「自分が何処で雇われていか知らないすだちが好きな整備士がいた。とある日に暗がりの中でボルトの規格の大きさを間違えて、そして誰かがポンドとリットルの計算を間違えてとある液体を注入する。終わりだ。航空燃料の飛行機を整備していく姿を最後に思い浮かべるのは、しらさぎ達が大好きなピトー管に群がり、火山灰で窓が削れてキラキラしている世界にあるレバノン料理が体に詰まった姿。終わりに向かう機長がトイレに行っている間に、副機長が水平器が故障したまま機首を上げ続けてアンチアイスもオフにするミスをする。終わった真水の中でフライトレコーダーとボイスレコーダーに囲まれて俺とすだちが身体を浸したあと、冶金学者の人達とイチャイチャする。この恐怖感の出所は何処だ?転生をしたいという意思があるにも関わらずこの…畜生がっ!ぐあっ!頭を避けて身体にでかすぎる車輪を直撃させたが、この通り死ぬほど痛い。俺は痛いというよりかあと数分で死ねる感じだと悟る。そんな死を悟った瞬間、脳内に存在しない記憶が起きた。すだちが特売品にされるように溢れてきたこの記憶。俺以外にTS総受け転生…?この、この記憶は…?なんだよ。だったら俺は、俺は…そうだ名前じゃないか…どうして今まで忘れていたんだ本当に、どうして。俺の前世は、既に転生していたんだ。母さんを含めて良くなった友達の皆と過ごした記憶。そして容姿が何一つとして思い出せない…そんな記憶。名前と確かな友誼だけを心に感じる。容姿が分からない皆の名前を呼ぶ。ここには居ない俺の友達となってくれた人達を。俺はもう既に…いや、過去にイチャイチャしていたのか」
ノートに書いた一区切りであろう小説を声を使って口に出す。
あれから時間が過ぎた。
カレンダーで日付を確認していった所でなんだと言うのか。
確かにね、何週間も俺はここにいるわけよ。
もうログアウト項目の確認はしていないし、だって気にする事が多少のストレスを生み出し始めたから。
そもそも現実に戻ってなんだというのか。
何がしたいんだって、そりゃ小説書いて完成を目指したいだけ。
その目標は現実にいようがメタバースのままだろうがどっちでもいい。
小説を完成させた自分を褒めたいんだよいい加減マジで。
でも、今更になって俺のへんてこ小説に低評価を押していた人達の事を少しは考えた。
うーん、メタバースで小説を書き始めたせいなのかな?
多分、その人にとって面白い小説家になって欲しかったんだと思う。
そうやって期待していたけど、俺はぽんこつだから何の役にも立てなくて読むだけ無駄だって思われちゃったんだと思う。
でもだって仕方ないじゃん。
頭も悪いし国語だって古文の授業だって漢字の読み書きとか、四字熟語だって何から何まで全くついていけなかった俺。
そんなの期待されても答えられる訳ないよ…無理だよ。
低評価押される度に速攻でアカウント削除して逃げる俺も悪いけどさ、期待してくれなきゃ良かったのに…。
首を振った。
やめよう、この思考をやめよう。
自分が幸せになれる思考だけ欲しよう。
このメタバースは人からの小説の評価なんて起きない世界なんだから、前だけ向いていればいい。
メモや追記を含めたノートを見た。
雑だけど形はある程度出来たと思う。
幸せ者を自覚している場合じゃないとは思うが、すだちが好きな整備士はTSする予定なのだろうか。
飛行機で暮らしていたという過去ありきならまあTSしそうだよね。
存在しない記憶については死にそうな時にはあったりするのだろうか?
実際に起きてるみたいだからこの主人公は実は凄い奴なのかも。
名前は知らないけども。
いや、なんか思いつかないんだよな普通に。
TSして総受けする予定まで書いたのになんたる体たらく。
既に転生していてお母さんや友達との知らない記憶が溢れてくるって、実はお母さんと友達飛行機に乗ってないよね信じてるぞ。
自分の名前や友達皆の容姿の部分に思い出したりだせなかったりとかあるけど、過去にイチャイチャしていたみたいな言い方をしているからこれは何かに使えそうだ。
というかいつの間に外に出てたんだこの主人公。
飛行機の中にいただろうにどうやって外に出たんだろう。
真水が沢山ある場所に墜落して体を浸し、フライトレコーダーとボイスレコーダーとすだちと冶金学者の人達に囲まれてイチャイチャしていたようだが、転生したいまま怖がってるな。
真水の中で頭にぶつかる予定の大きな車輪を頭を避けて避けるって、やっぱり凄い事やってる。
レバノン料理が体に詰まった姿という部分が主人公の凄さの秘訣になるのだろうか?
でも色々思い出しているって事は、やっぱり転生の儀式という言葉に返ってくるな。
転生なのかTS総受けなのかまだはっきりしていないようだが、本人はイチャイチャしたいという言葉の数が多い。
個人的には総受けされるイチャイチャなら女の子同士なんだが、この主人公本当になる気はあるのだろうか?
書くのは俺なんだけども。
「飛行機内の他の人達どうしよう…」
整備士、主人公のお母さん、主人公の友達。
しらさぎ、機長、副機長に冶金学者。
何だか色々増えてきたぞ。
全員TS総受けさせる訳にはいかないな。
まず間違いなくその小説は俺には難しすぎる。
だが転生の儀式がこういうものだと言うのなら俺は…。
多分このいきなり出てきたすだちも必要そうなんだよな。
くそっどうする、主人公の名前も決まらねえ。