自分で自分の事を信じなくてどうすんだよ。
誰にでも馬鹿にされる小説でも、当たり前の様に下手くそでもさ。
頑張って自分が書いたんだろ、感情のままに。
でも、少し書く気力が失せる期間に入った。
沈みかけた飛行機の羽の上でノートの上に寝っ転がる俺は、腕時計を見つつ何度も寝ていた。
やる気とペンの動きが噛み合わない時はこうしていつもぐうたらダラダラ。
別に書けなくて怒ってくる奴はいないから自由なもんだ。
両手をついて片足ぴーん。
ぐぐぐ、中々やるじゃん。
「主人公と同じ気持ちに近くなれば、もう少し近付けるんだろうな」
分かっては、いるんだよー。
メニューからすだちを検索してあった事が分かったけど、この綺麗であろう真水の海に沢山投入していいものか。
当然の様にすだちは入手ボタンしか存在しなかった。
つまりタダ、無料である。
あれからだいぶ時間が経った。
小説の1つくらいはー、と何度も思うものの、やる気の維持が問題な訳で。
何となく主人公の気持ちが知りたくて真水の海に大量のすだちをばら撒いたのは…何を隠そう俺である。
昔の俺とは違うのよ、やる事やってやったぜ。
今の真水の海を見渡した。
すだちが沢山浮いている。
でもこれさ…。
飛行機の羽の上から一個拾い上げる。
「柑橘系なんだよなあ」
今はそこら中で、すだちの香りだらけ。
メタバースって匂い感じ取れんのか。
やはりここはバグったメタバースの様な何かなのかもしれない。
少なくともネットにはメタバースで匂いがどうのこうのという記事は見なかったと思う。
「すっぱ」
すだちを飾ると酸っぱい。
匂いのみならず味覚まであるのだここは。
現実に近い、もしくは現実であろう可能性も捨てきれないときた。
だがメニューとかいうメタバース特有の機能がちゃんとあるし、中々難しいところだ。
しかもだ。
俺は昨日気がついた事がある。
腕時計を見る。
ふむ、夜中か。
「どうすっかなあ」
メニューからの検索に、飛行機が沢山あったのだ。
それもタダで。
飛行機同士の衝突まで後5秒というノートに書いたあれが頭に浮かぶ。
そう、ノートの小説の流れを汲み取のなら、飛行機は2機必要なのだ。
ほら、衝突させる云々は一旦おいておいてね。
やっぱり飛行機同士がぶつかったら困るから、ここから少し離れた場所で飛行機出してみようかな。
何か行動を起こさないと後1ヶ月くらいは小説が書けなさそうだ。
大量のすだちの真水の海じゃ足りなかったみたいだね。
「おおおおーっ!」
そうと決まれば即実行。
俺は声を上げながら飛行機の羽の上からジャンプして、すだちだらけの真水の海へと飛び込んだ。
「よしよし、この辺りでいいかな?」
結構元いた飛行機の場所からここは離れている。
だからこの位置でやってあげれば飛行機同士がぶつかってしまうなんて事にはならないだろう。
「メニューっ!」
両手で真水の海に浮いているすだちを掴みながらそう言葉を口に出せば、操作したい項目が出てくる。
そうして今ある飛行機に似ている目星をつけていた飛行機へと入手ボタンを押すと、所持アイテムが1つ増えた。
またすだちばかりの真水の海に飛行機を沈めてしまうだろうが、無料じゃなかったらこんな事やらないと思う。
そう思いつつ、所持アイテムから飛行機を取り出して見せた。
既にある飛行機よりかは少し小さいと思うけど…うん、よく分からん。
そうして一部自分が思っていた通りの事が起こる。
ザパアアアアアンッッッ!
瞬時に目の前に巨大な飛行機が現れて、大きな水面への着地音を響かせながら俺の元へと現れた。
波ができて、その唸りがもの凄い。
疲労がこない体を俺は上手く使って、どんどんと揺れ動く幾つもの波をクロールしたり平泳ぎしたりと忙しいながらも乗り越えていく。
視界に捉えている新しく現れた飛行機は、水面からどんどん沈んでいってすだちだらけの真水の海の底へと向かっていった。
やがて波は穏やかになり、そこにはいつも通りの静かな水面の世界が再び出来上がった。
なんとなく酸っぱいすだちを食べながら浮いて泳いでいた俺は、なんだか自分のモヤモヤとした心が少し治った様な気がして頬を掻く。
こういうダラダラとした期間に無理矢理小説を進めようとする為の努力なんて基本しやしないが、このメタバースであればこういう事も出来たりしてしまった。
俺は感情を少しばかり整頓した後、そのまま真水の海の世界に潜った。
水の中でも呼吸をしなくていい事を知ったのは結構前だ。
疲労が来ない体なのは既に知っていたから、腕時計の時間と沈みかけの飛行機の外側を一周とかで遊んでいた時期がある。
眠くなったらそりゃあ飛行機の羽の上で寝るけど、眠る以外に俺は小説以外に偶には…そう、遊んだりもするのだ。
水中で「メニュー」と口に出して、新しく出した飛行機をしまってみたり出してみたりした。
やっている身としては中々面白い事になっている。
ほら、手鏡とか出し入れしてる時にふと気がついたんだよ。
こういうのなら自分で出した飛行機も所持アイテムから出し入れ出来るじゃんって、そういう流れ。
うん、波の流れも凄いね。
「ふいー、そろそろ寝ようかな?」
なんかスッキリした。
基本的に感情で書く俺の小説は、その時の感情の振れ幅に大きく左右される。
メモと追加を混ぜ込む前提で書くので普通の小説とは全く違うものになるけども、昨日の俺の気持ちとか一昨日の俺の気持ちとかを書いてる当日の自分に託す事も出来る作り方だ。
その代わりに雑すぎる事が多い添削大前提のものになるけど、別に自分が好きで書いているやり方だからこれでいい。
「あと数日したらまた書くかあ」
やっぱり一人は楽だね。
世界中が誰かといるより一人が好きな奴らばかりになるのも頷ける。
自分の時間は自分のもの、何でも好きにやっていきたいものだ。