ワールド移動アイテムの事、いつ話そうかな。
タイミングって何処なんだろう?
「地球についての話が聞きたい?」
『はい。興味があって』
「やはりそうなるか」
『そうです』
地球に関する絵本の数はメニューのキーワード検索で調べれば沢山のある。
だからいつもの様に直感だけで操作して入手したアイテムリストに入っていたそれを、手元に出現させた。
これファンタジーでいう魔法みたいでかっこいいよね。
『今何をされたのですか?』
「えっ?」
説明してみた。
『成程、凄いですね。私にはそういった力はありません…』
え、やばい滅茶苦茶凹んでるじゃん。
えっ、どうしよう。
これ絶対俺が悪いパターンだよね。
や、やばいこのままじゃ絶対後から俺が嫉妬されて嫌われるパターンやん。
このパターン絶対知ってるもん、現実で何度された事か。
ドヤ顔ゲーム上手いアピールを反省した時期を思い出す。
な、なにかないか…何か。
あっ…そうだ。
そうだよ、あれがある丁度いい。
ワールド移動アイテムの話にも繋げられるしいいタイミングだ。
「実はさ、君にお願いしたい事があるんだ」
かっこいいと思ってやっていたミニ天体弄りをここで披露する事になるとはな…。
アイテムリストからぽんぽんとミニチュアサイズの太陽と月、そしてブラックホールとホワイトホールを宙に浮かべる。
宙に浮くのは勝手にそうなるんだよね、俺のぱわあぁーじゃないよ。
『これは…』
じいぃ…っと真っ白な3Dの顔でそれらを見続ける彼女。
毎回思うけどどうやって目がないのに見れているんだ。
それこそ俺みたいな直感操作なんじゃないのか?
『何か大きな力の存在をそれぞれから感じます。感じ取るとはこういう事を言うのでしょうか?』
「うん、そうだと思う。君の内側も…というか君自身が地球なんだから、必ず何処かにそういう力が眠っていると俺は確信しているよ」
少し間が空いて返事が俺の頭の中で響く。
『少し考えましたが、私の場合はなるべく早くここを出て外の世界を体験しなければ、後々後悔する事がある様に思えるのです』
絵本を見せる前からこの直感よ。
凄いよ、やっぱり彼女は母なる大地だ。
変な小説書いてにやにやする俺なんかより、よっぽど凄い事すると思うよ。
するというより、体験させられちゃう事になっちゃうだろうけど。
勿論その全てが絵本通りという訳じゃないだろうけど。
「お願いしたい事っていうのは、まず。まあ、まずはこれらをこのワールドメタバースの外に置こうと思っているんだよね」
『これらを…ですか?』
「うん。だから今見えているこれを全部、自分と一緒に外の世界に連れて行って欲しいんだ」
暫くお互いのやり取りが止まる。
最初に止めていた相手は彼女だが、じっくりと何かを考えているようだ。
俺も今貰ったこの長い時間で考えていた。
…この子には使い切りのワールド移動アイテムの存在をまだ知らせなくていいかもしれない。
意思の成長、それも地球の意思の成長を促すのなら簡単に答えを渡してしまうのはおかしな事なんじゃないだろうか?
彼女はやりたい事の為に急ごうとしている。
だからこそ自分で色々と努力をするだろう。
そういう努力の数々を少しだけ見終わった後でもいいんじゃないかな。
それで仮に後から嫌われてしまったら凹むけども。
どうしてもダメそうなら頼ってくれって言えばいいさ。
「ほら、これ」
ドールである彼女の胸元に小さな太陽や月、ブラックホールやホワイトホールをすすいと移動させて声をかける。
「知ってるか分からないけれど、俺は世界の中心は地球で回ると思ってる」
『そうなのですか?何故?』
「言葉では表せない直感みたいなもの…かな。でも、少しズレた説明は出来るよ。聞く?」
『はい』
絵本の読み聞かせ。
突発的に始めたそれで沢山の地球に関する絵本を俺は読んできた。
私という一人称までこの頃使い始めた彼女達の意思を成長させる為だけに勝手にやり始めたそれが、ある時ストレス解消というリラックス要素にもなると心に感じてきた。
俺の変な解釈や追加の説明のせいでカオスな絵本の読み書かせなのだが、楽しかったりもするのだ。
「地球自身がぐるぐる回転するのかこの太陽と月とかブラックホールやホワイトホールがぐるぐる回るのか色々と難しくて知らないけどさ、地球である君は…あー…、太陽とか月を見たいとか、近くにいて欲しいとか、側に感じておきたいと、今考えてみたらそう思ったりするのかな?」
『…そう、感じてしまいますね。これをさっき確認した瞬間から、ずっとそうです。私はこれらに…惹かれているんです』
「色々これから頑張ってみて、それでもダメそうなら俺の事を頼ってもらってもいいかな?外の世界に行きたいなら多分手伝えると思う。他のドールの皆とだって相談できるし。ほら、努力はかけがえのない経験とか言ったりするから」
『そういう言葉があるのですね』
よし、少しこの絵本の話でもしようかな。
読み聞かせじゃなくて、絵本は開かずに俺の言葉だけで伝えてみよう。
だってこれ多少内容読んだやつだし…。
まあそんな事この子には関係ないけど、その場その場で頭の中で小説でも書きますか…。
『それを見つめてどうしたんですか?』
「突然だけど、地球って俺の中でどういう立ち位置になると思う?」
『立ち位置ですか?先程言った世界の中心は地球で回るというものでしょうか。地球に関する知識が殆どないのでこう言うしかないです』
「そうだね。俺はその地球の事を母なる大地って勝手に言ってる」
『母なる大地ですか?母とは何でしょうか?』
「自分を育ててくれる立場の相手。それと同時に、自分を遠くから見守ってくれている相手の事だよ。多分、君はそうなる気がする」
『母という言葉すら知らなかったのにですか?』
「知らない言葉なら俺にもあり得んくらいあるよ、そこは大丈夫。でも、君は生物を育む立場に何処かで必ず立つはずだ」
『育む立場…ですか』
提灯アンコウ泳がせたいから地球作るかー。
当時の俺はそう思っていた。
蛍を撫でまくって、寝る前に提灯アンコウは勝手に捕まえて一緒に寝る。
俺は途中までそういう人生だった。
絵本の読み聞かせについては抱き枕にされ続ける人生から少し逃げたかったのもあるかもしれない。
その時の感情なんて細かく覚えてねえけどな。
キーワード検索から提灯アンコウを入手してアイテムリストに入れ、それをここで出す。
提灯アンコウだ、それも意思が生まれたての。
その子を近くに惑星やら色々とある彼女の両手にそっと握らせる。
『あの…これは?』
「提灯アンコウ。この子とは違うけれど、昔の俺は毎回提灯アンコウを抱き締めながら寝てたんだよ。まあそれはそうと、ところで君って眠くなったら寝る…んだよね?」
『はい、眠くなったら寝ます。この子と一緒に眠る様にすればいいのでしょうか?』
「それはまあ…とりあえず任せるよ、ははは。半分はその子の意思の成長次第かもね」
『この子の意思の成長次第…。なんで提灯アンコウと一緒に寝ようと思ったんですか?』
「したいから」
『したいから…てすか?』
「うん、やりたいからやった、したいからやった。多分我慢出来なかったんだと思う。相手の意思を聞かない状況、無視する状況、嫌われる可能性。それらを全部ひっくるめても、我慢が出来なかったんだと思う」
『我慢が出来ない意思を持っているんですか?』
「そうだよ。不貞寝もするし怒りだすし泣きそうにもなる。ストレスがね…」
『ストレス?』