よう、俺の名前は【抱き枕】だ。
果たしてこれは名前扱いなのだろうか?
本当は名前がある事を喜んで、そして有り難がる事が普通なのだろうか?
恐らく提灯アンコウを寝る度に抱き枕にしていた…そういう過去が回り回って俺に制裁を加えにきたんだろう。
そしてその結果こうなったと。
うわ、それなら話は分かる。
だって提灯アンコウが喋れない事をいい事に好き勝手にしてたからね。
あ、真水と海水のぶっかけは喜んでいたと思うよ。
昔はこの世界にずっと一人だったから、俺の名前がどうとかそういう意識すら全く気にしていなかった。
まあ俺としては便利っぽいしのびのび小説を書ける場所扱いだったからねここは。
途中から雑談に飢えだすのは完全に予想外だったけれども。
人間って孤独が耐えられない生き物だっていう人がいたけれど、あれは正解だった訳だ。
結局事あるごとにストレスとも戦ったり発散していた気がするな。
この暮らしにもかなり慣れてきた。
この世界の名前がワールドメタバースというものを知ったのも、その慣れにも大きく作用しているかもしれない。
だって名前が分からない場所でずっと暮らし続けるって、この言葉だけを受け取ったら人がみたら驚くと思うよ。
俺が深く気にせずに暮らしていたのはあるけども。
もう何度目かのフォローリストをメニューから開いた。
アイテムに宿る為に存在する意思と説明されたあれである。
最近はこれの通知がちょくちょく頭の中に響く様になったので、少しは気になるようになってきた。
殆ど理解が出来ないファンタジーみたいな部分っぽいから、実際に触ったりはしないけどね。
でも今いるドールのうちの1体の彼女は、最近までずっとここに居たのだという。
ログインボーナスで貰ったドールだった立場であり、途中からアイテムリストの方では何故か突然消えてしまった彼女でもある。
【レイヴァン帝国】
【新世界2】
【厚切りレンコン】
【ちゃとらんらん】
【あろねこ】
【らぷめ】
【名無樹】
【渡良瀬準】
【ash.w】
一応説明は受けたものの、クリエイター活動のサポート案内である彼女はフォローリストの事は自分にも深い知識がないのだと後から説明をしてもらった。
うーんまあそういう事もあるのかな。
最近は俺がいない本人不在の輪という少し隙を晒したまま、ドール達4体と提灯アンコウの間で正式に俺の名前が決まってしまったらしい。
隙を晒して抱き枕として使われ続けた俺も悪いのだが、何故か彼女達はこういう時だけは決断が早い気がする。
集団心理というものが成長したのだろうか?
意思の成長とは恐ろしいものである。
因みに自分達の名前は今後折を見て自分達で考えるらしい。
うん、まあ別に決まった事を後からほじくらないからいいけども。
これもある意味成長というやつだろう。
早速ドール3体の輪の中に常時提灯アンコウやミニチュアサイズの太陽や月やブラックホールとホワイトホールなどの天体を自分の周りにくるくるさせている地球である彼女は、早くも色々と学習をこなして溶け込んでいた。
恐るべき順応能力である、流石母なる大地だ。
そもそもドール同士が喧嘩や対立している所を見た事がないから、今の皆は恐らく全員が融和路線なのだろう。
排他ではなく受容寄り、融和なら何も問題はない。
うむうむ。
なんか俺親目線?
まあいいや、絵本の読み聞かせまでしてたからね。
今はだいぶ頻度が減ったけども。
最近の日々は雑談だよ雑談。
時間の早さを正常?にしてからは日にちとか年月とか全く気にしてないけどね。
元々気にしていた事をそうしただけで、毎日が過ぎていくーなんて元からほぼ気にしてなかったわ。
昔は腕時計とかつけて時間見てたなぁ、懐かしい。
時間気にしながら真水の海を泳いで、ほぼ沈んだ飛行機の周りを一周してた気がする。
理由はストレス発散だったっけ?
もう昔の事であまり覚えていないや。
今か?
今は俺にとってなのかは知らないが、また地球である彼女と2人きりになれているので彼女と雑談を交わしている。
尚、彼女の周りを天体と一緒にぐるぐるしている提灯アンコウはちゃんとここにいる。
これは果たして2人きりと呼べるものなのだろうか?
遠くで他のドール達が固まっているが、今は彼女との話を気にしていこう。
「進捗どう?」
『うーん、中々難しいですね。自分自身の力というのもよく分かりません』
「天体の方は何か変化あった?」
『見た感じ特には…。私の周りをくるくるしているのは勝手に始まった事なんですけどね』
「いやいや俺は結構いいと思うよ、提灯アンコウも混ざってるし」
『多分この子は面白がっているのかもしれないですね』
「面白いっていう感情が少しは分かってきたかな?皆から話を聞くと中々面白いと思うよ、結構性格出てるし」
『そうですね、どのドールも意思…性格…個性?とにかく自分の考えがしっかりあるのだと私は感じています。私はそこの所まだまだみたいですが…』
「ふむ」
『あっそういえば…』
「どうかした?」
『前に自分で作って自分でそれを壊す事が辛くないなら、それを沢山やっていいのかどうか考えていたのですが、やはり抱き枕の話を参考にするのはいけない事だったでしょうか?』
もう自然と抱き枕呼びされているが、まあそういう時もあるだろう。
「ああ、俺の身の上話のあれか。いや?別に全然悪い事じゃないと思うよ」
『それはどうしてですか?あの頃の私はここに生まれたばかりで、抱き枕の人生で体験した数々の感情というものがよく分からなかったんです。だからその話を振り返ってこうして考えてはいたのです』
「作って遊ぼうとは別に壊して遊ぼうっていう考え方の1つも場所によってはあったりするんだ。その時にどういう感情になるのかはその人次第だし、それらの数をどれだけこなすかは興味とか努力の継続だと思う…からかな。まあ簡単に言えというなら、やりたいからやりますとかでいいんじゃない?」
『抱き枕は結構柔軟な発想が多いですよね?やはり意思が強いからでしょうか?』
ポンコツ小説を50回以上書き続けていたからですとは恥ずかしくて言えないな。
あれを誇りに思うのもいいが、誇りに思うならせめて形に残しておけよと今は言いたい。
低評価が付くごとにアカウント削除とか、もう完全に心が壊れてるやつだからなそれ。
『抱き枕?どうしたんですかぼーっとして』
「ああごめんごめん。君は母なる大地なんだから不安や心配ばかりしなくていいと思うよ。頼れる相手は…多分いるし」
『先に抱き枕からアイテムを貰ったというのに、物事は上手くいきませんね』
「なんでも直ぐに出来て、何でも解決もできるならそれは逆に怖いよ、うん」
『そうでしょうか。失敗の数が少ない方がいい事だと思いますが』
経験というものの後から年月が経ってから味わえるものに興味が向いてないのなら、そういう思考で間違いはないのかな?
露骨に成長しろ成長しろって感じで前は絵本の読み聞かせで勝手にブーストさせてたけど、その頃はそもそも彼女はいなかったんだよな。
アイテムリストからさっさと出しておくのが正解だったか…。
でもそんなの未来を知ってないと分からん。
元が蛍と提灯アンコウの彼女達だって、今は何度も使える外装交換アイテムで見た目はドールだけども、アイテムリストから出てずっとこのワールドメタバースにいた期間は生まれたての彼女より遥かに長い。
そういうやり方が未来を考えたら正しいよなんて事一々考えないっての。