眠い。
眠っていたが、起きた。
既に俺の幼女の体が勝手にペンを手に取っている。
最近ノートの上で寝てばかりだ。
だが、こうしていれば何かが見えてくるかもしれない。
こうして緩い思考をそのままに、新しいメモや追記を残し始めてしまっていた。
後5秒くらいで飛行機と衝突だった筈という話。
田舎らしいと感じる飛行機の中で住んでいた可能性がある主人公、整備士、機長、副機長、冶金学者、ポンドとリットルの計算を間違えて航空燃料を入れる誰か、ピトー管に群がるしらさぎ。
そして、誰かの中にあるレバノン料理。
主人公が食べたと思っていたが、そんな記述は一切ないからこれは何処かで必要になる筈だ。
すだちが特売品にされるように溢れてきたこの記憶を流す主人公は、本来は異世界の人達に愛されたいと思うほどその願望が叶うものだという思考があって、TSしてイチャイチャを望んでいるし死ぬ事への恐怖心が出てもそれをちゃんと目指している。
転生への儀式がこれだというのなら、TS総受けイチャイチャは何処まで適用の範囲があるんだ。
真水の上から落ちてきた車輪が何かを意味しているのか?
何処だ、何処に繋がりがある?
フライトレコーダー、ボイスレコーダー、すだち。
それらに囲まれる、真水から落ちる車輪。
「落ち着け…落ち着け…まてよ。これなら…」
しらさぎが飛べる程度の高さの飛行機…互いの衝突。
もし、しらさぎがピトー管に群がっているのではなく、ピトー管の奥にいた飛行機内部の人に向かっていたとしたら?
誰に向かった?
いや、何人の誰に向かった…?
そうだとしたら、しらさぎはTS予定の人達に何を伝えたかったんだ。
飛行機同士の衝突により真水の中に墜落してしまった飛行機内部の人達もTS、もしくは転生、主人公含めて複数人のTS総受けイチャイチャ転生をする可能性がある思考は残っていた。
それを書き終わっていない時点で恐らく数日前の俺は不安があったのだろう。
明日の自分に対してこういう事を勝手にやってしまって怒られないだろうかとか、不快に思われてしまうのだろうかとか…自分に手が届く範囲なのかなだとか。
まだ、最初の最初だぞ。
この未完成の小説への好奇心は失ってしまわなかっただろ。
興味の火は自分の過去不安程度じゃ消えてくれないらしい。
そうだろう?
そこまでペンを走らせて勝手に書いていたノートの手が…止まる。
待たず増え続ける真水の世界。
主人公は自分の転生に気がついた。
ならこいつの転生する前の世界はどこにある。
過去にイチャイチャしていた事を思い出しているのに、どうしてこいつはこれを詳しく語らない。
語らない事は知識が無い。
全く知らない人…世界で一番幸せ者…。
愛…知る、名前…知らない。
まてよ…、これって…。
コポッ。
「んっ?」
コポコポコポコポッッ!
「わっ!わわわっ!」
変な音がした方へ、その先の白い地面を見ると小さな水の塊があっただけだった。
それがどうした事だろう。
その白い地面から、大量の水があっという間に溢れ出してきた。
そうして真っ先にとった行動が「メニューっ!」と口に出してノートとペンやら手鏡やらカレンダーとかを所持アイテムとして仕舞い込むことに成功させる。
腕時計までは意識がいかなくて、咄嗟に時間も見る。
まだお昼だった。
水はどんどん増えていく。
幼女の俺の両膝までどんどん増えるから頑張って飛行機のタイヤの所に登ってちょっぴり水から逃げる。
でもどんどんどんどん増えていくし、遂には俺の体まで浮かせた。
助けてくれる人なんて誰もいない、一人だ。
目印の飛行機に直ぐに近寄ったけど、水に浮いている俺はただ水が増えていくのを沈んでいく飛行機の外側に張り付きながら見ているだけ。
やがてその水位は飛行機の両横に付いている翼の部分の少し前くらいでピタリと止まってくれた。
あ、危なかった。
どうして止まってくれたのか分からないけれど、止まってくれたから俺は嬉しい。
でもこれから水位がこのままなら、羽の上で寝る事になりそうだ。
ちゃんと寝れるだろうか?
寝ている間に水の中に落ちちゃわないよね?
頼むぞ俺の寝相。
そういえば裸だったなと思いつつ、頑張って水に浮いている状態から全力で片足を上げたり翼に体を全力で擦り付けながら腕や足に力を入れながら羽の上に乗れる努力をしてみると、なんとか上手く羽の上に乗る事が出来た。
はあ…奇跡だ。
メタバースの中だからだろうか、疲労なんてやってこなかった。
疲労ありなら絶対羽の上なんて登れないよ。
その時に口や鼻の中に水が入ったけど、別にしょっぱくなかった。
多分…真水だと思う。
ノートに真水の事も書いたし…。
はぁ、あーあ。
なんか小説を仕上げたいだけなのに、とんでもない事に巻き込まれている気がしてくる。
「は、はいはいはい…」
なんかちょっぴりここも現実と変わんないや。
一人小説の中に閉じこもってねちねちと雑な小説書き続けて、周りの評価だとかは直ぐに気にして落ち込んで。
ほんの少しの外部の刺激に破裂して破裂して真っ赤に嫌がる。
小説を書く邪魔される事が嫌なのに、何故か変に周りを気にする所。
飛行機の羽の上に寝っ転がる。
そして目を閉じる。
「小説を書く事がどうでもよくなる前に…」
1つくらいは完成させておかないと、他人に…。
「書いてもらう事を誰かに頼っちまうかもな…」
俺は直ぐに嫌な事から逃げる。
小説を書く事だってそうだ。
好きの反対は嫌い。
嫌いな気分になればその日は直ぐに逃げて書く事をやめる。
どうでもいいやと思いたくなるラインはある程度引いていて、それこそが1つくらいは小説を完成させたいという欲から出来たラインだ。
それが何年経っても終わらねえから、こうしていつまでもダラダラ過ごしてメタバースにまで来たって訳だ。
「…難しいよなあ、小説」