つとして俺に気付かれる事なく居たんだろうな。
気付かなくて悪い事しちゃったかな。
今はちゃんと出会えたからそれで良しと言っておきたい。
もうドールとは俺の口調まで崩れて色々話し合う関係となっている。
それに感化されたのか俺を真似てか冗談まで言うようになった。
その時の感情?
なんか俺日本語教師みたいで凄く誇らしくなったよ。
ほら、教え子が成長したぞおぉ、みたいな。
後は毎回俺が寝る度にドールが俺の事を抱き枕にするので、蛍と提灯アンコウがそれに嫉妬しだしたのかドールに対して体当たりするようになってしまった。
幸いな事に最速で可愛い子達の嫉妬を察知した俺が蛍と提灯アンコウの外装を外装交換アイテムを使ってドールへと交換させた所、体当たりを相手にしてしまう事は無くなった。
その代わりに今は3体のドールに囲まれて、俺は抱き枕生活をさせられている。
嫉妬が収まるまでは小説を進める事は難しいので、今は小説を書くのを止めている。
どのドールもアイテムリストに入れるアイテムだけど、ちゃんとした友達だ。
ドールからは『ちゃんとこの蛍と提灯アンコウにも意思が宿っていますよ』とクリエイター活動以外のサポート案内をしてもらいつい泣きそうになった。
蛍と提灯アンコウは俺が撫でまくったり真水と海水をぶっかけまくって育てた可愛い子供達なのだ。
まさかワールドメタバースで俺の取り合いが発生するとは思いもしなかった事だが嫉妬もちゃんと意思は意思、上手い方向に育ってくれる事を期待している。
それで小説を書けないというストレスはどう発散しているかだって?
例のアレが全て完了するまでワクワクしながら待機しつつ、その一方で新しく増えた2体のドールである中身が蛍と提灯アンコウの皆と交流して話し相手を増やそうと努力していた。
「これはね、絵本。絵本だ」
今は意思が宿っている蛍と提灯アンコウの2体のドールを側に座らせて、絵本の読み聞かせをしている。
メニューのキーワード検索の中にある絵本の数は膨大で、俺はその中から地球のお話を選んで意思の成長のすくすく具合を見守っている。
『抱き枕が喋っています』
『そうですね』
「こら、俺は抱き枕じゃありません。偶々そうなっているだけで小説クリエイターの卵なのです」
よし、さっさと先に進めよう。
何処まで話してたっけ?
ああここか。
「地球は沢山の植物と昆虫から始まりました。体を変化させて羽を得て空を飛ぶ昆虫と、地上を速く走れるように体を変化させた昆虫と、海の中を自由に泳ぎたいから体を変化させた昆虫がいました」
『蛍は何処ですか?』
『提灯アンコウは何処ですか?』
「まだっ!まだだからまだなのっ!」
そうそうこんな感じで質問が飛ぶ場合があって、俺はそれに答えたりもする。
絵本に書いてある通りの事を追加の解釈で補完しつつ教えているのだが、これが中々大変なのである。
「昆虫には2種類あって、太陽が昇った明るい時間が好きな昆虫と、太陽が沈んで月が出ている暗い夜が好きな昆虫に別れています」
『ここには太陽っていうものがないですね』
『月もないですね』
いやそれは色々と俺の計画があってだな…。
す、進まねええぇ…。
「意思の捉え方で誰がどのドールなのか早くも分かってきたな」
美術室に置かれていそうな3体の人の形をした全身真っ白な3Dドール。
でも中身の意思が違えば、それが元の外装が蛍なのか提灯アンコウなのかはっきりと違いが分かる。
基本的に俺の側にいてクリエイター活動のサポート案内をしたがるドール。
地球の地上に出現する様々な虫達の誕生をずっと心待ちにしているドール。
地球にある海と深海の話が好きなドール。
地球の話に興味があるかないかではっきりと分かれており、絵本の話に夢中なのは元が蛍と提灯アンコウのドール達だけだ。
意思がどんどん育って性格を形成していくだろうから、いつかは俺から離れて自立するだろうなと思う。
見た目は完全に一致しているのに面白いもんだよ、うん。
絵本を使って地球の話をしまくった甲斐があったぜ。
『何故いつまでも例のアレの計画を進めないのですか?』
ドールの話が頭の中に来たので答える。
相手は俺が抱き枕にされそうな側の位置にいた。
「まだ待ってくれよ。今はあの子達の意思の成長を見てあげたい」
『そう言い続けてどれ程経っているでしょうか。時間を止めましょうか?』
冗談が飛んできたので少し笑う。
この前、全てのアイテムリストの待機時間が完了した。
地球も太陽も月も、ブラックホールもホワイトホールもだ。
そうした事があり、ふと思い立った俺は時間の流れが普通になるようにとこのワールドメタバースで願い続けて最近それを叶える事が出来た。
つまり今のここは時間が時計通りに時が進む世界という訳。
「扱いをどうするかだよなぁ…」
『この世界の外に地球を出しておく必要があるのです』
「このワールドメタバースの外の世界って言われてもな…」
最近色々な提案が俺の方へと飛んでくる。
その殆ど全ては俺のクリエイター活動のサポート案内をしてくれるこのドールなのだが、俺が絵本で読み聞かせていた世界にまるで興味がないと俺には思わせておいて、実は話をちゃんと聞いていたようだ。
特に虫達の楽園が一度滅びかけてしまう氷河期の時代…とか。
危ないから地球に行っちゃダメだよという判断を下したようだ。
絵本の内容を壮大かつ適当にあれこれ補足し過ぎた俺が悪いのかもしれない。
『地球に興味はないのですか?あれだけ長々と大量の絵本を交えて話し続けていたのに。早く地球をこの世界の外に置くべきです、危険なものなのでしょう?たとえアイテムリストの中にあろうと、今後このワールドメタバースにどの様な影響が起きるのか分かりません』
削除して下さいっていう提案をずっと嫌がっていたら、ならこの世界の外に置いておきましょうという話が今は進んでいる。
そうするとなると、太陽と月、そして宇宙が欲しいからブラックホールとホワイトホールも一緒に置くしかないよね。
だって天体セットみたいなもんだし、そうでしょ?
「この世界の外っていうけど、ほらその、急いでやった事って結構失敗する確率が高いとか言うじゃん。もっとほら、使い道というかこれがやりたいって事が決まってからでもいいと思うんだ」
『ですが…』
うーんこの無限ループ。
地球だから危ないなら、地球っぽくない外装を上から被せればいいのでは?
「…なら、地球にドールの外装をつけようか。これなら安心かもしれないよ?」
『試す価値はありそうですね』
よし、漸くこの手の話から逃げ切れそうだ。