「TS掌サイズ転生を願う俺。があっ、眠くなってきたっ!死ぬのか、俺は。身体が段々と冷凍すだちを身体に押し当てられたように冷たくなってくる。もう死ぬのだ。マイ…フェイバリット…ヒーロー。開け続ける努力すら放棄してその時を待つが、思い出した記憶の数々が俺から遠ざかっていく。だが、ただ1つの存在だけが新たに脳裏に浮かんだ。向き合った時間は少ないのに、俺の意思なんて関係なく仲良くしてくれたしらさぎ。そんな存在を死ぬ直前になって…。初めて分かる事を理解しただなんていつも抱えている記憶よりも、こうして思い出した記憶の方が一番大切なのだと…そう、懐かしさを抱えて死ぬんだ俺は。ありがとう、抱えていける。全部忘れていたっていいだろ。ああ、転生先はご存知だろうか?ご存知だと言うのであれば、生きているうちに存在する区域も、何となく何処かで聞いた覚えはある場所だろうものも、そっちの場所に行きたい。はたしてそれが耳からなのか目からなのか知らないが、初めから知っていようがいまいが、確かにそこに人類史の歴史の一部としてここにある。知識の奥にはあるのだ。地球という数多あるうちの星々の一つである世界線で、起きているであろう現代社会の煌めき。そこでは本能である四大欲求の1つとして、自然と異性の人肌を求めてしまうTS幼女がいる。社会だった現代が決して皆を見捨てはしなかった爆弾投下後の世界線に、辿り着くのだ」
ノートに書いた一区切りであろう感情のままにペンを握った小説を、口を使って声に出す。
腕時計を見た。
もうこんなに書いてたのか。
疲労しない体を持ってるんだが、やっぱり心は疲れてくるな。
小説を書いてるとメモ足りないじゃんとか追加これだけ…とかの色々突っ込みたい事が昔の自分にある訳よ。
ただ、アイディーとパスワードみたいに絶対これ覚えておきなさいよみたいな事が、小説を作ることにおいては後から書いたものと噛み合わせて覚えるべきものを変えていけるという場合もあったりする。
今回のこの感情任せのこれで言うとそうだね。
「TS掌サイズ転生願ってるよこいつ…。話が繋がって、つまりはTS掌サイズ総受け幼女転生希望だというやつか…」
主人公は本能からくる四大欲求の1つとして、自然と異性の人肌を求めてしまうTS掌サイズ幼女は、お母さんや友達、勝手に仲良くしてくれたしらさぎとの懐かしい記憶を抱えながら死ぬ。
こいつらマジで全員飛行機内かピトー管に群がってないか?
主人公転生してたの自覚してたのに、飽き足らずにTS掌サイズ総受け幼女転生をしようとしてやがる。
いや、飛行機同士の衝突は主人公のせいじゃないだろうけども、それならまあ…。
主人公がいた前の世界ってこの文からすると地球っぽいよな。
星々の1つの世界線と現代社会の煌めき。
でも、皆を見捨てはしなかった爆弾投下後の世界に辿り着こうとしている。
次に自分が行く世界を知っているとするなら…。
そうか。
冷凍すだちを体に押し当てるみたいな冷たい真水が沢山ある場所に飛行機同士の衝突で墜落して、フライトレコーダーとボイスレコーダーとすだちと冶金学者の人達に囲まれて、自然と異性の人肌を求めてしまうTS掌サイズ総受け幼女転生を怖がったまま、過去の転生先でもその場でもイチャイチャしていたという事になる。
イチャイチャを求めているからこそ、社会側が決して皆を見捨てなかった爆弾投下後の世界へ行くのを望んでいる。
「…なんでしらさぎがこの主人公の側にいないんだ?」
ペンを握り直した。
待て、これは…。
死ぬ程冷たい真水の中で眠気も訴えている主人公だ、飛行機の中ではピトー管に群がるしらさぎのせい…もしくは他の要因のせいで上手く眠れなかったのか?
飛行機の中で田舎らしい暮らしをしていたというのは、田舎に住んでいたからこその順番だという発言は…。
死ぬ事を幸せだと思うのは何故かというのは、TS掌サイズ総受け幼女転生をする事が決まっているから?
決まっているから皆、全て、忘れていた… 思い出した記憶の方が一番大切…世界線…爆弾投下後…辿り着く…。
「マイ…フェイバリット…ヒーロー…?」
待て。
「爆弾に耐性が無い皆って…誰の事だ」
過去に書いたノートを飲む様にめくる、めくる、めくる。
イチャイチャを求めているからこそ、そんな皆の世界線に行こうとしている。
主人公が尊敬している英雄の皆の所へと。
「飛行機同士が衝突するのを知っていたのか…?」
5秒前にぶつかると書いてある。
多分やおおよそではなく、5秒。
そういう日の当日に眠気と戦う、もしくはなんらかの理由により眠気に誘われていた。
感情で書いていたメモと、その追加から目を逸らした。
腕時計を見る。
「後5秒…後5秒…」
針の動きを見る。
この主人公も、こうやって腕時計を見ていたのか?
何分前から見てた、何時間前から見てた?
「誰と…見てた…?」
転生の儀式。
儀式って一人でするものなのか?
お母さんや友達やしらさぎとの記憶を大切にする主人公が、儀式を一人で?
「飛行機って…一人だけ乗せて乗るもんじゃ決してないよな…」
冶金学者までいたんだ、確かにそうだろう。
ありがとう、抱えていけるって。
その意味は…。
右を振り向く。
すだちが浮かぶ真水の海、2つの飛行機。
波の無い、静かな真水の世界。
手鏡を見た。
黒目黒髪の幼女が映っている。
「近付いて来てる。物語の…始まりに」
ここはまだ爆弾投下後の世界じゃない。
名無しの主人公。
真水の中にいないしらさぎ。
「なあ、主人公。お前は大切なものが沢山あっていいな」
低評価がついた小説のアカウントは、小説ごと50回以上消した。
書いた大切な物を消して、消して、探しきれない自分の記憶の中へと流した。
無いんだよ、もう。
俺にはもう小説を書く事以外に何もない。
嫌な事は捨ててきた。
少し心が疲れたな、また暫くだめそうだ。
「まだ、終わりそうにないな…」
メタバースの世界だからこそ、たった一人がいいかもしれない。
今日はそう…思う所にする。
…。
心の疲れと共に…苛々がやってくる。
「…」
物語の始まり?
嘘だ。
「…くそが、くそが、くそがくそがああっっっ!」
大声をあげて片足を何度も飛行機の羽の上に叩きつける。
「…」
小説に誠実さを求めるのは無理だ。
書けば書くほど、やればやるほど…内容が明らかに進むほど、自分の手に余るものになっていく。
書く側の自分だけ置いていかれて、書いていた小説だけがレベルアップして質があがる。
そしていつも置いていかれる。
自分だけ、自分の書いていた小説に置いていかれる。
他人からの低評価以前の問題が無限に俺に付き纏う。
やっぱりメタバースで小説書いてもまた現実みたくこうなるのか。
「…寝よ」
メンタルをリセットするのに長い時間がかかる。
分かってんだよ。
小説を書く事は自分を苛つかせる為に存在する。
そして、小説を書く事は自分の夢の為に存在している。
小説を書く事は好きだ。
憎み、苛立ち、燻り、もがく。
でも、俺にはこれしかない。
誰よりもクソみたいな小説しか書けないけど、俺には夢がある。
現実で出来なかった事がメタバースでできんのか?
ノートの上に体を重ねて、目を閉じた。