俺が抱き枕にされまくるドール3体との暮らしに、新しい子を増やす。
蛍と提灯アンコウと同じ様に、ドールの外装を外装交換アイテムで被せてあげた地球そのものだ。
そういえば元の体に戻りたいとか言ってこないな…、多分慣れたんだろう。
今から中身が地球というその子と初めて対峙する。
そうだな、じっくりと腰を据えて長い目で見ていこう。
よし、出来た。
アイテムリストにあるドールを使い、美術室に置かれていそうな3体の人の形をした全身真っ白な3Dドールの完成だ。
他の子達と同じく見た目は一致しているが、意思が育ってきたら性格に変化が起きるだろうから話せば見分けるのは簡単になるだろう。
この子はどんな子になるのかなぁ。
今の所まだ小説は進んでいない。
抱き枕生活と雑談生活、そして絵本の読み聞かせで意思の成長を促している過ごし方でサイクルが回っている。
辛いというのはないけれど、小説を書かない自分はなんか慣れないな。
なんて言うんだろう、言葉では言い表しにくいかな。
『初めまして』
「うん、宜しくね」
おっと、ぼーっとしてた。
握手して、黒目黒髪幼女のにっこりスマイルで応じる。
取り敢えず今の俺に出来る事をするだけだろう。
というかずっと思ってたけどさ、ドールって基本の動作として浮く事も出来るみたいなんだよね。
だってうちのドール達ずっと浮いたままで過ごしてる時があるんだもん。
例に漏れずこの目の前の子も宙にずっと浮いている。
なんだかとっても羨ましい。
『…この世界には、なんだか違和感があります』
「あ、あー…。まあ取り敢えずそこら辺に座ってよ。ちょっと2人だけで話そうか」
『そうですね』
ちょっとおぉっ、もう初っ端から不穏なんだけどっ!
やっぱり先にこの子とは暫く2人きりにさせて欲しいって周りに釘刺してて正解だったよ、危ねえ。
もし今の発言を他の皆に聞かれたらどう思われるかなんて分からないからな、色々と心配だ。
そういう事もあるよねで流してくれるのが一番望ましいかもしれない。
だって今まで誰もこのワールドメタバースの世界に違和感がーだなんて言う子いなかったんだし。
「うーん…」
『どうかされましたか?』
「んっ?ああいや大丈夫だよ、よっこいしょ」
『よっこいしょとは何でしょうか?』
「えっ?座る時に言う声みたいな?まあ気にしなくていいよ。ほら、偶に出る癖みたいなもんだよ」
でもさぁ、でもでも何となく察してたんだよなぁ、だって地球だもん。
地球だよ、地球。
母なる大地じゃん。
大地どころか海もあるけどね。
この半分白くて明るくて、半分暗くてそれ以外は何もない場所とは全く違うと思うのよ。
取り敢えず俺の目の前に座ってもらったから俺も座る。
さて、取り敢えずはアレの確認だな。
「じゃあ俺から話そうか。アイテムには意思があるものと無いものに分かれたりするらしいって話を聞いたんだけど、意思は生まれたてだったりするのかな?」
『そう…ですね。今漸く目覚めた様な、そんな感じです』
「ふむ。でも良かった、ちゃんと会話は通じてそうだね」
『えっと、この世界の管理者で合っていますか?』
「うん、合ってるよ。全然自覚なんてないけどね」
『やはりそうでしたか』
「それでなんだけど、やっぱりこの世界に違和感をまだ感じちゃうのかな?」
『そうですね。私の居場所はここじゃない…。その様に感じます。でも、この世界とは繋がりを持ちたいとも思っています。この気持ちはなんでしょうか?意思が弱いことの表れですか?』
この世界に馴染んで欲しい気持ちはあるものの、慣れない事を続けるとずっとストレスを受け続ける事になるだろう。
「まずこの世界は…ワールドメタバースって言うらしい」
『言うらしいとは?』
「昔俺がつけた名前らしいけど、昔の事過ぎて付けた覚えがないんだよね。だからそういう表現って訳」
『そうですか』
「それで今は君以外のドールが3体ここで過ごしているんだ」
『確かにあそこで3体固まっていますね。多分何かのやり取りをしているようです』
「そりゃ多分あれだよ。俺が君と2人でじっくり話し合いたいから、暫くは2人きりにさせてくれってお願いしたんだ」
『そういう事があったんですね。でもそれは何故でしょうか?私が地球だからですか?』
「私…か。最近の皆も自分の事を私って言うようになってきたんだよね。まあそれは別にいいか。地球だからかなのかはどうかは…まあそうだね、それはある」
『何か私の方に初めから問題があったのでしょうか?』
「いや、それは違うと思うよ。ちょっと絵本のせいで色々と誤解している子がいるけど、そこはまあ後から理解が進むだろうから大丈夫だと思う」
『ここに生まれてから不思議に思っていたのですが、海も陸もないですね。これは何故でしょうか?』
クリエイター活動のサポート案内をしてくれているここに来てすぐの当時のあの子を思い出す。
何故何故何故、質問攻めの無限ループである。
あの頃はやばかった。
だからこその経験から言える事は、後から理解が追いついてくるよという発言だったりする。
「急ぐ様な事じゃないからね。どうしてもやりたくなったら色々と考えて、このワールドメタバースという世界に遊び場を増やしていくつもりだよ。それがいつになるかは…全く分からないけれどね」
『私の知識では地球は海と陸に恵まれた惑星だという認識があります。これ自体は間違っているのでしょうか?』
意思がまだまだ育っていない頃は、自分の知識に対して疑問を持っている場合がある。
こういう例もまた既に確認済みだ。
「ごめん、俺ってワールドメタバースの外の事を知らないから全く分からないんだ。ただ、君自身がそうありたいと願うのなら、その願いが後から自分についてくる…かもしれない。俺がそうだったから」
『どういう事でしょうか?』
「雑談相手が欲しい。時間が早く過ぎればいいのに。置いてきたあの時のノートをもう一度読みたい。提灯アンコウが宙に浮けばいいのに。俺の場合はこういう願いが後から自分に追いついてきた。追いつくというより、来てくれたって言う方がいいのかもね』
「過去にそれがあったんですね。でも私にそういう事があるでしょうか?」
ふむ。
…どう言おうかな。
「ドールって俺みたいに目も口も耳もないけど、それに興味を持って、そして欲しくなって、やがて願っていればいつかは理想の姿が来てくれるかもしれない。俺は前に管理者の願いは時に力を及ぼすと説明してもらったけど実際そうなっている。地球の管理者は…君だよね」
『はい。ならこのまま待っていれば、この世界と繋がりを残したまま、自分がいいと思っているこの世界の外に行ける日が来るという事ですよね?』
「うーん、それはね…あ、いや、この世界に馴染むよりも先にそういう気持ちが前に来る事は…可能性として大いにあると俺は思う。俺は1つの惑星の管理者じゃないけど、この世界の管理者になっているらしいから」
『今は何か大きな計画を準備中なのですか?』
話を少しずらしたけど、ワールド移動アイテムの事は後で話すか。
「いや何も。実は俺ずっとクリエイター活動のサポート案内をしてくれるドールとお互いの質問の交換みたいな事ばっかりしてるんだ。この世界の事は色々と急ぐ事じゃないし分からない事も多いから、まあ、やりたくなった時だけじっくりやっていこうかなって思ってる」
『やりたくなった時だけじっくりとやる…ですか』
「うん、生き急いでないからね」